(lunes, 6 de enero 2025)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
よく言われることですが、スペインのクリスマスは1月6日、東方から三人の博士(占星術の学者)が贈り物をたずさえてイエスのご誕生をお祝いに訪れたということにちなんだ、公現の祝日まで続きます。この三人の博士をスペインではレジェス・マゴス、魔法の王様と呼びます。最近ではクリスマスプレゼントのケースもあるようですが、伝統的にはスペインで子供たちがプレゼントをもらうのはこの日で、5日夜には各地で王様とその一行のパレードが行われ、6日朝には新しいおもちゃで遊ぶ子供たちが街角でも見られます。また家族間でもプレゼントを贈り合います。24日、クリスマス・イブと大晦日、そしてこの公現の祝日前夜は家族揃って夕食を食べることが多いようです。が、静かに過ごすことが多いおごそかなクリスマスと違って、大晦日はホテルなどで行われるパーティーや街中で行われるカウントダウンなどで無礼講よろしく大騒ぎする人も多いようです。カウントダウンでは12時の12の鐘の音に合わせて12粒のブドウを食べるのがならわし。この時期、スーパーなどでは12粒ずつパックになった缶詰なども売られます。とにかくご馳走続きのこの季節、体重増加が必至なので、6日が終わるとダイエットを始める人も多いとか。伝統的には7日からバーゲン、レバハも始まります。
《INDEX》
【クーロ・フェルナンデス生誕の地記念碑】
12月20日、セビージャはトリアーナ橋からほど近い、ファビエ通り7番に、歌い手、クーロ・フェルナンデス生誕の地であると記した記念碑が設置されました。セビージャ市長も訪れ、その設置を祝いました。
真ん中のスーツ姿のホセ・ルイス・サンス市長を挟んでクーロの子供であるエスペランサ、パコとファミリー、市の関係者たち。一番左はルイス・イバラ、ビエナル監督。©︎ Kyoko Shikaze
2023年6月14日に82歳で亡くなったクーロ・フェルナンデスは、舞踊伴唱を得意とした歌い手。マティルデ・コラル、マヌエラ・バルガス、メルチェ・エスメラルダ、マヌエラ・カラスコら多くの舞踊家たちの伴唱を行ってきたベテランの歌い手。また、妻ペパ、娘で歌い手のエスペランサ、息子でギタリストのパコ、踊り手のホセとファミリア・フェルナンデスとして、各地のフェスティバルなどで活躍し、日本でも1981年小松原庸子スペイン舞踊団『真夏の夜のフラメンコ』をはじめ、1984年には新宿のタブラオ『エル・フラメンコ』(現ガルロチ)にペパの妹で踊り手のコンチャ・バルガスと半年出演したり、など日本ともゆかりの深いアーティストでした。
実は2002年にも一度記念碑が設置されたのですが、雨が続いた時に外壁ごと崩れ落ち、再設置が長年待ち望まれていたのでした。時間はかかったものの、再設置されたことは嬉しい限りです。
©︎ Kyoko Shikaze
なお、今は複数世帯が居住するアパートとなっていますが、ここはかつてヒターノが多く住むカサ・デ・ベシノ、長屋だったそうです。この通りでは、他にも歌い手ナランヒート・デ・トリアーナ(24番に同じような記念碑が掲げられています)や、ギタリストのラファエル・リケーニも生まれたといい、突き当たりのロドリゴ・デ・トリアーナ通りにはマヌエル・ベタンソスのスタジオ(かつてはマノロ・マリンのものでした)もある、フラメンコな通り。セビージャ市としても、フラメンコの故郷としてのトリアーナをクローズアップすることを後押ししていくとのこと。この日の午後には、サンタ・アナ教会横でペペ・トーレス、マヌエラ・カルピオらの出演でポレア・フラメンカ祭も行われましたが、こういったイベントが増えていくといいですね。
【アルヘシラスのパコ・デ・ルシア】
12月21日はパコ・デ・ルシアの誕生日。1947年生まれだから生きていれば77歳、喜寿だったのですね。10年前、66歳で亡くなってしまったけれど、彼が私たち、フラメンコを愛する者たちに遺したものはとても大きくて、忘れることはできません。
今年は、その誕生日を前にした12月20日、生まれ故郷のカディス県アルヘシラスで、彼の記念館「セントロ・デ・インテルプレタシオン・パコ・デ・ルシア」が開館しました。直訳するとパコ・デ・ルシア説明センター、になるのでしょうか。彼の博物館的なセンターで、私はまだ観に行けてないのですが、遺族から寄贈された写真やポスター、絵画などが展示されているようです。開館式には未亡人や遺児たちも列席したとのことです。
なお、その翌日にはアルヘシラスのフロリダ劇場で、パコを祝うコンサートが開催。セクステットでパコと共演したルベン・ダンタス、ホアキン・グリロ、ドゥケンデ、ニーニョ・ホセーレ、チョンチ・エレディアのほか、ホセーレの息子ホセ・エレディアらが出演しました。
公演の出演者たちも、早速セントロを訪問しました。
チョンチ、ルベン、ホアキン、ニーニョ・ホセーレら©︎ J.L. Lara
左からホアキン・グリロ、ホセ・エレディア(ニーニョ・ホセーレの息子でピアニスト)、ニーニョ・ホセーレ、©︎ J.L. Lara
また、27日には、センター内のホール、ラ・カサ・デ・パコにおいて、パコの甥、ホセ・マリア・バンデーラと歌も歌うフラメンコ・ピアニスト、ディエゴ・アマドールによる『パケアンド』公演も行われました。この二人がパコの曲を演奏するこのコンサート、2021年初演で、現在もスペイン国内だけでなくモロッコなど世界各地で上演され続けています。2021年に観た時、CDなどに録音された曲ではなく、ライブでの演奏をベースにしていることに感動した覚えが。ホセ・マリアはおそらく最もパコに近いギタリスト。最初の音がパコそのものでした。
【小島章司に西日財団賞】
12月16日マドリードのテアトロ・レアル内のサロンで、第11回西日財団賞の授賞式が行われました。スペイン・日本・シンポジウム開催を主な目的として2001年に設立された西日財団は、2011年から様々な分野で日西関係に寄与した個人または団体に賞を授与しており、その今年度の受賞者に日本人フラメンコ舞踊家、小島章司が選ばれたのです。これまでに羽生結弦選手や富士通が受賞してきたこの賞の授賞式のため、マドリードに飛んだ小島は、「グレコやベラスケス、ピカソといったスペインの芸術家から踊りのインスピレーションを得てきました。100回生きたとしても心はいつもスペインにあります」とスピーチ。会場には中前在スペイン日本大使や、小島の旧友であるメルチェ・エスメラルダやラ・ウチらも姿を見せ、受賞を祝いました。
左から小島章司、財団理事長、中前大使。撮影/西塚テレサ
左からメルチェ・エスメラルダ、ラ・ウチ、小島、ホアキン・サン・フアン。撮影/西塚テレサ
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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