EL CARTERO スペイン旅行記 2016 /4
- norique
- 10月19日
- 読了時間: 4分
更新日:10月27日
[期間]2016年2月14日~3月14日
(domingo, 19 de octubre 2025)
昨年2024年10月にこの世を去ったカンタオール、瀧本正信さん。
日本のフラメンコ界に本場のカンテの種をまき、強い信念と歯に衣着せぬ率直な物言いで周囲に大きな刺激を与え、何人もの後進を育て多大な功績を残しました。
約10年前に瀧本さんが教え子たちとともにスペインを巡った旅行記が、当時メンバーの一人として同行した、現在歌い手として活躍する金高荘子さんの手により記されていました。
現地で出会った様々な人たちとの、フラメンコへのアフィシオン(愛情)に溢れた交流の記録を、たくさんの写真とともにご紹介します。
【金高荘子さんより】
ここに綴る旅の記録には、今はもう会うことのできない大切な友人たちも登場します。
彼らを偲び、心からの感謝と祈りを込めて記します。
また、時の流れの中で、この記録に登場するお店のいくつかはすでに営業を終えています。
失われたものへの想いと共に、ここに残された記憶を紡ぎました。
当時の旅を歩む"El Cartero"こと瀧本正信氏の姿を思い浮かべながら読んでいただければ幸いです。
文・写真/金高荘子
Texto y fotos por Soko Kanetaka
【第4回】
◆2月20日 JEREZへ
良い天気!
13:00 Cadiz行きのバスに乗りJerezへ帰る。
◆夕方から サンティアゴにあるペーニャを目指す。
ホセ(大西)が去年この店でBuleríaを踊っている様子がYouTubeにあがっていた。その様子が楽しそうで、Carteroも行ってみたいと話していたペーニャだ。
到着すると早速Carteroは、そこにいた美女をつかまえてSoleáをひと節。
師匠…、さすがです(汗)。少し引いたが、後になって知ったのだが、ヘレスのアフィシオナードたちは、ナンパでもするかのように、こうやって誰かに向かって唄ったりする。
店の中に入ると萩原淳子さんのライブが行われていた。

Fin de Fiestaに飛び入り参加。
Carteroが出てくるとお客さんが、え?誰?と、お互いの顔を見合せる。Carteroが唄いはじめると、今度は驚きの表情で「Oleeee~!」
なんだか嬉しかった。
ここのお店、もうすぐなくなってしまうのだとか。雰囲気の良い店なのに残念。
◆Bar Arriate

歌声に誘われて店に入ってみるとSalui Galeraというカンタオールが唄っていた。すごいテンションのFandangoにビックリ。素晴らしかった。

そしてここでも酔っぱらいのアフィシオナードたちが遊んでいた。 Carteroが唄うとみんな大喜びでフエルガが始まる。Carteroはおじさんも唄でナンパする。
ひとしきり遊んだ後、Carteroはライブで伴奏をしていたギタリストに近づいて声をかけた。
「Soleá唄いたいんやけどな、ちょっと弾いてもらわれへんか?」
彼の名前はAntonio。快く応じてくれる。そして店の奥に行きSoleáが始まる。
*動画はこちら
Carteroが唄い終わると、唄をじっと聞いていた人達がワッと集まってきて、Flamencoをよく知ってるな!どこでやってるんだ?スペインに住んでるのか?などと質問責め。
さっきまでライブをしていたSalui Galeraもやってきて握手とハグ。メアドを交換する。
◆2月21日 13:00
Bar Los Tres Reyesへ。
Carteroは、飲みに来ていた酔っぱらいのおじさん相手にギターを弾いて唄いはじめる。
このおじさん、へべれけで何を言ってるか全然わからないのだが、それでもBuleríaを唄い始めるとそれがBuleríaだとわかる。
マスターのエミリオがだんだん笑顔になり、Carteroの傍へやってきてFandangoを唄いはじめる。
Carteroに促され私達も唄う。
~Triana, Triana, que bonita esta Triana~と唄っていると、音楽に誘われて入ってきた人たちが、「ここはJerezだぞ!」などと冗談を言いながらハレオをして盛り上げてくれた。
◆Antonio Peña "El Toro"と
CarteroがAntonio Peñaに電話をしたら、今から自分の行きつけの店に行こうとAntonioが誘ってくれた。
しばらくするとAntonioが迎えに来てくれて、カンパーナ通りにあるバルへ向かう。
店に着くと、ここでもすぐに唄 い始めるCartero。

私達もBuleríaやSiguiriyaを唄った。お店にいたお客さんたちはみな温かく、とても喜んでくれてマスターのDomingoがシェリーとコシードをご馳走してくれた。

お店のパティオに移動しフエルガが始まる。 すると昨日 Bar Arriateにいたアフィシオナードのおじさんが来ていた。
Carteroを見るなり「Carteroとは昨日一緒だったんだ!Soleáすごいぞ~!Flamencoをよく知っている!」と、興奮気味に他のお客さん達に熱く演説する。そしておじさんはCarteroのそばに来てTarantaを弾いてくれ!と言い、またまた素晴らしいカンテを聞かせてくれた。
Antonio Peña "El Toro"がSiguiriyaを唄ってくれた。
以前に日本でAntonioが出演しているライブに行ったが、その時のショーとはまた違う、間近で聞く迫力のカンテに感激。

私達生徒も勉強中のカンテを唄わせてもらう。毎月Carteroが東京でやっている「ペーニャ・デ・カルテーロ」のよう。Antonioがパルマをしてくれて嬉しかった。他のお客さんも参加してくれて、最高に楽しいひとときを過ごした。

◆帰り道、Carteroがライブをする予定(2月28日)のTabanco El Pasajeの前を通る。
ライブ予告にCarteroの名前が書いてあってドキドキした。
(*第5回に続く)

【筆者プロフィール】
金高荘子(Soko Kanetaka)/幼少期から音楽に触れ、学生時代にはロックなどのバンド活動を通し音楽に親しむ。2002年にフラメンコと出会い、2010〜2024年に瀧本正信氏に師事。短期渡西を繰り返しながら現在も研鑽を重ねている。
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