リレー連載:私とフラメンコ -新人公演を通して- 2
- norique
- 5月24日
- 読了時間: 5分
更新日:5月26日
第2回 小林由佳
【バイレソロ部門 準奨励賞】
(sábado, 24 de mayo 2025)
あなたにとってフラメンコとは何ですか――。
仕事として関わっている人、趣味として楽しんでいる人、自身の生きがいとして無くてはならない人など、その向き合い方は人それぞれ。
そうしたフラメンコへの思いを、昨年の日本フラメンコ協会主催「第33回フラメンコ・ルネサンス21『新人公演』」の入賞者の方々にエッセイとして綴っていただき、リレー連載という形式でご紹介します。
フラメンコとの出会い、新人公演を通して得たものや感じたこと、自身にとってのフラメンコへの思いなどを語っていただきました。
第2回目は、バイレソロ部門で準奨励賞を受賞した小林由佳さんです。
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko

[撮影]川島浩之
[写真提供]一般社団法人日本フラメンコ協会
私が受賞を知ったのは、自主練の最中でした。
友人からメッセージが来て「ゆかちゃん!!!凄いよ!!…」と書いてあったことで察知し、「あぁ、やっと…、解放される」と一人泣きました。
よくよく見ると準奨励賞だったので、「奨励賞じゃなかった!」と落ち込むのと同時に「ですよねー」という気持ちが湧いてきた。
本番のあの瞬間が一番ではあったけれども、まだシギリージャを踊るには足りていないことが多すぎたなと分かっていたので、妙に納得しました。
やっと終わった解放感と、喪失感。
本番を迎えるまでアーティストと相談しながら作ったシギリージャを想い出し、幸福感に包まれ、関わってきた方々の顔が思い浮かび、感謝の気持ちでいっぱいになりました。目指し、やってきたことが間違いではないよと背中をポンと押してもらったような気分でした。
そんな私と『フラメンコ』との出会いは2007年まで遡ります。
その頃、地元の楽団でトランペットを吹いていて、リバーダンスというアイルランド音楽を中心とした舞台作品の音楽を演奏する機会があり、勉強の為に沢山の映像を見ていました。
そこに登場したのが、マリア・パヘスです。
これが私の最初の『フラメンコ』でした。
心を鷲掴みにされ、マリアのフラメンコをひたすら見ていたことを覚えています。
その後、2010年オペラカルメンを演奏。
「これは、フラメンコに呼ばれている!!」と思い、フラメンコ教室の門を叩きました。
最初は、仕事の疲れを取る為、体を動かしたいという程度の熱量だったので、レッスンの時に振りを覚えて、それを忘れないように頭の中で復習するくらい。(自主練の為にスタジオを借りることはしていなかった!)
それから3年経った頃、スペイン人のクルシージョを受ける機会が訪れ、同じ動きをしているはずなのに、何か違う、なんだ?!と探求心が芽生え始め、どんどん深みにハマり、今に至ります。
その熱量は次第に新人公演へ移行。
最初は2018年に群舞、2019~2024年(2020年はコロナ感染症流行により公演中止)にソロで挑戦。
2回目以降は、自身の成長をすごく実感したので、やりたい事があるうち、またお金が続く限りは挑戦しようと思っていました。とはいえ、こんな連続で出ていたらお金の面がかなりキツかったのも正直な話で、もう今回で最後にしようと思っていました。(毎回、今回が最後と言っている気がしますが…)
初回は何で挑戦しようと思ったのか?と今振り返ると、「大きな舞台で踊ってみたい」「人からの評価を受けてみたい」という好奇心だったと思います。学生時代の夏のコンクールに向かうような気持ちで、ワクワク楽しんでいた記憶が残っています。

(写真)本人提供
昨年の受賞以降は、有難いことに受賞者として舞台に立つ機会が増えました。準奨励賞の実感はありませんが、私自身少し気持ちに変化があり人に伝える活動がしたいと思うようになってきました。
お試しではありますがオープンクラスを不定期でやろうと今まさに動き出しています。色々な人のフラメンコの悩みに寄り添い、紐解いて伝えていけたらいいなと。
私自身、たくさんの方に気づきを与えてもらったので、誰かのちょっとした気づきになれればいいなと思っています。私なんかがと何度も悩みましたが、伝える人は多い方が良いだろうと腹をくくりました。
『フラメンコ』は、私にとって生活、生きる活力です。
私がフラメンコに惹かれるのは、目に見えないエネルギーや感動が生きる栄養になるから。フラメンコがあるから身体の中の細胞が活性化され、元気になります。
本を読み、たくさん聴き、もっと探求して、たくさん吸収したいです。
今世あと40~50年!目標である「コンパスで遊ぶ」ことを目指し、後悔のない人生を送れるよう頑張ります!
【プロフィール】
小林由佳(Yuka Kobayashi)/マリア・パヘスのフラメンコに心鷲掴みにされ2010年習い始める。森美雪氏、萩原淳子氏、島崎リノ氏に踊りを師事。2023年ヘレスに憧れ、初の渡西でマヌエラ・カルピオに師事。またフラメンコに大事なコンパスや身体作りを大沼由紀氏より、 パルマを西井つよし氏より学び、都内でのイベントやライブ活動等で経験を積む。
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
〈参照URL〉
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