(viernes, 21 de febrero 2025)
スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。
文/志風恭子
Texto por Kyoko Shikaze
*名鑑登場アーティスト一覧はこちらから
Juan Moneo Lara
“El Torta”
Jerez de la Frontera 4-9-1953 31-12-2013
エル・トルタ
本名フアン・モネオ・ララ
1953年9月4日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ生まれ 2013年12月31日カディス県サンルーカル・デ・ラ・バラメーダ没
フラメンコのメッカ、ヘレスはプラスエラの生まれ。兄マヌエル、弟ルイスも歌い手(ルイスは最初ギタリストだった)。1972年マイレーナのコンクール、ソレアで受賞。マドリードのタブラオやマヌエル・モラオの作品『エサ・フォルマ・デ・ビビール』などに出演。地元では人気があったが、1989年ペペ・デ・ルシアのプロデュースで録音したアルバムで広く知られるようになり、フランスの会社による『コローレス・モレーノス』などもリリース。深みのある声、リズム感、音程の良さ。どれをとっても一流で、吟遊詩人のようなルイス・デ・ラ・ピカとともに現代フラメンコの神的存在の歌い手、カマロン・デ・ラ・イスラのお気に入りのアーティストでもあった。ドラッグの問題もあって、活躍は限られた部分はあったが、20世紀末から21世紀にかけてのヘレスのフラメンコを代表するアーティストであったことは確かである。

1988 Fiesta de bulería
【動画】
1989年、カナルスールのフラメンコ番組でブレリアを歌う。ニーニョ・ヘロ伴奏。声に力があり、抜きの感覚などもいい。
カナルスールでのブレリア。伴奏はモライート。場に慣れてない、ちょっと硬い感じだけど、進むにつれて良くなってくる。
2011年.前半のインタビューでカマロンのことなども話している。伴奏はクーロ・デ・ナバヒータ。

Milagros Mengíbar de la Cruz
“Milagros Mengíbar”
Sevilla 30-5-1952
ミラグロス・メンヒバル
1952年5月30日セビージャ生まれ
バタ・デ・コーラの名手。優雅で女性らしいセビージャ派舞踊の代表的存在の一人。が、その踊りの優美さからは想像できない、サバサバした物言いに初めての人はびっくりするかもしれない。トリアーナ地区の生まれ。アデリータ・ドミンゴ、マティルデ・コラルに師事。11歳でコルドバのタブラオに出演、13歳からセビージャのタブラオのレギュラーとして活躍。1974年コルドバのコンクールで優勝、同年大阪のタブラオ出演のため初来日。舞踊教授としても定評があり、門下には日本人で唯一コルドバのコンクールで優勝したAMIや、長年ミラグロスと一緒の舞台を務め、現在ヘーレン財団で後進の指導にあたるルイサ・パリシオがいる。後、クリスティーナ・ヘーレン財団でも長らく後進の指導にあたった。伝統を踏まえつつ自分で工夫したオリジナルの技術でのバタやマントンづかい、ドラマチックな表情など、伝統をなぞるだけではない気概のある踊り手。


【動画】
1996年.カナルスールのフラメンコ番組でのカラコーレス。バタ・デ・コーラに、ペリコンとよばれる大きめの扇子、カスタネットのフル装備。ゆっくりと舞うコーラの優美さ。歌はフアン、レイナ、ギターはアントニオ・マルケス。
カナルスール、2008年のアレグリアス。歌はフアン・レイナとマノロ・セビージャ、ギターはラファエル・ロドリゲスというバックはミラグロスのいつものメンバー。
おまけ 画質は良くないのですが1993年ウニオンで踊ったアレグリアス。

2007年 Málaga en Flamenco ベルディアーレス楽団と共演
Manuel Moreno Junquera
“Moraito Chico”
Jerez de la Frontera 13-3-1956 10-8-2011
モライート・チーコ
本名マヌエル・モレーノ・フンケーラ
1956年3月13日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ生まれ、 2011年8月10日没
ヘレスのフラメンコを語る上で外せない一人。父フアン、伯父マヌエル、息子ディエゴ、妹の息子フェルナンド、従兄弟の息子ぺぺ、とヘレスが誇るギタリスト一家の出身。子供の時からギターを弾き、66年伯父のプロデュースする公演に出演、名歌手たちを数多く伴奏し、また72、86年にはヘレスのコンクールで優勝。92年には初のソロアルバムをリリース。ホセ・メルセやディエゴ・カラスコらヘレスのアーティストたちとの共演での録音多数。ソロでも伴奏でも絶妙な間合いの取り方が最高のフラメンコの鍵。シェリー酒片手にバルのスロットマシーンに興じる姿、フェリアのかセータのキッチンに立つ姿、飄々とした風情で、いつもヘレスのフラメンコの中心には彼がいた。日本にもビエナルのスターたち、フラメンコ協会、石井智子公演と何度か訪れている。あまりにも早く亡くなってしまった。



【動画】
1996年カナルスールでのブレリア。パルマにホセ・メルセ、チチャロ、ラファ、グレゴリオという最強の布陣。
1999年カナルスールのフラメンコ番組でのシギリージャ。深みと独特の味わいのある、唯一無比なシギリージャ。絶品。
1993年クリスマス特別番組でディエゴ・カラスコの伴奏からブレリアを踊る。

【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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