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BIZNAGA ビスナガ

  • norique
  • 7月19日
  • 読了時間: 3分

(sábado, 19 de julio 2025)

 

2024年12月13日(金) ・15日(日)

Show レストラン GARLOCHÍ (東京・新宿)

 

写真/川島浩之

Fotos por Hiroyuki Kawashima

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


1215ビスナガ公演1

香港で「エセンシア・フラメンカ」を運営し、舞踊・教授活動を行っているマリコ・ドレイトンと、現在マドリードを拠点に活躍するアドリアン・サンタナはじめマラガ出身のアーティストらによる公演が2日間にわたり開催された。


公演名の「ビスナガ」とは、マラガで見られるジャスミンの生花で作られた造花のこと。今回の公演でも各テーブルにビスナガのミニブーケが飾られ、ほのかな香りを放っていた。


開演前、舞台の中央には大きめのタンバリンがシンボルのように置かれている。

アーティストらが舞台に上がり、アドリアンがそのタンバリンを手に取ると、共演のマリコと向き合い最初のポーズ。

曲はヴェルディアレス。互いに引力で引かれ合うかのようにクルクルと回り立ち位置を変えながらのパレハ。

タンバリンの音やリズムも踊りに生かしながら、息の合った一体感のある踊りを繰り広げる。

マリコのジャケットはカラフルな花々で飾られ、これもマラガ地方の民族衣装の装飾にならったアレンジだという。

ゆったりした音楽は雄大な風景をイメージさせ、ホセ・マヌエルの野生味あふれる歌声からは大地が、カニートの伸びやかなカンテからは青く広がる空が感じられた。

アドリアンのブエルタは切れ味鋭く、抜群のコンパス感で細やかな足音のリズムを聴かせる。

マリコも可愛らしい雰囲気の中にも凛とした強さがあり、生き生きとした表情が印象的だった。


ギターソロはしっとりとしたリブレのメロディーから始まり、後半はソレア・ポル・ブレリアへ。

豊かな響きを奏でながら情感たっぷりに演奏する。

安定したリズムとコンパス感で支えられる速弾きは、単調になることなく多様なフレーズを繰り出し、抑揚の表現にも個性が表れていた。

1215ビスナガ公演2

マリコのソロは、バタ・マントンでのカラコレス。

雰囲気の良いギターのメロディーから始まり、柔らかい上体を生かした優雅な踊り。

朱色のマントンを鮮やかに翻し、黒の縁取りをアクセントにした白のバタ・デ・コーラはまさにビスナガの花のよう。マルカールの味わいにも思わず見惚れてしまう。


カンテソロはファンダンゴ。

カニートの伸びやかな声とクリアな発音は聞き取りやすく、ホセ・マヌエルは腹の底から溢れてくる魂の叫びのような力強い歌声。

歌を引き出していく絶妙なギターの美しい音色と共に、濃密なカンテを存分に堪能した。


二人のカンテが退場し、ビヌエサだけが舞台に残りギターを奏ではじめる。

またギターソロかな、と思うも束の間、客席のフロアから鋭いパリージョの音色が聴こえてくる。

斜め後方を振り返ると、すぐそこに椅子に座りパリージョを奏でるアドリアンの姿が。

立ち上がり、ゆっくりと舞台に上がり、ギターのメロディーに切れ味の良いパリージョの音で応えていく。その姿には崇高さと威厳が感じられる。

そして客席からカニートが、ついでホセ・マヌエルもアドリアンにそれぞれ歌いかけ、舞台に上がり対峙していく。

多彩なパリージョのバリエーションと、足音はとても繊細なのに鋭い切れ味がある。

踊りのペソや溜めに深い味わいがあり、パワーだけで押し切らない懐の深さが感じられる。

醸し出す空気感も唯一無二の魅力だ。

最後はパリージョと足技の音をギターに重ね、その奏でる二重奏は見事の一言。


2024年の年の瀬に、最高の踊りを魅せてもらった。

1215ビスナガ公演4

【出演】

アドリアン・サンタナ(踊り)

マリコ・ドレイトン(踊り)

フランシスコ・ビヌエサ(ギター)

アントニオ・エル・カニート(歌)

ホセ・マヌエル・フェルナンデス(歌)


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