【インタビュー】Mercedes de Córdoba
- norique
- 10月3日
- 読了時間: 6分
メルセデス・デ・コルドバ
クルシージョツアー2025 in JAPAN
(viernes, 3 de octubre 2025)
のべ16日間、合計7都市、全55クラス。
スペインはもちろん世界各地でも絶大な人気を集めるフラメンコ舞踊家、メルセデス・デ・コルドバの来日クルシージョツアーが5月から6月にかけて開催されました。
このまたとない絶好の機会に、私もバイレ練習生のひとりとしてクラスに参加。
さらにツアー最終日には、メルセデスご本人へのインタビューという貴重な機会を得ることができました。
今回はメルセデスへのインタビューと、クラスの体験リポートをお届けします。
取材協力/松 彩果
Colaboración por Ayaka Matsu
聞き手・写真/金子功子
Entrevista y foto por Noriko Kaneko

――今回の来日クルシージョツアーも最終日を迎えました。今の率直な気持ちはいかがですか。
メルセデス:不思議な気持ちです。家族が待っている家に帰りたいのに、日本を離れたくないの。私はこの国が好きだし、一緒に仕事をした人たちや、食事や文化も全部好きで。日本はいつも私に大切な出会いをもたらしてくれるの。人生ですごく辛いことがあったときも、日本での出会いが私の人生を大きく変えてくれた。だから日本は、私にとって大切なお守りなんです。
私は日本語を話せないし、また満員電車も日本ならではだし、わざとぶつかってくる人もいたりね(笑)。でもそういうのはまったくストレスではないんです。それよりも、日本のグルメやファッション、カルチャー、裏路地の風景、楽しさや居心地の良さとかの方が私にはとても大切で。そういう経験したことや感じたこと、全てが踊りに出るの。フラメンコを仕事として日本に来ているけど、私はアーティストである自分とひとりの人間としての自分を分けて生きられないから、そういったことがとても大事なんです。
今回のツアーは参加者の皆さんも優しくてフラメンコに敬意をもってくれて、とても充実していて幸せな気持ちです。だから終わってしまうのがとても悲しいんです。
――今回の来日クラスはどんなクラスをしようと計画していましたか。また教える時にいつも心掛けている事はありますか。
メルセデス:前もって準備などはしないです。実際にクラスに行ってから、参加者のモチベーションとかレベルとか、それぞれの様子を見て決めます。でもどのクラスでも説明しているのは、何より大事なのは、まず感じるから動き始めるっていうこと。心が何かを感じるから、自然に身体が動くの。だから、自然であることが大事だってことは、どのクラスでも伝えています。
――日本人の受講生の印象はどうですか。スペイン人や他の国の受講生との違いは、何かはありますか。
メルセデス:日本もそうだけどメキシコやアルゼンチンなど海外の人たちは、フラメンコが自分たちの物じゃないから、よりフラメンコを学びたいっていう強い意欲と敬意をスペイン人たちよりも持っているっていうところは、いつも感じますね。もちろん、全員がそうだというわけではないけど。
――今回のクラスの中で、何か強く記憶に残っているエピソードなどあったら教えてください。
メルセデス:そうね…例えば昨日のシギリージャのクラスではすごく力強いエネルギーを感じたわ。他にも椅子を使った裸足のブレリアクラスや、大人顔負けの子供達の踊りとか、本当にたくさんの楽しい瞬間があった。今回は札幌から福岡までたくさんの都市を回ったけど、どのクラスもみんな違っていて、でもどのクラスでも皆さんがものすごく喜んでくれていたのが印象的でした。
――スペインに帰国してからは、どのような活動を予定していますか。
メルセデス:帰国してからすぐ、イタリカ・フェスティバルで上演する最新作「Olvidadas (A las Sin Sombrero)」の公演で、イタリアのローマ劇場に行きます。その次はバルセロナのタブラオ、コルドベスの特別企画のショーに2週間出演します。それから1日だけセビージャに戻って、今度はメキシコやアメリカのアルバカーキに行って、帰ってきたら自分のソロ・リサイタルの準備をしないといけないの。大きな作品ではないけど、フラメンコのパロを5~6曲踊る予定です。その後にもコルドバやマドリードで劇場作品を上演したり、2026年のセビージャのビエナルに向けての準備もあるし、本当にたくさんの予定が続いているわ。
「Olvidadas (A las Sin Sombrero)」は、 «Las Sin Sombrero»として知られる27年世代の女性たちに捧げた作品です。ロルカをはじめ文学や詩、芸術、絵画などで男性たちが注目を集めていたその時代は女性に対してはすごく閉鎖的で、そうした彼女たちの怒りを作品にしました。
今まではもっと自分の感性とか人生について作品を作ってきたけど、今回初めて誰かに捧げる作品というものを作りました。
――最後に、日本のフラメンコ愛好家たちに向けてメッセージをお願いします。
メルセデス:これからも強い意欲を持ってフラメンコを続けてほしいですね。基礎を固めて、知識を深めたり出逢いを大切にして、技術を上げていってほしい。日本の皆さんにも他の国の人達にも伝えたいことだけど、フラメンコは職業とするには、とても幅広くて大変なものです。でもそれを乗り越えた先に、その人自身のアルテが表れるの。そのアルテこそがフラメンコの魅力だし、努力無くしては自分の身体で思いのままに踊ることはできません。
今回のツアーはとても楽しくて、参加した皆さんとはまた近いうちにお会いできたらと思います。そしてまたいつか日本にクラスで呼んでもらえたり、私の舞台作品を日本の皆さんに観てもらえたらと思っています。
【プロフィール】
Mercedes de Córdoba(メルセデス・デ・コルドバ)/舞踊家・振付師
古き良き時代のフラメンコの薫り、豊かで品格に満ちたフラメンコ舞踊家。
スペインで最も権威のあるコンクールで数々の優勝を重ね、自身のカンパニーで有望なキャリアをスタートさせる。『Sin Más』『Ser. Ni conmigo ni sin mi』『Si. Yo quiero』どの作品も観客、評論家、専門誌から最高の評価を得ている。
更には多くの現代の踊り手達が彼女に振付や芸術監督として公演を手掛けてもらっている。
パウラ・コミトレ『Cámara abierta』
フェルナンド・ヒメネス『Con-migo』
アンヘル・ロハス『Ya no seremos』
ラファエル&フアン・カンパージョ『Sangre』
アデラ・カンパージョ『Nacer para morir』『De Sevilla a Cádiz』
ヘマ・モネオ『Sonido de mi amor』
アゲダ・サアベドラ『Venero』
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