(lunes, 12 de febrero 2024)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
Jilica de Marchena のソレアー、続き
ヒリーカというapodo(アポード→あだ名、ニックネーム)はどこから来たのだろう?
日本でもかつてそうだったが、スペインでもあだ名はふんだんに付けられ、親しみを持って呼ばれている。
昔の個性的な人が多かった社会では特にそうであり、その人の特徴にちなんで付けられるのだが、反対に言えば個性の強い人は必ずこうしたアポードが付く事になる。
基本的に差別の少ない社会だから足が不自由なとか、眼も手もそばかすも、身体的特徴も含めて何でもありの世界なのだ。
ヒリーカについてはちゃんとした説明を聞いた事はないが、想像するにgilipollas(ヒリポージャス→馬鹿な、まぬけな)の短い形gilíに指小辞 ica(イーカ)を付けたのではないかと思う。
なんてひどい!と思われるかもしれないが、少し愛嬌を込めて「お馬鹿ちゃん」くらいのニュアンスで言われたのではないかと思う。
こんなのはアンダルシアの社会ではましな方だが、しかし他の意味があるのかも知れない。
前回はパストーラが歌うヒリーカのスタイルそのⅠだったが、歌い方というものは人によって少しずつ違う。人にはそれぞれ美意識も、こうやったら歌いやすいという技術も、無意識のうちに持っている癖があり、特に教育を受けていない人たちには、良い意味で真似はできてもその中に必ず自分の印(しるし)を出してしまうという特徴がある。
動物的であり、人間的とも言えるし、自然であるのだがスタイルの見極めを難しくする場合もあるので、今回は同じスタイルを他の人がどの様に歌ったかを比べてみるためにも、もうひとつの例を出してみよう。
これは、この地域のスタイルに詳しいアントニオ・マイレーナが録音した Levanta y no duermas más (マイレーナ全集CD5の2曲目)という歌詞で歌った同じスタイルのソレアー。
(Letra)
Levanta y no duermas más,
que vienen los pajaritos
cantando la 〈marugá〉.
(訳)
寝てないで起きるんだ、
夜明けにやって来る
小鳥たちの歌を聴くために。
*〈marugá〉⇒madrugada(夜明け)の訛り。
前回のと比べてみると、細部の違いはあるものの同じメロディー、スタイルだという事は解ると思う。但しコンパスの途中から歌う自由な歌い方や歌詞の進め方に特徴があり、さまざまな例を聴くとヒリーカも恐らくこういう歌い方をしたのだろう。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~34(以下続刊)。
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