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新・フラメンコのあした vol.28

  • norique
  • 6月1日
  • 読了時間: 5分

(domingo, 1 de junio 2025)

 

20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。

今月は、この4月にマドリード・カナル劇場で開催された「第二回フェスティバル・デ・ラ・ギターラ」についてのリポートです。

 

『第二回フェスティバル・デ・ラ・ギターラ』

カナル劇場・黒の間、緑の間 マドリード

2025年4月22日〜27日

 

II Festival de la Guitarra

Teatros del Canal, Sala Negra, Sala Verde, Madrid

22-27 de abril 2025

 

文:東 敬子

画像:宣伝素材 

Texto: Keiko Higashi 

Fotos: Por promoción 


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2024年よりマドリードでスタートしたフラメンコギターの祭典、その名も「フェスティバル・デ・ラ・ギターラ」。2回目となる本年度は、1936年にアメリカに渡り、フラメンコにおけるソロギターを確立したサビーカスへのオマージュとして、4月22日から27日までの6日間にわたりカナル劇場にて開催されました。

 

まずは同劇場の黒の間で、22日から24日まで、フラメンコ識者による講演とコンサートが行われました。

 

初日はジャーナリストのペドロ・カルボ、ホセ・マヌエル・ガンボア、マリオ・マヌエル・エスクデーロ、ギタリストのセラニート、アレハンドロ・ウエルタドが参加し『サビーカス、フラメンコギターの新しい音』と題したディスカッションが行われました。終了後はカセレス出身のギタリスト、ハビエル・コンデのコンサートを楽しみました。

 

二日目はホセ・マヌエル・ガンボアによる『マドリードとニューヨークにおけるサビーカスの軌跡』と題した講演が行われました。講演後は、1989年にニューヨークのカーネギーホールで行われたサビーカスへのオマージュ公演に出演した際はわずか13歳だったヘロニモ・マジャが、今やベテランとなってその燻銀のトーケを披露してくれました。

 

三日目はかつて名ギタリストとして活躍したエル・ナニをゲストに迎え、パブロ・サン・ニコラスが『カニョロトのギタースタイル』と題し、ギタリストを多く輩出したことで知られるマドリードのカニョロト地区のギタースタイルを語りました。コンサートにはカニョロト出身のヘスス・デ・ロサリオ、エル・ナニの息子でギタリストのダビ・セレドゥエラと孫のイスラエル・セレドゥエラらが、その音を奏でました。

 

そしてその同日24日から27日までの4日間は、緑の間で本フェスティバルのメインアクトであるガラ公演が行われました。

 

「ガラ1」の主役はセビージャ出身のパコ・ハラーナ。各ガラでは、それぞれカンテとバイレのゲストが招かれましたが、彼の場合は当然、妻である踊り手エバ・ジェルバブエナ、そして長年彼女の舞踊団を支える歌い手セグンド・ファルコンが駆けつけました。いつもは縁の下の力持ちとして尽力するハラーナを今度は彼らが盛り立てました。

2506東_Paco Jarana (c) Pablo Lorente
Paco Jarana ©Pablo Lorente

二日目は同じくセビージャ出身のダニ・デ・モロンによる「ガラ2」が行われ、ラ・トレメンディータのカンテ、パトリシア・ゲレーロのバイレが華を添えました。

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DANI DE MORÓN  ©Jose Ángel Vidal

 

三日目はヘレス出身のマヌエル・バレンシアが登場。ベテランカンタオーラ、エスペランサ・フェルナンデスとバイレの鬼才マヌエル・リニャンという豪華ゲストと共に会場を沸かせました。

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MANUEL VALENCIA ©Santi Ledo

そして筆者が期待を胸に足を運んだ27日、セビージャ出身の若手ダビ・デ・アラアルが、歌い手サンドラ・カラスコ、そして今やマドリードを代表する踊り手のひとりとなったホセ・マジャと共に、フェスティバルのトリを務めました。

 

ギターのフェスティバルは存続がなかなか難しいものですが、来年もまた期待して。欲を言えば、今回のガラではセビージャ出身のギタリストが4人中3人だったので、次回はもっと全国に目を向けたプログラムであって欲しいと思います。

 

 

ダビ・デ・アラアル公演

2025年4月27日、カナル劇場・緑の間

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DAVID DE ARAHAL CIENXCIENFLAMENCO

2000年セビージャ生まれ、今年25歳のダビ・デ・アラアルは、そのメロディアスな端正なトーケで現在ソリストとしても頭角を現しつつあります。当夜は、彼がアルバム『レコルダンド・ア・マルチェーナ』(2024)で共演した歌い手サンドラ・カラスコと、彼女が普段、伴唱する踊り手ホセ・マジャが踊りでゲスト出演しました。

 

ということはつまり、ダビとホセは「友達の友達」的なつながりになる訳で、普段は接点がないんですね。だからこの全く違った二つの個性が、サンドラを介してどんな化学反応を見せてくれるのか、私は興味津々でした。セビージャの粋を纏うダビのギターに、慟哭と清涼感を併せ持つサンドラの歌声。そしてアルテに彩られたホセのヒターノのバイレ。この個性の数珠つなぎが吉と出るか凶と出るか。

 

違和感がなかったかと言われれば否定はできませんが、若いダビは、柔軟な好奇心と共に、ホセの強烈なソレアを、サンドラの情感溢れるファンダンゴをサポートしながら切磋琢磨していました。見ていてとても好感が持てました。

 

ダビは当夜グラナイーナのソロに始まり、ハレオ、タンギージョ、ロンデーニャ、アレグリアスなど、尻上がりに調子を上げて、その才能を余すことなく観客に披露しました。そして、終盤のコプラやセビジャーナスでは弦楽器も加わり、非常に心地よいサウンドを繰り広げました。

 

メロディアスなギターと言っても、一世代前のビセンテ・アミーゴなどは、やっぱり怒りのような強さが見え隠れしていました。でもダビの場合は心地よさに終始する。まあそれは時代もあるだろうし、聴く方もこんなギターが好きという人が増えているのかもしれませんね。ともあれ、大いに会場を沸かせて彼らはステージを後にしたのでした。

 

 

【筆者プロフィール】

東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。

 

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