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山本海エッセイ 「僕とグラナダ」

  • norique
  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

(viernes, 12 de diciembre 2025)

 

フラメンコに魅せられ、その技術を磨くために、またはさらに深く知るために、多くの日本人が本場スペインへと渡ります。

今年3月からスペイン・グラナダでの生活を始めたフラメンコダンサー、山本海さん(El Cai)もその一人。

彼が現地で経験したことを通して感じたことなどを綴ってもらいました。


文/山本 海

Texto por El Cai


2512山本海グラナダ
©miyu chocolate

僕が渡西を選んだ動機としては、フラメンコに近づくためには実際にスペインに住み、現地の人と同じように働き、食事をしなければ理解できない事もある、と思ったからです。


スペインに着いたらまず、仕事をするための手続きが必要で、最初にする事はエクストランヘリア(Extranjería=外国人局)へNIEカード(*編集部注:スペインに中・長期で滞在する外国人が各自持つ登録番号を記載したカード)の申請でした。

ここが、毎週木曜日9時に来週分の予約をオンラインで受け付けるのですが、開始5分で全て埋まってしまうほどの激戦です。

ようやく予約が取れたのは約3週間後。知り合いの5人ほどに協力をお願いし、それぞれ9時前からPCを起動してもらい、やっと1枠取れました。

何をするにも予約、予約、ただその予約が取りにくい…。

また、申請後の手続きも遅い。

結局、働き始める事ができたのは到着から2ヶ月半後でした。


働くまではお金にも限りがあったので、タブラオは数件行ったくらいです。

代わりに散歩が日課になっていました。

グラナダの街はどこを切り取っても美しい。

昔使われていたであろう井戸や、焼却炉が道路の脇にポツンと残置されている。

過去の時代を想像したり、クエバ(cueva=洞窟)を見ると今でも利用してる人がいる事実も受け止めたりと感情が忙しくなる。(ある種グラナダのクエバはブランド化され、値段も高く快適に過ごせる場所もあるみたいですが)

でもやっぱり僕が好きなのは夕焼けです。展望台から見る日の入りと夕焼けは、その日一日への感謝の気持ちを感じさせてもらえるからです。


そう節約してても貯金が尽きそうなので、僕はカジェ(calle=街、通り)でフラメンコをして稼いでる人を紹介してもらいました。

彼との毎日も刺激的で、同じく投げ銭を生業にしてる人との場所の取り合い、小競り合いなんかもありました笑

けど、話しかけてくれたヒターノが歌った、空気がビリビリ揺れる程のタンゴや、セビージャから旅行に来ていたフラメンコ達と歌って踊ってバルに行ってご馳走してもらった経験はとても貴重だったと思います。

 

そんな所から僕のスペイン生活が始まりました。


ようやくありつけた仕事は日本食バルです。タパス(飲み物を頼むと無料でついてくるお通し的な)でお寿司を提供するバルでキッチンの仕事を担当しています。

美味しい料理を提供しますので、グラナダに来た際は是非お越しください!


フラメンコは今、由緒あるタブラオにレギュラー出演している女性の先生に師事しております。自宅クエバで行うレッスンはグラナダならではです。行きの坂だけで足はパンパンですが…笑


それから何ヶ月かに一度、日本からグラナダに来るお客さんを案内するのが楽しいです!

バルでタパスと会話を楽しみ、夕焼けスポットに案内し夕日を観る。スペインに住んでいると実感し、初心に戻れる気がします。

グラナダに来る予定がある方は僕にご連絡頂けたら嬉しいです!

 

セビージャもヘレスもフラメンコの聖地で、グラナダは影が薄いなんて言う人もいますが、ガルシア・ロルカやエンリケ・モレンテ、マリオ・マジャ、マノレーテ…、挙げきれないほど沢山のヘニオ(genio=天才)を残したこの地、グラナダが僕は一番好きです。

 


El Cai 山本海_プロフィール画像

【筆者プロフィール】

El Cai/山本 海(Kai Yamamoto)


身体の芯から音楽と向き合うことで、踊りを通じて"フラメンコの本質"に触れ続けている舞踊家。福島に生まれ、幼少期から父Yamaquitoのもとで舞台を経験。スペイン・アンダルシア各地を巡りながら研鑽を重ね、現在はフラメンコの聖地グラナダを拠点に、さらなる表現の深化を追求している。


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