カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.65
(domingo, 11 de octubre 2026)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai

Malagueña de Fosforito ②
前回フォスフォリートの本名をFrancisco Lema Ulletと書きましたが、研究家が書いた本の中には最後の姓UlletをUllerとしたものがあります。どちらが本当か解りませんが、この場合でも最後のrはアンダルシア弁では殆ど発音しないので、実際にはウジェーです。
カンタオールはバイラオーラと結婚する例が多いのですが、フォスフォリートもマリキータ・マルビードという優れた踊り手と結婚し、当時は女性は結婚すると引退するような時代ですからマリキータも早く引退しましたが、多くのファンがその引退を後々まで惜しんだという事です。
なお、先ごろ亡くなった二代目フォスフォリートは本名Antonio Fernández Diaz(アントニオ・フェルナンデス・ディアス)で、出身はコルドバ県のプエンテ・ヘニル(1932年)で、元祖フォスフォリートと血縁関係は無く、彼の父親がフォスフォリートのマラゲーニャを好んで歌っていたので息子にもこの名前が付いたという事だそうです。
私が直接何度も聴いた感じでは二代目フォスフォリートは何でも歌える人でしたが、マラゲーニャに関してはトゥリニを得意としていた印象でした。
それでは元祖フォスフォリートの二つ目のスタイルです。
【Letra】
Ay ... ,
desde que yo a ti te conocí
mi corazón llora sangre,
yo me quisiera morir,
porque mi penita es muy grande
y así no〈pueo〉 vivir.
【訳】
アーーーイ、
お前と知り合ってから
私の心は血の涙を流している、
いっそ死んでしまいたい、
私の苦しみは大きくて
このままでは生きていけないから。

このマラゲーニャは普通のファンダンゴ属の歌い方である2行目から始めるのではなく、最初のAyを長く伸ばして本来1行目が辿り着くCの和音になり、この歌詞の1行目でFまで行くという珍しい形で(Ay+5行詩)ということになりますが、最初を除いてあとは普通に進行しています。
楽譜を見られればその事がよく解るでしょう。モチュエロが歌う古い型の、他のファンダンゴ系の歌でも聴いた事がありますが、珍しい型と言えると思います。
今回のマラゲーニャはフォスフォリートの「マラゲーニャ・ラルガ~長い歌、つまり大きなスタイルのマラゲーニャ」と呼ばれる大きく深いカンテ・グランデです。
これにてマラゲーニャは休憩、次回からセギリージャ(シギリージャ)を始めます。

【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~38(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。
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