EL CARTERO スペイン旅行記 2016 /8
- norique
- 4 日前
- 読了時間: 5分
[期間]2016年2月14日~3月14日
(domingo, 23 de noviembre 2025)
昨年2024年10月にこの世を去ったカンタオール、瀧本正信さん。
日本のフラメンコ界に本場のカンテの種をまき、強い信念と歯に衣着せぬ率直な物言いで周囲に大きな刺激を与え、何人もの後進を育て多大な功績を残しました。
約10年前に瀧本さんが教え子たちとともにスペインを巡った旅行記が、当時メンバーの一人として同行した、現在歌い手として活躍する金高荘子さんの手により記されていました。
現地で出会った様々な人たちとの、フラメンコへのアフィシオン(愛情)に溢れた交流の記録を、たくさんの写真とともにご紹介します。
【金高荘子さんより】
ここに綴る旅の記録には、今はもう会うことのできない大切な友人たちも登場します。
彼らを偲び、心からの感謝と祈りを込めて記します。
また、時の流れの中で、この記録に登場するお店のいくつかはすでに営業を終えています。
失われたものへの想いと共に、ここに残された記憶を紡ぎました。
当時の旅を歩む"El Cartero"こと瀧本正信氏の姿を思い浮かべながら読んでいただければ幸いです。
文・写真/金高荘子
Texto y fotos por Soko Kanetaka
【第8回】
◆2月28日 22:00
Tabanco El Pasaje
“El Cartero”ライブ当日。
朝から少し緊張気味のCartero 。
こういう時はやっぱり日本食が力になる!と、日本から持って行った食材でごはん。
見かけによらず繊細なCartero。
そして、いざ出陣。
Pasajeへ向かう道をCarteroはひと言もしゃべらず歩く。

ライブ会場であるTabanco El Pasajeのある通りまで来ると、入り口に人だかりが見えた。
中に入るとすでに満員の人!
テーブル席は全て予約済みで、カウンターも身動き取れないほど。
当初22:30~の予定で宣伝など行われていたのだが、当日お店に出された情報 は、22:00~に変更されていた。本人もびっくりの変更。
数日前ギターのRamonに、時間よりも少し早めに来てほしいと言っていたCarteroだった。少しだけ打合わせをしたかったらしい。しかしRamonがやってきたのは 本番開始時間を過ぎてから。やっぱりここもスペイン時間。リハーサルなどはやらないらしい。舞台の上で挨拶し、すぐにライブが始まる。

数日前に聴いたモデルノで賑やかな印象だったRamonのギターが、Carteroの唄にどんな風に絡むのだろうかと心配と期待が半々だったが、ライブが始まると心配のほうはどこかに行ってしまった。
さすがヘレス!この前と全然ちがう!モデルノとかアンティグアとかそんなの関係ないんだな。唄に寄り添うってこういうことか。Carteroの唄に語りかけるようなギターに感動。
Tiento、Soleá、Taranta、Fandango、Siguiriya、Bulería。最初から最後まで、Carteroの思いが詰まった熱いライブだった。Fin de Fiestaはホセ(大西)やAna Maria Lopezも加わり盛り上がった。

◆3月1日 Sanlucar
昼過ぎからバスに乗り、サンルーカルへ海鮮ランチに。
バス代ひとり1,9€。(安い!)
どこまでも続きそうなオリーブ畑の丘陵地を車窓に見ながらバスに揺られて、30分でサンルーカルに到着。
"GITANA”の看板のボデガ(シェリーの醸造所)の前を通って繁華街へ。
お目当てのバルに行き、皆で食事を楽しんだ。海鮮料理が美味しかった。
太陽がまぶしい快晴の空の下、海岸までの道を散歩。
グアダルキビル川の河口の景色を楽しんだ後、ヘレスに帰った。
Jerezに着いて駅の近くのBarでひと休みしていると、入ってきたお客さんが大きな声で「Cartero!」と声をかけてきて驚いた。…有名人?!
◆3月2日 Cernicalos
Ana Maria LopezのBuleríaクラスで踊りのクラスの伴奏。
踊りを習いに来るのは、初心者から踊れる人まで色々。入れ代わり立ち代わりやってくる練習生相手に、Ana Maria Lopezは唄いながら踊りを教える。難しいことはやらない。シンプルな振りを、ただただ唄を聴いて踊るブレリアクラス。
JerezのBuleríaを満喫。
Ana Maria Lopezの唄も満喫。
Zorriおじさんがパルマをやっていて、Carteroのギターと唄に合わせてちょっと足を打ったりする。 そのちょっとが、これまた素敵だったりする。
◆帰り道、Domingo Rubichiとバッタリ会う。 立ち話をしていると、今度はPaco Ceperoが通りかかった。ヘレスは狭い街なのでよく顔見知りと会う。Carteroはその度に記念撮影をする。

◆3月3日 San Fernando
Camaron de la Islaを偲ぶ。
13 : 53分発のカディス行きの電車に乗り2駅。
カマロンのふるさと、サンフェルナンドに到着。
駅も街も新しく綺麗。

駅から出てすぐ、案内板の前で困っていたところ、親切な男性がカマロンゆかりの地の説明をしてくれて途中まで道案内までしてくれた。スペインの人はみんなとても親切。
カマロンの像を見た後、Venta de Vargas店内へ。想像していたより高級な店で、写真を撮ってはダメと言われたけれど既に撮ってしまった後。(すみません)
かつてこの場所で唄っていたカマロンに想いを馳せながらのランチ。料理はちょっと高めだったけどとても美味しく、素晴らしい時間を過ごすことができた。
食事の後Venta De Vargasを出て、本日の目的地へ。へとへとになりながらやっとこさカマロンのお墓のある墓地に辿り着く。
スペインのお墓は明るく、花で彩られていてとてもきれいな印象。
カマロンのお墓は立派な銅像とお花に囲まれていた。
「ここにCamaronが眠ってるんやな」
Carteroは暫くの間Camaronと何か話をしているようだった。
来れて良かった。
再びRenfeに乗ってJerezへ帰る。
(*第9回に続く)

【筆者プロフィール】
金高荘子(Soko Kanetaka)/幼少期から音楽に触れ、学生時代にはロックなどのバンド活動を通し音楽に親しむ。2002年にフラメンコと出会い、2010〜2024年に瀧本正信氏に師事。短期渡西を繰り返しながら現在も研鑽を重ねている。
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