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リレー連載:私とフラメンコ -新人公演を通して- 3

  • norique
  • 5月31日
  • 読了時間: 5分

第3回 Hermanas del Arbol

(新田晶野・新田恵野)

【バイレ群舞部門 準奨励賞】

 

(sábado, 31 de mayo 2025)

 

あなたにとってフラメンコとは何ですか――。

仕事として関わっている人、趣味として楽しんでいる人、自身の生きがいとして無くてはならない人など、その向き合い方は人それぞれ。

そうしたフラメンコへの思いを、昨年の日本フラメンコ協会主催「第33回フラメンコ・ルネサンス21『新人公演』」の入賞者の方々にエッセイとして綴っていただき、リレー連載という形式でご紹介します。

フラメンコとの出会い、新人公演を通して得たものや感じたこと、自身にとってのフラメンコへの思いなどを語っていただきました。

第3回目は、バイレ群舞部門で準奨励賞を受賞したHermanas del Arbol(エルマナス デル アルボル)の新田晶野さん・恵野さん姉妹です。

 

編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko

 

A_新田晶野・恵野_写真③

2024年 新人公演 バイレ群舞部門にて(写真左から恵野さん、晶野さん)

[撮影]川島浩之/[写真提供]一般社団法人日本フラメンコ協会


私たちがフラメンコと出会ったのはまだ幼少の頃、父の仕事の関係で名古屋に滞在していたときのことでした。その際、母が通っていたフラメンコ教室へ、私たち姉妹も一緒について行くようになったのがきっかけです。

その後、2010年に父の地元である山梨にて母がフラメンコ教室(Arbol de Flamenco/新田道代フラメンコ教室)を開設したことで、本格的にフラメンコと向き合う日々が始まりました。

 

2023年、母の教室の公演でHermanas del Arbolとして私たち姉妹が初めて演目を披露する機会がありました。この経験を経て、「2人だからこそ生まれる表現」がある、もっと追求したい!という気持ちが膨らんでいきました。

その後、家族や師匠である伊集院史朗先生のサポートのもと、新人公演 群舞部門への出場が実現しました。

以前は予想していなかった姉妹で踊るフラメンコ。新人公演を通して新しい道が開けたと思っています。

B_新田晶野・恵野_写真②

2023年 母の教室の公演でHermanas del Arbolとして初めて演目を披露(撮影:北澤壯太)

 

新人公演当日はとにかく悔いなく、楽しんで踊り切るという気持ちで本番に挑みました。舞台の上ではただひたすらに自分達自身に向き合う意識を持ちました。

私たちのフラメンコへの想いと、ここまで支えてきてくださった方々への感謝を届けたいと挑んだこの大舞台。本番を迎えるまでには少なからずやはり葛藤がありました。デュオとして最大限魅せるにはどうするべきか。私たちらしさとは何なのか。

作品を作り上げる過程ではお互いの意見が異なる場面もありましたが、心を1つに練習に励みました。姉妹だからこその「呼吸感」を大切にし、この7分間を全力で踊り切ることができたと思います。

 

受賞を知った瞬間は、これまで2人で練習に励んできた日々、舞台での7分間の光景、やりきった感覚など色々なことがフラッシュバックするように体が熱くなりました。素直な嬉しさと同時に、準奨励賞に込められた期待に応えていけるように頑張ろうという決意が芽生えました。

支えてくださる方々への感謝を忘れずに、ここからが始まりという気持ちのもと日々精進していきます。

 

私たちにとってのフラメンコの好きなところは、自分の経験や想いを踊りにのせて個性を表現できるところ、音楽やリズム、舞台芸術としての美しさなどあげ出したらきりがないくらいです。学生時代にそれぞれ他ジャンルの踊りにも触れてきたことで、改めて現在フラメンコ特有の魅力を実感しています。

私たちと同世代のフラメンコ人口は特に少ないと言われています。大好きなフラメンコを少しずつでも広めていける立場になれるよう、これからも一生懸命頑張っていきたいです。

 

昨年10月、私たち姉妹は初めてスペイン-セビージャへフラメンコを学びに行きました。

まだ自分の「色」を確立する前段階にいる私たちにとって、スペインでの経験はかけがいのないものとなりました。フラメンコ漬けの毎日を過ごす中で感じたこと、それはどんなスタイルのフラメンコにもそれぞれの「色」があり、純粋にかっこいいということです。

目指す方向性はまだまだ模索中のため、視野を広く持って他ジャンルの音楽や踊りなどにも触れ、積極的にインプットする機会を増やしています。表現の引き出しを増やし、ダンサーとして自分たちらしい「色」を出していけるようになりたいです。

 

学生時代まで、フラメンコがごく自然と身近にある環境で育ちました。その間の様々な出会いやフラメンコでの貴重な経験を通して、さらに自らの意志を持ってフラメンコを探求していきたいと思うようになりました。現在もなお、限りない魅力を感じながらフラメンコと向き合っています。

 

ここからは姉妹それぞれ個人としても実力をつけていけるよう、幅広く挑戦していきたいと思っています。「継続」を大切に、どんな時も互いを支え合い、高め合える存在でいたいです。


C_新田晶野・恵野_写真①

2009年 志摩スペイン村パルケエスパーニャ「第10回セビジャーナスコンテスト」に三姉妹で出場し、審査員特別賞を受賞した時の写真(志摩スペイン村写真館にて)


 

【プロフィール】

新田晶野(Akino Nitta)・新田恵野(Yoshino Nitta)/幼少より母-新田道代のもとでフラメンコを積み重ねる。現在は東京にて伊集院史朗氏・井上圭子氏に師事。大学時代には清泉女子大学「Las majas」・明治大学として全国学生フラメンコ連盟FLESPONへ加盟し活動。2024年9月 日本フラメンコ協会第33回「新人公演」バイレ・群舞部門にて準奨励賞を受賞。

 

【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)

 

〈参照URL〉

 

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