スペインNews 11月号・2026
(viernes, 6 de noviembre 2026)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
ビエナルが終わったかと思ったらマドリードではスーマ・フラメンカというマドリード州のフラメンコ祭が始まり、セビージャでもギター祭が開始、またカハソル劇場での公演も再開しました。フラメンコに休みはない、とうれしい悲鳴。
《INDEX》
【カハソル財団フラメンコ賞】
10月14日、カハソル劇場において、第3回カハソル、フラメンコ賞の授賞式が行われました。これはセビージャの銀行カハソル(現在はカイシャ銀行に吸収合併し、財団にだけ名を残す)財団が、フラメンコの功労者に贈るもので、2024年の第1回はフォスフォリート、メルチェ・エスメラルダ、トマティートに、第2回はホセ・メルセ、マノロ・マリン、パコ・セペーロが受賞しています。今年はカルメン・リナーレス、マヌエラ・カラスコ、ラファエル・リケーニが受賞。

左からフラメンコ公演のプログラムを組んでいるマヌエル・ロンボ監督、アンダルシア州文化スポーツ長官パトリシア・デル・ポソ、財団理事長アントニオ・プリード、カルメン・リナーレス、マヌエラ・カラスコ、ラファエル・リケーニ
授賞式に先駆け、ダビ・デ・アラアルのギターソロ、

ルシア”ラ・ピニョーナ”のファルーカ、”エル・ペレーテ”、ルイサ・パリシオのグアヒーラと若手/中堅アーティストたちのパフォーマンスも。また、その後は同財団パティオにおいて夕食会が開催。前回の受賞者マノロ・マリンをはじめ、アウロラ・バルガスやペパ・モンテスらベテランからイサベル・バジョン、パストーラ・ガルバン、アナ・モラーレス、アルヘンティーナなど多くのアルティスタたちも出席。女性はロングドレス、男性はタキシード着用というドレスコードもあって、華やかな夜会となりました。
【カハソル劇場でのヘスス・カルモナ】
その翌日15日は同じカハソル劇場でヘスス・カルモナが『レペルトリオ・フラメンコ』を公演。今年のヘレスのフェスティバルでは舞踊団での作品『テンタティボ』を上演した彼ですが、今回はソロでストレートにフラメンコ曲を踊る公演。ヘスス・カルモナ、ジョナタン・レジェス、マヌエル・デ・ニナの歌、フアン・カンパージョのギターで、タラント、カンティーニャ、ソレアを披露。超テクニックで、それぞれの曲のキャラクターをしっかり踊り分け、観客を沸かせました。

個人的には伝統曲は伝統的な衣装か普通にシャツとパンタロンで踊って欲しかったかも、ではありますが(丈の短いジャンパーのような上着は美しくないと思うので)、さすが元スペイン国立バレエ団という美しい回転はやはり素晴らしかったです。またフアンのギターやコルバチョの歌も素晴らしく、ヘススはホセ・バレンシアとフアン・レケーナのコンビの伴奏が多かったですが、歌やギターが変わるとまた違う魅力が発揮されてくるように思います。
【ロス・パラシオス ラ・ミステラ祭】
10月16、17日、23、24日の4日間にわたり、セビージャ県ロス・パラシオス・イ・ビジャフランカで、ラ・ミステラ フラメンコ祭が市立劇場を会場に開催されました。
今年で53回という歴史のあるこのフェスティバル、初日はレブリハーノの名盤『ペルセクシオン』50周年記念公演を、ホセ・バレンシア、アナベル・バレンシア、ナサレ・レジェスの出演で。
2日目は若手の期待の星におくられるベネンシア賞の今年の受賞者ダビ・デ・アラアルが、サンドラ・カラスコ、マヌエル・デ・ラ・トマサ、ホセ・アンヘル・カルモナと共演。


なお、23日はアンダルシア舞踊団が、24日はアルカンヘルが出演しました。
【セビージャ・ギター祭】
毎秋恒例、セビージャ、ギター祭が今年も開催。2010年に始まったこのフェスティバル、元々はクラシックギターのコンクールとマスタークラスだけだったのですが、コンサートも行われるようになり、2013年、ヘラルド・ヌニェスが出演し、以後、毎年フラメンコギターの公演も開催されています。
今年も近郊の町で開催されたホセ・カルロス・ゴメスのリサイタルに始まり8人のフラメンコ・ギタリストが登場。10月にはオランダ出身セビージャ在住のティノ・ヴァン・デル・スマンが美術館で、

またかつてクリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校だったカサ・ファビオラ(現在は美術館)では、共演者なしマイクなしでのリサイタルは初めてだったというチクエロの素晴らしいリサイタル(グラナイーナ、ソレア、アレグリアス、ブレリア、タランタ、タンギージョ、コロンビアーナの全7曲)に始まり、

ヘロニモ・マジャ、若手のハビエル・マルコスも公演。そしてサラ・トゥリナでは29日には前半がバロックギターのパブロ・サピコで後半がコルドバのギタリスト、ニーニョ・セベ、

30日の前半、クラシックのパートは生誕150周年という、スペインを代表する作曲家の一人、マヌエル・デ・ファリャに捧げられ、ファリャの作品とともに、コルドバのベテラン・フラメンコ・ギタリスト、ホセ・アントニオ・ロドリゲスのファリャに捧げた作品を、アンダルシア・ギター・カルテットが初演したのですが、こちらも素晴らしかったです。

フラメンコ・ギタリストの作品をクラシックの演奏家が演奏というのはあまりないことと思います。頭に浮かぶのはペペ・ロメーロがマノロ・サンルーカル『メデア』を録音しているくらいでしょうか。これはカルテットのために作曲されたといいます。クラシックとフラメンコ、ボーダーレスなコラボレーション、これからも増えていくことでしょう。
なお、31日にはフランシス・ゴメスが歌い手ロシオ・ルナと公演しました。

11月第1週にもいくつかの公演が予定されています。
【カディス・ギター祭】
最近はギター祭ブームなのでしょうか。アンダルシアのギター祭といえば1981年にギタリスト、パコ・ペーニャがはじめたコルドバのものが有名で今も毎年7月上旬に開催されていますが、2017年夏からはグラナダでも始まり、2022年からマラガでもといった具合です。どこのギター祭でもクラシックとともにフラメンコギターの公演も開催されているのですが、マドリーではフラメンコとクラシックのギター祭が別々に行われています。フラメンコとクラシックの距離が近いのがアンダルシアなのかもしれません。

カディスでも今年初めて、ギター祭が開催されました。地元出身のクラシックギタリストで作曲家のアンヘル・G・ピニェロの名を冠したこのフェスティバルはカディスと名打っていますが、カディスだけでなく、ヘレスやエル・プエルト・デ・サンタ・マリア、ロタなどでも公演が開催。クラシックギターが多いですが、フラメンコ公演もギターを弾くだけでなくカンテも歌うリカルド・フェルナンデス・モラルやヘロニモ・マジャ、アレハンドロ・ウルタードなどいくつか。

そのうちの一つ、10月23日にカシノ・ガディタノで行われたジョニ・ヒメネスを観て来ました。ゲストにアントニオ・レジェスとフアン・パリージャを迎え、ソロでロンデーニャ、ソレア、タランタと3曲、フアンとタンギージョ、アントニオとマラゲーニャ、3人でアレグリアスとブレリア。上質なフラメンコを堪能させてくれました。
【第13回アクトゥア賞】
スペインのアーティスト(俳優、舞踊家、演出家などの知的財産権を管理する団体、AISGEによるアクトゥア賞の授賞式が10月26日、マドリードのアルカラ新劇場で行われました。その舞踊賞を元スペイン国立バレエ団のアントニオ・アロンソが、その65年に渡るスペイン舞踊とフラメンコへの献身で受賞しました。おめでとうございます。

【フェリパ・デル・モレーノenトーレス・マカレーナ】
夏休みを終えてペーニャも9月から通常運転開始。10月24日にはフェリパ・デル・モレーノのリサイタルが行われました。これが良かった!

ヘレス生まれの46歳、モネオ一家らの血筋というだけに、最初のトナーから大向こうを唸らせる出来。クーロ・カラスコ伴奏でのブレリア・アル・ゴルぺもさすが。パルマもいい。ティエント、ファンダンゴ、アレグリアス、そしてブレリア。若手だと思っていたらいつのまにか実力派の中堅/ベテランに。次回はシギリージャやソレアも聴いてみたいです。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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