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《La Negra ~ある烏の孤独~》

  • 13 時間前
  • 読了時間: 3分

田村陽子とFlamenco30周年記念公演 vol.2

公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団

令和8年度助成事業


(viernes, 26 de junio 2026)


2026 年 5 月 24 日(日)

セシオン杉並ホール(東京)


写真/武重 到

Fotos por Itaru Takeshige

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


A_2605田村陽子LaNegra_烏1
友である薔薇を失い悲しみに暮れる烏

 

昨年11月に行われたフラメンコダンサー田村陽子の舞踊活動30周年記念公演に続く第2弾として、自身のインスピレーションから誕生したという完全オリジナルストーリーによる舞踊作品が上演された。登場するのは主役の烏(カラス)、白鳥、薔薇、死神という4者のみで、それぞれがソロを舞いパレハで絡みながら物語が進行していく。


オープニングは低音弦の音色とともに哀愁を帯びたメロディーから始まり、黒い羽根をあしらった黒の衣装の田村が登場する。鳥の羽ばたく動きをフォルムとして振付に取り入れ、フラメンコの枠に収まらないコンテンポラリーのような踊りも見せ、孤独な烏の悲しみを表現する。


B_2605田村陽子LaNegra_白鳥と烏
烏は憧れの白鳥に近づいていく

烏が自由の象徴として憧れる白鳥を演じるクリスティアン・ペレスは、上半身が裸で黒のパンツスタイルの腰元に豊かな白い羽根を演出したバタ・デ・コーラのようなスカートを巻き付けるだけという、余計なものをそぎ落とした斬新なスタイル。踊りも独創性に富み、ソレア・ポル・ブレリアの曲に乗せて白い羽根を存分に生かした踊りと力強い足技で白鳥の凛とした美しさを表現。舞台の上方には月のシルエットが浮かび、その孤高の存在感を際立たせる。


田村とクリスティアンがパレハで踊るカーニャでは、仲良くなりたい烏と様子を伺う白鳥とのやり取りを絶妙の間合いで繰り広げる。二人の関係に亀裂が入ってしまう場面では不協和音を奏でるギターや、カンテを畳みかけたりずらしてみたりと重層的な音楽が印象に残った。


死神役のヘスス・オルテガは、堂々とした力強い踊りで圧倒的な存在感を醸し出す。紫の空に赤い月が浮かび、タングドラムの幽玄な音色が烏に忍び寄る死神の不気味さを演出する。


工藤は上品で華やかな赤のドレス姿で赤のファンベール(ベールの付いたアバニコ)を操り優美に舞い、美しい高貴な薔薇を演じる。烏とのパレハで踊るアレグリアスではシンクロする動きも多く、二人の間で優しく通い合う友情に心も和む。


しかし薔薇は死神の力によって枯れてしまい、烏の支えも空しく朽ち果ててしまう。薔薇の形見の巻きスカートをまとい踊る田村は、ソレアの歌とともに深い孤独を湛えた渾身の踊りを魅せる。


C_2605田村陽子LaNegra_死神と烏2
死神の誘いに烏は抵抗するが…

物語の終盤、烏が死神と対峙する場面。シギリージャの音楽にパリージョを響かせ、ヘススとのパレハでは相対したりシンクロしたりする踊りで、反発したり近づいたりと揺れ動く両者の距離感を演出。烏は白鳥や薔薇を心の支えとして死神の誘いに必死に抵抗するが一転、黒い羽根を奪われそのまま連れ去られてしまう。


ラストの場面、死神の前に現れた烏は黒の羽根をまとうものの、全身は黒一色ではなく白と赤とともにある黒。この姿が何を意味するのか――、観た人の想像力に任せるように解釈の余地を残し、物語は幕を閉じた。


舞踊、音楽、照明や演出とあらゆる面で見応えのある作品となった今回の舞台。また舞踊の振付では、敬愛する舞踊家クリスティーナ・オヨスからもアドバイスを受けたという。これまでの長い舞踊活動の中で今回の節目を「30年は通過点」と語る田村の、舞踊家としての今後の活動に注目だ。



[出演]

◼︎Baile 踊り

 烏:田村陽子

 死神:ヘスス・オルテガ

 白鳥:クリスティアン・ペレス

 薔薇:工藤朋子

◼︎Cante 唄

 エル・プラテアオ

 マヌエル・パハレス

◼︎Guitarra ギター

 ミゲル・イグレシアス

◼︎Violín バイオリン

 平松加奈

◼︎Percusión パーカッション

 大儀見 元

◼︎Tongue Drum タングドラム

 朱雀はるな


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