Punto84《道程 そして、ここから。》
- norique
- 5 日前
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更新日:9 時間前
*スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和7年度助成事業
(lunes, 13 de octubre 2025)
2025年8月7日(木)
セシオン杉並(東京)
写真/大森有起
Fotos por Yuki Omori
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko

1984年、昭和59年生まれ。同い年の二人のフラメンコダンサーによる劇場公演が開催された。
互いに違う環境の中でフラメンコと出会い、ともにそれぞれの舞踊団に所属する中で、フラメンコとスペイン舞踊の技術と表現力を磨いてきた。
フラメンコ歴は20年以上という中堅世代だが、主催公演は実は今回が初めて。とはいえ作品の構成や出来栄えは、とても初作品とは思えないほどの秀逸さだ。
始まりはピアノのメロディーから始まるナナ。薄桃色のベールに包まれて踊る二人。
その動きはコンテンポラリーのようでもあり、これから新しい命が誕生するかのような躍動感に満ちている。
そこから姿を現すヴォダルツのグアヒーラ。伸びやかな身体使いで、幼少の頃から舞踊や舞台に親しんできたという自身の原風景を表現。純粋に踊ることを楽しんでいるようなその表情には、少女の面影が重なる。
松田のソロは故郷である山形の有名な民謡、花笠音頭とフラメンコのコラボレーション。衣装は着物をまとい、花笠を小物として使った踊りも実にうまい。三味線奏者の浅野が弾き語りで歌う民謡にギターが加わり、音楽も12拍子のリズムにアレンジされ、フラメンコの舞踊技術を取り入れた民謡の踊りは松田の素晴らしいオリジナリティだ。
赤い衣装にパリージョを使って披露するパレハはダンス・エスティリサーダ。森川の中世フィドルの演奏に合わせてよく揃ったパリージョの音色を奏で、フォーメーションの展開もバリエーションに富んで楽しい。パレハの魅力たっぷりの一曲だ。

ピアノと津軽三味線のコンチェルトによる「里桜」は浅野のオリジナル曲。懐かしいような温かみのあるメロディーと、後半のドラマティックな演奏に思わず引き込まれる。
ペテネーラでのパレハは、互いに惹かれ合いながらもすれ違う関係性を表現。人間の内面的な世界観を、身体を使う舞踊で表現する技術は流石の一言。

ヴォダルツのシギリージャは気迫あふれる渾身の踊りを披露。一心不乱に全力で踊り切った姿が印象に残った。
続いて松田のティエント。美しい姿勢と、力強さの中にふと見える柔らかさに踊り手としての成熟ぶりが伺える。カンテ二人との掛け合いで踊る姿も実に楽しそうだった。
ミュージシャンのソロは、この公演に欠かせないメンバーとして参加した徳永兄弟のオリジナル曲を特別編成で披露。バイオリンと津軽三味線とともに、この日限りの四重奏を会場に響かせた。
最後は二人が得意とするバタマントンによるアレグリアス。爽やかな青のグラデーションに彩られた衣装が美しい。同志としての仲の良さと信頼が伝わってくるような、観ていて気持ちの良い舞台だった。
今回のプログラムにはvol.1という文字が記されていた。ということは、これから第2弾へと続いていくのでは、という期待も芽生える。もし実現するなら、それもまた二人が歩み続けていく道程となるだろう。
(追記)この公演の配信視聴が現在公開中だ(*配信チケット購入は10月26日まで)。
現地で鑑賞した人も行けなかった人も、この作品の素晴らしい瞬間の数々を味わってほしい。
【プログラム】
1.「Nana」
2.~母娘の想い~「Guajira」
3.~山形への想い~「ふるさと讃歌」
4.「Folias」ダンサ・エスティリサーダ
5.「里桜」
6.「Petenera」
7.「Siguiriya」
8.「Tientos」
9.「Viajero del Alma ~魂の旅人~」
10.「Alegrías」
【出演】
バイレ:ヴォダルツ・クララ
バイレ:松田知也(小島章司フラメンコ舞踊団)
ギター:徳永健太郎
ギター:徳永康次郎
バイオリン・中世フィドル・ピアノ:森川拓哉
津軽三味線:浅野祥
カンテ:有田圭輔
カンテ:中里眞央(アルテ イ ソレラ所属)
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