スペインNews 4月号・2026
- 22 時間前
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(lunes, 6 de abril 2026)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
日本だと暖かくなってきたとか花が咲いたとか花粉症の症状が出たとかで春になったと思うところですが、スペインだとそれよりも科学的というか、暦が絶対で春分の日が過ぎたから春、という感じが強いように思います。春分の日が過ぎて、聖週間(3月29日から4月5日)、セビージャの春祭りフェリア(4月21〜26日)、ロシオ巡礼( 5月22〜25日)と春は怒涛のお祭りシーズン。ヘレス(5月9〜16日)やコルドバ(5月24〜31日)、グラナダのフェリア(5月30日~6月6日)もあるのでなんかつい浮かれてしまうのが春のアンダルシア。なお、日付は今年のもので、毎年、日は変わるのでご注意くださいませ。

《INDEX》
【ロルカ・フェスティバル グラナダ公演】
3月13日、エル・スール財団主催によるロルカ・フェスティバル、グラナダ公演が、グラナダのセントロ・フェデリコ・ガルシア・ロルカで開催されました。同財団が昨年から開催しているイベントの一環として行われたもので、前半はロルカ研究者である森直香静岡県立大学教授、ロルカとフラメンコについての著書があるグラナダ大学教授ホセ・ハビエル・レオン(当日、電車に乗り遅れたホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの代打を急に勤めてくださいました)と志風によるロルカと日本、ロルカとフラメンコ、ロルカと日本のフラメンコについてのお話。

休憩を挟んでの後半は、エル・チョニーコ伴奏による野村喜和夫のロルカへの詩の朗読、伊藤笑苗と山本海によるグラナイーナとアレグリアス、

モネータのシギリージャという構成。

このモネータが本当に素晴らしかったです。ここ数年、劇場作品での彼女ばかり観ていて、シンプルなフラメンコを踊るのを見るのは久しぶりだったのですが、シギリージャという曲を自身の中に一旦取り込み、それを身体や心から絞り出しているような踊りに魅了されました。重厚で奥深く悲劇性の持ったこの曲を余すことなく表現していて、見事の一言です。ロルカのレトラにこだわったアレグリアスを踊った伊藤と山本は、今回が初めての共演ということもあって、ぎこちなさもあったものの無難にこなしていたという印象。現在、マドリードとグラナダで勉強中の二人、さらなる飛躍を期待しています。
【エンペニャードス】
セビージャのペーニャ協会とビエナルが協力して開催中のエンペニャードス。セビージャのペーニャを会場に40回の無料フラメンコ公演が開催されるというコンサートシリーズです。2月に始まったこのシリーズに萩原淳子が登場しました。3月14日日曜日、市の東南の端にあるペーニャ・エル・チョーサスでティエント/タンゴスとソレア・ポル・ブレリアを踊り、どちらも観客総立ち。伴奏のクーロ・バルガスのギターもよく、さすがの実力を印象付けました。

【ペーニャ トーレス・マカレーナ】
セビージャの老舗ペーニャ、トーレス・マカレーナは、セビージャでのフラメンコの劇場公演が少ないこの時期にも、劇場公演でも主役を務めるアーティストたちが出演していました。国際女性デー(3月8日)にちなんだ女性週間では、ロサリオ・トレドとグロリア・デル・ロサリオがそれぞれ女性歌手、女性ギタリストの伴奏で踊り、イネス・バカンのお話会と、リサイタルが開催されました。
また3月14日にはエセキエル・ベニテスのリサイタル、18日にはフロレンシア・オス、20日にはアルベルト・セジェスの舞踊公演も。
2019年コルドバのコンクール優勝者であるフロレンシアは1987年チリのサンティアゴ生まれで2007年からセビージャ在住。ヘーレン財団に学び、アンダルシア舞踊団で活躍した彼女は超テクニックで、シギリージャとアレグリアスを披露。とにかく上手いのだけど、それ以外に伝わってくるものがほぼありません。シギリージャという曲が持つ重みや深みも、彼女の思いも、なーんにも見えなくて、足の練習を見させられているような気分。休憩挟んでのアレグリアスはバタ・デ・コーラにマントンで。おそらく小さい舞台で踊ったことがあまりないのでしょう、マントンで最前列の観客を引っ叩きそうな勢い。技術はありますが、マントンも忙しく振り回すような感じ、スポーツみたいでアルテが全く感じられなく残念。歌のマヌエル・パハレスがよかったのが救いでした。

反対に20日に登場したアルベルト・セジェスはアルテてんこ盛りの舞台を見せてくれました。私は基本、歌の時に足を入れてくる踊りは好みではないのですが、彼の場合、何故かそれすら気にならないのです。一部のタラントでは、タラントらしい抑制された色調の中、重苦しいやるせなさだったり、何くそというコラへだったり、彼自身のフラメンコを愛する気持ちだったり、常に何かが伝わってくるのです。二部のアレグリアスは歌いながら登場し、途中から歌い手で出演していたミゲル・アンヘル・エレディアとコプラ、スペイン歌謡曲の歌いあい、踊りあいになっていくのは、昨年ヘレスで二人が上演した作品を思い出させます。歌謡曲でもめちゃフラメンコに歌い踊るので最高に楽しかったのであります。

うん、フラメンコはコミュニケーション。自分の思いをいかに相手に伝えるか、っての、すごく大切、だと思います。
この日も熱唱のマヌエル・パハレスは5月24日の田村陽子公演 (https://www.flamencofan.net/post/【news】la-negra-ある烏の孤独)に、アルベルト・セジェスは8月29、30日の野村眞里子プロデュース公演(https://www.flamencofan.net/post/【news】ロルカフェスティバル-2025-2027)に出演予定とのことなので、日本の皆様もぜひお出かけくださいませ。
【セビージャのビエナル マエストランサ劇場での公演 記者会見】
今年のビエナルは9月9日から10月3日まで、とまだ5ヶ月以上ありますが、3月25日、ビエナルのプログラムの中でマエストランサ劇場で行われる公演についての記者会見がありました。記者会見ですが、正確にはテルトゥリア、おしゃべり会ということで、記者以外の参加もOKだったようです。

劇場ロビーで出演アーティストたちと監督、セビージャ市観光文化担当官(前列)、劇場支配人(後列左から2番目)Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León
マエストランサ劇場でのビエナル公演は9月11日から3公演が行われるサラ・バラスの新作『インフィニータ』に始まり、閉幕公演のカルメン・リナーレスまで8演目10公演が行われます。この日は仕事の関係で来られなかったアーティストが半分ほどいましたが、それぞれの公演について語ってくれました。
カニサーレスは9月19日セビージャ交響楽団との共演で『アル・アンダルース協奏曲』を上演予定。長年共演していたパコ・デ・ルシアの葬儀の時の悲しみとその日の曇り空から光が差してきた思い出を語り、その二つの気持ちが曲に込められていると語りました。
このビエナルのために制作される『ア・カネラ・イ・クラボ』は、ギタリスト、ペドロ・マリア・ペーニャによるヒターノたちのフラメンコへの功績へのオマージュ作品で、ニーニャ・デ・ロス・ペイネス、カマロンやレブリハーノなどにも触れるとか。この日同席したエスペランサ・フェルナンデスやペペ・トーレスの他、ホセ・バレンシアやドゥケンデも出演するそう。ビエナルならではの公演になりそうで楽しみです。
マリナ・エレディアもセビージャ交響楽団との共演で、スペイン到着から600年を迎えたいうヒターノたちの歴史を辿るというもので、グラナダ大学教授であるいとこが協力したといいます。昨年、グラナダでグラナダのオーケストラとの共演で初演されたそう。
閉幕を飾るカルメン・リナーレスは、マリナやマリア・テレモート、ラファエラ・カラスコと、今も多くの人がお手本にしているアルバム『ラ・ムヘール・エン・カンテ』30周年を記念するコンサートを、ということでこちらも楽しみです。
他にも、マエストランサ劇場では、イスラエル・ガルバンによる、ラヴェルのボレロとヒターノ歌手モンチョが歌うボレロ(ラテン・バラード)を組み合わせた公演(9月19日)、ホセ・メルセのリサイタル(20日)やマヌエル・リニャンが自分のアイデンティティを追求した作品(24日)、ファルキートが昨年公開された映画と同様に自らの道を振り返る『セラ・ファルキート』(28日)もあります。
すでに入場券は発売中。売り切れになる前にぜひ。

◇ビエナル マエストランサ劇場での公演
9/11(金)20時、12(土)20時、13(日)20時『インフィニータ』
[出]〈b〉サラ・バラス
9/19(土)20時『カニサーレス・シンフォニコ』
[出]〈g〉カニサーレス、セビージャ交響楽団
9/20(日)20時『トケン・ア・レバト』
[出]〈c〉ホセ・メルセ
9/22(火)20時『バイラオル/ラ』
[出]〈b〉マヌエル・リニャン
9/24(木)20時『ア・カネラ・イ・クラボ』
[出]〈c〉エスペランサ・フェルナンデス、ドゥケンデ、ホセ・バレンシア、〈b〉ぺぺ・トーレス、ナサレ・レジェス
9/28(月)20時『セラス・ファルキート』
[出]〈b〉ファルキート
10/1(木)20時『エン・リベルタ!エル・カミノ・デ・ロス・ヒターノス』
[出]〈c〉マリナ・エレディア、セビージャ交響楽団
10/3(土)20時『ペルラス・ア・ミジャレス』
[出]〈c〉カルメン・リナーレス、マリナ・エレディア、マリア・テレモート、〈b〉ラファエラ・カラスコ
[場]セビージャ マエストランサ劇場
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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