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カンテフラメンコ 奥の細道 on WEB No.24

(lunes, 8 de mayo 2023)


文/エンリケ坂井

Texto por Enrique Sakai


 WEB版の2回目。あの究極アナログのエンリケ坂井がWEBで!と驚くあなた。人間は変わる(進化とは言わないが)、その見本だ。

 今回取り上げるのは……。


CD「グラン・クロニカ・デル・カンテ」vol.27より

㉔ Niño Gloria(ニーニョ・グローリア)の Alegrías(アレグリアス)


 意外なことにSPレコード時代(1898~1956年)のアレグリアスの録音は、他の曲種に比べるとかなり少ない。

 ファンダンゴやカンテ・ボニートの時代が長かったのもあって、カンティーニャス系のカンテは現在ほど盛んに歌われていなかったのだろう。

 残されたアレグリアスの中で私が特に好きな何枚かのレコードの中の1枚は、グラン・クロニカvol.27の20曲目に収録したニーニョ・グローリアのアレグリアスだ。

 時にフィエスタとかフィエスタ・ヒターナと題されたことからも察せられるように、この時代のアレグリアスは現代のものよりエネルギッシュでスピードも速く生き生きと歌われる。ひとつ目の歌詞を見てみよう。


(letra)

(te está criando <pa> mí...)

Desde chiquita en la cuna

te está criando <pa> mí,

y yo <pa> que sea tu amante

desde la hora en que nací.


(お前は私のために育つ…)

揺り籠の中で赤ん坊の時から

お前は私の為に育ってきた、

そして私は生まれた時から

お前を愛する為に生きてきた。


(coletillo)

Dame la manta, patrona,

y antes que venga el patrón,

por la mañana cantando

que la jota de Aragón.


奥さん毛布をください

夜が明けてご主人が

アラゴンのホタを歌いつつ

帰ってくる前に…。


 コレティージョ(女性形のコレティージャ、またはフゲティージョjuguetilloとも言う)は4行詞の歌詞に付けられたお囃子。コレティージャは「言い足し」の意があるので本来こちらの方なのだろうが、歌詞の方を女性と見立てて男性形で言ったのかもしれない。

 意味はいろいろ取れるが、使用人の男が寒いから旦那が帰ってくる前に優しい奥さんに毛布をくれるように頼んでいる、または奥さんの恋人が旦那が帰ってくる前に逃げなくちゃいけないけど外は寒いからマントを…と言っているのかも。いろいろな解釈の仕方があるので歌う人、読む人の想像力でそれぞれ理解すれば良いと思う。


 さてこのひとつ目のアレグリアスは、分類としてはカンティーニャ類の中のホタ・デ・カディス(またはホティージャ・デ・カディス)、つまりアレグリアスの先祖である北スペインのホタの姿を色濃く残している12拍子で長調の歌であり今でも普通に歌われている。

 普通アレグリアス・デ・カディスは1拍目くらいから始まって10拍目あたりで1フレーズが終わるが、この歌は6拍と12拍の強いアクセントに合わせていくカンティーニャの乗りでグローリアは自由に、力強く歌っていて聴いていてとても心地良い。

 カンティーニャの乗りについて詳しく説明するスペースは無いので、いずれ別の機会に少しずつできたらと思う。グローリアの名唱を楽しんでほしい。


【筆者プロフィール】

エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)

1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~32(以下続刊)。


※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカへお問い合わせください。(編集部)


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