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工藤朋子フラメンコリサイタルVol.4

  • norique
  • 7月28日
  • 読了時間: 3分

『Diamante negro ~黒いダイヤ~』

*スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和7年度 助成事業


(domingo, 27 de julio 2025)


2025年5月8日 (木) ・5月9日 (金)

MUSICASA (ムジカーザ、東京・代々木)


写真/川島浩之

Foto por Hiroyuki Kawashima

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


250508_工藤朋子Ⓒ川島浩之

 

自身のルーツを掘り下げた前作『時と血と地と』で文化庁芸術祭新人賞を受賞したフラメンコ舞踊家、工藤朋子が今回はフラメンコのルーツや真髄に向き合った作品を上演した。


人間の魂の叫びが昇華して生命の音となり、フラメンコ独特の音世界を成すと言われる「黒い音」。そして、自身が母親から贈られたダイヤにインスピレーションを受け、フラメンコが育まれた土地ヘレスへと赴き、今回共演するミュージシャンらと共にダイヤのような永遠の輝きを放つフラメンコの古謡を丁寧に選びながら、今回の作品を作り上げたという。


真っ暗な舞台から、密やかにリズムを刻む音だけが聴こえる。佐藤のパルマだ。

暗闇の中をゆっくりと歩いて、舞台に立つ工藤。その姿は少しずつ薄明りに照らされ、ほのかな月光を浴びているようにも見える。

ミゲルが歌う古謡に、研ぎ澄まされた感性で向かい合う。全体に染み渡るブレリアのコンパスを感じて、流れるように澱みなく踊る。


音楽は続いてソレア・ポル・ブレリアへ。演者全員のエネルギーを一身に集めて爆発させるような渾身の舞い。彼女の踊りを支える佐藤、矢野、三四郎の3人のパルマからは、仲間を支える頼もしさが感じられた。


ロンデーニャは、スペインの山岳地帯にある町ロンダで生まれた民謡を起源とした曲。工藤は黒いコルドベス帽を被り、赤のジャケットに黒の上下のパンツスタイルと凛々しい出で立ち。姿勢も良く、その踊りには一瞬の隙も無い完成された美しさに満ちていた。


舞台の真ん中に置かれた一輪の赤い花。

それを拾い上げ胸元に納め、アイスブルーのノースリーブのドレスでタンゴを踊る工藤は、水を得た魚のように生き生きと自由だ。どこかオリエンタル舞踊のような振りも織り交ぜ、音楽を感じながら楽しそうに踊る彼女はいい表情をしていた。


最後の曲はカーニャ。深緑のベロアのノースリーブドレスに、黒地に白のコントラストが美しい大柄の刺繍のマントン。

オーソドックスなスタイルの流麗な踊り。そして高い集中力。ミゲルの歌に応えるように踊るシーンは、全身全霊を込めて祈りを捧げているかのよう。終盤にマントンを大切そうに胸に抱く場面では、それがまるで輝く宝石のような神々しさを放つかに見えた。


休憩無しの60分という凝縮した時間の中で流れを切ることなく繰り広げられた今回の舞踊作品。フィナーレは観客の大きな拍手で包まれた。

真摯にフラメンコと向き合い歩み続ける彼女の舞踊家人生に、永遠の輝きを放つような1ページが刻まれた瞬間だった。


【プログラム】

1.コリード(古謡)

2.ソレア・ポル・ブレリア

3.ロンデーニャ

4.タンゴス

5.カーニャ


【出演】

踊り 工藤朋子

歌(カンテ) マヌエル・デ・ラ・マレーナ ミゲル・デ・バダホス

ギター マレーナ・イーホ 斎藤 誠

パルマ 佐藤浩希 矢野吉峰 三四郎


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