top of page

新・フラメンコのあした vol.45

7 時間前
読了時間: 6分

(domingo, 1 de noviembre 2026)

 

20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。

今月は、第6回「スマ・フラメンカ・ホベン」のレポートに加え、4日目(最終日)のガラの模様をお伝えします。

 

第6回「スマ・フラメンカ・ホベン」フェスティバル 2026

カナル劇場(緑の間)、マドリード、スペイン

2026年9月24日〜27日 

 

VI Suma Flamenca Joven 2026

Teatros del Canal (Sala Verde), Madrid, España

Del 24 al 27 de septiembre 2026

 

文:東 敬子

Texto por Keiko Higashi

画像:宣伝素材/東 敬子

Fotos por promoción / por Keiko Higashi

 

A_2611東_Suma joven 2026

 

現在のスペインのフラメンコ界を見渡してみてください。中高年層が圧倒的に多いのにお気づきでしょうか。皆さんがよく知っているアーティストは、ほとんどが40代から60代。目立った若手が少ない残念な状況なのです。

 

21世紀に入りたての頃は違いました。カンテのエストレージャ・モレンテ、アルカンヘル、ミゲル・ポべダなどが大々的にフィーチャーされた時、彼らはまだ20代前半でした。すでにスターだったギターのビセンテ・アミーゴも30代前半。踊り手のファルキートやロシオ・モリーナに至っては10代でした。中堅・巨匠の活躍もさることながら、当時のエネルギーは若手アーティストが引っ張っていたと言っても過言ではありません。

 

ところが、その若手たちの活躍があまりに目覚ましかったので、そのまま20年以上第一線で活躍してしまい、途中で景気が悪くなったこともあって、彼らに続く若手発掘は手薄となり、結果として現在は、業界を中高年が占める状況に至ってしまったわけです。

 

その状況を打破すべく設けられたのが、マドリードで毎年行われるフラメンコの祭典「スマ・フラメンカ」からの特別枠「スマ・フラメンカ・ホベン(若者のためのスマ・フラメンカ)」でした。4日間にわたり30歳以下のアーティストが、ギター、カンテ、バイレそれぞれのジャンルから登場します。このフェスティバルは、新しいアーティストに出会えるうれしく貴重な機会。6回目を迎える今回も、才能あふれる若手が目白押しで会場を沸かせました。

 

まず初日の9月24日は、マドリード出身で現在21歳のカンタオーラ、ラウラ・レジェスがその喉を聞かせます。まだ若い彼女ですが歌手活動は15歳からとのこと。マラガ出身で28歳のアナ・アルマグロは、現在スペイン国立バレエ団に所属する実力派バイラオーラ。そしてコルドバ出身で29歳のニーニョ・ルベンが楽器ファゴット(バスーン)でフラメンコを演奏し、新しい風を吹き込みました。今やどんな楽器でもフラメンコが演奏できるという時代ですね。

 

二日目25日は、トレド出身で現在18歳のヘスス・デ・ラ・エストレージャのギターでスタート。カンタオールのイスラエル・フェルナンデスが叔父にあたり、ヒターノらしい疾走感のあるトーケに将来が期待されます。同じくヘレス出身で19歳のルイス・モントージャ・”チャンキータ”も、ヒターノのカンテの未来を担う若手です。セビージャ出身のヤイザ・トリゴもやっと20歳を迎えた若きバイラオーラですが、11歳の頃より様々なステージに立ち、経験を積んできました。20歳そこそこの3人が揃った当夜はフェスティバルの名にふさわしいフレッシュな夜となりました。

 

三日目の26日は、コルドバ出身で現在24歳の女性ギタリスト、ヨランダ・モソスが出演。フラメンコギター界での女性の存在は徐々に大きくなりつつあります。そしてマドリード出身で今年30歳のエレアサール・セレドゥエラはギターの名門セレドゥエラ一家の生まれ。その独特の感性をカンテで表現しました。そして同じくマドリード出身で24歳のロベール・“エル・モレーノ”がその真摯なバイレで魅せました。

 

ガラ4(9月27日)

そして私が足を運んだ最終日は、セビージャ出身のアルバロ・モレーノ(ギター)、カディス出身のエスメラルダ・ランカピーノ(カンテ)、そしてアルメリア出身のアイタナ・ロソー(バイレ)が出演しました。


2611東_ÁLVARO MORENO (c) Keiko Higashi
ÁLVARO MORENO (c) Keiko Higashi

現在22歳のアルバロ・モレーノは、すでに様々なコンクールで賞を受賞し、ソリストとしての活動と並行して、ファルーコ一家の伴奏やカンテ伴奏も務めています。テクニックは素晴らしく、もちろん期待の若手には間違いないのですが、私は当夜の演奏には、多少の疑問が残りました。各アーティストの持ち時間は30分ほどだったので、大体3曲ぐらいを予想していたのですが、最初の曲が始まるや5分、10分、15分経っても終わらない。曲種を繋ぎながら25分間ずっと弾き続けて一礼して去って行ったのです。私は観客には届かなかったと思いました。昨今のソロギター演奏は曲が長い傾向があります。でも長いのならそれなりの「工夫」を期待してしまう。また、シャイなのは分かりますが、観客を一度も見ないのもちょっと…。もっと色々な意味で、観客を楽しませるために弾いているのだということを今一度確認してほしいと思いました。

 

2611東_ESMERALDA RANCAPINO (c) Keiko Higashi
ESMERALDA RANCAPINO (c) Keiko Higashi

しかし逆に、コミュ能力が抜群に良かったのが次に登場したエスメラルダ・ランカピーノでした。名カンタオールであり、カマロンの盟友としても知られる歌い手ランカピーノの孫である彼女は、この日誕生日を迎えた20歳。15センチはあろうかというハイヒールも「若い!」という感じ。持ち前のヒターナの味を存分に披露した彼女でしたが、気負ったところがなく、ごく自然に観客と接し、そんな彼女に観客は親近感を覚えて、応援を惜しみませんでした。「好きな彼が自分を見てくれない」など、等身大の歌詞も好感が持てました。若いのに無理して「人生の苦痛」なんて歌わなくてもいいんです。彼女の人となりが素直に出たステージだったと思います。

 

2611東_AITANA ROUSSEAU (c) Keiko Higashi
AITANA ROUSSEAU (c) Keiko Higashi

今年のフェスティバルの大トリをとった現在26歳のアイタナ・ロソーは、とにかく元気な印象。どんどん踊って、どんどん進んでいく。決して雑というわけではないのですが、とにかく止まらない。アンダルシア舞踊団、スペイン国立バレエ団で活躍したその実力は確かなのですが、やはり緩急・メリハリをもう少し意識してもらうと、観客ももっとついて来てくれるのではと思います。今の時点では、怒涛の如く進んでいるイメージしか残らないので、勿体無い気がしました。それが若さと言われればそれまでですが、少し止まってみるのも、新しい表現への出会いに繋がるかも知れません。

 

今年は例年になく本当に若い10代から20代前半のアーティストが多く出演し、これからのフラメンコが見えるとても有意義な回となったのではないかと思います。来年もまた新しい才能に出会えるのを楽しみにしています。



【プログラム】

◆Gala I | Jueves, 24 de septiembre

Fagot en concierto de Córdoba

Cantaora de Madrid

Bailaora de Málaga

 

◆Gala II | Viernes, 25 de septiembre

Guitarra en concierto de Toledo

Cantaor de Jerez

Bailaora de Alcalá de Guadaira (Sevilla)

 

◆Gala III | Sábado, 26 de septiembre

Guitarra en concierto de Córdoba

Cantaor de Madrid

Bailaor de Madrid

 

◆Gala IV | Domingo, 27 de septiembre

Guitarra en concierto de Sevilla

Cantaora de Cádiz

Bailaora de Almería


【筆者プロフィール】

東 敬子 (Keiko Higashi)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。

 

=====

bottom of page