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第12回CAFフラメンコ・コンクール優勝:鬼頭幸穂インタビュー

(jueves, 14 de diciembre 2023)


聞き手/金子功子

Entrevista por Noriko Kaneko


――この度は優勝おめでとうございます。率直な今のお気持ちはいかがですか。


鬼頭幸穂:率直に言うと…本当に信じられないです。実は私、はっきりとは覚えてないですが16か17歳の時に初めてこのコンクールを受けていて、その時はビデオ予選で落ちました。だから今回はまだ2回目なんです。やっぱり回数を重ねて徐々に順位を上げていくんだろうと思っていたから、本選に残れただけでも十分幸せでありがたくて。その舞台で踊れるだけでうれしかったので、まさか優勝なんて賞をいただけるなんて微塵も思ってなかったから、正直信じられない気持ちです。


――今日の本選は3番手で踊りましたが、終わった直後や演技中の手応えはどうでしたか。


鬼頭:踊っている途中から、賞とかはまったく頭の中から消えていました。初めのうちは緊張してたんですけど、たぶん1歌が終わったあたりから、こんな広い場所で踊れることに感動し始めて。今までは練習のたびに、マントンが壁や天井に当たるとかすごい気にしながら踊っていたんです。それが「こんなに広い舞台でマントンも思い切り振り回せて、自由に踊らせてもらえる」って思ったらだんだんうれしくなってきて。ミュージシャンの人たちもすごく盛り上げてくれて、ハレオが聞こえてくるたびに違うパワーが湧いてきました。これはもう、終わった後は倒れてもいいから、今自分が出せるフラメンコを全部出そうと思って。そしてそれができたので、月並みな言い方ですけど本当にやり切った感じでした。


鬼頭幸穂 第12回CAFフラメンコ・コンクール優勝2023
(写真)本人提供

――本選ではバタ・デ・コーラとマントンでのソレア、二次予選はシギリージャでした。選曲のポイントは?


鬼頭:二次予選は、昨年(2022年)の全日本フラメンココンクールで5分のシギリージャを予選で踊っていたので、それをベースに改良して踊りました。今回の本選でソレアを選んだのは、実は昨年の新人公演のとき、本当はソレアで奨励賞を取りたかったんです。でも初出場だし取れると思ってなかったから、自分の良さが出るソレアポルブレリアで挑戦しました。その結果ありがたいことに奨励賞をいただけましたが、その時にソレアを踊れなかったので、今回エントリーするって決めた時にやっぱりソレアをやりたいなと思って選びました。でもちゃんとしたバタマントンで踊ったのは、今回が初めてなんです。今年スペインに短期留学に行ったときに今回の衣装のバタを買って、最初はバタだけのつもりでしたが、前回優勝した友人の(伊藤)笑苗から「どうせやるならバタマントンやりなよ。いつかやりたいって思ってるんだったら、今やったらいいじゃん!」と背中を押してもらって。でもマントンは持っていってなかったから現地で急遽買うことになり、気づいたらバタマントンでソレアを踊ることになってました。


――今回の出場に向けて心掛けていたことはありますか? 練習の取り組み方や、日常的なケアについてもあればお聞きしたいです。


鬼頭:精神的な面で言えば、常に穏やかに過ごせるように意識していました。実はイライラしやすいタイプなので、練習を終えたら気持ちを切り替えて、練習のストレスを引きずらないようにしていました。そのおかげで本番はそんなには緊張せずに済みました。

練習に関して言えば、とにかく基礎をしっかりやろう、と思っていました。今回初めてバタマントンの踊りにまともに向き合うのだから、それなら「この子は基礎をしっかりやってきた子なんだ」というのを見てもらえればそれでいい、難しいことや奇をてらったことではなく、今自分ができる限りの精度を上げるということを重要視してやってました。


――これから参加する人や、またはエントリーを迷っている人に向けて、何か伝えたいことやエールのようなものはありますか。


鬼頭:まだ自分はこういうのを受ける段階ではない、とためらう気持ちは痛いほどよく分かります。私もこれまで挑戦してこなかったのは、そういう理由もありました。でもやらなかったら前に進めないし、かといって良い結果が出なかったら傷つくのは怖いし嫌な気持ちにもなりたくないし、フラメンコを純粋に好きでいたいという気持ちを守りたくて、私もこれまで挑戦してきませんでした。でも今回出てみて、コンクールに出るとそれ以上のものが得られるなと思いました。自分の技術向上もそうだし、フラメンコの知識も増えるし、本選に残ればいろんな人に見てもらえて名前も知ってもらえて、結果だけがすべてじゃないってよく言われるけど、本当にその通りだと思いました。

もちろん無理に受ける必要はないと思うんですけど、例えばだれかが背中を押してくれたときに「やってみようかな」と思えるタイミングを待ってもいいし、自ら踏ん張ってやってみるのもいいと思います。やって無駄なことは一つもないので、自分の気持ちが決まったらそこに全てを賭けてもいいと思うし、挑戦すること自体に意味があるんだなと思います。


――今回副賞として賞金と航空券が授与されました。今後どのように生かしていこうと思いますか。


鬼頭:いつとかは決めてないですが、スペインにはまた絶対に行きたいと思っています。具体的に何をどう学びたいとかはこれからゆっくり考えていきたいですが、やっぱりバタマントンのレベルも上げたいし、今年のスペイン留学ではパルマのクラスも受けてきたのでもっと勉強したいです。フィンデフィエスタやカンテのクラスなどもあるので、今度行くときはたくさん吸収して、フラメンコのドロドロのオタクになって帰ってきたいなって思ってます(笑)


――今後の計画が楽しみですね。これからのご活躍も応援しています。


鬼頭:はい、がんばります!


【プロフィール】

鬼頭幸穂(Yukiho Kitou)/1998年生まれ名古屋市出身。幼少よりフィギュアスケートを始め、6歳よりフラメンコを加藤おりはに学ぶ。19歳でセビージャに1年留学。ダビット・ペレス、ハビエル・エレディア等に学ぶ。2022年第3回全日本フラメンココンクールファイナリスト。同年第31回新人公演にて奨励賞、ANIF会員賞を現地、配信共にトリプル受賞。



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