カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.47
- norique
- 4月11日
- 読了時間: 3分
(viernes, 11 de abril 2025)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai

Malagueña de El Mellizo③の後半
前回(vol.46)に書いた歌詞を繰り返しや、たびたび繰り返される感嘆詞のアイを取り払い、更に訛りの〈perdío〉や〈sentío〉を標準語に直して歌詞を原型に近くすると、以下の様になると思います。
Este querer tuyo y mío
¿dime dónde va a llegar?
me tienes loco perdido,
cada día te quiero más,
voy a perder el sentido.
字余りな所はありますが(4行目のcada díaを本来のcada vezにすれば8音節で揃う)基本的には8音節から成る5行詩で、2行目から始まり1-2-3-4行目と歌い進めます。
和音の進行は一般的なファンダンゴとは異なりC→Am→C→C→(Am+F)→Eとなり、他のマラゲーニャともかなり違うのがこのスタイルの特徴なのです。
前半の楽譜にも書きましたが(y~u)というのは(y~)でも良いのですが、もとの歌をよ~く聴くとこの(y~u)が味を持っている事に気付くと思います。
特にカディスの歌は語尾を伸ばす時、そこにa-babaとかy-bibiといった様に音を加えて独特の味わいを出す事があるのですが、これを真似するのはなかなか難しく、形だけの真似だと取って付けた様になってしまい、私も若い頃は自粛(?)していました。
今は年齢を重ねて余り違和感を感じなくなりましたが、長い年月聴き込んで、アフィシオン、そして歌い込みがあれば自然に出来るようになるでしょうし、そこまでいけばどうやっても自分自身の味は出ますから語尾をどうしようと自由で良いのです。
私が聴いて感動したメジーソのマラゲーニャの歌い手はそれ程多くはありません。
レコードでの筆頭はもちろんアウレリオで、その他にペリコン、マノロ・バルガスといったカディスの人達、実際に聴いて感動したのはランカピーノ、ミゲル・バルガス、チャト・デ・ラ・イスラ、チョコラーテなどほんの僅かの歌い手達です。そうそう、女性にも素晴らしい人がいました。
それ程難しい曲種だという事でしょう。取っつきやすく見えてもその奥は限りなく深い……これが私の実感です。
さて後半の楽譜を見て下さい。前半同様に(y-u)があり、実際には(a-ba)とか(y-gui)とか入っていますが、スパイスなのでやり過ぎは禁物、母音のままa-、y-で良いのです。


【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。
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