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リレー連載:私とフラメンコ -新人公演を通して- 7

  • norique
  • 7月5日
  • 読了時間: 5分

第7回 常盤直生

【バイレ・ソロ部門 準奨励賞】

 

(sábado, 5 de julio 2025)

 

あなたにとってフラメンコとは何ですか――。

仕事として関わっている人、趣味として楽しんでいる人、自身の生きがいとして無くてはならない人など、その向き合い方は人それぞれ。

そうしたフラメンコへの思いを、昨年の日本フラメンコ協会主催「第33回フラメンコ・ルネサンス21『新人公演』」の入賞者の方々にエッセイとして綴っていただき、リレー連載という形式でご紹介します。

フラメンコとの出会い、新人公演を通して得たものや感じたこと、自身にとってのフラメンコへの思いなどを語っていただきました。

第7回目は、バイレ・ソロ部門で準奨励賞を受賞した常盤直生さんです。

 

編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko

 

常盤直生B-15 016

[撮影]川島浩之 

[写真提供]一般社団法人日本フラメンコ協会


フラメンコとの出会いは28歳の時、ふと見に行った小松原庸子先生の公演でした。どの演目も大変素晴らしかったのですが、その中でもパティオのブレリアを見た時に何故か涙が止まらなくなってしまい、居ても立ってもいられずフラメンコの門を叩きました。

当時は会社員として忙しく生活しながら、フラメンコを自分の人生においてどう位置付けるか、迷いながらも気付けばどっぷりとその魅力に取り憑かれていました。


フラメンコの好きなところは、一言ではとても言い表せませんが…生身の人間から発せられるエネルギーに圧倒される瞬間、なのかもしれません。素晴らしい公演に出会うと、エネルギーが会場全体に充満して身体中に電気を帯びるような瞬間があって、それを追体験したくてフラメンコの片隅に身を置いているのだと思います。


新人公演は私にとっては随分遠いもので、憧れることすら出来ない、ただ仰ぎ見るばかりの舞台でした。

しかし身近な先輩達が挑戦しているのを近くで見ていて、大変なことを乗り越えて舞台で輝く姿に心を打たれ、自分の中で少しずつ想いを育てていきました。そして初めて一歩踏み出したのがコロナ禍での新人公演でした。

2度目は補欠繰り上げで1ヶ月半前に急遽出演が決まりました。しかしその後はしばらく煮詰まっていました。進む方向性がわからなくなり、自分の殻を破れず苦しい時期がしばらく続き、次回出るかどうかすごく悩みました。


自分の中で何かを変えなければいけない、そんな思いがずっと心にあり、3度挑戦しての今回は、今まで持っていたものを全て解体し、一からソレアに向き合って行きました。

自分はどんなソレアを表現したいのか、どんなフラメンコが好きなのか、スタジオに数時間籠って一つも進まないで帰ることもしょっちゅう。こんなにも一曲に集中して己と向き合う作業は、苦しくも贅沢な時間でした。


当日の本番前は自分の気持ちの持って行き方を探りながら、練習室で動かずイメージだけしたり、かと思えば急に動き出して感覚を確認したり。楽屋ではヨガマットを広げてストレッチをしたり(同室の皆さんすみません汗)心と身体を繋げることに時間を使っていました。

本番後は2階席から後半の皆さんを観ていました。さっきまで自分が立っていた舞台を今度は観客側から観ていると、自分があそこで踊ったなんて信じられないような不思議な気持ちになりました。

そして出演者の皆さんの素晴らしい踊りを観ながら、ふと自分の進んだ道が正しかったのだろうかと不安に駆られたり、色んな想いが去来して、この日で一番感情が揺れ動いたのはこの時だったかもしれません。


常盤直生_photo2
(写真)本人提供

受賞を知った時は、自分の進もうとしてる道は間違ってなかったんだ、と勇気をもらった気持ちでした。準奨励賞ということで少し悔しい気持ちもありますが、そう思えたこと自体成長したのかな、なんて思います。

しばらく実感も今ひとつなかったのですが、たくさんの方にお祝いしていただいたり、私よりも喜んでくれてる方もいて、そんな中で少しずつ実感していくことが出来ました。そしてこの賞に背中を押してもらったんだと思いもっと頑張らなければ!と奮起しているところです!


新人公演を通して、私にとってフラメンコは人生そのものになりました。

今はフラメンコを始めたばかりの時みたいに、またフラメンコが楽しくてワクワクしています。ここからがスタートだと思って、さらにフラメンコの深みに突き進んでいきたいと思います!



【プロフィール】

常盤直生(Nao Tokiwa)/横浜市出身、生粋のハマっ子。愛犬家。

28歳の時に踊り未経験でフラメンコを始める。松彩果氏に師事。

2024年9月 日本フラメンコ協会主催「第33回新人公演バイレ・ソロ部門」にて準奨励賞受賞

2025年7月 常盤直生フラメンコ教室開講

精力的にライブや公演活動に参加、来日スペイン人のレッスンを受けるなど生のフラメンコの空気の中に触れて日々勉強中。


【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、群舞、ギター、カンテの各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)


〈参照URL〉


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