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東北" 2 Mi amada tierra TOHOGU 2

中田佳代子フラメンコ舞踊公演2022


(domingo,19 de marzo 2023)


[大阪公演] 2022年10月2日(日) 世界館

[東京公演] 2022年10月7日(金) 野方区民ホール


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


写真/Takahiro Fujiwara

Foto por Takahiro Fujiwara

 2021年暮れに岩手と東京で上演され好評を博した、中田佳代子フラメンコ舞踊公演『東北゛』。今回はその再演として、大阪・東京の2か所で開催された。

 日本人として東北の地に生まれ、現在はスペイン人フォトジャーナリストの夫と息子と共に家族でバルセロナに暮らし、2つの文化とともにフラメンコダンサーとして生きる中田。その自身の人生での体験を通して生まれたさまざまな想いと、それぞれのルーツへの敬意や愛情をこの舞台作品に込めたという。


 プロローグでは、舞台上のスクリーンに現れる「TOHOGU」の文字。続いて、険しい岸壁で一心に踊る中田の映像が映し出される。その踊りに合わせて力強く叩く和太鼓の音が、魂の鼓動のように会場に響き渡る。


 映像が終わると、尺八や箏、三味線の演奏の中で中田が舞台に立つ。白のジャケットに黒のパンツスタイルで踊るのは、2011年の東日本大震災で犠牲となった人々へ捧げる「Requiemレクイエム -祈り-」。岩手の三陸海岸と同じリアス式海岸の地形を持つスペイン・ガリシア地方発祥の曲であるファルーカを元に、岩手民謡奏者らと時間をかけて作り上げたという。歌詞も今回の作品用にアレンジし、演奏もオール岩手民謡奏者で編成された。和楽器が奏でる深い旋律を、万感の思いを込めて踊る。その姿は凛として潔く、観ていると勇気や希望が自然と湧いてくる。


 シギリージャのリズムによる「Orgullo -誇り-」は、子供の頃によく聞いた民謡でフラメンコを踊りたい、という純粋な望みから生まれ、10年以上熟成させてきたという作品だ。自身のルーツ、そして自分は自分であることの誇りを胸に、この地に生まれた感謝を込めて中田は踊る。井上のカンテと民謡唄の吉田、二人の熱唱を全身で受け止め舞踊に昇華していく姿は、堂々として気迫に満ちていた。


 「無 -No soy nadie-」では、真紅のバタデコーラとマントンで燃えさかる炎のようにソレアの旋律を舞う。世界から見ると自分は本当に小さな存在だけど、東北とスペインという2つの根っこからたくさんの愛と栄養をもらって生かされている、強く生きる名もない花だと中田は言う。曲の終盤のブレリアでは全員が舞台に登場。みんなの手拍子と共に繰り返される「Viva! mi tierra amada(ビバ・ミ・ティエラ・アマダ) 東北!」の大合唱は、たくさんの小さな存在たちの生命の輝きに満ちていた。


 東北への愛に溢れていたのは、共演者らのパフォーマンスも同様だ。青森県新郷村周辺に伝わる日本最古の盆踊り「ナニャドヤラ」をガロティンで演出した曲では、フラメンコギターとピアノの演奏にカンテと民謡の唄が調和し、花笠姿の三人娘が祭りの雰囲気たっぷりの踊りを楽しませてくれた。

 ブレリアのリズムでアレンジした美空ひばりの名曲「リンゴ追分」は、中田がスペインで新型コロナウイルスによるロックダウンを経験したことで、より強くなったという祖国の家族や故郷への恋しさが込められていた。母との辛い別れを悲しむ娘の切なさを井上が歌い上げ、それを大切に踊る三枝の存在感が印象的だった。


 最後の曲は「Dodarebachi -津軽じょんがら節-」。東北の美しい雪景色と、厳しい自然。そうした環境で育まれた力強い伝統文化から生まれたとうほぐの祭りを讃え、謳歌する一曲となった。横笛の旋律を白のマントンで踊る姿は雪女のように神秘的で、タンゴの音楽になると生き生きとした躍動感を見せた。演奏も岩手民謡奏者とフラメンコ・ミュージシャンらの協演で熱く盛り上がり、ジャンルや文化の違いを越えた一体感が広がる。ラストは黒のアバニコを使って三枝と島崎と3人で、たくましさや希望の象徴である東日本大震災で残った陸前高田市の奇跡の一本松を表現した。


 東北への愛、そしてスペインへの愛を惜しみなく表現した今回の公演。最後のあいさつで中田は、日本の文化や自然を継承してこれからも活動を続けていきたい、という思いを語った。

 フィナーレでは、出演者らが公演オリジナルの半被を羽織って登場。その背中にプリントされた「東北゛」の文字が、誇らしげに輝いていた。


【プログラム】

1. Requiemレクイエム -祈り-

2. ナニャドヤラヨ! -伝説-

3. Orgullo -誇り-

4. Ringo Oiwake -母へ-

5. 無 -No soy nadie-

6. Dodarebachi -津軽じょんがら節-


【出演】

中田佳代子(踊り)

三枝雄輔(踊り・唄)

島崎リノ(踊り)

井上 泉(踊り・唄)

佐藤真知子(踊り)

石井奏碧(ギター)

北田了一(ピアノ)

藤沢東清(尺八・横笛)

二代目 井上成美(津軽三味線)

三代目 井上成美(津軽三味線)

吉田やす子(民謡唄)

髙橋美香(十七絃箏)

佐比内金山太鼓 高橋 環(和太鼓)

佐比内金山太鼓 高橋 徹(和太鼓)


【プロフィール】

中田佳代子(KAYOKO NAKATA)

フラメンコダンサー

希望郷いわて文化大使

学生時代にバルセロナオリンピック閉会式でのフラメンコを見て感激したのがきっかけで単身スペインへフラメンコ留学し、極寒のマドリッドでフラメンコ人生をスタートさせる。

2001年現代舞踊協会河上鈴子スペイン舞踊新人賞 。

2002年日本フラメンコ協会新人公演奨励賞。文化庁在外芸術家派遣員として2年間スペイン・セビージャへフラメンコ留学。数々の著名なアーティストのもとで研鑽を積み、帰国後は日本各地で舞踊活動および教授活動を行う。

2007年地元岩手県盛岡市にカヨコフラメンコスタジオを設立と同時に、スペイン人フォトジャーナリストとの国際結婚しバルセロナに拠点を移す。

2008年スペイン・カディスの「アレグリアス舞踊コンクール」で外国人初の第二位を受賞。

現在、国籍、国境問わず舞台・教授活動しながら、自身のフラメンコを追求している。

(※HPより抜粋)


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