top of page

新・フラメンコのあした vol.35

  • norique
  • 22 時間前
  • 読了時間: 4分

更新日:11 分前

(jueves, 1 de enero 2026)

 

20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。

今月は、昨年10月にマドリードで開催された第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバルでマドリード初演として上演された、エストレマドゥーラ出身のアーティストらによる公演についてのリポートです。

 

 

ラ・カイータ、ミゲル&フアン・バルガス、アレハンドロ・べガ、ホスエ・ポリーナ

『ベンゴ・デ・ミ・エストレマドゥーラ』マドリード初演

第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバル

パコ・ラバル文化センター、マドリード、スペイン

2025年10月25日

 

La Kaita, Miguel y Juan Vargas, Alejandro Vega, Josué Porrina

“Vengo de mi Extremadura” 

XX Festival Suma Flamenca

Centro Cultural Paco Rabal, Madrid.

25 octubre 2025

 

文/東 敬子

画像/宣伝素材

 

Texto por Keiko Higashi

Fotos por promoción


VENGO DE MI EXTREMADURA-cartel-Cromatika_c

 

スペインの西部に位置し、ポルトガルに隣接したエストレマドゥーラ州は、バダホスとカセレスの2県からなります。この土地のフラメンコと聞いてもあまりピンとこない方が多いでしょうが、ヒターノのコミュニティもあり、独特の味で多くのファンに愛されています。ここで生まれた曲種、ハレオやタンゴ・エストレメーニョは、皆さんもきっと聞き覚えがあるのではないでしょうか。

 

私は、この土地のフラメンコと言えば、知る人ぞ知る的な人気を誇ったカンタオール、インディオ・ヒターノや、ポリーナ・デ・バダホスの息子でマドリードを中心に活躍したラモン・エル・ポルトゲスらをまず思い出します。エル・ポルトゲスの息子たちはカホン奏者になりましたね。パコ・デ・ルシアのグループなどで活躍したピラーニャや、色々なアーティストを支えたサブーもそうです。ギターでも最近は若手ハビエル・コンデが活躍しています。

 

そしてやはり、エストレマドゥーラのスターと言えば、ポリーナ一族の出身、ラ・カイータ(1960、バダホス)を忘れてはならないでしょう。一度聞いたら耳から離れないその野生的な声。浅黒い肌に化粧っけは一切無く、いつもパンツスーツにザンバラの髪という独特の風貌。現代においてはもはや希少になりつつある「ピュアな」フラメンコの味を、彼女は届けてくれるのです。フランスの映画監督トニー・ガトリフの映画で、ロマ文化を追った『ラッチョ・ドローム』(Latcho Drom 1993)や、バイラオールのアントニオ・カナーレスが主演した『ベンゴ』(Vengo, 2000)にも出演しているので、機会があればぜひご覧ください。

 

さて、そのカイータを観るべく足を運んだ今回の『ベンゴ・デ・ミ・エストレマドゥーラ』公演は、第20回目となる「スマ・フラメンカ」フェスティバルにて、マドリード初演されました。

 

カイータはいつ観ても期待を裏切らない。今回も圧巻のパフォーマンスで満足度大でした。同じくポリーナ一族出身のベテランカンタオール、アレハンドロ・ベガ(1960、バダホス)も聞き応えがありました。カイータの喉から血を滴らせるような絶叫と、アレハンドロの太く落ち着いた声は、絶妙に絡み合い、観客をその渦に巻き込みました。

 

しかしこの公演で私を一番驚かせてくれたのは、ミゲル・バルガス(1952、ベージャ・ポルトガル)のギターでした。エストレマドゥーラのギターのレジェンドと言われる彼ですが、私にとってはこれが初めてで、なんとも言えないそのまろやかな音色に聴き入りました。気負いもなく、穏やかで、しかしフラメンコの痛みやつねりは忘れない。スターというより匠といった感じ。ソロはもちろんですが、カンテ伴奏はもう抜群でしたね。カンテを包み、やさしくリードしてくれる様は、唯一無二の技がありました。

 

そこに彼の息子フアン・バルガス(1978、マドリード)の現代っ子らしい、シャキシャキした音が競演するのも面白かったです。雰囲気は違っても、同じルーツを感じる二人のパフォーマンスは、この公演に一体感を与えてくれました。そしてパーカッションを担当したホスエ・ポリーナもその抜群のリズム感でグループを支えました。

 

「私はここから来たんだ」という誇りを持って、ストレートにフラメンコを表現してくれたこのステージは、彼らの人間を、その生き様を感じさせてくれる偉大な空間でした。実はこの夜、友人知人合わせて8人で観に行ったんですが、みんな大満足で、お勧めした私もなんか誇らしかったです。皆さんもぜひ、ネットなどでそれぞれのアーティストをチェックしてみてくださいね。

 

 

【筆者プロフィール】

東 敬子 (Keiko Higashi)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。

 

=====

bottom of page