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- わが心のスペイン vol.18
(lunes, 26 de mayo 2025) 南房総と南スペインで田舎暮らしを楽しむ、石井崇が描くスペインの情景。 『アストリア地方の美味しい青カビチーズ』 小さな村でありながら青カビチーズで全国的な名産品であるカブラーレスを産出する カブラーレス村に行ってきました。湿潤な洞窟の中で熟成させるのです。 昔はイチジクの葉で包んでいましたが、今はどうなんでしょうか。 まさしくチーズケーキ、パスタ、そしてパンに乗せて赤ワインのお供になります。 ( 写真はフェレイローラ村 ) 【プロフィール】 石井崇(Takashi Ishii) /画家。1942年東京・京橋生まれ。東京芸術大学卒業後、1975年単身スペインに渡り、村祭りを回るテキヤ業などでしのぐ。セビリア郊外アルカラ・デ・グアダイラに居住。1989年よりグラナダ・アルプハーラ(Alpujarra)地方にあるフェレイローラ村(Ferreirola)にアトリエを構え、今はフェレイローラ村と南房総館山をふたつの故郷とし、田舎暮らしを楽しんでいる。著作は「おれたちがジプシーだったとき」、「詩画集プラテーロとわたし」、「スペイン四季暦」、「南スペイン、白い村の陽だまりから」、画集「イシイタカシの世界」など。2004年「館山親善ふるさと大使」に任命、全国大学フラメンコ大会を企画。 ホームページ「イシイタカシの世界」 http://www.oliva2004.net/index.html ======
- アーティスト名鑑 vol.23
(miércoles, 21 de mayo 2025) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze *名鑑登場アーティスト一覧は こちらから レメディオス・アマジャ(カンテ) ハビエル・バロン(バイレ) マノロ・フランコ(ギター) María Dolores Amaya Vega “Remedios Amaya” Sevilla 1962 レメディオス・アマジャ 本名 マリア・ドローレス・アマジャ・ベガ 1962年 セビージャ生まれ 2018年 Bienal での『ヒターナ』公演で ©︎ Oscar Romero 初期のアルバムに収録された『タンゴス・デ・ラ・フロンテーラ』という曲にノックアウトされた。タンゴというとブレリアと並ぶ、宴につきものの、明るい曲というイメージなのだが、これは違う。どこか悲しみをたたえた、深みのある、ソレアのようなタンゴなのだ。 カマロン・デ・ラ・イスラを敬愛し信奉し、女カマロンと呼ばれるのは嬉しいけど勿体無いという彼女は父が踊り手で、10代前半でタブラオデビュー、17才でアルバム録音、22歳でユーロビジョン、ヨーロッパ歌謡祭のスペイン代表に、ととんとん拍子できたものの歌謡祭では一票も獲得できず表舞台からは姿を消したものの、1997年ビセンテ・アミーゴのプロデュースのアルバムが大ヒットし、復活を果たした。タンゴ、ブレリアを得意とするが、母がエストレマドゥーラ出身で歌が得意だったということもあるのか、特にタンゴやハレオがいい。カルメン、マルタ、ホアキーナら妹たちはラス・ペリグロスというコーラスグループを組む。そこに一時、娘サマラも加わっていた。 1991年 トリアーナのペーニャ・エル・ボージョにて。抱いているのはディエゴ・カラスコの長男でパーカッション奏者のアネ・カラスコ。右は妹ホアキーナ ©︎ Kyoko Shikaze 【動画】 1983年の国営放送での『タンゴス・デ・ラ・フロンテーラ』 https://youtu.be/zRsWHHudMy4?si=NzseWoYTxBvu1vQk 1989年カナルスールのフラメンコ番組でブレリアを歌い踊る。ギターはカルロス・エレディア、コーラスにカルメン、マルタ、ホアキーナのラス・ペリグロ。ユーロビジョンで歌った曲も取り入れて歌っている。 https://youtu.be/f7gaFKttI0w?si=tZHTHsH5fsFVP1RK 2011年フラメンコ番組でブレリアを歌う。伴奏はフアン・ディエゴ。 https://youtu.be/R1s6WZve6ZU?si=WyvlsRSVYMEbTEm4 2014年ヘレスのフェスティバルで、ホアキン・グリロの作品に出演。 https://vimeo.com/88571839 Francisco Javier Álvarez Rico “Javier Barón” Alcalá de la Guadaira (Sevilla), 1963 ハビエル・バロン 本名 フランシスコ・ハビエル・アルバレス・リコ 1963年セビージャ県アルカラ・デ・ラ・グアダイラ生まれ 彼の踊りを見ると幸せになる。フラメンコ好きならだれでもそうなのでは? 心からフラメンコを愛し、全身でフラメンコを楽しんでいるのが伝わってくる。そんな踊りだ。難しいことをさりげなくやってしまうのでその凄さが伝わりにくい人かもしれない。 幼い頃からセビージャ市内のぺぺ・リオスのアカデミアで学び、後、マドリードに出て、シローらに学び、12歳の時にはルイシージョ舞踊団のソリストを務める。1981年スペイン国立バレエ団入団。退団後の88年、セビージャのビエナルでのヒラルディージョのコンクールで優勝し注目を集め、ソロで活躍。1994年にはサラ・バラスとともに新宿“エル・フラメンコ”に出演。97年に自らの舞踊団を立ち上げ、以後、数多くの作品を世に送り出してきた。中でも2002年の『ディメ』はフラメンコの歴史に残る名作。2008年にプレミオ・ナショナルを受賞。へーレン財団教授を務めるなどしたが現在は地元でスタジオを構えている。 Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León 2007年マラガのビエナルで ©︎ Kyoko Shikaze 2006年 ヘレスのバルで、ディエゴ・カラスコと ©︎ Kyoko Shikaze 【動画】 1988年のビエナル、ヒラルディージョのコンクールでブレリア・ポル・ソレア。歌はグアディアナとカンカニージャ、ギターはペドロ・シエラとパコ・クルス。 https://youtu.be/o3e3yJJQgS4?si=kaWy-nHYOuQQSzlk 1990年カナルスールのフラメンコ番組でアレグリアス。歌はボケロンとクーロ・フェルナンデス、ギターはパコ・クルスとフアン・マヌエル・フローレス。 https://youtu.be/tkXC5xd1MU8?si=D63gIMisopJ4T5VT 2003年ヘレスのフェスティバルでの『ディメ』。パーカッションはマノロ・ソレール。 https://youtu.be/nOLM0PQhgd0?si=SWzxapG6cD96ynAb 2022年古巣スペイン国立バレエ団でのワークショップの様子。 https://youtu.be/E-i5q2v8ZTo?si=dHBmjm543a4S-vhK Manuel Franco Barón “Manolo Franco” Sevilla 1960 マノロ・フランコ 本名マヌエル・フランコ・バロン 1960年 セビージャ生まれ Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León 昔ながらの、一歩下がって歌をたてた伴奏をきかせてくれる実力派。1984年、ビエナルのヒラルディージョのコンクールでなみいるベテランを抑え、見事優勝し一躍注目を浴びた。 叔父マノロ・バロンやアントニオ・オスーナに師事。後、マティルデ・コラルの舞踊教室で伴奏を務め、15歳でプロとしてフェスティバルで演奏。1979年にラジオ・セビージャの賞を受賞、1980年に伴奏で初録音。ヒラルディージョ優勝後は、ソロアルバム『アルヒベ』を発表し、ソロでも活躍し1990年には来日も果たしている。が、その活動の中心となったのはカンテ伴奏。カリスト・サンチェスやホセ・ガランなどの歌い手たちや多くのセビジャーナスのグループのアルバムに参加しているほか、各地のフェスティバルなどでも活躍。またクリスティーナ・へーレン財団フラメンコ芸術学校やコルドバの音楽学校のフラメンコギター教授を長年務めた。2002年、2004年にはビエナルの伴奏賞を、2012年にはコンパス・デル・カンテ賞を受賞している。 ビエナルでセグンド・ファルコンの伴奏を © Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro 【動画】 1999年カナルスールのフラメンコ番組で、ソロでブレリアを https://www.youtube.com/watch?v=3gDrD2prLGA 2008年マドリードのフラメンコ祭でカリスト・サンチェスを伴奏。ティエントス https://youtu.be/-IX60J52a2w?si=eCHyyiOfpJc3DFjD 2024年ビエナルで https://youtu.be/Aa-NiCnzwJA?si=DmCbRw6WIPfv4sZg 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====
- 【3/10発売】「フラメンコ年鑑2024」
(lunes, 10 de marzo 2025) 当サイトFlamenco fanの特別編集として、昨年1年間の日本における様々なフラメンコの情報を集約した単行本「フラメンコ年鑑2024」を、本日3月10日発売いたしました。 仕様は次の通りになります。 「フラメンコ年鑑2024」 Flamenco fan特別編集 A4判フルカラー、88頁 1,980円(税込) 【内容】 ・グラビア 写真家が選ぶ今年の一枚 (撮影:大森有起、川島浩之、川尻敏晴、MiCHiCO、佐藤尚久) ・公演リポート10選(マヌエラ・カラスコ来日公演、スペイン国立バレエ団2024日本公演、石井智子スペイン舞踊団「みだれ髪」、LOS 4 FLAMENCOS、中里眞央リサイタル、アルテイソレラ舞踊団「民族の記憶」、鈴木敬子リサイタル、マヌエル・リニャン en ガルロチ、中田佳代子公演「En silencio」、小島章司公演「蒼茫」) ・フラメンコアーティスト・関係者のエッセイ(志風恭子、中原潤、鈴木眞澄、大沼由紀、東敬子、永田健、石井智子、萩原淳子、鬼頭幸穂、濱田吾愛、今枝友加、佐藤浩希、瀬戸雅美、中田佳代子、稲田進、島田純子、安井理紗、小島章司) ・国内フラメンコアーティスト名鑑(全57名) ・マンガで振り返る2024年(川松冬花、竜之介/永野暢子) ・ライターが選ぶフラメンコ三大ニュース(石井拓人、若林作絵、白石和己、S. Hori、凌木智里) ・2024年TOPICS(各種野外イベント、プリメラフェスティバル、都内タブラオ閉店&再開、新人公演、真夏の夜のフラメンコ、追悼) 本誌の表紙には、昨年開催された第33回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」入賞者の中から、奨励賞を受賞した脇川愛さんの写真を採用させていただきました。 (撮影/川島浩之、提供/一般社団法人 日本フラメンコ協会) 昨年1年間の様々な出来事、フラメンコに関わる皆様ひとりひとりの思いが詰まった、とても中身の濃い内容になっております。 ぜひお手元に置いていただけたらうれしいです。 どうぞよろしくお願い致します。 2025年3月吉日 フラメンコファン編集部 株式会社カミーノ 金子功子 *こちらの単行本のご注文は、Eメール( flamencofan2023@gmail.com )または HPのお問合せフォーム からお願い致します。 *送付先の ご住所・お名前・電話番号・冊数 をご記入の上、ご注文下さい。 *ご注文受付より随時発送させていただきます。その際にお振込先をお知らせしますので、商品到着後10日以内にお振込みをお願い致します。 *書店では取り扱っておりませんので、ご了承の程よろしくお願い致します。以下の店舗ではお取り扱いしております。 【お取り扱い店舗】 *2025.5.20現在 ・ プリメラギター社 (東新宿) ・ アクースティカ (ネット販売) ・ イベリア (恵比寿) ・ セノビージャ・ハポン南新宿店 (代々木) ・ クロサワ楽器 日本総本店2階 (新大久保) ・ ドセデルフラメンコ (福岡) =====
- 『ANTÍPODAS』フロレンシア・オス
(lunes, 19 de mayo 2025) スペインのフラメンコ界で最も成功した外国人アーティストの一人として注目される、チリ出身のフラメンコ舞踊家フロレンシア・オスによるソロ作品『ANTÍPODAS』がこの7月に東京で上演されます。 この作品は、チェリストや歌手として活躍する双子の姉妹イシドラ・オリアンと二人きりで表現する舞台作品。初演となった2021年のヘレスのフェスティバルでは新人賞を受賞し、その後セビージャのビエナルや多くの国でも上演され、今なお世界中から公演オファーが途切れない人気の作品となっています。 シンプルで自然な色彩を基調とし、隅々にまで繊細な美意識が行き届いた珠玉の舞台作品を、この機会にぜひお見逃しなく! 【ANTÍPODAS】 出演:フロレンシア・オス、イシドラ・オリアン 会場:杉並公会堂 小ホール (東京、JR荻窪駅から徒歩7分) 日時:計3回公演 ① 7/14(月)19:30 開演 ② 7/15(火)15:00 開演 ③ 7/15(火)19:00 開演 チケット料金: S席 13,800円 A席 12,000円 B席 8,800円(見切れ席) S席グループ割:2枚以上のご購入で1枚13,500円 申込方法: ・Livepocket ※手数料無料 https://t.livepocket.jp/t/deseado ・イープラス ※グループ割の取り扱い無し https://eplus.jp/sf/detail/4308030001 ・公式サイト ※座席指定不可 https://deseado.tokyo ■■ 作品概要 ■■ フロレンシア・オスは『ANTÍPODAS』で、2021年のヘレス・フラメンコフェスティバルにて新人賞を受賞しました。以来、『ANTÍPODAS』はスペイン国内はもとより、ヨーロッパ各地や北米、南米の都市でも上演され、フロレンシア・オスの存在を強く印象づけた代表作として、今なお多くの観客を魅了し続けています。 チェリストであり歌手でもある双子の姉妹、イシドラ・オリアンと2人だけで挑んだ本作は、舞台上で関係し合う二人の女性の共存を描いています。ドッペルゲンガー、分身、影などといった神話的原型を出発点に、自己の二重性と個性に向き合いながら、かつて一つだった存在が自らの意思で「自分自身になる」までの旅路を描きます。 現代的でミニマル、調和や対称、優雅さやバランスを追求した本作は、その圧倒的なビジュアルの美しさに加え、鳥のさえずりや虫の声のような心地よいサウンドにも注目です。 音楽はフラメンコの曲はもちろん、カサドの『無伴奏チェロ組曲第3』や、シューベルトの『影法師』などクラシックの名曲、そして、彼女らの故郷であるチリをはじめ南米で親しまれているクエカなど、様々な音楽が、フラメンコの靴音やパーカッションを伴いながら進行します。 ____________________ 作品名:ANTÍPODAS 出演:フロレンシア・オス、イシドラ・オリアン 上演時間:約55分 原案:フロレンシア・オス、ダビ・コリア 監督:ダビ・コリア 振付:フロレンシア・オス 音楽:イシドラ・オリアン 振付協力:エドゥアルド・マルティネス、ダビ・コリア 企画・制作・主催: DESEADO(デセアード) Email: info@deseado.tokyo Tel:070-9043-7921 公式サイト: https://deseado.tokyo ======
- ArtistaЯ ~表現者☆~ ep.17
ep.17 加藤美香 Mika Kato (viernes, 16 de mayo 2025) 写真家・大森有起が、今を輝くフラメンコ・アーティストたちの真の姿を写す 美香さんの揺るぎない姿に強い印象を抱いていた。 でも少しづつ彼女を知る間に繊細な情種を感じ、 抱いていた姿は優しく変化した。 「全は一、一は全」 相手を知ることは大切なプロセス。 写真には一つ一つ歩みの全てを紡いでいる。 ©Yuki Omori 「一番大切にしていること」 私が踊りで大切にしていることは、 ミュージシャンが奏でる音楽を心で受け止め音楽と一体化し、 踊りを通してそれを表現することです。 一体化の度合いが良いときは ミュージシャンと踊り手がお互いに影響しあい、 どんどん作品が膨らんでいきエネルギーが膨らんでいきます。 そんな踊りが出来るように、いつも目指しています。 ”目で聞いて耳で見る” 踊りを見ていたら音楽が聞こえてきて、 音楽を聴いていたら踊りが見えてくる。 そんな踊りが出来たら、うれしいです。 =====
- Retama -帰ってきたタマビーズ!
(miércoles, 14 de mayo 2025) 2024年7月6日(土)・7日(日) ShowレストランGARLOCHÍ(東京・新宿) 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko Amor de San Juan をともに歌う 5年ぶりに開催されたタマビーズ公演、『Retama』。 タマビーズとは、東京西部にある多摩美術大学出身の4人で結成されたフラメンコグループ。 公演を待ち望んでいたファンも多く、今回予定されていた2日間3公演が発売数日で完売となった。 気心の知れた4人によるステージということで、やはり群舞がどれも見応えがあって楽しい。 オープニングはメンバーがそれぞれ歌ったり踊ったりとフィエスタのようなブレリア。普段は踊り手として活動しているメンバーもなかなか歌が上手く、みんな芸達者だ。ピンクと黒でコーディネートした衣装も可愛く、統一感があってビジュアルもいい。 休憩を挟んで後半の第2部冒頭では、4人がサイケな衣装で登場。5人のミュージシャンらとのやりとりに客席も大盛り上がり。ルンバからブレリアへ、カンテの石塚もアフロヘアで登場するなどの楽しい演出で、奇想天外(いや期待通り?)のショータイムとなった。 最後のシギリージャでは椅子を使っての演出が秀逸。始まりは4人で向かい合わせに座ってパルマを叩き合い、着座のままでサパテアードを打ち、そして椅子を胸の高さで抱えたり上まで持ち上げたりと舞踊の小道具として扱いながら踊り、フォーメーションを展開していく。かなり難易度の高い振付だったのではないかと思うがそんな大変さを全く感じさせることなく、群舞作品として素晴らしい完成度の高さで魅せてくれた。 ソロの場面では、ひとりひとりの濃厚な個性がたっぷり溢れていた。 赤と黒のコントラストが映える衣装で、力強さと踊りの充実ぶりをみせた島崎のソレア。 町娘のようなスタイルで登場した井上は、芝居の場面で見事なコメディエンヌぶりを披露。もちろんカンテでも本領を発揮し、切ないメロディーのギターに乗せて味わい深いファンダンゴを歌い上げた。 ピンクの衣装にターバン姿が愛らしい今枝のグアヒーラは、丁寧で完成度の高い踊り。テクニカルな高速の足技もさすがの一言。 燃えるような赤の衣装が印象的な吉田のソロンゴは、手首や指先の美しさと堂々とした踊りに気高さが表れていた。 フィナーレのルンバはスペイン語と石塚が作詞した日本語で歌い、その4人の姿を観ていて「仲間」とか「絆」といった言葉が自然と浮かび、温かい心持ちになった。そして最後までとことん観客を楽しませてくれた演出に、タマビーズがみんなから愛される理由もよく分かった。 踊って良し、歌って良し、コント(?)も良し、の芸達者4人によるフラメンコステージ。長年の付き合いの賜物か、とにかくチームワークの良さがピカイチだった。 次回作を望む声も早々に上がったそうだが、その日までは今作の名場面の数々を思い返しながら味わうことにしよう。 【プログラム】 PRIMERA PARTE 1. Reencuentro 〜過去から未来へ〜 2. En la distancia 〜dos gardenias〜 3. Nostalgia 〜un viaje por Huelva〜 SEGUNDA PARTE 1. En la Calle Larga 〜ヘレスの街角〜 2. Desde Cuba te cuento 〜風が運んだ物語〜 3. Luz de Luna 〜mi escondite〜 4. Garrotín Garrotán 〜a la verita tuya〜 5. Renacer 〜la fragua〜 6. Amor de San Juan 〜4つの灯火〜 【出演】 歌&踊り タマビーズ(井上泉 今枝友加 島崎リノ 吉田久美子) 歌 石塚隆充 パルマ 中原潤 ギター 徳永健太郎 徳永康次郎 パーカッション ラファエル・エレディア =====
- 『カンテの原点を訪ねて 第4回:セビージャの歌2』
東京フラメンコ俱楽部 5月例会 (martes, 13 de mayo 2025) 東京フラメンコ倶楽部が主催する、名人たちのカンテとギターをSPレコード(アナログレコード第一世代)と蓄音機で味わおうというこの企画。 ナビゲーターは日本フラメンコ界の巨匠、当サイトのWEBマガジンでも「カンテフラメンコ奥の細道 on WEB」を連載中のエンリケ坂井さんが務めます。 カディス、ヘレス、と続いて今回はセビージャ編の第2回目です。 カンテの原点を訪ねて―SPレコードで辿るフラメンコの歴史 【第4回:セビージャの歌②】 日時:2025年5月18日(日) 16時開場/16:30開始(18:30終了予定) 場所:スタジオカスコーロ (地下鉄要町駅(有楽町線、副都心線)2番出口より徒歩5分、豊島区要町2-1-19) 参加費:3,000円(当日会場にて) 参加申込み:以下のサイトからお申込みください。 https://forms.gle/ofwqdEwaovtj7iwZ9 ※開始後は施錠します。遅れる方は前もってご連絡をお願いします。 問合せ:東京フラメンコ倶楽部 Email tokioflamenco@gmail.com URL http://flamencatokio.web.fc2.com =====
- カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.48
(domingo, 11 de mayo 2025) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai Malagueña de La Trini ① 今回からメジーソ同様に好んで歌われるラ・トゥリニのマラゲーニャを取り上げます。 メジーソは男性に好んで歌われる傾向がありますがトゥリニは創唱者が女性だという事からか、女性に人気があるようです。 ラ・トゥリニは本名 Trinidad Navarro Carrillo (トゥリニダー・ナバーロ・カリージョ) で、トゥリニはトゥリニダーの愛称。 生まれたのはマラガ市で1866年説が最近では有力ですが1868年、1870年説もありはっきりしません。 フェルナンド・エル・デ・トゥリアナが1935年に発表した「アルテ・イ・アルティスタス・フラメンコス」を始め、多くの研究者が残した評伝などでその人生が伝えられています。 それによれば(当然ながら)子供の頃からその歌声は評判を呼び、地元のカフェ・カンタンテ等で歌い始めたのですが、最も古い記録では1883年(17才?)にグラナダのカフェ・カンタンテに出演しています。 恐らくはマラガでの評判がアンダルシア各地に伝わり、他の都市の店からも声が掛かって活躍するようになったのでしょう。 1880年代前後といえばカフェ・カンタンテの全盛時代であり、マラガ地方のファンダンゴであったマラゲーニャが独自の発展をとげ自由リズムのマラゲーニャとなってファン・ブレバ、メジーソ、フォスフォリートなど、多くのマラゲーニャのスタイルが生まれる「マラゲーニャ発展の時代」でもあったのです。 1890年頃にはセビージャのカフェ・カンタンテと契約、その前後に生まれ故郷のマラガで歌っているトゥリニをフェルナンドは直接聴いてその華やかなカンタオーラぶりを書いていますが、恐らくはこれより若い時期にトゥリニは不幸な出来事によって片目の視力を失い、それ故にか当時としては危険な外科手術を受けることになったのです。そのいきさつは次回に。 トゥリニはいくつかのマラゲーニャのスタイルを作りました。区別するために例によって番号を付けますが、まずは最も好んで歌われるスタイル①の中でも一番よく知られたレトラを以下に書きます。 【Letra】 (ay, haciendo por〈olviarte〉...) Creí que adelantaría ay, haciendo por〈olviarte〉, cuando pasaron tres días como un loco fui a buscarte ay, porque sin ti no vivía. 【訳】 この苦しみを何とかしようと お前を忘れることにしたが、 だけど3日経ってみたら 気が狂ったようにお前を探した、 お前なしでは生きられぬと知って。 ※hacer por ~⇒~しようと努める 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ( https://acustica-shop.jp/ )へお問い合わせください。(編集部) ======
- 大阪・関西万博にロシオ・モリーナとエドゥアルド・ゲレーロ登場!
(sábado, 10 de mayo 2025) 4月13日に開幕した「2025年日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)」。 会期中には、万博に公式に参加する国・地域や国際機関といった「公式参加者」の参加を称え、その文化や活動への理解を深めるためのナショナルデー(*国際機関の場合はスペシャルデー)が1日ずつ開催されるのですが、スペイン王国のナショナルデーとなる5月16日は、文化イベントとして注目の踊り手ロシオ・モリーナとエドゥアルド・ゲレーロによるフラメンコショーが上演されます。 ロシオ・モリーナのショーの内容は未確認ですが(*下記に 追加情報 あります)、エドゥアルド・ゲレーロが今回上演するのは“Debajo de los pies”という、2021年のヘレスのフェスティバルで初演された作品。エドゥアルドを含む3名のダンサーと、ミュージシャンによるスタイリッシュな舞台です。 作品 "Debajo de los pies" より エドゥアルドは過去に数回来日して、エバ・ジェルバブエナやロシオ・モリーナとも共演。今回の万博では初めて自身の作品を披露できるということで、来日をとても楽しみにしているとのこと。多くの日本の方々に観ていただいて、一緒に楽しみたいと言っているそうです。 万博の入場チケットさえあれば、約2,000人規模の大ホールでこの二大フラメンコ・アーティストの舞台を楽しめる絶好のチャンス! 関西エリアの皆さんはもちろん、遠方の皆さんも万博とフラメンコとダブルでお楽しみください。 [日時]2025年5月16日(金) 開場 16:30 開演17:30〜19:00 [会場]東ゲートゾーンEXPOホール「シャインハット」 ( ※万博内の屋内最大催事場で、約1,900の客席と舞台が一体化した円形劇場) [参加方法]現地参加 [予約の要・不要]予約なしで楽しめる(予約制度なし) *万博の入場チケットを購入し、万博入場日時の予約は必要です。 *公演時間や予約の要・不要について、変更となる場合もありますので、事前にご確認ください。 【万博チケット購入サイト】 https://ticket.expo2025.or.jp/ 【万博サイト:フラメンコショー】 https://www.expovisitors.expo2025.or.jp/events/cca09d82-ebec-4c06-bb0b-947ad4eb17e5 【万博イベントカレンダー:一覧】 https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/250428_eventcalendar_JPN.pdf 【万博イベントカレンダー:日付選択型】 https://www.expovisitors.expo2025.or.jp/events/schedule 【万博イベントカレンダー:補足資料】 https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/250418_eventcalendarhosokuJPN.pdf 【エドゥアルド・ゲレーロの万博関連記事(スペイン語)】 https://cincuentopia.com/el-flamenco-en-el-dia-de-espana-en-la-expo-universal-osaka-2025/ 【Eduardo Guerreroプロフィール】 1983年、カディス生まれ。6歳からフラメンコを始める。スペイン古典舞踊と現代舞踊の両方を学び、緻密なテクニックとオリジナリティ溢れるダンスが持ち味。2013年カンテ・デ・ラス・ミナス・フェスティバルでデスプラント賞、2017年ヘレス・フェスティバルではソロ公演「GUERRERO」で観客賞を受賞。世界各国で自身のカンパニーを率いた公演や教授活動で活躍中。近年、ヘレス・フェスティバルでは公演とともに、クルシージョも担当し人気を博している。 2021年にガディターノ・デル・アニョ、2022年にロルカ・インテルプレテ・マスクリーノ・ダンサ・フラメンカを受賞。 ◎追加情報 5月16日のスペインナショナルデーについて、11時から始まる公式セレモニーの後に Rocío Molina & Sabîl with Los Volubleによるパフォーマンスが11時30分より、東ゲートゾーンEXPOナショナルデー・ホール「レイガーデン」で開催されます。 そして17時30分から19時までEXPOホールにて、ロシオ・モリーナ、ロス・ボルブレ、エドゥアルド・ゲレーロによるフラメンコショーが上演されます(開場16時30分) 。 【参照:読売新聞・大阪instagramアカウントより】 https://www.instagram.com/p/DJbBr_6zxoM/?igsh=MXdnMzM0aWx2cXI2Zw== またスペイン館では、月曜以外の夕方に3回ほどフラメンコショーが開催されます。 予約不要で、スペイン館に入場しなくても見ることができるとのことなので、こちらも要チェック! ※混雑状況により開始時間は前後します。 【「スペイン館」Instagram アカウント】 https://www.instagram.com/expospain2025/ 【「スペイン館」X アカウント】 https://x.com/expospainosaka 【「スペイン館」公式サイト】 https://www.expo2025.or.jp/official-participant/spain/ ===
- スペインNews 5月号・2025
(martes, 6 de mayo 2025) 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaz 4月28日12時半を回った頃から、スペイン全土をおそった大停電。日本でも報道されたこの停電、4月30日現在、その理由はまだ解明されてはいません。人為的なミスや大気の状態など気候によるものなどいろんな説がありますが、スペイン政府はどんな仮説も可能性はあるという見解のようです。各市町村、また同じ市内でも地区によって回復までの時間はさまざまだったようですが、携帯電話も使えない状態が長く続いたため、大方の市民はラジオで情報を得るなどしていたようです。信号が動かないので交通も混乱、電車も止まり、フラメンコ・アーティスト達も長い時間列車に閉じ込められるなど、大変な思いをしたようです。 《INDEX》 ・ ロンドン・フラメンコ・フェスティバル ・ エバ・ジェルバブエナにローレンス・オリヴィエ賞 ・ ロルカ賞 ・ マドリードのビエナル 【ロンドン・フラメンコ・フェスティバル】 4月10日、セビージャのスペイン著作権者協会アンダルシア支部において、今年のロンドンで行われるフラメンコ・フェスティバルのプログラム発表の記者会見が行われました。 ©︎FFL Manu Sua これは毎年3月頃に行われるニューヨークのフラメンコ・フェスティバルと同じく、プロデューサー、ミゲル・マリンによってオーガナイズしているもので、今年で20年目となるそうです。5月27日から6月8日まで、ロンドンのダンス公演のメッカ、サドラーズウエルズ劇場を中心に、サラ・バラスやマヌエル・リニャンにファルキート、アンダルシア舞踊団など、選び抜かれたフラメンコ・アーティスト達が次々に登場します。 ©︎FFL Manu Sua 記者会見では今回のフェスティバルの出演者の一人、アルバロ・マルティネーテの演奏もありました。 ◇フラメンコ・フェスティバル 5/27(火)~31(土)19時30分、6/1(日)15時『ブエラ』 [出]〈b〉サラ・バラス舞踊団 6/2(月)19時30分『ムエルタ・デ・アモール』 [出]〈b〉マヌエル・リニャン・カンパニー 6/3(火)19時30分『ロマンセーロ・デル・バイレ・フラメンコ』 [出]〈b〉メルセデス・ルイス舞踊団 6/4(水)19時30分『コン・シエルト・フラメンコ』 [出]〈b〉ファルキート 6/6(金)19時30分、7(土)15時と19時30分『ピネーダ』 [出]〈b〉アンダルシア舞踊団 [場]英国 ロンドン サッドラーウエルズ メイン・ハウス 6/8(日)19時30分『レタブロ・エクスペリメンタル・ソブレ・エル・バイレ・フラメンコ』 [出]〈b〉エステベス/パーニョス・イ・コンパニア [場]英国 ロンドン サッドラーウエルズ イースト 5/29(木)19時30分『ミラーダス』 [出]〈g〉アレハンドロ・ウルタード、〈〈b〉〉インマクラーダ・サロモン 5/30(金)19時30分『ラス・トレス・オリージャス』 [出]〈g〉マヌエル・バレンシア、〈b〉エル・チョロ 6/8(日)19時30分『アルモニア・フラメンカ』 [出]〈g〉アルバロ・マルティネーテ、〈b〉クラウディア・ラ・デブラ [場]英国 ロンドン キングス・プレース 5/31(土)18時『レフレクシオン・ソブレ・ラス・パルカス』 [出]〈b〉パウラ・コミトレ、フロレンシア・オス、カルメン・アングロ 5/31(土)20時30分『マタンセラ』 [出]〈c〉ラ・トレメンディータ 6/5(木)18時『フラメンコ・ポル・カンタオーラ』 [出]〈c〉アルヘンティーナ 6/5(木)20時30分『エン・アクースティコ』 [出]〈c〉ケラルト・ラオス 6/6(金)18時『エル・フエゴ・ケ・ジェボ・デントロ』 [出]〈c〉レラ・ソト 6/6(金)20時30分『エン・コンシエルト』 [出]〈c〉アンヘレス・トレダーノ [場]英国 ロンドン リリアン・ベイリス・ストゥディオ 5/31(土)20時『フラメンカス』 [出]ラス・ミガス 6/7(土)17時と20時『ロネオ・ファンク・クルブ』 [出]ラ・プラスエラ [場]英国 ロンドン ジャズ・カフェ [問] https://flamencofestival.org/es/ff-londres-2025/ 【動画】 https://www.youtube.com/watch?v=f0SPs8fVOhE 【エバ・ジェルバブエナにローレンス・オリヴィエ賞】 そのロンドン、フラメンコ・フェスティバルに昨年登場し、作品『ジェルバグエナ(オスクーロ・ブリジャンテ)』を上演したエバ・ジェルバブエナが、英国で最も権威のある舞台芸術への賞、ローレンス・オリヴィエ賞で舞踊部門、傑出した功績賞を受賞しました。4月6日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた授賞式にはエバは出席できず、サドラーズウエルズ劇場の人が代理で受け取ったトロフィーを、フェスティバルの記者会見の時に、監督、ミゲル・マリンから手渡されました。 ©︎FFL Manu Sua 【動画】 受賞理由となった作品 https://www.youtube.com/watch?v=_Pl7Jj4_Y-Q 【ロルカ賞】 アンダルシアの舞台芸術アカデミーによる、舞台芸術への賞、ロルカ賞。全国区の舞台芸術の賞では、フラメンコは通常、舞踊部門になるのですが、さすがフラメンコのアンダルシア。舞踊部門とは別に、フラメンコ/スペイン舞踊部門が設けられています。 今年の授賞式は4月9日、セビージャのセントラル劇場で行われました。今年も昨年同様、一作品に集中することなく、さまざまな作品、アーティストが受賞しました。今年の受賞者は以下の通りです。それだけ高いレベルの作品、アーティストが目白押しだということかも知れませんね。 ©︎ Academia de las Artes Escénicas de Andalucia ○フラメンコ/スペイン舞踊作品賞 『オルビダダス(ア・ラス・シンソンブレロ)』 ○フラメンコ/スペイン舞踊女性ダンサー賞 パウラ・コミトレ『アプレ・ヴ、マダム』 ○フラメンコ/スペイン舞踊男性ダンサー賞 エル・チョロ『プレンデル、ウン・アクト・デ・コンブスティオン』 ○制作賞 『カプリチョス』(ハビエル・バロンとロサリオ・トレド主演) 【マドリードのビエナル】 4月22日には5月23日から開催される、第一回マドリードのビエナルのプログラム発表の記者会見が開催されました。 ビエナルといえば、フラメンコ・ファンにとってはセビージャのビエナル。1980年に始まった、世界最大規模のフラメンコ・フェスティバルです。が、もともとビエナルとは2年に1度という意味。イタリア語のビエンナーレという言葉は、有名なベネチアのビエンナーレ、国際美術展を通して日本でも知られているかも知れません。今では、セビージャの他にもマラガ県が主催して、県内各地で公演が行われるビエナルのマラガ、また、オランダのビエナルなど、フラメンコのビエナルも各地で行われています。 そこに加わったのがこのマドリードのビエナル。マドリードのフラメンコ祭といえばスーマがありますが、これは県主催。こちらのビエナルは市の主催で、かつてラ・ビジャ文化センター(フェルナン・ゴメス劇場)で開催されていたマドリード、フラメンコ祭を引き継ぐもののようです。初日公演からしてセビージャのビエナルと肩を並べる充実のプログラムのように思います。スペイン広場を北に行ったところにあるコンデ・ドゥーケを中心に、市南部のマタデーロや博物館などでも公演が予定されています。 【動画】 https://player.vimeo.com/video/1077508603 ◇マドリードのビエナル 5/23(金)~6/6(金) 5/23(金)20時開幕ガラ『フィエスタ・デ・ラ・ブレリア・デ・ヘレス』 [出]〈c〉トマシート、フアナ・ラ・デル・ピパ、ヘスス・メンデス、〈g〉ぺぺ・デル・モラオ、ルベン・マルティネス、〈fl〉フアン・パリージャ、〈perc〉ペリーコ・ナバロ、〈クアドロ〉マヌエル・デ・ラ・ニナ、ペドロ・エル・チャンキータ、ルイス・チャンキータ、フアナ・デル・モノ、ロシオ・バレンシア、サンドラ・リンコン、ピルロ、マルコス・カルピオ、〈b〉ティア・ジョジャ、ティア・クーラ [場]マドリード シルコ・プリセ 5/24(土)21時30分『デ・ライス』/『エル・フエゴ・ケ・ジェボ・デントロ』 [出]〈perc〉バンドレーロ、ゲスト〈g〉パケテ、ルイス・アビチュエラ、〈c〉モンセ・コルテス、〈b〉ニノ・デ・ロス・レジェスほか/〈c〉レラ・ソト、〈g〉ルベン・マルティネスほか [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/25(日)13時 [出]〈c〉アントニア・ヒメネス [場]マドリード サン・イシドロ博物館 5/25(日)20時『プレセンテ』 [出]〈b〉フアン・トマス・デ・ラ・モリア [場] マドリード アウディトリオ・カハ・デ・ムシカ 5/25(日)21時30分『マタンセラ』 [出]〈c〉ラ・トレメンディータ、ラ・カイータ [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/26(月)20時『サクラトゥス』 [出]〈c〉アントニオ・カンポス、〈g〉ホセ・フェルミン、〈オルガン〉アントニオ・リナ~レス [場]マドリード レアル・バシリカ・デ・サン・フランシスコ・エル・グランデ 5/27(火)20時『ベンゴ・ホンド』 [出]〈b〉マルコ・フローレス、〈c〉エル・キニ・デ・ヘレス、〈g〉ホセ・トマス [場]マドリード マタデーロ ナベ・ウナ 5/27(火)21時30分『ア・オリージャス・デル・カンテ』 [出]〈c〉アントニオ・レジェス、エスペランサ・フェルナンデス、〈g〉ジョニ・ヒメネス [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/28(水)20時『インタンヒブレ』 [出]〈b〉サラ・カレーロ [場]マドリード マタデーロ ナベ・ウナ 5/28(水)21時30分『ディエシオチョ・クエルダス』 [出]〈g〉ヘラルド・ヌニェス、ダニ・デ・モロン、ジョニ・ヒメネス [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/29(木)20時15分『アルパオラ』 [出]〈ハープ〉アナ・クリスマン [場]マドリード パロキア・デ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ペルぺトゥオ・ソコーロ 5/29(木)21時30分『金継ぎ』 [出]〈b〉エル・ファルー、〈g〉ホセ・ガルベス、〈c〉アントニオ・ビジャール、エセキエル・モントージャ、〈perc〉エル・ロロ [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/30(金)21時30分 [出]〈piano〉チコ・ペレス、〈フルート、サックス〉セルヒオ・デ・ロペほか [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 5/31(土)13時 [出]〈g〉カルロス・デ・ハコバ 5/31(土)21時30分『プルソ・リブレ』 [出]〈b〉エドゥアルド・ゲレーロ [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 6/1(日)12時『カンテ・デ・ムヘール』 [出]〈c〉ナイケ・ポンセほか、〈g〉テレサ・エルナンデス [場]マドリード セントロ・セントロ パティオ・デ・オペラシオン 6/1(日)13時 [出]〈g〉ビクトル・フランコ [場]マドリード サン・イシドロ博物館 6/1(日)20時 [出]〈b〉パウラ・コミトレ、フロレンシア・オス、カルメン・アングロ [場]マドリード マタデーロ ナベ・ウナ 6/1(日)21時30分『インセルソ・ホンド』 [出]〈c〉フアン・ビジャール、ビセンテ・ソト、ホセ・デ・ラ・トマサ、ラ・マカニータ、〈g〉ノノ・レジェス、マヌエル・バレンシアほか [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 6/2(月)21時30分『ロルカ!』 [出]〈c〉カルメン・リナーレス、〈b〉ラファエラ・カラスコ [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 6/3(火)20時『アルサ、テオリア・デ・ロ・エスポンタネオ』 [出]〈b〉エル・チョロ、〈c〉ヘスス・コルバチョ、〈管楽器〉フランシスコ・ロカ [場]マドリード マタデーロ ナベ・ウナ 6/3(火)20時『ラ・ファミリア』 [出]〈b〉フリオ・ルイス、ゲスト〈c〉ぺぺ・デ・プーラほか [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 劇場 6/3(火)21時30分『ロス・マグニフィコス』 [出]〈c〉サンドラ・カラスコ、〈piano〉アンドレス・バリオス、〈b〉ベレン・ロペス、〈g〉ダビ・デ・アラアル [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 6/4(水)20時『マグニフィカ』 [出]〈b〉マリア・モレーノ、〈g〉ラウル・カンティサノ、〈c〉ミゲル・ラビ [場]マドリード マタデーロ 6/4(水)20時『クアルテタ』 [出]〈b〉ロサリオ・トレド、〈c〉インマ・ラ・カルボネラ、エバ・ラ・レブリ [場]マドリード コンデ・ドゥーケ 6/6(金)22時 閉幕ガラ [出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ディエゴ・デル・モラオ、カルロス・デ・ハコバ、〈perc〉アネ・カラスコほか [場]エンリケ・ティエルノ・ガルバン、アウディトリオ [問] https://bienalflamencomadrid.com 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====
- 特集:スマ・フラメンカ 2024
(domingo, 8 de diciembre 2024) 毎年マドリードで行われる大規模なフラメンコフェスティバル、『スマ・フラメンカ』が8月から11月にかけて開催されました。 若手アーティストらに焦点を当てたプログラムや、学術的な講演会や展示会、そしてメインとなるコンサートシリーズと、見どころも満載。 そのプログラムのラインナップや注目の作品などについて、20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子さんがリポートします。 『スマ・フラメンカ 2024』フェスティバル 2024年8月12日-11月3日、マドリード、スペイン Festival SUMA FLAMENCA de Madrid 2024 12 agosto - 3 noviembre 2024, Madrid, España 文:東 敬子 画像:宣材写真 Texto: Keiko Higashi Fotos: material promocional 《INDEX》 ・若手にチャンスを ・ロンダからカルタヘナへ ・豪華アーティストの競演 ・特出したい5公演は… 燃え上がるような夏・真っ盛りから、爽やかな空が広がる秋にかけて、マドリードをフラメンコ一色に彩った「スマ・フラメンカ」フェスティバルは、今年もカンテ、ギター、バイレ全てを網羅した充実のプログラムで観客を沸かせました。 19回目を迎える今回は、まずは前哨戦として、30歳以下の若手をフィーチャーした「スマ・フラメンカ・ホベン」(8月12日〜15日)が行われ、その後「オリエンテ・フラメンコ 〜ロンダからカルタヘナへ〜」と題し、アテネオ会館にてフラメンコ学の講演会とそれに伴う演奏会や展示会(10月1日〜5日)、そしてコンサートシリーズ「スマ・フラメンカ」(10月15日〜11月3日)が開催されました。「スマ・ホベン」では計4公演、12組のアーティストが、残りの期間では計45公演が行われ、うち15公演が世界初演となりました。 若手にチャンスを 大御所がひしめく現在のフラメンコ界で、若手がソリストとして頭角を表すのは至難の業。ゆえに、そんな彼らに焦点をあて、その輝きを大舞台で披露するチャンスを与えてくれるのが「スマ・フラメンカ・ホベン」です。4回目となる今年は8月12日より4日間マドリードのカナル劇場にて行われ、毎日カンテ、ギター、バイレのアーティストが紹介されました。 カテゴリー毎に紹介しますと、カンテでは、ロシオ・ルナ(コルドバ)、モレニート・イホ(カディス)、ガブリエラ・ヒメネス(マドリード)、トマス・ガルシア(グラナダ)の4人。 ギターのソリストでは、マヌエル・エレラ・イホ(セビージャ)、アントニオ・ゴンザレス(カディス)、ビクトール・フランコ(カディス)、エル・ポティ(グラナダ)。 そしてバイレには、マヌエル・ヒメネス(コルドバ)、ルシア・ラ・ブロンセ(セビージャ)、サイラ・プルデンシオ(バダホス)、パトリシア・ドン(バルセロナ)がラインナップ。 まだ余り知られていないアーティストたちですが、その名を全国区に広げる良い機会になったのではと思います。 ロンダからカルタヘナへ アテネオ会館では10月1日から5日まで、今年のフェスティバルテーマに沿ったフラメンコ学の講演が行われました。昨年のフェスティバルのレポートで私は「いつも同じメンツ」と苦言しましたが、今年は打って変わって「目新しい」講演者たちが勢揃いし、興味をそそりました。 ホセ・デル・トマテ ©Adria Cañameras 各講演ではそれぞれミニコンサートも行われ、セオリーだけでなく、それを体現する歌を最後に聴くことで、より理解を深めることが出来る構成でした。初日はラモン・ソレールによる「マラガ・ラ・カンタオーラ」講演。テーマに沿ってマラガ出身のボネーラ・イホがその喉を披露します。グレゴリオ・バルデラマの「ハエン、カントーラとミネラ」講演ではハエン出身の歌い手ラウラ・マルチャルが。三日目のアントニオ・セビジャーノ「アルメリア・ドラダ」講演では、ギタリストの ホセ・デル・トマテ のトリオによる演奏が華を添えました。そして歌い手アントニオ・カンポスの「アイレス・デ・グラナー」講演では彼自身が、同じく歌い手クーロ・ピニャーナの「ラ・ウニオンからカルタヘナへ」講演でもピニャーナ自身がその歌声で締めました。 また並行して10月1日から29日まで、「エル・フラメンコ・エン・ラ・ドラマティカ・ルナ・ネグラ」と題したエクスポジションも行われ、1890〜1960年の貴重な音源を有するカルロス・マルティン・バジェステールのコレクションから、フラメンコの黄金期を創ったラ・アルヘンティーナ、マヌエル・バジェホ、アントニオ・マイレーナなどの歌声が披露されました。 豪華アーティストの競演 若手からベテランまで、第一線で活躍するアーティストが勢揃いした、フェスティバルのメインアクトである「スマ・フラメンカ」は、マドリード市内、エル・エスコリアル、ラスカフリア、ラ・カブレーラの4箇所で開催されましたが、1ヶ月前にチケットを取ろうとしたけどすでにソールドアウトだらけだったと嘆く人もいて、改めてその人気を実感しました。 マリア・テレモート カンテは例年通りの充実ぶり。ヘレスと言ったらこの人のトマシートや、同じぐらいヘレスを全身に背負った マリア・テレモート 。グラナダの味たっぷりのマリナ・エレディア、そしてペドロ・エル・グラナイーノ。中堅で手堅いエセキエル・ベニテスやパコ・デル・ポソ、独特の感性でファンも多いエル・ファロと言った実力者達が名を連ねます。フェスティバル常連の大御所ビセンテ・ソト・ソルデーラ、アウロラ・バルガス、今フェスティバルのトリをとったカルメン・リナーレスもまだまだその勢いを止めてはいません。 ギターでは、世界初演となったビセンテ・アミーゴ、ペペ・アビチュエラの公演を筆頭に、29歳の若手ジェライ・コルテス、クラシックギター出身のホセ・マリア・ガジャルドとタッグを組んだミゲル・アンヘル・コルテス、女性ギタリストのアントニア・ヒメネスらが、様々な視点で深掘りしていきます。 バイレでは、実力派マルコ・フローレス、パトリシア・ドン、ルシア・カンパージョらのモダンなバイレ。それと対照的なベレン・ロペスのコテコテのフラメンコも。ベテラン、フアナ・アマジャ、カルメン・タレゴナ、ホアキン・グリロが観れたことも、往年のファンにとっては嬉しい限りでしょう。 また今回は、フラメンコ・ジャズの第一人者ホルヘ・パルドのトリオ、開かれた音楽を追求するアグスティン・ディアセーラとフアンフェ・ペレスのデュオ、ハープでフラメンコを奏でるアナ・クリスマンなど、フラメンコへ独自のアプローチを見せるアーティストも揃いました。 特出したい5公演は… それでは、私が最も観たいと思い、やっとの思いで席を勝ち取った5つの公演をご紹介しましょう。 まずはギタリスト、 ヘラルド・ヌニェスの「ギターラ・デスヌーダ」公演 (10月16日、カナル劇場・緑の間)。伝統に縛られないスタイルで一時代を築いた彼が、今公演ではリカルド・モレーノ、ボリータ、ヘロニモ・マジャ、カニート、アルバロ・マルティネーテの5人のギタリストたちと共演します。それぞれのスタイル、そしてヘラルドとのデュオを楽しめるギター三昧のコンサートでした。 マヌエラ・カラスコ そして今回の作品で観客にさようならを告げる、これまでの集大成となった「バイレの女神」 マヌエラ・カラスコの「シエンプレ・マヌエラ」(10月17日、カナル劇場・緑の間) 。彼女の娘たち、サマラとマヌエラも出演するこの作品は、感動的の一言でした。まだツアーは続いていくようですので、機会があればぜひ観てほしい作品です。 ギタリスト、 アルフレド・ラゴスと踊り手ベレン・マジャによる「ラ・ポエタ」 (10月26日、カナル劇場・黒の間)は、ベレンの壮絶な実体験から生み出された心に迫る作品でした。アルフレド・ラゴスの彼女を包み込み、支えるギターは聞き応えがあり、パーカッショニストのアンドレイ・ヴジチッチとベレンの新しい挑戦は、目を見張るような驚きがありました。 踊り手 ロシオ・モリーナの「クアドラール・エル・シルクロ」 (10月30日、カナル劇場・赤の間)は、今回が世界初演だったこともあって大いに期待していました。しかし私は観ていて文句が止まらなくなってしまい、今回はがっかりと言わざるを得なかったのが残念です。 イスラエル・フェルナンデス ©Rufo 最後は人気急上昇中のカンタオール、 イスラエル・フェルナンデスの「エル・ガジョ・アスール」公演 (11月2日、カナル劇場・赤の間)をご紹介しましょう。アルバム「プーラ・サングレ」でラテン・グラミーにノミネートされるなど話題の彼ですが、歌い終わるたびに大喝采が起こるのを目の当たりにして、「そんなに!?」と、その人気に驚いてしまいました。 それぞれの詳しい公演レビューは、今後リンクしていきますのでお楽しみに。来年もまた最高に面白いフェスティバルになるよう期待して止みません。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 フアナ・アマジャ ©Laurent Robert ビセンテ・アミーゴ マリナ・エレディア カルメン・リナーレス ペペ・アビチュエラ ©PACO MANZANO (写真左から) ミゲル・アンヘル・コルテス ホセ・マリア・ガジャルド ======
- 新・フラメンコのあした vol.27
(jueves, 1 de mayo 2025) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。 今月は、昨年10月から11月にマドリードで開催された 「スマ・フラメンカ2024」フェスティバル で上演されたアルフレド・ラゴスとベレン・マジャの公演についてのリポートです。 アルフレド・ラゴス&ベレン・マジャ 『ラ・ポエタ』 スマ・フラメンカ2024 フェスティバル カナル劇場・黒の間、マドリード 2024年10月26日 Alfredo Lagos y Belén Maya, “La Poeta” Festival Suma Flamenca 2024 Teatros del Canal, Sala Negra, Madrid. 26 de octubre 2024 文:東 敬子 画像:宣伝素材 / 東 敬子 Texto: Keiko Higashi Fotos: Por promoción / Keiko Higashi (写真左から)アルフレド・ラゴス、ベレン・マジャ、アンドレイ・ヴジシック 人は「ここまでか」という瞬間を実感した時、恐怖で汗を滴らせながらも、同時に不思議な解放感を感じるのではないでしょうか。もう苦悩する日々は終わるのだと言うような。 諦めや後悔に彩られた、主人公が感じるリアルな恐怖を、慟哭を、私達は目前にしながらも、最初はどうしても他人事のような、ちょっと冷めた「そんな事を言われても」とでも言いたげな、迷惑そうな表情を浮かべるばかりでした。 しかし本来なら踊り手が足音で描くであろうリズムの波が、パーカッショニストが打つ古いタイプライターの音で表現されたり、辛く重いサパテアードが、紐のついた鉛の球を床に打ち付ける音で再現され、私たちはハッとするのです。「身体を使う事が出来ないのであれば道具を使えば良い」。大きな弧を描いて規則的に床に打ち付けられる鉛の球の、すれすれでうごめく身体。球が当たって、彼女は怪我をしてしまうのではないか。ハラハラする私達をよそに、彼らは絶妙のタイミングで空間を操るのです。そうして私達は感情を超えた、めくるめくアートの世界へと導かれて行くのです。 空間の全てを包み込むような包容力に満ちたギターの音色に、押しては引く波の音に、彼女は身を置き、大地を踏み鳴らします。かつてのように一つのナンバーを長く踊ることはできなくても、ここには今の自分がいる。彼女はこれまで、様々な挑戦に挑み、自身を表現してきました。その時々の心の発露であったり、フラメンコにおける新たな身体表現の追求であったり。しかし今の彼女には、そんな、ある意味演じられた表現よりも、ありのままの切羽詰まった心情が露呈していました。「今すぐやらなきゃ無くなってしまうんだ」というような。人は何にでもすぐ慣れてしまう動物です。それがたとえ恐怖であっても。だからこそ、身体の無理を押してでも、今なんだと。 なんだか、井上陽水の歌の印象的なワンフレーズを思い出しました。「行かなくちゃ」を繰り返すその声に、その時の彼の衝動を実感する。彼女の動きにも同じ衝動を見ました。 そして私達の心は、哀れみや同情を忘れ、感動に打ち震えたのです。類稀なるアーティストである証明を、誰もが追求する「リアルな自分を曝け出す事」を、彼女が成し得た奇跡の瞬間を前にして。 やっと伸び揃った短髪。20世紀を代表する踊り手を父にもち、ニューヨークに生まれ、20代の頃から新時代のフラメンコの旗手として頭角を表し、今もなおその歩みを止めないバイラオーラ、ベレン・マジャは、最後のナンバーで、下は長く尾を引くバタ・デ・コーラ、上は白いサラシを胸に巻いただけの姿で、静かにステージの暗闇に現れました。 © Keiko Higashi 「スマ・フラメンカ2024」 での公演が世界初演となった今作品『ラ・ポエタ』。スイスに生まれ、アルゼンチンでその生涯をおくった詩人アルフォンシナ・ストルニの作品にインスピレーションを得て、ギタリスト、アルフレド・ラゴスが作り上げた世界観は、静かで深刻で、しかし決して涙を見せない強さと情熱を醸し出し、パーカッションのアンドレイ・ヴジシックのある種、客観的な冷静さを保つ音と共に絶妙なハーモニーを聴かせます。その音に見守られながら、ベレンは自分自身の人生を、想いを曝け出します。彼女はステージを踏み締め、観客をしっかりと見つめ、そして胸のサラシを取りました。 以前ロシオ・モリーナが胸をはだけて(彼女の場合は全裸でしたが)自分を表現したステージを見た事があります。もちろん、ロシオにとってもそれは自身の証しであり、勇気でもあったのでしょう。でもまだ30歳そこそこだった彼女のそれと、今回のベレンのそれを同じにはできない。 ベレンは必死に訴えてくれました。そして最後は、何かに解き放たれたように笑顔さえ浮かべて、観客の喝采に応えました。人って強い。私はこのフィナーレの瞬間に色々な記憶が感情が湧き上がり、溢れてくる涙を抑えきれませんでした。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) /フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 =====











