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EL CARTERO スペイン旅行記 2016 /9

  • norique
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

[期間]2016年2月14日~3月14日


(miércoles, 24 de diciembre 2025)

 

昨年2024年10月にこの世を去ったカンタオール、瀧本正信さん。

日本のフラメンコ界に本場のカンテの種をまき、強い信念と歯に衣着せぬ率直な物言いで周囲に大きな刺激を与え、何人もの後進を育て多大な功績を残しました。


約10年前に瀧本さんが教え子たちとともにスペインを巡った旅行記が、当時メンバーの一人として同行した、現在歌い手として活躍する金高荘子さんの手により記されていました。

現地で出会った様々な人たちとの、フラメンコへのアフィシオン(愛情)に溢れた交流の記録を、たくさんの写真とともにご紹介します。


【金高荘子さんより】

ここに綴る旅の記録には、今はもう会うことのできない大切な友人たちも登場します。

彼らを偲び、心からの感謝と祈りを込めて記します。

また、時の流れの中で、この記録に登場するお店のいくつかはすでに営業を終えています。


失われたものへの想いと共に、ここに残された記憶を紡ぎました。

当時の旅を歩む"El Cartero"こと瀧本正信氏の姿を思い浮かべながら読んでいただければ幸いです。



文・写真/金高荘子

Texto y fotos por Soko Kanetaka

 

【第9回】

◆3月4日  ピソでパーティ

ピソのオーナーのミラさんが、ランチに招待して下さった。

Carteroは近くのお菓子屋さんでお土産のケーキを購入。


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マドリード出身のミラさん作のコシード(豆やチョリソーの煮込み。マドリードの伝統料理)はすごく美味しかったが、Carteroはグロめな見た目の食べ物が苦手。おかわりを断ったせいでミラさんのご機嫌を損ねパエリアをなかなか貰えなかった。

気を取り直し、食後はCarteroの唄とギターでミラさんにお礼の気持ちを伝えた。




◆3月5日 再び、Peña La Buleriaへ

地元の歌手のライブの後、 例によってアフィシオナードたちのカンテが始まる。Cartero大活躍。



唄自慢のおじさんたちの素晴らしいSoleaやFandangoが続く。またしてもCarteroは大人気。みんなが「俺のために弾け」と集まってくる。途中でCarteroの取り合いになりケンカ勃発?!でもすぐに仲直り。みんなフラメンコが大好き。


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ペーニャ・ブレリアのオーナーManuelと唄い手のMoritoと、Jerez再訪を約束。


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◆3月6日 Tabanco El Guitarron 

ピソの近所にあるBarでライブをやっていたので覗いてみたが、若い女の子がバンドでポップスを歌っていてフラメンコではなかった。せっかく来たので外の席で飲んでいると、以前ArriateのカンテライブでFandangoを唄っていたカンタオールのSalui Galeraとバッタリ会った。彼はCarteroとアカペラでSoleaを唄ってくれた。




◆3月7日  Jerez最終日

朝10時前。Domingo Rubichiとバルの前でバッタリ会い、一緒に店に入る。バルにはカンタオーラのDolores Agujetaもいて朝食中のようだった。


CarteroはDomingoに、

「ドローレスちょっと唄ってくれんかな?聞いてみてくれへん?」



Domingoは

「こんな朝早くから唄えなんてオレには言えん。おまえが自分で言え!」


Carteroは勇気を出して、

朝ご飯中のDoloresにお願いする。

「今日はJerez最後の日やねん。ちょっと唄ってもらわれへん?」

するとDoloresはニコニコしながら、

いいよ~と、Carteroのそばに来て素晴らしいFandangoを唄ってくれた。



Domingoは、

「Doloresの伴奏するならもっと高いギターにしろ」などと冗談を言って笑っていた。(Carteroがスペインに持っていくギターは飛行機に乗せても平気な安物なので…)


◆Domingoたちと別れて、Carteroは再びAna Maria Lopezのクラスへギターを弾きに行く。

この日もクラスには色んな人が来ていた。 Zorriおじさんやギターの練習生らしき人もいて、Carteroのギターを研究モードで観察し楽しんでいるようだった。



Anaのブレリアクラス、歩くようなテンポで続くAnaの唄が心地良い。

Carteroはずっと伴奏しているが疲れている気配はなく楽しそう。

Anaと来年の再訪を約束して、Cernicalosを後にした。


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◆Los Tres Reyes

明日ヘレスを去ることを伝えに挨拶がてらランチに行く。



店主のエミリオがおばあちゃんから受け継いだという家庭料理、豆の煮込みを出してくれた。

食後はRumbaやBuleriaを居合わせたみんなと楽しむ。いつも来ているPacoおじさんは今日は来ないのか?とたずねると、Pacoはいま風邪をひいて家で寝てるとのこと。会えなくて残念。


帰り際になってまた他のお客さんに呼び止められて伴奏してくれと言われる。おじさんは素晴らしいFandangoやBuleriaを唄い、Carteroもそれに応える。そしてまた仲良くなる。

結局夕方の閉店時間までフラメンコを楽しんだ。



Carteroは、このままここに住もうかな、と、帰りたくなさそうだった。


明日はグラナダへ向かう。


(*第10回に続く)



©近藤佳奈
©近藤佳奈

【筆者プロフィール】

金高荘子(Soko Kanetaka)/幼少期から音楽に触れ、学生時代にはロックなどのバンド活動を通し音楽に親しむ。2002年にフラメンコと出会い、2010〜2024年に瀧本正信氏に師事。短期渡西を繰り返しながら現在も研鑽を重ねている。


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