《能楽師一噌流笛方 一噌幸弘×フラメンコギタリスト 沖仁》
- norique
 - 23 時間前
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(lunes, 3 de noviembre 2025)
2025年10月11日(土)
矢来能楽堂(東京・神楽坂)
写真/栗原隆一
Fotos por Ryuichi Kurihara
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko

クラシックやジャズ、ポップス、和楽器など、様々なジャンルの音楽や楽器とフラメンコギターが共演するコンサートは、これまでにも多数行われてきた。
今回、フラメンコギタリストの沖が共演するのは、能楽師の一噌*流笛方として安土桃山時代からの伝統を受け継ぎ第一線で活躍する一噌幸弘だ。(*いっそう、「噌」はくちへんに曾)
生まれた時から能楽の世界に身を置く一噌だが、高校生の時にパコ・デ・ルシアらのスーパーギタートリオの演奏に衝撃を受けてフラメンコに強い興味を持ち、沖に熱烈なラブコールを送り今回の共演が実現したという。
会場となった矢来能楽堂は国の『登録有形文化財(建造物)』にも指定される歴史ある建物で、場内は満員の観客で埋め尽くされていた。
プログラムは全8曲。最初は一噌と沖がそれぞれのソロを演奏し、続いてインドの打楽器タブラ奏者の吉見とベーシストの福田が加わり、一噌が選曲したフラメンコギターの定番曲や日本の古典音楽、沖と一噌それぞれのオリジナル曲を、工夫を凝らしたアレンジで次々と演奏していく。

一噌が演奏に使用した楽器は、能楽で主に使用される能管や篠笛、自ら開発した田楽笛の他に、西洋楽器のリコーダーもバロックやルネサンス、ソプラニーノ、バスリコーダーと各種揃え、角笛も音色の違う2種類を用意するなど、その数なんと10本以上。それらを曲やフレーズごとに使い分け、徹底した職人ぶりだ。
一噌が演奏する能管の音色は、音の響きに加えて風や空気の濃さや流れまで感じさせるようで、その表現する景色はまさに幽玄な世界だ。そして沖が奏でるフラメンコギターの音色は、スペインの情景を描きながらも能楽堂のぬくもりある木造の舞台に自然と馴染み、不思議なほど心地良い響きを楽しませてくれた。

今回共演したタブラ奏者の吉見とベーシストの福田は、これまでも一噌とユニットを組んで何度か演奏経験のある頼もしいパートナーでもあり、タブラの音色が能楽の笛やフラメンコギターと相性が良く、調和のとれた音色でリズムを重ねていた。また福田のベースも笛とギターの音色を取り持つように絶妙な加減で演奏を支え、自身が公演前に語っていたように「接着剤として」そのハーモニーに貢献していた。
能楽、フラメンコ、タブラ、ベースと個性豊かな4人の熟練したミュージシャンによる「異種格闘音楽」は、この瞬間でしか実現しない組み合わせで貴重な音楽体験をもたらしてくれた。
【出演】
一噌幸弘(能管、篠笛、田楽笛ほか)
沖仁(フラメンコギター)
吉見征樹(タブラ)
福田亮(ベース)
【プログラム】
能楽古典:『三番叟』 *一噌ソロ
アルベニス:アストゥリアス *沖ソロ
アル・ディ・メオラ&パコ・デ・ルシア:地中海の舞踏/広い河
ロドリーゴ(沖仁編曲):アランフェス協奏曲第二楽章アダージョ
一噌幸弘編曲:『道成寺』より乱拍子、急ノ舞
ジスモンティ(マクラフリン&パコ・デ・ルシア編曲):フレヴォ
沖仁:ファンタスマⅤ
一噌幸弘:空乱12拍子
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