スペインNews 8月号・2026
- 5 時間前
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(jueves, 6 de agosto 2026)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
7月はバレンシア県、バルセロナ県、アルメリア県、アビラ県、トレド県、マドリード近郊などスペイン各地で次々に大規模な山火事が起きて、政府が非常事態宣言をするほどでした。スペインは湿度が低いので同じ気温でも日本より過ごしやすいと言われますが、乾燥しているだけに火も広がりやすいのでしょう。これ以上被害が広がりませんように。早く収束して避難している方々が家に帰ることができますように。
セビージャは山火事の被害こそありませんが、暑いです。毎年のことなのに1年経って体も頭もすっかり忘れていて、毎年同じように嘆いています。年のせい?
今年はスペイン北部もずいぶん暑いようですが、南部でも、例年暑さ自慢?をしていたセビージャよりもグラナダの方が暑いことが多く、やっぱ色々変わってきているのかな、と思わされます。グラナダはセビージャよりは涼しいイメージだったのですけどね。幸い、私が出かけた夜は、袖無しの服だと肌寒いほどでしたが、久しぶりのアルバイシンの坂を登る時は大汗でした。セビージャは真っ平らで坂がないので、慣れない急な坂の登り降りに難儀しました。ここに住んで毎日上り下りしていると鍛えられるでしょうね。

《INDEX》
【スペイン国立バレエ団サルスエラ劇場公演『フラメンコ ロック アンダルース/メデア』】
マドリードのサルスエラ劇場は国立で、王立劇場が改築落成するまではここでオペラ公演も行われていた格式のある劇場。現在はスペイン歌劇、サルスエラやクラシックのリサイタルを中心に、スペイン国立バレエ団や国立ダンスカンパニーの定期公演やフラメンコ公演などが行われています。
今回の公演ではラファエラ・カラスコ振り付けによる新作と名作『メデア』という二つの作品での公演。初日7月11日は当初、団員たちのストも予告されていましたがなんとか回避しての上演。一部が新作、休憩を挟んで二部が『メデア』という構成。新作は当初『トリアーナ』というタイトルで告知されていたのでトリアーナのフラメンコをイメージした作品なのかな、などと思っていたのですが、トリアーナはトリアーナでも、1970年代から80年代初めに活躍したアンダルシア・ロックの代表的グループのトリアーナの音楽に振り付けたものだったのです。Wikipediaの日本語版にはプログレッシブ・ロックとフラメンコの融合という解説があるほど、ロックファンには知られた存在。彼らの曲をサンプラーなども使った今風のアレンジで歌うのはアンヘレス・トレダーノ。彼女とギター、エレキギター、ドラムが舞台奥の足場のような舞台で歌い、その前で踊り手たちは、観客のように歌の舞台を向いていたかと思うと、全員同じ動きで踊り始めるが、その中から一人、また一人と飛び出すものがいる。全員、同じような黒い衣装だけど、一人として全く同じではない。それと同じで、集団としての力と個々の個性を同時に描いているようでゾクゾクします。

ラファエラはセビージャの巨匠マティルデ・コラル門下でマリオ・マジャ舞踊団で活躍したのですが、その二人の遺伝子を確実に受け継いでいるという感じ。コンテンポラリーの影響もありながら根本がフラメンコ。フラメンコに深い敬愛があるから振り付けにも品格があり、バタ・デ・コーラの女性をリフトするという、伝統的なフラメンコでは考えられないことをやっても、新しいことを狙ったとかの下品さは皆無。ただ美しい。照明もロックコンサート風に作っているのだけど抑制してこちらも上品で美しい。

休憩を挟んでスペイン国立バレエ団の代表作『メデア』。今回初めてタイトルロールのメデアを踊ったのは第一舞踊手のインマクラーダ・サロモン(最終日とその前日はエステル・フラード)。深い愛とそれゆえの強い憎しみを見事に表現し、歴代のメデアに引けを取らない素晴らしさ。なお対するイアソン、初日はフランシスコ・ベラスコが風格のある演技で彼女を支えたが、ダブルキャストでソリストのマティア・ロペスも初めて踊ったそう。彼のイアソンも機会があればぜひ観てみたいところです。

【マノロ・マリン『ソロ・キエロ・バイラール』スペイン語版発表】

セビージャを代表する舞踊教授、振付家として知られるマノロ・マリン。スペインにもルーツを持つフランス人作家クリスティーヌ・ディジェが2017年にフランス語で書いた彼の伝記がようやくスペイン語に訳されて出版され、その発表記念のイベントが7月8日、クリスティーナ・ヘーレン財団トリアーナ・フラメンコ劇場において開催されました。壇上にはマノロと作者のほか、ロドリーゴ・デ・トリアーナのマノロのスタジオを引き継いだ門下生、マヌエル・ベタンソスやセビージャの舞踊評論家マルタ・カラスコとロサリア・ゴメス、クリスティーナ・ヘーレンが上がり、マノロについて、また本の内容からマノロに質問したり、と語り合いました。

左からマヌエル・ベタンソス、クリスティーナ・ヘーレン、マノロ・マリン、司会、クリスティーヌ・ディジェ、マルタ・カラスコ、ロサリア・ゴメス
セビージャで踊り始め、バルセロナやパリ、ロンドン。パリではサルトルやボーヴォワールにも高く評価されたマノロ。セビージャに戻りスタジオを開き、数多くのアーティストたちを世に送り出し、クリスティーナ・オヨス舞踊団やアンダルシア舞踊団の振付を手掛け… 90歳となった今もその昔、グラン・アントニオ舞踊団で踊った『ファンタシア・ガライカ』の振り付けも覚えているし、評論家がうろ覚えだった作品名も直ちに答えるなど、抜群の記憶力は衰えていない。彼にしか語れない、フラメンコの話、もっと聴きたいし、若い人にも聞いてもらいたい。
会場にはホセ・アントニオやアナ・マリア・ブエノ、カルメン・レデスマらベテランから、彼の教えを受けたイサベル・バジョンやフェルナンド・ロメーロをはじめホセ・セラーノやマルコ・バルガスなど多くのアーティストたちも顔を見せ、華やかな会となりました。

【トリアーナの夏祭りベラ・デ・サンティアゴ・イ・サンタ・アナ】
毎夏恒例、トリアーナの夏祭り、ベラ。川沿いのベティス通りにテント小屋カセータが立ち並び、毎夜大勢の人で賑わうことから夏のフェリアみたいに思う人もいるようですが、フェリアのようにフラメンコ衣装も着ないし、基本セビジャーナスも踊りません。数年前まではセビジャーナスのコンクールもやっていたんですがね。実はこのお祭りの方が起源はずっと古いそう。13世紀にアルフォンソ10世が眼病をサンタ・アナ(聖アンナ/聖マリアの母)に祈って治ったことからトリアーナに教会を建て、その日である7月26日を祝ったことからだとそうです。
昔のことはいざ知らず、今は毎年、トリアーナ橋のたもと、アルトサーノ広場でフラメンコやスペイン歌謡、セビジャーナスなどの公演が行われ、それがメイン・イベントになっています。劇場公演のように入場料を取ることもないので、毎年、地元の人で賑わいます。
7月24日はフラメンコ公演がトリアーナ在住のナノ・デ・ヘレスへのオマージュとして行われ、モンセ・コルテスやマカニータらが出演しました。


大勢の人で、歌を聴くコンディションとしては良くないけれど、お祭りの余興と思えばこんなものなのかな、地元セビージャのアーティストが見に来ていることも多いので思いがけない人に出会うことも。私はホセ・セラーノやホセ・オルテガ、フアン・オルテガ、トロンボの妹夫妻らと会いましたよ。
【各地のフェスティバル】
夏はフェスティバルシーズン! フラメンコに特化したもの、だけでなく、様々な音楽を扱う中にフラメンコもあるものなど、夏はスペイン各地でたくさんのフェスティバルが開催されています。そのすべてに行くことは叶いませんが、プレス用の写真が届いたフェスティバルをふたつご紹介。
まずはティオ・ペペ・フェスティバル。辛口シェリー酒ティオ・ぺぺで有名なゴンサレス・ビアスの酒蔵で毎夏行われているフェスティバルです。ロックやポップ、スペイン歌謡からクラシックまで、スペインの人気歌手やグループを中心に、海外のアーティスト(今年はディープ・パープル、ザ・コアーズ)なども出演するフェスティバルですが、フラメンコ公演も毎年いくつか、ソレーラ・イ・コンパスの名の元に行われています。
今年は7月12日にマリア・テレモート、


24日ジェライ・コルテス、


26日にイスラエル・フェルナンデスが出演。


写真で見るだけでも、彼らの人気、そしてロックやポップの歌手たちに勝るとも劣らない、迫力のあるリサイタルだったろうことが伝わってきます。時代は変わった?いや、ロックが生まれるよりずっと前からフラメンコたちは闘牛場を満員にして公演してきたわけなので当然のなり行き、なのかも。小さな親密な空間でのフラメンコもあれば、このフェスティバルのように大観客を前にしての公演もある。それぞれにそれぞれの魅力がある。それがフラメンコだと思うのです。なお、同フェスティバル、8月11日にはホセ・メルセ公演も行われる予定です。
もう一つは、レオン県ポンフェラーダで開催されたビエルソ・アル・トーケ。こちらはフラメンコのフェスティバルで、22日はモンセ・コルテス、

23日はイバン・バルガスと

エストレージャ・モレンテ、

24日はホセ・デル・トマテと

ファルキート、

25日はトロンボ、ぺぺ・トーレ、レポンパ、

アルカンヘルが出演。

こちらも充実したプログラムだったようですね。
7月末から8月初めにかけてはムルシア、ラ・ウニオンでのカンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバルも始まります。
月末にはパンプローナのフラメンコ・オン・ファイア、そして9月にはビエナル、と、フラメンコファンの夏は慌ただしく過ぎていきそうです。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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