《Flamenco fan LIVE》
(viernes, 6 de septiembre 2024)
2024年8月2日(金)
高円寺タブラオ・エスペランサ
文・写真/金子功子
Texto y fotos por Noriko Kaneko
長年のフラメンコ愛好家から、まだフラメンコを観たことがない人まで。
多くの人に生の舞台の迫力を楽しんでもらいたいと思い企画した《Flamenco fan LIVE》。
今回は昨年に続いて2回目の出演となる、踊り手としても歌い手としても全国各地で活躍し、熱い魂が込められたカンテ(歌)で聴く人を魅了する今枝友加さんのカンテソロライブです。
共演には昨年同様、今枝さんがカンテの師と仰ぎ、若い頃から本場スペインに渡りフラメンコギターの修業をし、長年にわたり一途にその音楽を追求し続けるエンリケ坂井さんが出演しました。
1曲目は「ブレリア・デ・ロルケーニャ」。スペインの詩人ガルシア・ロルカの詩を当時の名カンタオーラ、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスがロルカへのオマージュとしてブレリアのメロディーで歌ったもので、軽快なテンポに場内の空気が一気に高揚します。MCでは曲の由来に触れ、その当時の歴史が感じられました。
次に歌ったグアヒーラは、実は今回が初披露。前月に行われたタマビーズの公演で踊ったことがきっかけで、その準備でグアヒーラの歌をいろいろと聴いていたら、ペペ・マルチェーナとファン・バルデラマの歌が素晴らしかったので挑戦してみたくなったとのこと。美しいメロディーを抑揚豊かに、時には物語を語るように歌うなど、雰囲気豊かな味わいが楽しめました。
MCで今枝さんはカンテについて、自分の何かを出して表現するというものではなく、自分にとってその曲や歌手へのオマージュという気持ちで歌っている、と語りました。彼らの歌や響きを捉えながら寄り添って歌う、それが彼女のスタイルだと言います。
3曲目はニーニャ・デ・ロス・ペイネスのペテネーラ。当時の時代に戻るような味わいや空気感の中、たぎる思いを吐き出すように歌う渾身の一曲。
そしてアントニオ・マイレーナのソレア。ぐっと凝縮された嘆きが込められ、急流のようにほとばしる力強さで歌い上げました。
休憩明けの後半は、エンリケさんのギターソロでブレリアを披露。ディエゴ・デル・ガストールの有名なファルセータのフレーズや、軽やかで古い良き時代の味わいある音色を響かせます。シンプルなフレーズでも溜めやうねりが楽しく、その演奏に酔いしれました。
衣装を替えて再び今枝さんが登場。曲は盲目のカンタオーラ、ニーニャ・デ・ラ・プエブラのミロンガ。しっとりと切ないような、哀愁漂う歌を聴かせます。
続いては小気味良いテンポのタンゴ。有名なレトラも多く楽しめ、ギターとカンテの応酬が代わる代わる交わされるキャッチボールのよう。
次の曲はファンダンゴ。ニーニョ・グロリアのチコとグランデをともに披露。気合を込めて立ち上がって歌い、堂々と胸に迫るフラメンコの魂を聴かせ、それをどっしりと受け止めるエンリケさんのギターが豊かな響きを奏でました。
全身全霊を込めて歌うフラメンコのカンテ。一曲歌うだけでも、その消耗するエネルギーは相当なものだと言います。歌い切って少し呼吸を落ち着かせ、MCで「カンテはスポーツですね」と笑う今枝さん。客席から「アルテですね」と返ってくると、「ではスポーツとアルテですね」とまとめて会場の笑いを誘いました。
最後の曲となるブレリアはリラックスした自由な雰囲気の中で、次々に繰り出されるギターのファルセータとともに生き生きと多彩な歌を披露しました。
そしてフィン・デ・フィエスタでは踊り手の福山奈穂美さん、荻野リサさん、三枝雄輔さんと、来日したばかりのファン・ホセ・ビジャールさんがそれぞれひと振り。華やかなフィエスタで締めくくりました。
当日は満席のお客様が集まり、常連の愛好家からプロのアーティストまで、たくさんのカンテファンの方々が集まってくれたのはとてもうれしいこと。ライブの余韻を仲間同士で語り合う人たちや、満足そうな表情でお店を後にするお客様を見送りながら、こちらまで幸せな気分になりました。フラメンコのカンテの楽しさを知る人が、これからも増えていってくれたらいいな、とそんな期待も膨らむライブでありました。
【出演】
カンテ 今枝友加
ギター エンリケ坂井
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