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新・フラメンコのあした vol.31

  • norique
  • 9月1日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月3日

(lunes, 1 de septiembre 2025)

 

20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。

前回と今回の2回にかけて、筆者が読者の皆さんにぜひ知ってもらいたいという、今最も注目している二人のギタリストを紹介します。

  

あしたのギタリストは〜(2)

「ダビス・デ・アナ」

 

Los guitarristas para mañana (2)

David de Ana

 

文:東 敬子

インタビュー:ハビエル・プリモ

画像:東 敬子/ 宣伝素材

 

Texto por Keiko Higashi

Entrevista por Javier Primo

Fotos: Keiko Higashi / de Instagram @davideana_

 

2509東_instagram _davideana_

 

彼を初めて生で観たのはついこの間、2025年6月3日、バイラオール、フリオ・ルイスの『ラ・ファミリア』公演でのことでした。白いドレスを身に纏ったフリオが「白鳥の舞」を繰り広げるというアバンギャルドな演出の場面で登場した若いギタリスト、それが今回私がぜひ皆さんにご紹介したい期待の新人、ダビス・デ・アナです。

 

誰もいない発光するステージに、自ら椅子を持って登場したピンクのスーツを着た彼は、トボトボという感じでステージ中央まで歩き座りました。しかし弾き出すやいなや、彼のギターから出る音は、大きなきらめきを放ったのです。

 

julio ruiz & david de ana (c) keiko higashi
(写真左から)Julio Ruiz、David de Ana/ (c) Keiko Higashi

2004年生まれ、21歳のダビスは、フリオ・ルイスが「彼は12歳」と冗談を言うぐらい、実年齢よりもさらに若く見える。でも、音には確固とした自分があり、クラシックな風合いでありながらも現代を生き抜く極上のテクニックが冴えわたる。そしてフラメンコの強さ、匂い、重さ、そんな、習得するのが難しいものも、当たり前のように持っている。今回の公演ではフリオの踊りに合わせて「白鳥の湖」をフラメンコ風にアレンジした部分もあったりして、そこでも抜群のセンスを感じました。「才能」なんて、説明の仕様がない曖昧なものですが、「それ」は誰の耳にも明らかでした。

 

そして彼のインスタグラムのアカウント(https://www.instagram.com/davideana_?igsh=Z2xrOXJrb3o5Z2p4)をチェックすると、それは確信に変わりました。うわー、出るわ出るわ、その宝石のような音たちが! 青田刈りどころではない、もうすぐにでも皆んなに彼のことを知ってほしいと思いました。

 

とは言え、まだまだ未確認領域の彼。記事を書くにあたり、ネット上では彼の資料は全く出てこず、もうこの際だから本人に聞くのが一番早いと、今回は私のパートナーに電話でのインタビューを決行してもらいました。

 

その印象は一言で言えば、地に足がついた人。ギターに対する真摯な姿勢と古風とも言える考え方に、何かとても新鮮な風を感じました。こんな謙遜気味で生真面目な子から、あの煌びやかな音が出るのだと思うと、不思議な気さえします。このインタビューを通して彼の人柄に少しでも触れてもらえれば嬉しいです。

 

 

ダビス・デ・アナってこんな人

 

――君はマラガ出身だよね。

そう、アルチドナ(Archidona)っていう村の出身だよ。今もそこに住んでる。

 

――芸名のアナって言うのは、バイラオーラであるお母さんのアナ・パストラーナから取ったんだよね。

そう、そう。お母さんさ(はにかみ笑い)。

 

――フリオのステージで初めて観て素晴らしいギタリストだと思って、インスタグラムもチェックしたけど、君の将来性はすごいと思う。

(笑)まあ、まだ道は長いさ。頑張ってるよ。

 

――お母さんが踊り手だから、小さい頃からフラメンコに親しんで来たんだろうね?

そう、あと従兄弟たちや家族とのフィエスタなんかでね。

 

――どうしてギターを選んだの?

実は、最初は踊りからスタートしたんだ。

 

――素晴らしい師匠が家にいるんだから、当然かもね。

もちろんさ。恵まれてたよね(照れ)。でも7歳の時にセビージャのホセ・アントニオ・エル・ラジョのギターを聴いて、やってみたいなと思って。お母さんの知り合いだったんで、習いに行ったんだ。彼が僕の最初の師匠。その後はパコ・モヤ、フランシスコ・ビヌエサ、カルロス・アロ…、色んな人に学んでどんどん好きになっていったよ。

コロナ禍の前2019年にマドリードで奨学金をもらった時は、カマロン・デ・ピティータに師事したよ。彼はもう本当のおじさんみたいな存在さ。今はコルドバのコンサーバトリーで学んでいるよ。

 

――目指しているギタリストなんている?

まあ、誰もが憧れるのはパコ・デ・ルシアだよね。ビセンテ・アミーゴ、ラファエル・リケーニ、トマティート…。色んなスタイルがあるよね。でも僕はまずは伝統的なスタイルを追求したい。それを自分の中で確立してから、自分自身のスタイルを探して行きたいと思ってる。

 

――今タブラオでお母さんのバイレ伴奏もしているけど、ソロで弾きたいという気持ちはない?

自分はまず、伴奏を確立したいと思ってる。完全なギタリストになるには必要なことだと信じてるんだ。バイレを観て、カンテを聴いて、そして自分の曲を作って…。

 

――もう作曲は進んでいるの?

いくつかあるけど、まだまだだよ(笑)。少しずつね。まだ道の途中さ。

 

――フリオ・ルイスとの共演はどんなきっかけだったの?

グラナダのタブラオで共演することがあって、意気投合した感じかな。今回の出演は4ヶ月前に出てくれって連絡が来て、急に決まったんだ。

 

――他にもイスラエル・フェルナンデスのカンテ伴奏とか、もうすでに色んな人と共演してるけど、タブラオはこれからも出演する?

もちろん。これからもタブラオを離れることはないと思うよ。僕のスタート地点だからね。とにかく今は何よりも、日々の精進を続けて行きたいんだ。

 

 

【筆者プロフィール】

東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。

 

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