検索結果
空の検索で569件の結果が見つかりました。
- マヌエル・リニャン来日公演2025
BAILAOR/BAILAORA (domingo, 14 de diciembre 2025) 2025年12月9日(火)~18日(木) ShowレストランGARLOCHÍ(東京・新宿) 写真/近藤佳奈 Fotos por Kana Kondo 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 2025年いっぱいで閉店が決まったガルロチ最後のスペイン人グループ公演となる、マヌエル・リニャンのグループによる公演が始まった。 今回はBAILAOR(男性ダンサー)としての踊りと、タブラオでは世界初となるBAILAORA(女性ダンサー)として舞う姿と、リニャンが持つ二つの魅力がそれぞれ楽しめるプログラムが用意される。 共演には昨年の来日公演と同じメンバーを揃え、伝統を大切にしながらも常に創造的な挑戦を続ける彼がどのような舞台をみせてくれるのか期待が高まる。 公演初日は女装によるプログラム。オープニングはカンテ二人によるマルティネーテ。フアン・デ・ラ・マリアの伸びやかな張りのある歌声と、ホセ・マヌエル・フェルナンデスの野性味ある魂の叫びのような歌声で、それぞれ極上のカンテを交互に歌い繋いでいく。歌い終えると二人で抱き合い、相手を称え合う姿に胸が熱くなる。 しっとりと美しいギターのメロディーから始まるグアヒーラ。曲調がアップテンポに変わると、赤いドレスの貴婦人がステージに現れる。バイラオーラ、マヌエル・リニャンの登場だ。赤いアバニコをはためかせ、リズムの波を遊ぶように踊る。茶目っ気たっぷりにコケティッシュな仕草を見せるのもチャーミング。バイラオーラとして踊りながらも、彼の魅力である足音の力強さや鍛え上げられた身体のキレのある動きはしっかり健在だ。 フランシスコ・ビヌエサのギターソロはリブレのテンポから、厚みのある音色と豊かな響きをたっぷりと聴かせてくれる。ノスタルジックな印象の情感あふれるメロディーを奏で、フラメンコギターの魅力を存分に堪能させてくれた。 黒地に白の水玉模様のドレスで踊るロマンセもまた、少しアップテンポなリズムで展開。ペソが感じられながらもスピード感と切れ味のある踊りで、ファルダが動くたびに姿をのぞかせる赤いカンカンが鮮やかだ。落ち着いた曲調に変わって抑制を利かせた踊りになると、女性らしい雰囲気が一段と濃く感じられる。 カンテソロでは即興的な楽しさ溢れるタンゴを披露。3人が伸び伸びと持ち味を発揮し、舞台を盛り上げた。 最後の曲はアレグリアス。ステージは青のライトに照らされ、メロディアスなギター前奏が静かな雰囲気を醸し出す。リニャンは淡いエメラルドグリーンのバタデコーラをまとい、爽やかなグリーンのマントンを鮮やかに翻す。多彩なマントンの技を繰り出しながら、躍動感あふれる動きで踊りが目まぐるしい展開していく。足技では安定感のあるリズミカルな音色を奏で、これぞアレグリアス、といった楽しさとともに、少し勢いを押さえたときの踊りの美しさが印象的だった。 衣装や髪形、メイクもしっかり「バイラオーラ」としてステージで踊り舞うリニャンの満ち足りた笑顔は、ありのままの自分自身を表現できる安堵感が表れているかにみえた。 女性の装いでも男性の装いでも、リニャンはリニャン。ガルロチ最後のスペイン人グループ公演の主役を務めるラストダンサーとして、唯一無二の踊り手としての存在感を堂々と見せつけた。 公演は12月18日まで。この二度とない舞台を、ぜひ記憶に焼き付けてほしい。 【出演】 B.Manuel Liñán C.Juan de la Maria C.Jose Manuel Fernández G.Francisco Vinuesa =====
- 山本海エッセイ 「僕とグラナダ」
(viernes, 12 de diciembre 2025) フラメンコに魅せられ、その技術を磨くために、またはさらに深く知るために、多くの日本人が本場スペインへと渡ります。 今年3月からスペイン・グラナダでの生活を始めたフラメンコダンサー、山本海さん(El Cai)もその一人。 彼が現地で経験したことを通して感じたことなどを綴ってもらいました。 文/山本 海 Texto por El Cai ©miyu chocolate 僕が渡西を選んだ動機としては、フラメンコに近づくためには実際にスペインに住み、現地の人と同じように働き、食事をしなければ理解できない事もある、と思ったからです。 スペインに着いたらまず、仕事をするための手続きが必要で、最初にする事はエクストランヘリア(Extranjería=外国人局)へNIEカード(*編集部注:スペインに中・長期で滞在する外国人が各自持つ登録番号を記載したカード)の申請でした。 ここが、毎週木曜日9時に来週分の予約をオンラインで受け付けるのですが、開始5分で全て埋まってしまうほどの激戦です。 ようやく予約が取れたのは約3週間後。知り合いの5人ほどに協力をお願いし、それぞれ9時前からPCを起動してもらい、やっと1枠取れました。 何をするにも予約、予約、ただその予約が取りにくい…。 また、申請後の手続きも遅い。 結局、働き始める事ができたのは到着から2ヶ月半後でした。 働くまではお金にも限りがあったので、タブラオは数件行ったくらいです。 代わりに散歩が日課になっていました。 グラナダの街はどこを切り取っても美しい。 昔使われていたであろう井戸や、焼却炉が道路の脇にポツンと残置されている。 過去の時代を想像したり、クエバ(cueva=洞窟)を見ると今でも利用してる人がいる事実も受け止めたりと感情が忙しくなる。(ある種グラナダのクエバはブランド化され、値段も高く快適に過ごせる場所もあるみたいですが) でもやっぱり僕が好きなのは夕焼けです。展望台から見る日の入りと夕焼けは、その日一日への感謝の気持ちを感じさせてもらえるからです。 そう節約してても貯金が尽きそうなので、僕はカジェ(calle=街、通り)でフラメンコをして稼いでる人を紹介してもらいました。 彼との毎日も刺激的で、同じく投げ銭を生業にしてる人との場所の取り合い、小競り合いなんかもありました笑 けど、話しかけてくれたヒターノが歌った、空気がビリビリ揺れる程のタンゴや、セビージャから旅行に来ていたフラメンコ達と歌って踊ってバルに行ってご馳走してもらった経験はとても貴重だったと思います。 そんな所から僕のスペイン生活が始まりました。 ようやくありつけた仕事は日本食バルです。タパス(飲み物を頼むと無料でついてくるお通し的な)でお寿司を提供するバルでキッチンの仕事を担当しています。 美味しい料理を提供しますので、グラナダに来た際は是非お越しください! フラメンコは今、由緒あるタブラオにレギュラー出演している女性の先生に師事しております。自宅クエバで行うレッスンはグラナダならではです。行きの坂だけで足はパンパンですが…笑 それから何ヶ月かに一度、日本からグラナダに来るお客さんを案内するのが楽しいです! バルでタパスと会話を楽しみ、夕焼けスポットに案内し夕日を観る。スペインに住んでいると実感し、初心に戻れる気がします。 グラナダに来る予定がある方は僕にご連絡頂けたら嬉しいです! セビージャもヘレスもフラメンコの聖地で、グラナダは影が薄いなんて言う人もいますが、ガルシア・ロルカやエンリケ・モレンテ、マリオ・マジャ、マノレーテ…、挙げきれないほど沢山のヘニオ(genio=天才)を残したこの地、グラナダが僕は一番好きです。 【筆者プロフィール】 El Cai/山本 海(Kai Yamamoto) 身体の芯から音楽と向き合うことで、踊りを通じて"フラメンコの本質"に触れ続けている舞踊家。福島に生まれ、幼少期から父Yamaquitoのもとで舞台を経験。スペイン・アンダルシア各地を巡りながら研鑽を重ね、現在はフラメンコの聖地グラナダを拠点に、さらなる表現の深化を追求している。 =====
- Punto84《道程 そして、ここから。》
*スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和7年度助成事業 (lunes, 13 de octubre 2025) 2025年8月7日(木) セシオン杉並(東京) 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 1984年、昭和59年生まれ。同い年の二人のフラメンコダンサーによる劇場公演が開催された。 互いに違う環境の中でフラメンコと出会い、ともにそれぞれの舞踊団に所属する中で、フラメンコとスペイン舞踊の技術と表現力を磨いてきた。 フラメンコ歴は20年以上という中堅世代だが、主催公演は実は今回が初めて。とはいえ作品の構成や出来栄えは、とても初作品とは思えないほどの秀逸さだ。 始まりはピアノのメロディーから始まるナナ。薄桃色のベールに包まれて踊る二人。 その動きはコンテンポラリーのようでもあり、これから新しい命が誕生するかのような躍動感に満ちている。 そこから姿を現すヴォダルツのグアヒーラ。伸びやかな身体使いで、幼少の頃から舞踊や舞台に親しんできたという自身の原風景を表現。純粋に踊ることを楽しんでいるようなその表情には、少女の面影が重なる。 松田のソロは故郷である山形の有名な民謡、花笠音頭とフラメンコのコラボレーション。衣装は着物をまとい、花笠を小物として使った踊りも実にうまい。三味線奏者の浅野が弾き語りで歌う民謡にギターが加わり、音楽も12拍子のリズムにアレンジされ、フラメンコの舞踊技術を取り入れた民謡の踊りは松田の素晴らしいオリジナリティだ。 赤い衣装にパリージョを使って披露するパレハはダンサ・エスティリサーダ。森川の中世フィドルの演奏に合わせてよく揃ったパリージョの音色を奏で、フォーメーションの展開もバリエーションに富んで楽しい。パレハの魅力たっぷりの一曲だ。 ピアノと津軽三味線のコンチェルトによる「里桜」は浅野のオリジナル曲。懐かしいような温かみのあるメロディーと、後半のドラマティックな演奏に思わず引き込まれる。 ペテネーラでのパレハは、互いに惹かれ合いながらもすれ違う関係性を表現。人間の内面的な世界観を、身体を使う舞踊で表現する技術は流石の一言。 ヴォダルツのシギリージャは気迫あふれる渾身の踊りを披露。一心不乱に全力で踊り切った姿が印象に残った。 続いて松田のティエント。美しい姿勢と、力強さの中にふと見える柔らかさに踊り手としての成熟ぶりが伺える。カンテ二人との掛け合いで踊る姿も実に楽しそうだった。 ミュージシャンのソロは、この公演に欠かせないメンバーとして参加した徳永兄弟のオリジナル曲を特別編成で披露。バイオリンと津軽三味線とともに、この日限りの四重奏を会場に響かせた。 最後は二人が得意とするバタマントンによるアレグリアス。爽やかな青のグラデーションに彩られた衣装が美しい。同志としての仲の良さと信頼が伝わってくるような、観ていて気持ちの良い舞台だった。 今回のプログラムにはvol.1という文字が記されていた。ということは、これから第2弾へと続いていくのでは、という期待も芽生える。もし実現するなら、それもまた二人が歩み続けていく道程となるだろう。 (追記)この公演の 配信視聴が現在公開中 だ( *配信チケット購入は10月26日まで )。 現地で鑑賞した人も行けなかった人も、この作品の素晴らしい瞬間の数々を味わってほしい。 【プログラム】 1.「Nana」 2.~母娘の想い~「Guajira」 3.~山形への想い~「ふるさと讃歌」 4.「Folias」ダンサ・エスティリサーダ 5.「里桜」 6.「Petenera」 7.「Siguiriya」 8.「Tientos」 9.「Viajero del Alma ~魂の旅人~」 10.「Alegrías」 【出演】 バイレ:ヴォダルツ・クララ バイレ:松田知也(小島章司フラメンコ舞踊団) ギター:徳永健太郎 ギター:徳永康次郎 バイオリン・中世フィドル・ピアノ:森川拓哉 津軽三味線:浅野祥 カンテ:有田圭輔 カンテ:中里眞央(アルテ イ ソレラ所属) =====
- カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.55
(jueves, 11 de diciembre 2025) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai 1990年マドリードで催されたチャコンを偲ぶコンサートのプログラム Malagueña de Chacón ③ 前回書いたフエルガでリソ神父を聴いて衝撃を受けた私は改めてチャコンのカンテに向かい合い、やっとチャコンの本当の魅力に目覚めていったのです。 ちょうどこの頃、私のレコードコレクションは時代に逆行してLPからSPレコードに重点を置くようになり、チャコンのSP盤を蓄音機で聴くようになった事から、生に近いチャコンの歌を味わう事ができるようになって目から鱗が落ちていったのです。 リソ神父は本名 Bartolomé Rizo(バルトロメー・リソ)で、愛好家達からは Pontífice del Cante(カンテの教皇)とも呼ばれチャコンを歌わせたら右に出る者はいないと言われた程の名人で、所属する教会を始め、ローマ、マニラ、メキシコでもミサ・フラメンカを催しフォスフォリート、バレア、クラタといったカンタオールやマヌエル・カーノ、ビセンテ・グラナイーノ、セラニートなどのギタリスト達と共演しています。 但し神父ですから歌手としての商業活動はせず、夜な夜な神父の服を脱いでフエルガの場に顔を出す生臭 (なまぐさ) 坊主でしたが、そのカンテは本物でした。しかし聖職者故かレコードを残す事が出来なかったのは残念! 1990年にはマドリード貯蓄銀行主催の「チャコンを偲んで」という大きなコンサートにセラニート、オスカル・ルイスといったギタリストを従えて出演、それまでは知る人ぞ知る存在でしたから一般のフラメンコファンを驚かせたのです。 この神父さん、頭の形や横顔もチャコンそっくりで、もちろん声もそっくり。そういえば友人のオスカルの結婚式に出席した折に歌ってくれたプライベートなDVDのテープが我が家のどこかに眠っているはずで、これが私の持っている唯一の彼の録音なのです。 前回に続いてチャコンのスタイル③です。いくつか歌詞がありますが、ここではよく歌われるものを書きます。 【Letra】 (y allí fueron mis quebrantos, ) En un hospital la vi y allí fueron mis quebrantos, quién me había de decir mujer que yo la quise tanta Iba a tener tan mal fin. 【訳】 会えたのは病院のベッド、 それは私の苦悩の始まり、 誰が私に言えただろう? これ程私が熱愛した女性が こんな最期を迎えるなんて…。 このスタイル③で歌われるもうひとつよく知られた歌詞も書いてみよう。 Yo en mi〈vía〉negaré /que te quise con locura /mira qué cariño fue /que siento la calentura /que tuve por tu querer./ 俺の人生の中でお前を/狂気の様に愛したのを消してしまいたい、/お前との恋の中で持った/強くほとばしる熱い想い、/何て強く愛したことか!/ このように愛する人の死や、当時の社会の縛りから来る苦しみに満ちた愛など、かなり深刻な内容の詞で、歌もカンテ・ホンドのクラスに入るといっても過言ではありません。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~36(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ( https://acustica-shop.jp/ )へお問い合わせください。(編集部) ======
- 【news】第13回CAFフラメンコ・コンクール二次予選通過者が決定
(lunes, 8 de diciembre 2025) 公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団の主催による今年度の第13回CAFフラメンコ・コンクールの二次予選が、12月7日にMARUWA財団スタジオ(東京港区芝)で行われました。 ビデオ審査による一次予選を通過した14名の出演者の中から次の8名が二次予選を通過し、来年1月31日に行われる本選に出場します。 本選は一般観覧ができ、過去の優勝者とスペイン人舞踊家によるエキシビションも鑑賞できます。 <第13回CAFフラメンコ・コンクール二次予選通過者(出演番号順)> 1 宮北 華子さん ソレア・ポル・ブレリア 4 吉田 芽生さん アレグリアス 6 小林 未來さん ソレア 7 尾崎 京佳さん ソレア・ポル・ブレリア 9 荒濱 早絵さん ソレア 10 脇川 愛さん ソレア・ポル・ブレリア 11 上假屋 樹理奈さん ソレア 13 新田 晶野さん グアヒーラ 2025年 第13回CAFフラメンコ・コンクール 【本選】 日時:2026年1月31日(土) 16時開演 場所:東京・北千住 Theatre1010(シアターセンジュ) 【チケット】 4,000円(全指定席) こちら「チケットぴあ」 からお申込みください。 *チケットご購入に際し、座席を指定頂けます。 *エキシビションもご覧頂けます。 【エキシビション出場者】 伊藤 笑苗(第11回優勝者) 鬼頭 幸穂(第12回優勝者) ÚRSULA LÓPEZ(ウルスラ・ロペス) *6歳未満のお子様の入場はお断りしております。 *当日は会場に撮影業者が同席します事をご了承下さい。 [主催]公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 [協賛]株式会社MARUWA、株式会社YAMAGIWA [問]公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 〒105-0014 東京都港区芝3-16-13 MARUWAビル2F Tel.03-5419-6513 / Fax.03-5419-6514 こちらのお問合せフォーム よりお問合せ下さい。 [参照URL] https://mwf.or.jp/caf/2051/ =====
- スペインNews 12月号・2025
(sábado, 6 de diciembre 2025) 文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze いやあ、11月はフラメンコが世界遺産に認定された月というのもあるのか、フラメンコ関係のイベントが目白押し。劇場公演が重なることも多く、何をみにいくか決めるのに悩みまくるという…当然見逃したものも多く、記事や他の人のSNS投稿をみて地団駄踏むという毎日です。夏時間が終わって日本との時差は8時間。日が暮れるのも早くなったし、急に寒くなったし、雨も降るし、毎日の夜のお出かけも大変です。 11月5日の満月をトリアーナ橋からのぞむ 《INDEX》 ・ ラファエル・リケーニ『ネルハ』 ・ セビージャ ギター祭 ・ デ・タル・パロ/フラメンコのファミリー ・ セビージャ欧州映画祭「セラス・ファルキート」 ・ ヘレス、フラメンコ学会のプレミオ・ナショナル ・ アンダルシア・フラメンコ ・ フラメンコ・エクスプエスト ・ コルドバのコンクール ・ 第8回パストーラ・パボン文化週間enペーニャ、トーレス・マカレーナ ・ フラメンコと絵画 ・ 訃報/フォスフォリート 【ラファエル・リケーニ『ネルハ』】 1日はセビージャのオペラハウス、マエストランサ劇場でご当地、セビージャ出身のギタリスト、ラファエル・リケーニのリサイタル。新譜『ネルハ』はマラガ県ネルハにある洞窟発見のエピソードを描いた作品と聞いていたのでそれをそのまま演奏するやと思いきや、第一部はソロとゲストの踊り手マリア・モリーナや歌い手イスラエル・フェルナンデスとフラメンコを、第二部はチェロ奏者と数曲、サルバドール・グティエレスとマヌエル・デ・ラ・ルスの実力派二人とのトリオで、新譜の曲を中心に旧作も、という構成でした。 ©︎ Teatro de la Maestranza/Guillermo Mendo 今回も作曲家としての才能を発揮した美しい曲たちで、休憩を挟んで2時間超えのコンサートもあっという間。舞踊伴奏の時はしっかり踊り手を見て演奏するし、歌い手の歌を聴いて、決して先走らない伴奏もさすが。私がスペインに来た頃の、注目の若手がいつの間にかベテランになっているのに時の流れを感じます。 【セビージャ ギター祭】 1日はリケーニを聴きに行ってしまったので、ペドロ・シエラ、ラ・トバラ夫妻のコンサートこそ逃してしまいましたが、その他の、エスパシオ・トゥリーナで行われたフラメンコギター公演は欠かさず行って参りました。 5日はクラシックが菅沼聖隆。かつて留学しクラシックギターを学び、2017年にはこのフェスティバルのコンクールで優勝した彼の凱旋。 ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla 『ベネズエラ組曲』『コロンビア組曲』など全編中南米テイスト。リズミカルな曲が多く、クラシックギター素人も楽しく聴くことができました、日本ではフラメンコでも大活躍の人だけど、クラシックの公演もやっているのでチャンスがあればぜひ聴いてみてください。 続くフラメンコはセビージャのマヌエル・エレーラ親子。歌伴奏を主にフェスティバルなどで活躍しているマヌエルは音楽院のフラメンコギター教授。息子はコルドバ音楽院出身。昔ながらのレパートリーをたっぷり聞かせてくれました。 ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla 6日はクラシックがゾーラン・ドゥキッチ、フラメンコはヘレスのサンティアゴ・ララ。踊り手メルセデス・ルイスの夫で、ソロアルバムを何枚か出しています。スペイン国立バレエ団のレパートリーとしてもお馴染みのサラサーテのサパテアードなど8曲。テクニックのあるうまいギタリストで、伝統をベースに新しい試みなども取り入れています。 ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla フェスティバル最終日の7日はクラシックがデヤン・イヴァノヴィッチ。フラメンコはダビ・デ・アラアル。このダビの演奏がすごかった。素晴らしかった。このフェスティバルではクラシックだけじゃなくフラメンコもマイクなしなのだけど、誰よりも大きい、よく通る美しい音で、音を出さずとも回るコンパスで静寂さえも音楽にしてしまう達人。まだ25歳だけど、すでに自分のスタイルを確立している。マノロ・サンルーカルやラファエル・リケーニにも通じる、叙情的な演奏は次代を担うにふさわしい。若いギタリストが音を詰め込み速弾きに走る中、このゆったり、我が道を行くという感じは貴重。若い日に、コルドバのギター祭のクラスなどに足繁く通っていたことや、マヌエル・デ・ラ・トマサやサンドラ・カラスコへの歌伴奏、アントニオ・カナーレスへの舞踊伴奏等と地道に経験を積んでいるのが身を結んでいるのでしょう。 ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla 【デ・タル・パロ/フラメンコのファミリー】 8日は再びマエストランサ劇場で『デ・タル・パロ』。フラメンコの名門ファミリーのアルティスタを集めたオリジナル作品。歌い手レブリハーノの甥、ペーニャ家のドランテスのピアノで、ヘレスのソルデーラ家、ビセンテ・ソトの娘レラ・ソトがヒターノという民族のテーマ、つまり国歌のような『ジェレン・ジェレン』を歌って始まり、続いて、言わずと知れたファルーコ一家のファルキートが踊る開幕。 ©︎ Teatro de la Maestranza/Guillermo Mendo カルメン・アマジャの姪の娘、カリメのソレアが会場をわかせます。トマティートの息子、ホセ・デ・トマテのソロは聴くたびに上手くなっているし、イスマエル・デ・ラ・ロサのソレアも身震いするくらいに良かった。彼はエスペランサの従兄弟の息子。舞踊伴唱が多いけど、いやいや、声はもちろん、間合い、細部の彩りなどどれをとっても素晴らしくオレ!ドランテスのソロを挟んで聞かせたガレーラス(レブリハーノの名曲)も真似ではなく自分なりに消化していたのが良かったし、続くファルキートのアレグリアスでも、エセキエル・モントージャとともに力強く素晴らしい歌を聞かせてくれました。ギターのペドロ・シエラもすごかったし。 ©︎ Teatro de la Maestranza/Guillermo Mendo そしてレラ・ソトのシギリージャ、これも絶品。メロディの落ちるところも最後あげていくのもすごくいい。若いのに巧みな歌い手。ヘレスの血なのかなあ。最後はドランテスのヒット曲『オロブロイ』。 ホセ、イスマエル、レラと若手に圧倒され、フラメンコの未来は明るいと思わされたことでした。フラメンコはヒターノだけのものではないけど長年フラメンコを支えてきたファミリーたちの底力というのもありますね。 【セビージャ欧州映画祭「セラス・ファルキート」】 11月7日から15日までは恒例のセビージャ欧州映画祭が開催。2004年に始まった映画祭で、毎年いくつかのフラメンコ関連映画がいくつか上映されていますが、今年は 『アントニオ、エル・バイラリン・デ・エスパーニャ』 、 『ファンダンゴ』 、クリスティーナ・オヨスの伝記映画 『スエニョス・フラメンコス』 などが上映されました。 そんな中で最も注目を集めたのはコンペティション不参加の公式作品だった 『セラス・ファルキート』 でした。11日カルトゥハセンターで行われた公式上映では過去現在の共演者をはじめたくさんのフラメンコ・アーティストや関係者も姿を見せ華やかな雰囲気でした。 『セラス・ファルキート』 https://youtu.be/hUO41gzkgB8?si=YP-eHwsIUWT95LNd 沖縄にルーツを持つアメリカ在住フラメンコ舞踊家でプロデューサーのアミ・マイナーズさんのアイデアで始まったドキュメンタリー映画でアメリカとスペインの共同制作-監督作品。 記者会見 ©︎ Festival de Sevilla 左から司会者、リューベン・アトラス、サンティ・ガリード両監督、ファルキート、アミ・マイナーズ、ノエリア・コルテス ©︎ Kyoko Shikaze 古いビデオや写真なども豊富に取り入れて、スペインの稽古場、ニューヨークの舞台、楽屋などでのファルキートを中心に、祖父ファルーコ、母ファルーカ、弟ファルー、息子モレーノなど家族の物語や、祖父や父の死、2003年のひき逃げ死亡事故やその後の結婚の話なども避けることなく語られています。フラメンコ好きなら必見の映画に違いありません。来年にはぜひ日本でも上映されて欲しいものです。 【ヘレス、フラメンコ学会のプレミオ・ナショナル】 11月9日はヘレスのフラメンコ学会によるプレミオ・ナショナルの授賞式が、ヘレスのあたらじゃ博物館で行なわれました。1964年に始まったこの賞、当初は毎年だったのが1年おきになるなど不定期ながらも長年続いていましたが、会を率いていたフアン・デ・ラ・プラタが2015年に亡くなったこともあってか、2012年以来中断していたのが2023年に復活しました。 今年の受賞者は以下の通りです。 カンテ;マイテ・マルティン バイレ;アナ・マリア・ブエノ ギター;フアン・マヌエル・カニサーレス 研究;クリスティーナ・クルセス 熟練;フアン・ビジャール 普及;ホセ・マリア・カスターニョ 研究特別賞;エウラリア・デ・パブロ 名誉賞;カリスト・サンチェス またヘレスの人のみを対象にしたコパ・ヘレスは、 カンテ;エンリケ・ソト バイレ;レオノール・レアル ギター;ホセ・ケベド“ボリータ” おめでとうございます。 【アンダルシア・フラメンコ】 アンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ、アンダルシア・フラメンコ。かつてはフラメンコ・ビエネ・デル・スールという名前で毎週火曜日にセビージャのセントラル劇場で始まり、その後、グラナダとマラガのアンダルシア州立の劇場などでも行われるようになったもので、名前は変わったものの今年もセビージャ、グラナダ、マラガで開催されました。 セビージャではアンダルシア舞踊団が5、6日『ピネーダ』、7、8日『ティエラ・ベンディータ』で始まり、翌週から舞踊、カンテ、フュージョン系など様々なフラメンコが10公演行われました。 13日はマリア・モレーノ『マグニフィカ』。今年マドリードのビエナルで初演された作品。バタ・デ・コーラにマントンと言った王道のフラメンコもちょっと捻って見せて行き・ロベルト・ハエンとのコンパス合戦が最高。彼女と同じカディス出身の女優さんがオレグアパみたいな掛け声を続けて歌にして歌い踊りというアナーキーな場面やラウル・カンティサノのエレキギターやらマリアのカスタネットやら盛りだくさん。踊りまくってくれました。 翌日14日のアウロラ・バルガスはエル・ペルラのギターでアレグリアス、ソレア、タンゴ、シギリージャ、ブレリアと歌い踊り、正統派純粋熱血鉄火肌フラメンコを堪能させてくれました。歌というよりフラメンコ。マヌエラ・カラスコみたいな感じ。いるだけでいい。することなすことフラメンコ。 15日のリン・コルテスはコルドバのフラメンコのシンガーソングライター的な人で弾き語り。パコ・デ・ルシアの曲に詩をつけて歌ったりもして、オーソドックスなフラメンコとは違うけど、広い意味ではフラメンコに入るのでしょう。 16日、フラメンコの日はアンダルシア州主催の、14歳から25歳までを対象とした青少年コンクールの覇者たちのガラ公演。カンテのセリア・オルテガは1音程もリズムいいし声がしっかり前に出ている。すでにある程度完成されている感じがあるのに16歳。ギターのハビエル・アルコスも同じく16歳。ソロではパコ・デ・ルシアのフレーズをバリバリ演奏。複雑なフレーズに気を取られすぎてブレリアのコンパスがうまく回っていないのが残念。これからに期待。楽器部門はピアノのハビエル・セシリア。伝統的なフラメンコ・ピアノという感じ。そして舞踊はクラウディア・ラ・デブラ。小さい頃から活躍しているグラナダ出身の踊り手で、現在はアンダルシア舞踊団在籍中。プロとしてバリバリ活躍しているだけにもちろん上手で文句のつけどころはないけど欲を言えばこの人ならではの魅力みたいなものが見えてくるといいだろうな、と思ったのでありました。 最後全員で共演したのは良かったな。聞くところによるとアンドレス・マリンが構成したらしい。ただ順番に出てくるだけのガラよりは作品ぽくなっていたのはそういうわけなのですね。 ©︎ Alejandro Fidalgo/Junta de Andalucía 20日はメルセデス・ルイスとサンティアゴ・ララ『ドゥアル』。フラメンコのメッカ、ヘレス出身の二人による、フラメンコの魂的存在のカンテなしでの作品。『禁じられた遊び』に始まり、古い録音やビデオで踊ったり、アバニコやマントン、カスタネットを使ったりと、いろいろ工夫をして、まとまりのある作品にはなっているのだけど、先日のサンティアゴのリサイタルとほぼ同じ曲だったのはびっくり。 21日はイスラエル・ガルバン『エダ・デ・オロ』だったのですが、ヘレスで観たのでパスして22日はマリア・テレモート『マニフィエスト』は新譜をタイトルにした作品。新譜の曲のほかローレ・イ・マヌエルの曲歌ったり、カンシオン歌ったり、ソロンゴをキーボードで弾き語りしたり、ルンバでは客席に歌うようにあおったりと大活躍。25歳でおそらく最も公演数の多いカンタオーラで2児の母。これからの展開も楽しみ。 なお最後の週はペーニャ公演に行くため 若手バイラオール、フアン・トマス・デ・ラ・モリアや今流行のジェライ・コルテス公演は行けず、トレメンディータのみ観に行きましたが、これが良かった。エレキギターでの弾き語りも、などというと奇異に感じる人もいるかもしれませんが、小さい時から聞いてきた音楽が彼女の中で発酵して独自のスタイルが自然に生まれたという感じ。マヌエル・レイナのロックなドラムが刻むコンパス、ダニ・デ・モロンのギターとの相性も抜群。ソレアやトナ、ベルディアーレス、ミロンガ、ブレリアなどなどフラメンコの基礎をしっかり学び、ソロに伴唱にと経験も積んでしっかり持っている人だからこそ、今の自由が手に入れられたのでしょう。 マヌエル・レイナ、トレメンディータ、ダニ・デ・モロン 【フラメンコ・エクスプエスト】 11月16日、フラメンコの日、アンダルシア州では正午から各県のミュージアムで無料のフラメンコ公演が行われました。セビージャではアンダルシア現代美術センターで、アンドレス・マリンが舞踏の大野一雄がアルヘンティーナをみて踊り始めたことなどへのオマージュも込めた日本的なイメージを込めて、頭に折り紙を載せ、羽織を衣装に、サックスとコントラバスの奏でるバッハやファリャの音楽で踊りました。フラメンコのテクニックを使いながらも現代美術館にふさわしいコンテンポラリーなパフォーマンスでしたが、舞台前、1列目に座ったパトリシア・デル・ポソ州文化長官の足元、床に座り込んだ子供達も身動きしないほど、緊張感にあふれた舞台でありました。 ©︎ Junta de Andalucía なお、このほかにもサラ・ヒメネスがアルメリアの写真センター、アナ・モラーレスがカディスの現代文化センターというように、各地で行われたのは全てコンテンポラリー系の舞踊公演でありました。 【コルドバのコンクール】 現在続いているフラメンココンクールの中で最も古い歴史を誇るコルドバのコンクールが11月、コルドバ市立のゴンゴラ劇場、グラン・テアトロで開催されました。 3年に1度開催されるこのコンクールは数あるフラメンココンクールの中でも権威のあるものの一つとされ、過去の受賞者には1956年、第1回のフォスフォリートに始まり、1965年のマティルデ・コラル、1968年のパコ・デ・ルシアなど錚々たる顔ぶれが並びます。かつてはグループ分けされた曲種ごとの受賞でしたが、2010年に大幅な改革が行われ、カンテ、ギター、舞踊、各部門1名のみの優勝となりました。 第24回となった今年はそれにギター以外の楽器部門も新設されました。楽器部門以外3部門の予選は11月3日からゴンゴラ劇場で行われ、そこで選出された各部門3人と楽器部門の3人。計12人が17日から3日間グラン・テアトロで行われた決勝に進みます。発表は20日朝。今年の受賞者は以下の通りでした。 カンテ部門 サラ・デネス コルドバ県カニェテ・デ・ラス・トーレス出身の48歳。パコ・ペーニャのカンパニーで活躍。またコルドバの音楽院教授でもある。 ©︎ Rafael Alcaide- CNAF IMAE バイレ部門 クリスティーナ・ソレール グラナダ出身、舞踊学院卒業。メルセデス・ルイスやラファエラ・カラスコの作品、タブラオなどで活躍。 ©︎ Rafael Alcaide- CNAF IMAE ギター部門 アンヘル・フローレス 1998年マドリード圏トレホン・デ・アルドス生まれ。コルドバ音楽院に学び、ハエンやヘレスのコンクールで入賞。 ©︎ Rafael Alcaide- CNAF IMAE 楽器部門 フアンフェ・ペレス 1986年ウエルバ県ビジャヌエバ・デ・カスティジェホ生まれ。音楽院でギターを学んだのち、ベースに転向。オルガ・ペリセやトレメンディータら数多くのフラメンコたちと共演。2023年ラテングラミーにもノミネート。 ©︎ Rafael Alcaide- CNAF IMAE 【第8回パストーラ・パボン文化週間 en ペーニャ、トーレス・マカレーナ】 フラメンコ史上最高のカンタオーラと言ってもいい、1890年生まれのパストーラ・パボン“ニーニャ・デ・ロス・ペイネス”が亡くなったのが1969年11月26日。ということで、セビージャを代表するペーニャ、トーレス・マカレーナでは毎年11月後半に、パストーラ・パボン文化週間と題して女性アーティストの公演を集中的に行なっています。 初日、19日のパトリシア・ゲレーロがすごかった。男装でのシギリージャはキリッと男前に。リズムの刻み方のかっこよさ。形の美しさ。曲をしっかり表現。 カンテソロでのティエントからのタンゴは華やかに。サクロモンテの洞窟の婆様が踊るような昔ながらの振りも彼女が踊ると一捻りからの宙返りくらいの勢いで新鮮。これぞフラメンコという心地よさ。 後半のソレア・ポル・ブレリアも圧巻で、劇場公演と同じように衣装から髪型まで一つも手を抜かず、ダニ・デ・モロンのギターも生音で至近距離で彼女を満喫できたのは幸福至極。フラメンコって最高。 翌週27日にはセビージャのビエナルの生みの親で長らく監督を務めたフラメンコ研究家で詩人のホセ・ルイス・オルティス・ヌエボによるパストーラについての講演があり、その後アナ・モラーレスが登場。これがまたすごかった。最近は凝った舞台作品が多く、シンプルに伝統的なフラメンコを踊ることが少なかったのですが、前半はフラン・ビヌエサのギターソロ、マヌエル・パハレスのカンテソロのあと、それはそれは見事なタラントを見せてくれました。 タラントらしい抑制の効いた中に現れるさまざまな感情。悲しみや苦しみ、やるせなさ、悔しさ、ささやかな喜び、重い荷物を持って歩く人生の中でも輝く瞬間があるよね、なんて想像してしまうようなドラマチックで、美しく、エレガント。後半はロンドロのカンテソロのあと、シギリージャ。講演でパストーラが男尊女卑の時代でも自由な女性だった(それゆえ生前はあまり尊重されていなかった)という話を聞いたこともあってか、女性と自由がテーマであるかのように見てしまいました。思い切って鎖を断ち切って前に進んでいく女性のような。 フィン・デ・フィエスタでは先週のヒロイン、パトリシアも舞台に上がりましたが、スタイルは違っても、今のフラメンコ舞踊の最前線を切り開いていく戦友のような二人。ペーニャならではの至近距離、生音での舞台でも、劇場の舞台に勝るとも劣らない、素晴らしいパフォーマンスをみせてくれました。幸せ。 https://youtu.be/DgAUtr-yNcQ 【フラメンコと絵画】 11月25日にはアンダルシア・フラメンコ研究所で、フラメンコとグラフィックアートについてのトークとライブペイントが行われました。「難どころ、フラメンコとグラフィックアート」と題したパネルディスカッションでは、写真家で画家で、パコ・デ・ルシア『ファリャ(ほのお)』など数多くのレコードジャケットを手がけたマシモ・モレーノと、ここ数年多くのイベントのポスターなどを多く描いているパトリシオ・イダルゴが登壇。それぞれの経験を語り、最後にパトリシオ・イダルゴがパーカッション演奏でライブペインティングを披露。 https://youtu.be/aZ_YkrOL6vg 瞬く間に描かれていくフラメンコ。作品集も発売されています. https://www.patriciopinceles.com 【訃報/フォスフォリート】 1989年アラウリン・デ・ラ・トーレのフェスティバル。伴奏はエンリケ・デ・メルチョール ©︎ Kyoko Shikaze 11月13日、マラガ地方大学病院で、歌い手フォスフォリートが亡くなりました。本名アントニオ・フェルナンデス・ディアス。1932年8月3日、コルドバ県プエンテ・ヘニル生まれというから93歳。幼い頃から歌い始め、1956年第1回コルドバのコンクールで全5部門優勝という圧倒的な実力で注目され、後、20枚以上のアルバムをフアン・アビチュエラやパコ・デ・ルシアらの伴奏で録音しています。深い知識と広いレパートリーで知られ、各地のフェスティバルなどで長年活躍。1974年には小松原庸子スペイン舞踊団の招きで来日、東京での公演に出演しています。1968年ヘレスのフラメンコ学会賞、1985年コンパス・デ・カンテ賞、1999年パストーラ・パボン賞、2005年カンテ黄金のかぎ、2006年アンダルシア州メダル、2007年美術金メダルなど数多くのフラメンコ及び文化部門の賞を受賞している実力者。長年マラガ県アラウリン・デ・ラ・トーレに住んでいましたが、アラウリンでは一日、出身地であるプエンテ・ヘニルは三日間、私立フラメンコ・センターにも彼の名をつけるなどゆかりの深いコルドバ市やマラガ市も二日間喪に服し、市役所には半旗が掲げられました。 2002年5月セビージャ、アンダルシア州文化庁にて。パコ・デ・ルシアのパストーラ・パボン賞授賞式にて。左からレメディオス・アマジャ、パコ、フォスフォリート、ライムンド・アマドール、ポティート 2003年5月コルドバ グエアンテアトロで。コンクールの優勝者ガラの前に。左からロベルト・ヒメネス夫妻、一人置いてフォスフォリート、マリオ・マジャ、座っているのはマティルデ・コラル 2008年2月ヘレス フラメンコ学会賞授賞式にて。フォスフォリート、筆者、チャノ・ロバート、ホセ・ガルバン 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====
- 《FLAMENCO DE LA RAÍZ ~フラメンコの根源~》
(martes, 2 de diciembre 2025) 2025年8月20日(水)・21日(木) 杉並公会堂 大ホール(東京) 写真/北澤壯太 Fotos por Sohta Kitazawa 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 昨年「日本ファイナル公演」として来日し、大勢の観客に惜しまれつつも圧倒的な存在感でファンを魅了した「バイレ・フラメンコの女王」マヌエラ・カラスコが、再び日本の舞台に戻ってきてくれた。 しかも今回はカディスの名門出身のカンテの巨匠フアン・ビジャールとそのファミリーとの共演という、スペイン本国でもなかなか実現が難しいという夢の組み合わせだ。 音響に定評のあるホールを舞台に、2日間3公演。受け取ったリーフレットには「全プログラム未定」とある。どんな舞台が待っているのか、期待が高まる。 始まりはカンテ・デュオによるマルティネーテ。フアンとエンリケが互いに呼吸を感じ、歌い繋ぐ。それぞれに長い歳月を重ねて磨き上げてきた、唯一無二の歌声を響かせる。まさにフラメンコの根源に迫る二重唱だ。 マヌエラが披露するのはタラント。青の鮮やかなマントンをまとい舞台に立つ姿は堂々として、ディオーサ(女神)という呼び名にふさわしい。しっかりした音色の足技は安定感があり、昨年来日した時よりも力強くなったように感じられた。 フアンがカンテソロで聴かせるソレア。少し小柄な体からほとばしるように溢れ出る歌声には、その人生が滲み出る。ペドロが奏でる鮮やかな輪郭のメロディーとともに、その呼吸の妙と確かな歌唱にすっかり聴き入ってしまった。 フアン・ホセのバイレソロはアレグリアス 。始まりからトップギアのボルテージで魅せてくれる。さらに進化した踊りは流れるような身のこなしでコンパスの波を自在に遊び、そして切れ味鋭いレマーテで観客の心を仕留める。歌うフアン・ビジャール・イーホの声は父親のフアンによく似ていて、一族の血のつながりが濃く感じられた。 エンリケのカンテソロのマラゲーニャは、実は全3公演を異なるエスティーロ(スタイル)で披露してくれた。初日がマラゲーニャ・デ・メジソ、翌日昼の部はマラゲーニャ・マヌエルトーレ、そして夜の部はマラゲーニャ・チャコン。私は初日に鑑賞し、深みのある上質なカンテを堪能した。 舞台中央のマントンを掛けた長テーブルを囲んで始まるフィエスタ。サマラがひと振り踊ると、フアンとマヌエラが並んで登場。フアンが歌い、ペドロのギターと森川のバイオリンに合わせてマヌエラが足音を響かせる。家族や仲間との絆が感じられる心温まるシーンだ。 ギターとバイオリンのデュオによるファルーカは、まるで宝石のような珠玉の一曲。ずっと聴いていたくなるような美しい音色と哀愁を醸し出すハーモニー。ペドロはこのデュオ以外も、公演全曲の伴奏を一人で弾き切った。間違いなく今回の舞台の立役者と言えるだろう。 サマラがフェステーラとして歌い踊るプレリアでは、グルーヴ沸き立つ演奏に全身からエネルギーが溢れるよう。力強い歌声で客席に歌いかけ、会場は一体感に包まれた。 ラストはマヌエラのソレア。フラメンコに対し常に真摯に、渾身の力を込めてその一曲を踊る、尊い瞬間。エンリケと二人で肩を組んで舞台を去るその姿に、同志の絆が見えて胸が熱くなった。 カーテンコールは大勢の観客のスタンディングオベーションで迎えられた。フィン・デ・フィエスタではマヌエラとフアン・ホセが踊り、伝統が受け継がれていく未来を象徴するような瞬間だった。 二つの名門ファミリーとこの舞台で共演した全員が、信頼で結ばれたワンチームのような一体感を醸し出していた。受け継いできたフラメンコの伝統を凝縮して開花させた舞台を、この日本で生で観ることができた意義は大きい。 この公演は、今年いっぱい(12月31日まで)アーカイブ配信で視聴することが可能だ。後にも先にも実現が難しいであろうこの奇跡の共演を、ぜひ記憶に焼き付けてほしい。 *配信申込URL https://tablaoesperanza.jp/events/63201/ 【出演】 唄:Juan Villar / フアン・ビジャール 踊り:Manuela Carrasco / マヌエラ・カラスコ 唄:Enrique "El Extremeño" / エンリケ "エル・エストレメーニョ" ギター:Pedro Sierra / ペドロ・シエラ パーカッション:José Carrasco / ホセ・カラスコ 唄:Juan Villar Hijo / フアン・ビジャール・イーホ フェステーラ:Zamara Carrasco / サマラ・カラスコ 踊り:Juan José Villar / フアン・ホセ・ビジャール バイオリン:森川拓哉 =====
- 新・フラメンコのあした vol.34
(lunes, 1 de diciembre 2025) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。 今月は、この10月にマドリードで開催された第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバルで世界初演として上演された、サラ・カレロの公演についてのリポートです。 サラ・カレロ 『タベルナ・ファム』 世界初演 第20回「スマ・フラメンカ」フェスティバル 2025年10月17日 カナル劇場、緑の間、マドリード、スペイン Sara Calero “Taberna Femme” XX Festival Suma Flamenca Teatros del Canal, Sala Verde, Madrid. 17 octubre 2025 文/東 敬子 画像/東 敬子、宣伝素材 Texto por Keiko Higashi Fotos: por Keiko Higashi / por promoción SARA CALERO (c)marcosGpunto 暗闇の中、アローズの「アイ・ラブ・ロックンロール」が大音響で流れた瞬間、私は思わず「ああ〜」とうなだれてしまいました。 他ジャンルの音楽を使って「モデルノ」なんて言われたのはもう20年前のはなし。作中でセリフがあったり、奇抜な衣装を着たり、「女性の心情を描く」なんてコンセプトも、今の若い世代だったらもうやらないかなあ。でもサラ・カレロは1983年生まれの現在42歳。どっぷり「その世代」の彼女なら、仕方ないのかなと、最初は思いました。 で、「ベサメ・ムーチョ」とか、他ジャンルの音楽が出てくる序盤は、「いや〜もう古いって〜」と観る気を目一杯削がれていたんですが、作品が進むにつれ、「この表現しかないのだ」と思うに至りました。納得させられたというか。別に古くて良いんですよ。だって彼女は「あの頃の私たち」を表現したかったんですから。私はそう思います。 マドリード出身でスペイン国立バレエ団などで活躍し、華のある踊りで人気のサラ・カレロが提唱する今作品は、第20回を迎える「スマ・フラメンカ」フェスティバルの一環として、世界初演されました。 4人の女友達が、夜のバルで大いに飲んで、歌って踊ってハメを外す、そして最後はそれぞれの日々の想いを吐露して友情を深めると言うストーリー。要はテレビシリーズの「セックス・アンド・ザ・シティ」のフラメンコ版ですね。サラと共にその宴を謳歌するのは、ルシア・ルイバル、アナ・アロージョ、カルメン・モレーノの3人。 ロックやレゲトンで散々盛り上がった彼女達の中には、夜も更け、酔っ払って泣き出す者や、眠りこける者も。しかしそうしてついにフラメンコの深淵に辿り着くのです。私はその瞬間、彼女たちの力技でねじ伏せられました。素晴らしいテクニックに加え、個性が爆発している。ただ普通に踊るのではなく、演技によって誇張された感情表現に導かれる踊りは、非常にドラマチックで見応えがありましたが、それはひとえに、リアルな心情を呼び起こさせる彼女達の表現力の賜物でしょう。 サラのタランタは、もはや獰猛でした。以前観た時はもっとさらっとした、スマートな印象でしたが、彼女は人生の次のステージに突入したんだなと感じました。 そして私が今回最も驚いたのがカルメン・モレーノでした。1989年、アルメリア生まれの彼女は、とにかく歌が上手い。彼女を観るのは今回が初めてだったので、カンタオーラかと思いきや、ソレアを踊り出すと、そのあまりのフラメンカぶりに心が震えました。3人を聖母のように優しく撫でながら歌うローレ・イ・マヌエルの「ラ・ロサ・イ・ブランカ」では、思わず目頭が熱くなってしまいました。 ギターのハビエル・コンデ、カンテのセルヒオ・エル・コロラオの男性コンビも、しっかりとバックを固めて、このフィエスタに貢献しました。女性たちの狂乱に若干引き気味でしたが、コミカルな場面もくどくならず、さらっとこなした所が良かったです。セルヒオなんて、胸毛の裸体が描いてあるTシャツに金のネックレスで出てくる場面もありましたからね。良く頑張りました(笑)。ハビエルは昔はソロでしか観たことがありませんでしたが、そのとても頼りになる伴奏で、今後引っ張りだこになることでしょう。 怒涛のステージ。4人のバイラオーラは「アイ・ラブ・ロックンロール」で長い夜の幕を閉じました。 Lucia - Sara Calero - Ana - Carmen (c)Keiko Higashi 【筆者プロフィール】 東 敬子 (Keiko Higashi) /フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 =====
- 《うねじゅんじゅん》結成10周年記念公演
(domingo, 30 de noviembre 2025) 京都でスタジオ・エセンシアを主宰する宇根由佳さん、大阪で舞踊・教授活動を行う森脇淳子さん、そしてスペイン・セビージャ在住で昨年カンテ・デ・ラス・ミナス国際コンクール舞踊部門で優勝した萩原淳子さんの3名によるユニット「うねじゅんじゅん」の結成10周年を記念する劇場公演が、来年1月に京都府民ホール アルティで開催されます。 この舞台では、3名それぞれのソロ舞踊のほかに、8月に行われたオーディションを通過したダンサー6名による群舞や、うねじゅんじゅんとの群舞も披露されるなど盛りだくさんなプログラム。 SS席はもう完売とのことなので、他の席種でも良いお席で観たい方はお早目のお申し込みを! 《うねじゅんじゅん》結成10周年記念公演 日時:2026年1月31日(土) 開場17:30 開演 18:00 会場:京都府民ホール アルティ(京都) 入場料:*全席指定 SS ¥8,000/S ¥7,500/A ¥6,500/学生席 (小中高校生)¥3,500 出演: B=宇根由佳、森脇淳子、萩原淳子 群舞=笠井理沙、佐藤心晴、島村志野、下井田浩子、手島佳代子、西村真由美 C=今枝友加 G=宇根理浩 P=大槻敏己 【申込/問】 うねじゅんじゅん劇場公演事務局 ticket.u.j.y@gmail.com 予約の際は、①氏名 ②席種 ③人数 をご連絡下さい。 =====
- アーティスト名鑑vol.9
(miércoles, 20 de marzo 2024) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze ランカピーノ(カンテ) セラニート(ギター) エル・グイト(バイレ) Alonso Núñez, Núñez “Rancapino” Chiclana de la Frontera, Cádiz, 1945, ランカピーノ 本名アロンソ・ヌニェス・ヌニェス 1945年カディス県チクラナ・デ・ラ・フロンテーラ 祖母は歌い手ラ・オビスパ、兄オリージョ・デル・プエルト、息と歌い手のファミリーに育ち、子供の頃から歌い、アウレリオ・セジェスやマノロ・カラコールの薫陶を受け、マドリードのタブラオなどで活躍。77年コルドバのコンクール、マラゲーニャ部門優勝。81年初来日。古き良きカディスのカンテの味わいを伝える貴重な存在。息子ランカピーノ・チーコも歌い手。 【動画】 カナルスールのフラメンコ番組で歌ったマラゲーニャ・デ・メジーソ。伴奏はモライート。 https://youtu.be/0dXbYveKu1A?si=GUZTbzbikRLXjcB- Victor Monge Fernández “Serranito” Madrid, 16-7-1942 セラニート 本名ビクトル・ルイス・モンヘ・フェルナンデス 1942年7月16日マドリード生まれ http://serranito.com/ ギターは独学。12歳ですでにプロとして活躍。グループ、ロス・セラーノスと演奏し、芸名はここからきている。13歳でタブラオの前身で歌伴奏をし、劇場の専属などを経て、後、タブラオ、コラル・デ・ラ・モレリア等で演奏。1962年歌伴奏で、翌年にはソロでレコード録音。69年以降は超絶技巧のソリストとして世界を舞台に公演。パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカルと三羽烏とも呼ばれた。1973年初来日、以後計5回来日している。 1989年ロシオ巡礼にてディエゴ・カラスコと ©︎ Kyoko Shikaze 【動画】 カナルスール、アンダルシアの日のガラでのブレリアの演奏。超絶テク健在。踊りはホアキン・ルイス。第2ギターにミゲル・リベラ、ホセ・カルロス・ゴメスらが参加している。 https://youtu.be/NNjAgErMtek?si=jlk5ccx7kM46FJqM Eduardo Serrano Iglesias “El Güito” Madrid, 5-7-1942 エル・グイト 本名エドゥアルド・セラーノ・イグレシアス 1942年7月5日マドリード生まれ Sevilla. 2015 Septiembre es flamenco©︎Antonio Acedo Bienal 芸名は彼が赤ん坊の時、姉がネグリト(色黒の子)と言えずグイトとなまったことから。子供の時から踊り多くの映画に出演。アントニオ・マリンに師事し12歳で代教。15歳頃からピラール・ロペス舞踊団でアントニオ・ガデスやマリオ・マジャらと踊る。退団後は自身のグループや、マリオとその妻カルメン・モーラとのトリオ・マドリードで、タブラオや各地のフェスティバル、劇場公演に出演。またスタジオ、アモール・デ・ディオスで長年後進の指導にもあたった。正確無比で美しい姿勢、特にその頭の位置は今も語り草。1987年小松原庸子の招きで初来日した。その絶品ソレアを見ずしてフラメンコ舞踊は語れない。 【動画】 カナルスールのフラメンコ番組でのファルーカ。 https://youtu.be/YoWzPExcH3A?si=LZ6_JSkCiS7QT19- 極めつきソレア。 https://youtu.be/9xYEcBskqQ4?si=P9WcVebUABOubnLO 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- わが心のスペイン vol.24
(miércoles, 26 de noviembre 2025) 南房総と南スペインで田舎暮らしを楽しむ、石井崇が描くスペインの情景。 『ロタの漁港』 小さな漁港ですが、こんなところに生活感溢れる情景があります。 押し並べてスペインの漁船はかなり色合いがしっかりしています。 それがまた絵心をくすぐるのです。 ディゼルエンジンの音がまた良いですね。 でも、こんなところはほとんど消えかけています。 どこも観光地になり、ヨットやスピードボートに置き換わっています。 ( 写真はフェレイローラ村 ) 【プロフィール】 石井崇(Takashi Ishii) /画家。1942年東京・京橋生まれ。東京芸術大学卒業後、1975年単身スペインに渡り、村祭りを回るテキヤ業などでしのぐ。セビリア郊外アルカラ・デ・グアダイラに居住。1989年よりグラナダ・アルプハーラ(Alpujarra)地方にあるフェレイローラ村(Ferreirola)にアトリエを構え、今はフェレイローラ村と南房総館山をふたつの故郷とし、田舎暮らしを楽しんでいる。著作は「おれたちがジプシーだったとき」、「詩画集プラテーロとわたし」、「スペイン四季暦」、「南スペイン、白い村の陽だまりから」、画集「イシイタカシの世界」など。2004年「館山親善ふるさと大使」に任命、全国大学フラメンコ大会を企画。 ホームページ「イシイタカシの世界」 http://www.oliva2004.net/index.html ======
- EL CARTERO スペイン旅行記 2016 /7
[期間]2016年2月14日~3月14日 (sábado, 15 de noviembre 2025) 昨年2024年10月にこの世を去ったカンタオール、瀧本正信さん。 日本のフラメンコ界に本場のカンテの種をまき、強い信念と歯に衣着せぬ率直な物言いで周囲に大きな刺激を与え、何人もの後進を育て多大な功績を残しました。 約10年前に瀧本さんが教え子たちとともにスペインを巡った旅行記が、当時メンバーの一人として同行した、現在歌い手として活躍する金高荘子さんの手により記されていました。 現地で出会った様々な人たちとの、フラメンコへのアフィシオン(愛情)に溢れた交流の記録を、たくさんの写真とともにご紹介します。 【金高荘子さんより】 ここに綴る旅の記録には、今はもう会うことのできない大切な友人たちも登場します。 彼らを偲び、心からの感謝と祈りを込めて記します。 また、時の流れの中で、この記録に登場するお店のいくつかはすでに営業を終えています。 失われたものへの想いと共に、ここに残された記憶を紡ぎました。 当時の旅を歩む"El Cartero"こと瀧本正信氏の姿を思い浮かべながら読んでいただければ幸いです。 文・写真/金高荘子 Texto y fotos por Soko Kanetaka 【第7回】 ◆2月26日 午後はすごい雨。 でも今日もLos Tres Reyes へ行く。 この店の壁に掛かっている絵。 店の名前はここから来ているらしい。 Los Tres Reyes (3人の王様) ここではその3人はこちら。 国王とカマロンとキリスト。 さすがヘレス! 今日も唄っているうちに、気がつくと人が集まっている。 PacoおじさんとFandango、 Bulería、Tango…と楽しんでいたら、突如ふたりの男性が大声で唄いながら店に入ってきた。みんな顔なじみのようだったが一部のお客さんは彼らのことが気に入らないらしく、相手にするな!と私たちに目配せをする。が、すごい唄につい釘付けになる。 Pacoおじさんによると、彼はSalmoneteの兄弟だそう。店を巡ってカンテを唄ってはコインを稼いでいるらしい。Carteroが彼に向かってギターを弾き始めるとサッと隣にやってきてSoleáを唄った。怪獣が吠えてるみたいなすごい唄! 怪獣はManuelという名前で、Fandango、Siguiriya、Buleríaと続けて唄った。 https://youtu.be/yXFXsL4T-o4?si=oKCoLfZv_AdzrDPv https://youtu.be/HAnG-0fY-JM?si=YAq1VYdADENpDrHy ◆Los Tres Reyesを出て、みんなでPeña Flamenca La Buleríaへ。 Rocio Parrillaのカンテライブに行く。 彼女はParrilla de Jerezの親族だそう。 Peña Flamenca La Buleríaは地元のアフィシオナードたちが集まる、Jerezで一番大きなペーニャだ。 ◆ライブの前、バルコーナーにはペーニャの関係者らしき人たちが集まって談笑していた。 Carteroはここでも躊躇いなくギターを出し、その集まりの中に入って行く。 Carteroがギターを弾きながらBuleríaを唄うと、警戒ぎみにCarteroを見ていた人たちがだんだんと笑顔になり、あっという間に距離が縮まった。 ◆この日のライブのカンタオーラはRocio Parrilla。パワフルで素晴らしいカンテが聴けてみんな大満足。 Fin de FiestaではCarteroも参加。 Jerezのアイドル(?)ZorriおじさんのBuleríaに萌えた。 CarteroはZorriおじさんと友情の印にスカーフを交換。Domingo Rubichiも来ていてまたまた記念撮影。 このペーニャの会員であるマダムたちにも気に入ってもらったようだった。 ◆ショーが終わってからはアフィシオナードたちの唄を堪能する。 いろんな唄い手が次々に出てきて素晴らしい唄をきかせてくれる。Carteroはずっと伴奏しっぱなし。 少し風邪気味だったCarteroも今日はノドの調子も随分良くなったらしく、おじさんと代わりばんこにMartineteを唄って楽しそうだった。 おじさんはMorito de Jerez。サンミゲル地区のカンタオールで、Semana Santaではサエタを唄うらしい。 Gonzalo de JerezのAlegrias、Fandango de Huelva も素晴らしかった。 CarteroチームもBuleríaで参加。 温かいお客様たちに感激。フラメンコを愛する人たちとの新たな出会いが嬉しかった。 (*第8回に続く) ©近藤佳奈 【筆者プロフィール】 金高荘子(Soko Kanetaka)/幼少期から音楽に触れ、学生時代にはロックなどのバンド活動を通し音楽に親しむ。2002年にフラメンコと出会い、2010〜2024年に瀧本正信氏に師事。短期渡西を繰り返しながら現在も研鑽を重ねている。 =====











