新・フラメンコのあした vol.37
- 6 日前
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(domingo, 1 de marzo 2026)
20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。
今月は、昨年10月にマドリードで開催された第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバルでマドリード初演として上演された、ダビス・パロマールの公演についてのリポートです。
ダビス・パロマール
『シエン・べセス・ペルラ』マドリード初演
第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバル
アバディア劇場、マドリード、スペイン
2025年10月22日
David Palomar
"Cien veces Perla"
XX Festival Suma Flamenca
Teatro de la Abadía, Madrid.
22 octubre 2025
文/東 敬子
画像/宣伝素材
Texto por Keiko Higashi
Fotos por promoción, Keiko Higashi

カディス出身のダビス・パロマール(David Palomar, 1977-) は、現在49歳の中堅カンタオール。そんな彼のソロリサイタルを初めて観て、まるで四半世紀前にタイムスリップしたかのような、「久しぶり」という感覚が体内を巡りました。別に歌い方が似ている訳じゃないんですが、このコンサートを観ていて彼と同郷のチャノ・ロバート(Chano Lobato, 1927-2009)を思い出したんです。
私がこの仕事を始めたばかりのあの頃は、20世紀を代表する巨匠と言われる人たちがまだまだ活躍されていて、彼らのアルテをリアルタイムで体験できたことは、何物にも変え難い私の財産となりました。その中の一人がカンタオール、チャノ・ロバートでした。
カディス者らしい、カラッとした、軽みのある歌い口。じっと聴き入ると言うよりも、その独特のリズムに導かれて一緒に乗ってしまうような、そんなチャノのカンテは聴いていて本当に楽しかった。そして真骨頂は、あの長〜い長〜いMC。日本に行った時の小話は鉄板で、ノリノリの様子は、歌いに来たというより話をしに来たという感じ。
そう、ダビスのコンサートは、歌って踊って、大いに喋って、大いに笑ってという、チャノに代表されるコミュ能力が半端なかった歌い手さん達の、あの頃のあの空気が、そのまま真空パックされたような感じで、私は「あれを今の時代まで受け継いだ人がいたんだ」という衝撃で胸が躍りました。
最近では、こんな風に「MCがメインか!」と思えるような、観客を笑わしてナンボみたいなコンサートはめっきり減って、「こんばんは」もそこそこに、暗い照明の中シリアスに歌うだけの人がほとんどですからね。唯一この界隈で生存しているのはマイテ・マルティンぐらいでしたが(彼女、実は話がすごく面白いんですよ)、そこにダビス・パロマールが加わってくれたのは嬉しい限り。その明るい性格も手伝って、彼はまさしく、観客を楽しませることに全力を尽くすカンタオールだったのでした。

「第20回スマ・フラメンカ」フェスティバルでマドリード初演された「シエン・べセス・ペルラ(Cien veces Perla)」は、カディスを代表する偉大なカンタオーラ、ペルラ・デ・カディス(Perla de Cádiz, 1925-1975)の生誕100周年を記念し、彼のペルラ愛を余すところなくつぎ込んだ作品でした。
当夜は、最初は若干の硬さを感じたものの、徐々に調子を上げ、ギターのルベン・ララ (Rubén Lara)、コーラスとパルマのアナベル・リベラ(Anabel Rivera)、ホルへ・バウティスタ(Jorge Bautista)、ロベルト・ハエン(Roberto Jaén)と共に、アレグリアス、セギリージャ、タラント、ソレアなど、王道のカンテを力強く歌い上げ、カディス者には絶対外せない小気味良いタンギージョ・デ・カディス、そしてブレリアと、最後は観客のハートを鷲掴みにして幕を閉じました。
私が感じる彼のカンテの魅力は、その真っ直ぐさに尽きるでしょう。どの曲種もど直球。小細工なく、真正面から迫ってくるその潔さ。そしてフラメンコ度の高さ、フラメンコへの愛の強さは言わずもがな。かといって、しつこくもなく、押し付けずカラッとしている。その辺はやはりカディスのカンテの味わいと言えるでしょう。
コルドバのコンクールで「マノロ・カラコール」賞と「カマロン」賞を受賞した実力派。バイレ伴唱ではクリスティーナ・オヨスに始まりアントニオ・カナーレス、ハビエル・ラトーレ、ファルキート、メルセデス・ルイスなどと共演。ソリストとしては5枚のアルバムを発表しています。カディスのカンテ、そして会場が明るく盛り上がるコンサートがもっと増えるように、これからも活躍を続けて行っていただきたいと願っています。
David Palomar Discography:
* Levantino (1998)
* Trimilenaria (2007)
* La Viña cantón independiente (2010)
* Denominación de origen (2015)
* 8 Miradas (2022)
【筆者プロフィール】
東 敬子 (Keiko Higashi)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。
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