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スペインNews 10月号・2024

(miércoles, 2 de octubre 2024)

 

文・写真/志風恭子

Texto y fotos por Kyoko Shikaze

 

9月になってだいぶ涼しくなったセビージャです。セビージャの夏は暑い、暑い、と言われますが、今年の夏は比較的過ごしやすかったような気がします。近年、湿度が高い日本の夏の方が気温は高くても湿度が少ないセビージャより、ずっとハードではないかと思います。

フラメンコは、クラスなどでは夏休みを取るところもありますが、以前のように教室がほぼ全部閉まってしまう、ということはなく、夏のクルシージョを行うことも多くなり、また各地のフェスティバルも続くので、フラメンコ関係者は大忙し。大きなフェスティバルだけでも、7月コルドバのギター祭、フランス、モン・ド・マルサンのフラメンコ祭、8月はラ・ウニオンのカンテ・デ・ラス・ミーナス祭、パンプローナのフラメンコ・オン・ファイアときて、偶数年の今年はセビージャのビエナルがあり。それが終わるとマドリードのスーマ・フラメンカが始まるという怒涛のようにイベントが続きます。観光客の増加によってタブラオも増えたし、フラメンコにとってはいい状況なのかもしれませんね。

A_2410志風_セビージャ

9月中旬の写真ですが、夜は気温も下がるのでジャケット着ている人もいます。©︎ Kyoko Shikaze 


《INDEX》

 

【フラメンコ・オン・ファイア】

 8月27日から9月1日までパンプローナで開催されたフラメンコ・オン・ファイア。主にアメリカでソリストとして活躍したフラメンコギタリスト、サビーカスの生誕の地であることから、彼のアルバムのタイトルを取って始まったこのフェスティバルも今年で11回となり、ビエナルやヘレス、ラ・ウニオンなどのように、フラメンコファンの間でもすっかり定着した感があります。


 このフェスティバルでは、大劇場での公演だけでなく、ライブハウスでのフュージョン系のライブや、市役所のバルコニーなどからのライブ(当然、無料で誰でも見ることができます)も行われます。またフェスティバル独自の企画での新作公演も行われるなど、意欲的な試みがいろいろなされています。

B_2410志風_フラメンコオンファイア

フェスティバル独自の企画、『アルサプアII』ホセミ・カルモナ、ディエゴ・デル・モラオ、ダニ・デ・モロン、リカルド・モレーノという4人のギタリストによる公演。ゲストで、ファルキートやレラ・ソトらも出演 ©︎ Flamenco on Fire


市役所前での民族舞踊のグループとぺぺ・アビチュエラらの競演 ©︎ Flamenco on Fire

 

 今年はパンプローナでの前に近隣の町で行われたものも含め、8日間で59のイベントが行われ累計6万人の観客を集めたそうです。

 牛追いの街の観光も兼ねて出掛けてみるのもいいかもしれませんね。

 

【ビエナルとセビージャ市バス】

 9月12日から10月5日まではセビージャでビエナルが開催されています。公演については後ほど特集記事で詳しくお伝えしますが、そのプロモーションでこんなビデオがあったのはご存知ですか?

 


 今年のビエナルで、マエストランサ劇場の『カルメン』で大トリを務めるイスラエル・ガルバンが、バス停で踊って、バスに乗り込むというもので、市バスからビエナルは始まる、という風に書いてあります。

 このバス停は、アルフォンソ13世ホテルの裏に実際にあるもので、21番のバスに乗ればマエストランサ劇場の前は通り過ぎますが、闘牛場前のバス停まで行くことは可能です。というかここからなら歩いても10分足らずなのでバスに乗らなくても良さそうです。

 

もう一本、


 こちらはマエストランサ劇場で公演するアルカンヘルと旧万博会場カルトゥハ地区にあるオーディトリアムで公演のエスペランサ・フェルナンデスによるビデオ。こちらも実際に劇場に行くつもりなら、エスペランサの場合、ここからのバスでは行けないので、公園の方に行ってC1のバスに乗るか、C3のバスに乗ってチャピナ広場まで行って、少し歩いてC1に乗り換えるかしないといけないので、こちらもイメージビデオですね。


 セビージャは大きな街なので、1日に3公演とかあると、歩いていては間に合わないので交通機関を使うことも多いですが、実際問題、バスが便利かというとそうでもないので、タクシーなどを使うことのほうが多いように思います。この点では、街が小さくどの会場にも徒歩で行け、時間帯も考えてプログラムされているので、その気になれば毎日全部の公演も見て回れるヘレスのフェスティバルの方がいいですね。


 でも街中にフラメンコたちの顔がポスターや市電のラッピングなどで見られるのは嬉しいものです。

D_2410志風_ビエナルバス停

バス停にもイスラエルのポスターが ©︎ Kyoko Shikaze

 

【レブリーハのフラメンコセンター】

 セビージャ県ながらカディス県との県境に近いレブリーハ。歌い手エル・レブリハーノやギタリスト、ペドロ・バカンらの出身地として、フラメンコファンにもお馴染みのこの街にフラメンコセンターがあるのをご存知ですか?

E_2410志風_レブリハフラメンコセンター

©︎ Kyoko Shikaze

 

 フラメンコにおけるレブリーハの意味を考えさせるビデオ上映や、レブリーハ出身のアーティストたちゆかりの品が多数展示されています。

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©︎ Kyoko Shikaze


G_2410志風_レブリハフラメンコセンター3

ペドロ・バカンのギターケースやドランテスの楽譜などと一緒に、エル・フニのトレードマークの白いスカーフも ©︎ Kyoko Shikaze

 

 また、レブリーハのフラメンコのビデオや録音も聴くことができます。

 レブリーハまではセビージャから電車で1時間、ヘレスからなら20分。実際、ヘレスとレブリーハの間の畑の農作業などを通じて往来も多く、実は案外関係が深かったりするのです。カディス、ロス・プエルトス、ヘレス、レブリーハ、ウトレーラ、セビージャというフラメンコの町々は、フラメンコファンにとっていつか絶対訪れたいところではないかと思いますが、こういった場所にもぜひ足を運んでみてください。

H_2410志風_レブリハフラメンコセンター4

 

【訃報】

 9月10日、ヘレスのブレリアの名手、エル・ソリおじさんが、亡くなりました。

 1935年ヘレス生まれで本名ホセ・ドミンゲス・ガリード。ラ・パケーラ・デ・ヘレスがお母さん同士が姉妹、ブレリア名人ディエゴ・デ・マルガラの父はその兄弟といいます。若い時にはそのパケーラの一座に加わっていたこともありますが、その後は市場の出店の洋品店での商売が本業となり、身内の宴などでしか踊っていませんでしたが、商売を子供に任せるとペーニャなどで踊るようになりました。アナ・マリア・ロペスの教室で彼と知り合ったという日本人フラメンコたちも多いのではないでしょうか。そのせいもあってか、日本人フラメンコたちのことも応援してくれていたようで、ヘレスで行われる日本人公演でお見かけすることも多かったです。

 

 2018年のフィエスタ・デ・ブレリアの、日本の日の公演にも出演し、小島章司、森田志保、佐藤浩希ら日本人フラメンコたちとも共演しました。

 その稽古風景の様子です。


 心よりご冥福をお祈りいたします。

 

【筆者プロフィール】

志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。

 

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