カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.52
- norique
- 3 日前
- 読了時間: 3分
(jueves, 11 de septiembre 2025)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai

マラゲーニャの女王と言われたトゥリニの物語は前回で一応終わり、今回はその録音についてです。自身は録音を残しませんでしたが、彼女のマラゲーニャはそれを聴いた人達から広く人気を集め、録音(当時ですからSPレコード)によっても伝わっていきました。
現代の歌い手達もお手本としている古い録音を、以下に挙げてみましょう。
まずマラゲーニャ①はこのシリーズNo.50で取り上げたファン・デ・ラ・ロマで、これは1960年代のLP録音で、当時のアンソロジーなどに入っています。
他にはセバスティアン・ムニョス、通称「エル・ペーナ・パードレ」のEl camino de la vida やEn San Antón me prendieron、パカ・アギレーラの A mi mare por su alma などが知られています。
マラゲーニャ②はNo.51で取り上げた、Ay, alguna vez …が最も良く知られていますが、他にはパカ・アギレーラのPensando en tí,〈desvarío〉があります。
スタイル③は前回のEn el cementerio duerme、そして④は今回取り上げるパカ・アギレーラが歌った Vi de llorar a una〈mare〉があります。
Triniのマラゲーニャは現代も多くの歌い手達が録音していますが、私が直接聴いた中ではフォスフォリートやカルメン・リナーレスが良かった印象を持ちました。
Malagueña de La Trini ④
これまで①②③のスタイルを取り上げたので、最後のひとつ④のスタイルも取り上げます。
これもパカ・アギレーラが1910年にラモン・ガルシーアのギターでゾノフォン盤(Zonophone)に録音しました。歌詞は以下の通り。
【Letra】
(vi llorar a una〈mare〉…)
En un entierro de un hijo
vi de llorar a una〈mare〉,
las lágrimas que〈erramaba〉
eran gotitas de sangre
que por su hijo〈erramaba〉.
【訳】
(私は見た…)
私は見た、ひとりの母親が
亡くなった息子の埋葬で
悲しみに泣く姿を、
息子のために流した涙は、
それはまさに血の涙だった。
※vide(veáse参照と同じ)という言葉もあるがこの場合は「vi de +不定詞」で、フラメンコの歌詞に時たま現われるアンダルシア的表現。最初はdeが入っていないが、入れた方が8音節となって整うので入れたのだろう。

この曲は古いタイプの少しゆっくり目のアバンドラーのリズムに乗って歌われています。リブレでも良いのですが、メロディーはあまり凝ってないのでアバンドラー向きとも言えるでしょう。

【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~36(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。
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