EL CARTERO スペイン旅行記 2016 /6
- norique
 - 2 日前
 - 読了時間: 5分
 
[期間]2016年2月14日~3月14日
(domingo, 2 de noviembre 2025)
昨年2024年10月にこの世を去ったカンタオール、瀧本正信さん。
日本のフラメンコ界に本場のカンテの種をまき、強い信念と歯に衣着せぬ率直な物言いで周囲に大きな刺激を与え、何人もの後進を育て多大な功績を残しました。
約10年前に瀧本さんが教え子たちとともにスペインを巡った旅行記が、当時メンバーの一人として同行した、現在歌い手として活躍する金高荘子さんの手により記されていました。
現地で出会った様々な人たちとの、フラメンコへのアフィシオン(愛情)に溢れた交流の記録を、たくさんの写真とともにご紹介します。
【金高荘子さんより】
ここに綴る旅の記録には、今はもう会うことのできない大切な友人たちも登場します。
彼らを偲び、心からの感謝と祈りを込めて記します。
また、時の流れの中で、この記録に登場するお店のいくつかはすでに営業を終えています。
失われたものへの想いと共に、ここに残された記憶を紡ぎました。
当時の旅を歩む"El Cartero"こと瀧本正信氏の姿を思い浮かべながら読んでいただければ幸いです。
文・写真/金高荘子
Texto y fotos por Soko Kanetaka
【第6回】
◆2月24日 10:30
Eva Rubichiのカンテレッスン
参加するのは生徒有志4名。
教わりたいのはもちろんヘレスのブレリア。Carteroがギターを持って同行してくれた。
全員スペイン人のレッスンを受けるのは初めてでワクワク。Evaの声を、アイレを、間近で聞いて感じて、感動したり感心したりの1時間半だった。
EvaはCarteroの伴奏に、Bieeen! とかOleeee!とか言いながら、最後には私たちのリクエストにも応えてMalagueñaも唄ってくれた。
◆レッスンの帰りにバルでランチ
Carteroと似ているワンちゃんがとなりの席にいて仲良くなる。
そこにAntonioが自転車で通りかかったので、みんなで先日のバルでのお礼を言った。
◆Bar Los Tres Reyes
マスターのエミリオがニコニコしながら迎えてくれて、カウンターにいるおじさんを指差す。
「この人、カンテ唄うよ!」
Carteroが早速ギターを出しておじさんの前でギターを弾くが、おじさんはムスっとして唄ってくれない。
(人見知りか?ご機嫌ナナメか…?)
それでもひたすら弾くCartero。

エミリオがカウンターからひと節唄うと、おじさんはこちらをチラチラ気にし始めた。

おじさんはだんだん笑顔になり、様子を伺いながら近づいてくる。
そして、Buleríaを唄い始めた。

ついにCarteroの横に座り、次はFandango大会。一気に距離が縮まる。(フラメンコの力ってホントにすごいな)
おじさんの名前はPacoといった。

周囲にだんだんと人が集まってくる。 地元のアフィシオナードとか、観光客らしき人とか。私たちが唄うたびにいろんな人がシェリーをおごってくれる。
「日本人か?」
「フラメンコはどこでやってるんだ?」
「どのくらいヘレスにいるんだ?」
あたたかい人たちとフラメンコで繋がることができた素晴らしい時間だった。
◆CarteroがPaco Ceperoのファルセータを弾いているのを聴いて、Pacoおじさんが
「Paco Ceperoが好きなのか?」
とCarteroに聞く。
Carteroが、セペーロ大好きや!と答えると「Paco Ceperoは俺の友達だよ、今そこに来てるよ」と言う。
「ええ?!」と驚いていると、店の入り口に、あの、Paco Ceperoが立っていた。

CarteroはPaco Ceperoを見ると何の躊躇いもなく、
「あなたのために敬意を持って弾きます!聴いてください!」と呼びかけ、Paco Ceperoの前で彼のファルセータを弾いた。
Paco Ceperoはニコニコしながら聞き入り、演奏が終わるとBieeen!と拍手をしながらそばに来て、Carteroと挨拶を交わした。
Paco Ceperoと一緒に店の外の席に行き、Carteroは Paco Ceperoのファルセータを弾く。
そしてそれを聞いていたCeperoが「ちがう。そこはそうじゃない。 ギターをちょっと貸せ」と言ってCarteroからギターを取り上げて弾き始めた。

後で聞いたがCartero、弾いてくれないかな~と思ってわざと間違えたり弾けないふりをしていたらしい。知能犯。
Cartero はセペーロに、No!と言われる度に嬉しそうで、少年のようにはしゃいでいた。
◆Bar El Escondite
Tres Reyesでのフエルガを見ていた人が、
「うちの店でもぜひ!」と言って店の地図を描いたメモをくれた。
メモを頼りにPorvera通りにある店、El Esconditeへ。

店に着くと、マスターが笑顔で迎えてくれた。Carteroが早速ギターを弾き私たちも唄いホセ(大西)が踊ると、またもや人が集まってきてフエルガが始まる。みんな本当にFlamencoが好きなんだなー。
ひとりの男性がやってきて唄い始めた。いい声!Carteroはすかさず反応し伴奏する。彼はFinduという名前のカンタオールだそう。どうりで。しばし聴き入った。
◆2月25日 13:00
Los Tres Reyesへ。
パコ・セペーロ、今日もいた!
Carteroは臆することなくセペーロの隣に座りギターを弾き始める。
セペーロは、Carteroがファルセータを弾く度に微笑んだり頷いたり。隣に座っている人に「これはオレのファルセータだ」などと囁いたりしている。
しばらくするとセペーロは、またギターを貸せと言い、Carteroからギター を取り上げて弾き始めた。Carteroがファルセータを弾く度に止めては、そこはこう弾け!と言う。そしてカメラを持っている私に向かって「これを録画して後でCarteroに見せろ」と何度も同じフレーズを弾いてくれた。
セペーロはCarteroのフラメンコを良いセンティードだと言った。さらに、最近の若いギタリスト達のステレオタイプ(?)な弾き方を真似て、
「こういう、速いだけのギターがフラメンコだとは思わない」と、Carteroが普段言っているのと同じ事を言っていた。
そして、これがフラメンコだ!と、キレッキレで素敵なファルセータを何度も弾いて聴かせてくれ た。
◆Paco Ceperoと別れた後再び、昨日行ったBar Esconditeへ。
Finduの友達がカホンを持って来ていた。Tres Reyesで知り合ったアルゼンチン人の踊り手さん達のグループもCarteroを追いかけて来ていて、またフエルガが始まる。
◆Esconditeからの帰り、ホセ(大西)が行ってみたいというペーニャ、Peña La Buleríaへ行ってみるが閉まっていた。残念。表に貼ってあるライブ告知によると、週末の営業らしい。また出直し。

◆ビソに帰ってからCarteroが晩ごはんを作ってくれる。
(*第7回に続く)

【筆者プロフィール】
金高荘子(Soko Kanetaka)/幼少期から音楽に触れ、学生時代にはロックなどのバンド活動を通し音楽に親しむ。2002年にフラメンコと出会い、2010〜2024年に瀧本正信氏に師事。短期渡西を繰り返しながら現在も研鑽を重ねている。
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