カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.34
- norique
- 2024年3月11日
- 読了時間: 2分
(lunes, 11 de marzo 2024)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
Jilica de Marchenaのソレアー、その②

前々回のパストーラの歌(楽譜)と前回のマイレーナのものを見比べてみてほしい。
メロディーは少しずつ違うし、歌詞の乗せ方、リズムの乗り方も違うという事に気付かれると思うが、これは歌い方には幅があり、かなりの自由度があって歌い手の個性がはっきり表れている事であり一見すると別の歌のようだ。
しかし、両方を実際に歌ってみると「ああ、同じスタイルだ」と実感されると思うし、この二つに共通する部分、つまりヒリーカのソレアーその①の基本となるメロディーラインが感じられると思う。
このメロディーこそがスタイルの核であり、歌詞はいくらでも変える事ができる。
例えばこのスタイルで言えばペペ・エル・クラタは、"En una maceta yo sembré"(植木鉢に花の種を植えてみた)、カルメン・リナーレスは"Pasa de largo y no miras"(そばを通っても知らんふりを…)という歌詞で歌っている。
さて今回はヒリーカのソレアー、その②だ。例に取るのはこのスタイルの最も古い録音、つまりスタイル①で例に出したのと同じパストーラの録音で、グラン・クロニカvol.3に収録してある。
(Letra)
Llévame a una huerta,
(por Dios, llévame a una 〈güerta〉)
y dame unos 〈paseítos〉
que cayéndome estaba muerta;
(y dame unos 〈paseítos〉
que me estaba cayendo muerta.)
(訳)
どこかの農園に
(お願い連れてってよ)
二人で散歩したいの。
(お願い連れてってよ
今にも私は死にそうだから。)
*〈güerta〉⇒huertaの訛り

歌詞の( )は繰り返し部分ですが、1回目と少し歌詞を変えているので( )として書いた。もとは3行詩であり1-1-2-3-2-3行目と歌い、録音では締め歌が付いているが、このスタイル固有のものという訳ではないので省略します。
そしてパストーラは2行目を"y dame a unos paseítos"(言うまでもなく語尾のsは発音しない)と歌っているが、これは1行目の"Llévame a una ~"に合わせたのでしょう。2行目のaは特に必要ないので歌詞には書き入れていません。

【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~34(以下続刊)。
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