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- SHOJI KOJIMA FLAMENCO 2024『蒼茫』
(lunes, 24 de febrero 2025) 2024年11月20日(水)・21日(木) 銀座ブロッサム中央会館(東京) 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 日本のフラメンコ界を代表する舞踊家、小島章司の劇場公演が2日間に渡り上演された。ここ数年はスペインや日本で行われる舞台に招聘されての出演が続いていたが、日本での自主公演開催は実に10数年ぶりだ。今作品の創作の原動力となったのは、句集『蒼茫』を著した俳人、森澄雄の言葉にインスピレーションを受けたことだという。 オープニングはバッハの名曲をチェロとバイオリンの二重奏で披露。そこにパーカッションやパルマ、ハレオとフラメンコのエッセンスを加えていく。小島は往年の名チェリスト、パウ・カザルス(1876-1973)の演奏を通じてバッハの作品に触れ、その深い信仰心と祈りは自身の人間形成にも影響を及ぼしたという。バッハの音楽に神の存在を感じ、戦争を嘆き平和を願い続けたカザルスへの想いを捧げる曲だ。 カンテソロのカルタヘネーラス・イ・タランタス。チクエロの重厚なギターの音色に円熟味溢れるダビの歌声、そして艶やかで張りのあるロンドロの歌声が合わさり、哀愁を帯びて心に染みてくる。 揃いの緑のバタ・デ・コーラと茶系のマントンで踊る5人の群舞は、詩人ガルシア・ロルカの『三つの河の小譚詩』を歌ったブレリア。広い舞台にマントンを生かしたダイナミックな構成。ブレリアのグルーヴも楽しく、フォーメーションも工夫され美しくまとまり見応えがあった。 『チクエロの贈りもの』と題したギターソロは、テンポの速いブレリア。息子のディエゴもセカンドギターで父を支える。疾走感あるスピード、粒の立った音色、リズミカルで鮮やかな指さばきが繰り出すメロディーにパルマも楽しそうだ。 クラシコ・エスパニョールの代表格でもあるラ・ビダ・ブレベは、小島がスペイン留学中にビクトリア・エウヘニア(ベティ先生)から初めて習い、帰国後にはTV番組や数々の公演で披露するなど、たくさんの思い出を与えてくれた作品だという。今回は舞踊団の主要メンバーとして活躍する柳谷と松田が踊り、見事なパリージョや華麗なブエルタとともに伝統的な美しさを堪能させてくれた。 ファルーカは、今回客演として出演した知念響、漆畑志乃ぶ、石川慶子の3人で結成したユニット、ARMONÍAによる群舞。独白のようなダビの歌から始まり、弦楽器が醸し出すハーモニーが曲の世界へと誘う。深い哀愁を込めたロンドロの歌に、力強くキレの良い群舞を披露。定番のモチーフにオリジナリティが感じられるアレンジが加わり、新鮮な魅力を楽しめた。 ミュージシャンらによるステージは、ヘレス起源とされる王道のブレリア。ソニケテ溢れるグルーヴが回り続け、出演者らの熱量も伝わり期待の十二分以上に楽しい時間となった。 最後は小島の舞台。チェロの深い音色がほの暗いイメージを醸し出す。リビアーナを歌うダビ。そして小島が青緑色の長いマントを引きずりながら舞台に現れる。その蒼蒼としたマントに、どこまでも広がるような無限の象徴を見る。ダビが小島からマントを取り、トナを歌う。シギリージャを踊る小島は、真摯で、誠実で、無欲だ。己の持てる全てを踊りに捧げている。 そしてチェロの音楽が響く中、舞台中央に座り込む小島。心からの祈り。そこに群舞の5人も寄り添い、ともに平和への願いを捧げるかのように舞台の幕を閉じた。 「舞踊家は自分の考えを貫き、精一杯を尽くして、踊り続けるしかないではないか。」 今回の公演フライヤーに寄せた文章の中で、小島はその信念を打ち明ける。どれだけの経験と実績を積み上げても今なお尽きる事のない創作意欲と、フラメンコという舞踊に込めた祈りを抱き、一舞踊家としてこれからも踊り続けていくことだろう。 【プログラム】 ・バッハに捧げる音楽 ・カンテソロ カルタヘネーラス・イ・タランタス ・ブレリアス(知念響、漆畑志乃ぶ、石川慶子、柳谷歩美、松田知也) ・チクエロの贈りもの ギターソロ ・ラ・ビダ・ブレベ(柳谷歩美、松田知也) ・ファルーカ(ARMONÍA) ・ブレリアス ・小島章司『蒼茫』を舞う (リビアーナ、トナ-シギリージャ、「鳥の歌」) 【出演】 小島章司(作・構成・演出・主演) チクエロ(音楽監督・ギター) エル・ロンドロ(カンテ) ダビ・ラゴス(カンテ) ディエゴ・デル・チクエロ(ギター) カルロス・カーロ(バイオリン) マルタ・ロマ(チェロ) ハコボ・サンチェス(パーカッション) ARMONÍA アルモニア(バイレ/知念響、漆畑志乃ぶ、石川慶子) 柳谷歩美(バイレ) 松田知也(バイレ) =====
- アーティスト名鑑vol.20
(viernes, 21 de febrero 2025) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shika ze *名鑑登場アーティスト一覧は こちらから エル・トルタ(カンテ) ミラグロス・メンヒバル(バイレ) モライート・チーコ(ギター) Juan Moneo Lara “El Torta” Jerez de la Frontera 4-9-1953 31-12-2013 エル・トルタ 本名フアン・モネオ・ララ 1953年9月4日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ生まれ 2013年12月31日カディス県サンルーカル・デ・ラ・バラメーダ没 フラメンコのメッカ、ヘレスはプラスエラの生まれ。兄マヌエル、弟ルイスも歌い手(ルイスは最初ギタリストだった)。1972年マイレーナのコンクール、ソレアで受賞。マドリードのタブラオやマヌエル・モラオの作品『エサ・フォルマ・デ・ビビール』などに出演。地元では人気があったが、1989年ペペ・デ・ルシアのプロデュースで録音したアルバムで広く知られるようになり、フランスの会社による『コローレス・モレーノス』などもリリース。深みのある声、リズム感、音程の良さ。どれをとっても一流で、吟遊詩人のようなルイス・デ・ラ・ピカとともに現代フラメンコの神的存在の歌い手、カマロン・デ・ラ・イスラのお気に入りのアーティストでもあった。ドラッグの問題もあって、活躍は限られた部分はあったが、20世紀末から21世紀にかけてのヘレスのフラメンコを代表するアーティストであったことは確かである。 1988 Fiesta de bulería 【動画】 1989年、カナルスールのフラメンコ番組でブレリアを歌う。ニーニョ・ヘロ伴奏。声に力があり、抜きの感覚などもいい。 カナルスールでのブレリア。伴奏はモライート。場に慣れてない、ちょっと硬い感じだけど、進むにつれて良くなってくる。 2011年.前半のインタビューでカマロンのことなども話している。伴奏はクーロ・デ・ナバヒータ。 Foto promocional Milagros Mengíbar de la Cruz “Milagros Mengíbar” Sevilla 30-5-1952 ミラグロス・メンヒバル 1952年5月30日セビージャ生まれ バタ・デ・コーラの名手。優雅で女性らしいセビージャ派舞踊の代表的存在の一人。が、その踊りの優美さからは想像できない、サバサバした物言いに初めての人はびっくりするかもしれない。トリアーナ地区の生まれ。アデリータ・ドミンゴ、マティルデ・コラルに師事。11歳でコルドバのタブラオに出演、13歳からセビージャのタブラオのレギュラーとして活躍。1974年コルドバのコンクールで優勝、同年大阪のタブラオ出演のため初来日。舞踊教授としても定評があり、門下には日本人で唯一コルドバのコンクールで優勝したAMIや、長年ミラグロスと一緒の舞台を務め、現在ヘーレン財団で後進の指導にあたるルイサ・パリシオがいる。後、クリスティーナ・ヘーレン財団でも長らく後進の指導にあたった。伝統を踏まえつつ自分で工夫したオリジナルの技術でのバタやマントンづかい、ドラマチックな表情など、伝統をなぞるだけではない気概のある踊り手。 2006年 2006年 【動画】 1996年.カナルスールのフラメンコ番組でのカラコーレス。バタ・デ・コーラに、ペリコンとよばれる大きめの扇子、カスタネットのフル装備。ゆっくりと舞うコーラの優美さ。歌はフアン、レイナ、ギターはアントニオ・マルケス。 カナルスール、2008年のアレグリアス。歌はフアン・レイナとマノロ・セビージャ、ギターはラファエル・ロドリゲスというバックはミラグロスのいつものメンバー。 おまけ 画質は良くないのですが1993年ウニオンで踊ったアレグリアス。 2007年 Málaga en Flamenco ベルディアーレス楽団と共演 Manuel Moreno Junquera “Moraito Chico” Jerez de la Frontera 13-3-1956 10-8-2011 モライート・チーコ 本名マヌエル・モレーノ・フンケーラ 1956年3月13日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ生まれ、 2011年8月10日没 ヘレスのフラメンコを語る上で外せない一人。父フアン、伯父マヌエル、息子ディエゴ、妹の息子フェルナンド、従兄弟の息子ぺぺ、とヘレスが誇るギタリスト一家の出身。子供の時からギターを弾き、66年伯父のプロデュースする公演に出演、名歌手たちを数多く伴奏し、また72、86年にはヘレスのコンクールで優勝。92年には初のソロアルバムをリリース。ホセ・メルセやディエゴ・カラスコらヘレスのアーティストたちとの共演での録音多数。ソロでも伴奏でも絶妙な間合いの取り方が最高のフラメンコの鍵。シェリー酒片手にバルのスロットマシーンに興じる姿、フェリアのかセータのキッチンに立つ姿、飄々とした風情で、いつもヘレスのフラメンコの中心には彼がいた。日本にもビエナルのスターたち、フラメンコ協会、石井智子公演と何度か訪れている。あまりにも早く亡くなってしまった。 Sevilla 伯父マヌエル・モラオと。2003 Jerez 2007 La Unión 【動画】 1996年カナルスールでのブレリア。パルマにホセ・メルセ、チチャロ、ラファ、グレゴリオという最強の布陣。 1999年カナルスールのフラメンコ番組でのシギリージャ。深みと独特の味わいのある、唯一無比なシギリージャ。絶品。 1993年クリスマス特別番組でディエゴ・カラスコの伴奏からブレリアを踊る。 2010 La Unión 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====
- ArtistaЯ ~表現者☆~ ep.14
ep.14 蜂須夕子 Yuko Hachisu (domingo, 16 de febrero 2025) 写真家・大森有起が、今を輝くフラメンコ・アーティストたちの真の姿を写す 新人公演のソレアが初見だった。 ダイナミックな姿に期待高。 入賞こそ逃したものの好印象だった。 数年後、彼女の地元群馬へ。 広い舞台に拮抗するスケールは健在。 三位一体で踊るソレアは別物だった。 全身から溢れるアイレに惹き込まれ、 気が昂りながらシャッターを切っていた。 一期一会の舞台で刻む記憶。 余すところなく撮り続けていきたい。 ©Yuki Omori 「フラメンコと私」 「困ったな…」 がこの質問を投げかけられた瞬間の感想 何年振りにこの問いと向き合うのだろう フラメンコを始めたのが23歳。今、55歳。 もう30年経ってしまった でもフラメンコ年齢は32歳 まだまだエネルギー溢れる脂が乗ってる時期だと思う…思いたい フラメンコと私 背骨と身体 柱と家 そんな言葉が頭に浮かぶ 私にとってフラメンコは 『支柱』 これからも真摯に向き合っていきたい 私の家に集まってくれる生徒達と 私という名の家を支えるフラメンコとも ====
- 【告知】「フラメンコ年鑑2024」刊行のお知らせ
(lunes, 17 de febrero 2025) フラメンコ・ファンの皆様 いつもお世話になっております。 弊社が作成・運営を行っているフラメンコ総合情報サイト「フラメンコファン」をご利用およびご愛読いただき、誠にありがとうございます。 昨年4月よりサイトの運営を開始し、これまで数多くのフラメンコ業界の皆様の活動に接し、それらの情報を発信したり、現場に足を運んで取材させていただいたりしてきました。 それらの情報は現在インターネット上やSNS等を通して発信し、ようやく1か月あたりのサイトアクセス数も6,000件を超えるくらいとなりました。ですが実際には、ネット上のメディア媒体を頻繁に利用する方々がいる一方で、たまにしか利用されない方々も相当数いるという事も、実感として受け止めてきました。 そこでこの度、昨年1年間の様々な情報を集約してフラメンコを愛する皆様に向けて幅広くお届けしたいと思い、単行本という形で刊行することに致しました。 仕様は次の通りになります。 「フラメンコ年鑑 2024」 Flamenco fan特別編集 2025年3月10日発売 A4判フルカラー、88頁 1,980円(税込) 【内容】 ・グラビア 写真家が選ぶ今年の一枚(撮影:大森有起、川島浩之、川尻敏晴、MiCHiCO、佐藤尚久) ・公演リポート10選(マヌエラ・カラスコ来日公演、スペイン国立バレエ団2024日本公演、他) ・フラメンコアーティスト・関係者のエッセイ(志風恭子、中原潤、鈴木眞澄、大沼由紀、東敬子、永田健、石井智子、萩原淳子、鬼頭幸穂、濱田吾愛、今枝友加、佐藤浩希、瀬戸雅美、中田佳代子、稲田進、島田純子、安井理紗、小島章司) ・国内フラメンコアーティスト名鑑(全57名) ・マンガで振り返る2024年(川松冬花、永野暢子) ・ライターが選ぶフラメンコ三大ニュース(石井拓人、若林作絵、白石和己、S. Hori、凌木智里)、など 昨年1年間の様々な出来事、フラメンコに関わる皆様ひとりひとりの思いが詰まった、とても中身の濃い内容になっております。 ぜひお手元に置いていただけたらうれしいです。 どうぞよろしくお願い致します。 2025年2月吉日 フラメンコファン編集部 株式会社カミーノ 金子功子 *こちらの単行本のご注文は、 HP内のお問合せフォーム 、またはEメール( flamencofan2023@gmail.com )からお願い致します。 *送付先の ご住所・お名前・電話番号・冊数 をご記入の上、ご注文下さい。 *発売日より随時発送させていただきます。その際にお振込先をお知らせしますので、商品到着後10日以内にお振込みをお願い致します。 *書店では取り扱っておりませんので、ご了承の程よろしくお願い致します。 *クラウド・ファンディングでも近日情報公開致します。そちらも合わせてチェックしていただけますと幸いです。 =====
- カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.45
(martes, 11 de febrero 2025) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai Malagueña del Mellizo② 前回取り上げたニーニョ・デ・ラ・イスラ(1877~1915?)が1910年に録音したメジーソ①は今では殆ど、いや全くと言っていい程歌われない珍しいスタイルですが、今回からは現在一般にメジーソのものと言われるスタイルを取り上げます。 前回のマラゲーニャをメジーソの①番とすれば、今回はふたつ目なので便宜上②番としておきます。 メジーソのスタイルを受け継ぐカンタオールのひとりペリコン・デ・カディス(1901~1980)はこの歌をMalagueña chica del Mellizo(メジーソの小さい方のマラゲーニャ)と呼び、レコードにもそう名付けていますが、便宜上とはいえこの深く大きいマラゲーニャを「小さい」と表現するのは私には抵抗があるので②番と数字で表すこととしました。 歌の重い、軽い、深い、浅いは歌う人の想いや力量に左右されるものです。例えばファンダンゴでもフェルナンダが歌ったものはまさしくカンテ・ホンドですが、誰もがそうできるわけではありません。 ですから人によっては、これを軽く歌う人がいますが、しかし歌には持って生まれた格調というものがあり、それは恐らく創唱者の魂が入っているからでしょう。 ペリコンもチカと名付けてはいますが立派に歌っています。ちなみに他にこのスタイルをチカと呼ぶ人はいないようです。 このスタイルには多くの歌詞がありますが、今回はカディスが生んだ天才、アウレリオ・デ・カディス(1887~1974)が歌って不滅の名曲となった歌詞を採用します。 (Letra) (de la pena ...) (ay,)Yo vi a mi〈mare〉de ir en el carrito de la pena. Se me ocurrió a mí el decir; “Siendo mi〈mare〉tan buena, no se debía de morir.” (Ay, ay, ay.) (訳) 我が母の柩が 荷車に乗せられて行く それを見て思わず言った、 「こんな善(よ)い母さんが 死ぬべきではなかった」と。 ◎carrito ⇒ carro(荷車)、~de la pena(柩を乗せた~) ◎ocurrirse ⇒考え、思いが浮かぶ マラゲーニャはファンダンゴ族ですから歌詞は8音節の5行詩。今回のスタイルはウエルバのファンダンゴによくある様に2行目の最後の4音節を最初に持ってきて始めます。 それがde la penaですがこれはcarro de la pena、つまり柩をお墓まで運ぶ荷車のことで、運ばれていくのが自分の母親、という重い歌詞です。例として取り上げたのはグラン・クロニカvol.19、アウレリオ特集の最後に収録した曲です。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ( https://acustica-shop.jp/ )へお問い合わせください。(編集部) ======
- 鍵田真由美、第73回舞踊芸術賞を受賞
(sábado, 15 de febrero 2025) ©川島浩之 舞踊芸術の向上・発展に寄与した舞踊家に贈られる第73回舞踊芸術賞に、フラメンコ舞踊家の鍵田真由美さんが、日本舞踊家の中村梅彌(うめや)さんとともに選ばれました。 この賞は、芸術の向上発展を奨励するために東京新聞が制定したもので、毎年1回、舞踊芸術の向上発展に寄与した邦舞及び洋舞の舞踊家に贈られます。 今回の受賞理由については「フラメンコに根差しつつその枠を超えた創造的な活動を継続し、人材育成にも力を入れている」と評価されました。 鍵田さんは東京都出身。「鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団 ARTE Y SOLERA」を主宰し、『FLAMENCO曽根崎心中』をはじめ多くの作品を発表。2004年度文化庁芸術祭大賞を受賞しています。 なお、過去のフラメンコ・スペイン舞踊家の受賞者では、次の方々が受賞しています。 ・河上鈴子さん(第14回) ・小島章司さん(第47回) ・佐藤桂子さん(第51回) ・小松原庸子さん(第54回) ・岡田昌己さん(第58回) 【出典】 https://www.tokyo-np.co.jp/article/385614 ===
- スペイン国立バレエ団 2024年日本公演
芸術監督 ルベン・オルモ (jueves, 13 de febrero 2025) 【東京公演】 2024年11月20日(水)~ 24日(日) 東京文化会館 大ホール(東京・上野) 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko (写真)『ボレロ』より 劇場公演の醍醐味は、やはり何といっても大舞台の上で繰り広げられる群舞の迫力と、大小様々なフォーメーションや色彩豊かな衣装で楽しませてくれる視覚的な美しさだろう。 コロナ禍を経て今回6年ぶりの来日公演となったスペイン国立バレエ団公演は、芸術監督に就任してから初来日となるルベン・オルモ率いる総勢80名ものカンパニーによる、スペイン舞踊の「歴史」と「今」を表現する舞踊芸術の粋を集めた素晴らしい公演となった。 オープニングは、1984年の初演以来スペイン国立バレエ団のレパートリーとして数多く上演される『リトモス』。荘厳な音楽と共に、一糸乱れぬ整ったフォーメーションの群舞を繰り広げる。構成もよく練られていて、優美なパレハ(ペア)を魅せたり男性による群舞やパリージョを奏でながらの女性群舞を披露し曲も次第に盛り上がり、壮麗でダイナミックな群舞を展開する。 ピアノの生演奏による幻想的な世界を演出した舞踊作品『ハカランダ』。ソリストのデボラ・マルティネスが一風変わった衣装を着てくるくると回る姿はオルゴール人形のよう。途中でその衣装を脱ぐと、解放されたようにのびのびと踊る姿が軽やかで美しい。 第一舞踊手ホセ・マヌエル・ベニテスのソロによる『サパテアード』では、クラシカルな味わいの音楽の中で見事な足さばきを披露。貴公子のようなその端正な身体美と素晴らしい舞踊技術にすっかり見惚れてしまう。 この日鑑賞したAプログラム最大の見せ場である『ボレロ』。今回は昔ながらのホセ・グラネーロ版の振付で上演された。アール・デコ調の鏡の舞台装置を生かし踊りを一層輝かしく魅せる演出が印象的だ。次々と編成が変わる男女別の群舞が織りなす赤と黒の色彩のコントラストも美しく、素晴らしい照明演出と共に、迫力あるクライマックスを演出した。 2部はアントニオ・カナーレス振付による『グリート』。ミュージシャンの生演奏によるフラメンコステージだ。男性歌手のマルティネーテから始まる迫力の男性群舞によるシギリージャや、静と動のメリハリが際立つ男性3人によるソレア。ミュージシャンの層も厚く、アレグリアスでは女声のハーモニーを重ねた豊かな歌声にオリジナリティを感じた。 ゲストとして今回出演した、日本でも人気の高いエル・フンコはティエントを披露。大きな体格と重いペソを感じさせる深みのある踊りにはオーラが漂い、圧倒的な存在感を示した。 カーテンコールのブレリアではそれぞれのソリストやルベン・オルモ監督も踊るなど、その純粋なフラメンコへの愛情が感じられる和やかなシーンとなった。 スペイン最高峰の美しい舞踊を楽しませてくれた国立バレエ団公演。東京公演では「文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」の対象公演として、合計355名の子供の無料招待と、同行の保護者(条件あり)も特典付きで鑑賞できた。日本における芸術文化の未来の担い手を育むためにも、こうした支援制度が普及してより多くの人に舞台鑑賞を親しめるようになってほしいと願う。 【演目】 Aプログラム「世代を超えて」〜GENERACIONES〜 『リトモス』 振付:アルベルト・ロルカ 『ハカランダ』 振付:ルベン・オルモ (11/20、21夜) 『パストレラ』 振付:アントニオ・ルイス(11/21昼) 『サパテアード』 振付:アントニオ・ルイス・ソレール 『ボレロ』 振付:ホセ・グラネーロ 『グリート』 振付:アントニオ・カナーレス Bプログラム「祈り」〜INVOCACIÓN〜 『インボカシオン・ボレーラ』振付:ルベン・オルモ 『ハウレーニャ』振付:ルベン・オルモ 『イベリア賛歌』振付:アントニオ・ナハーロ 『フラメンコ組曲~マリオ・マジャに捧ぐ』振付:マリオ・マジャ、ミラグロス・メンヒバル、アスンシオン・ルエダ“ラ・トナ”、マノロ・マリン、イサベル・バジョン、ラファエラ・カラスコ (写真)Bプログラム公演より =====
- 新・フラメンコのあした vol.24
(sábado, 1 de febrero 2025) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。 今月は、昨年10月から11月にマドリードで開催された 「スマ・フラメンカ2024」フェスティバル で上演されたカンタオール、イスラエル・フェルナンデスの公演についてのリポートです。 イスラエル・フェルナンデス 『エル・ガジョ・アスール』 スマ・フラメンカ フェスティバル カナル劇場・赤の間、マドリード、スペイン 2024年11月2日 Israel Fernández, “El Gallo Azul”, Festival Suma Flamenca de Madrid Teatros del Canal (Sala Roja), Madrid, España. 2 de noviembre 2024 文:東 敬子 画像:宣伝素材 Texto: Keiko Higashi Fotos: Promoción (写真左から)イスラエル・フェルナンデス、ディエゴ・デル・モラオ スーツをピシッと着こなし、わさわさの巻き毛を揺らして登場した長身のカンタオールは、ヒターノらしいその声と仕草でマラゲーニャを歌い上げると、まるでやっと気づいたかのように客席を一瞥し、その割れんばかりの喝采に一礼を贈りました。 この堂々とした、こ慣れた所作を見て、私は驚きを隠せませんでした。私がイスラエルに初めて取材したのは彼がまだ10代の時で、ごく普通のおとなしげな男の子だった彼を、お父さんが横で一所懸命サポートしていたのを覚えています。それからずっと、名前を目にする度に「頑張っているかなあ」と心で応援していましたが、コロナで業界が一時停止してしまったこともあり、しばらく彼の活動に触れないまま、今回のコンサートに足を運んだのでした。 もう行く前から、「カナル劇場の赤の間って、どういうこと?」と面を食らっていたのですが(この劇場には3つの会場があり、赤の間が一番大きいんです)、ステージに出てきただけで大喝采、曲を歌い終わる度に「ブラボー」の嵐なんて、想像もしていなかったので、何だか一人だけ「流行に乗り遅れている人」のような置いてけぼり感でした。 まあ、カンタオールが急にスターダムにのし上がるというのは、スペインではそんなに珍しいことではありません。ただ、彼の凄いところは、大衆ウケする曲で人気が出た訳ではないというところです。 古くはカマロン。あの天才もルンバでヒット曲を出したからこそ、フラメンコの外の人たちにもアピールできました。ミゲル・ポベダが国民的歌手となったのも、コプラのアルバムがきっかけでした。エル・シガーラもボレロのアルバムで。近いところで言えば、カンタオーラ・ロサリアの世界進出も、若い世代にアピールする超現代的アレンジとSNSがなければ成し得なかった。 イスラエルの楽曲のPVを観ると、一年以内で百万回再生に達したものはやはりルンバやブレリアですが、前記したアーティストのように他ジャンルを取り入れたわけでもなく、ごく普通のルンバやブレリアでそれを成し遂げた訳です。テレビのバラエティで歌うときなんかはもういきなりギター一本でファンダンゴやソレアですからね。それで人気急上昇というのは、フラメンコって古臭いとか、ダサいとかいう先入観なしに、一つのジャンルとして受け入れる、だからこそ伝統的なスタイルを好む若い世代が増えた結果なのだと思います。やる方も観る方も、世代交代が進み新しい時代に突入していることをひしひしと感じました。またこれは、ディエゴ・エル・シガーラ以来しばらく空席だった「ヒターノのカンタオールのスター」をみんなが求めていた証でもあると思います。「待ってました!」と言う感じ。 さて当夜は、『エル・ガジョ・アスール』というタイトルが示唆する通り、ヘレスのカンテに捧げた一夜で、当地が誇るコンパスの魔術師ディエゴ・デル・モラオのギター、アネ・カラスコ、ピルーロ、マルコス・カルピオのリズム隊と共に、チャコンのマラゲーニャの後は、モハーマのソレアとタランタ、そしてティエントス、ブレリア・ポル・ソレア、シギリージャ、ファンダンゴ、パケーラに捧げるブレリアと、自分のスタイルに落とし込んだヘレスのカンテを観客に披露しました。 46歳となったディエゴ・デル・モラオのギターは、すでに貫禄すら漂わせる音で、今が一番脂が乗っている時期だなと実感しました。心躍る響にも、その奥底には人生の機微が表現されている。辛いことがあるからこそ、それを乗り越えた喜びが輝くと言うように。実はイスラエルのカンテには、ここが足りないんですよね。カンタオールとしての資質は充分過ぎるほどなんだけど、あまりに素直すぎる。深く落ちていく様なリアリティが欠けている。 でもそれは、これからの人生で実体験が増えるごとに、加えていける色なのだと思います。だから、フラメンコ識者や評論家が、たとえそこに不満を抱いたとしても、まだ若い彼の可能性にケチをつけるのは、私は違うと思うのです。観客が盛り上がっているのだから、一緒にこのパーティに参加しましょう。とりあえずフラメンコ識者のおじさんたちも、新しい時代に乗り遅れないように。うんちくは、またそれからね。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) /フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 =====
- スペインNews 2月号・2025
(jueves, 6 de febrero 2025) 文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze 新年早々立て続けに飛び込んできた訃報もあってか例年よりも、なんかどんよりした1月です。 スペインも日本同様、四季があり、訪れる季節によって印象がかなり変わると思います。アンダルシアというと太陽さんさん、いつも青空、というイメージがあるかもしれませんが、冬のセビージャは雨の日も多いのです。東京の冬は乾燥していますが、セビージャの冬は湿気があって洗濯物も乾きにくい日々が続きます。雪こそ滅多に降りませんが(1954年に降ったことがあるそうです)、最低気温が0度になることはあります。 スキーと海水浴を1日のうちに楽しめる、という謳い文句もあるグラナダは、シエラネバダのスキー場がありますし、市内でも降雪はそう珍しいことでもないようです。ちなみにグラナダでスキーと海水浴が同じ日にできるとすれば3月限定なのではないでしょうか。かつてはワールドカップの開催地ともなったシエラネバダですが、温暖化の影響もあってか最近は雪不足もあったりするようなので、年々難しくなっているかもしれません。 《INDEX》 ・ペーニャ・トーレス・マカレーナ ・ミゲル・ペレスに捧げる ・訃報 【ペーニャ・トーレス・マカレーナ】 アンダルシアでは夏はフェスティバル、冬はペーニャでフラメンコを楽しむというのが定番。セビージャの老舗ペーニャ、トーレス・マカレーナでも毎週、たくさんのイベントが開催されています。水曜金曜に舞踊、木曜はアフィシオナードの日、土曜にカンテというのが定番で、1月はエル・チョロやモネータらも出演。また土曜のカンテはラ・ウニオンのコンクールで大賞、ランパラ・ミネーラを受賞した、ヘスス・コルバチョ、リカルド・フェルナンデス・デル・モラル、アンパロ・エレディア、マリア・ホセ・ロペスが出演。これらの他にも、日曜午後にライブ付きの講演会なども開催しています。 1月19日には詩人でフラメンコ研究家、元セビージャのビエナル監督でもあるホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの『エン・ミ・クエルポ・マンド・ジョ』出版記念で、カルメン・ガルシア伴奏でサラ・オルガドが書籍に収められた歌詞を実際に歌いながら、お話しするというイベント。カンテ・デ・レバンテやバンベーラ、シギリージャに乗せて歌われるのは、フェメニズム的というか、女性も男性と同じ、といった内容。 2025Torres Macarena,Sevilla ©︎Kyoko Shikaze Entre sábanas de Holanda yo te lo quiere decir Que si m´acuesto contigo Es porque así soy feliz オランダのシーツにくるまり あなたに言いたい あなたと寝るのは それが私の幸せだから No quiero fidelidades Fragiles y quebradizas Prefierolas lealtades y el abrazo de tu risas. 貞節はいらない 壊れやすくて脆いもの 誠実の方がいい あなたの笑顔の抱擁がいい 【ミゲル・ペレスに捧げる】 1月26日、セビージャのアラメーダ劇場で、1年前に亡くなったミゲル・ペレスへのオメナヘ、オマージュ公演が開催されました。愛にあふれた、これまでに私がみてきた中で最も素晴らしいオメナヘでした。 オープニングの、ミゲル在籍時のアンダルシア舞踊団での同輩ギタリスト、ハビエル・コンデのギター、フアン・ホセ・アマドールの声とともに、踊り手である夫人、エレナ・マルティンによる彼を失った悲しみを語りながらのマントンの舞に始まり、エスペランサ・フェルナンデスが歌いイサベル・バジョンが踊ったフィン・デ・フィエスタに至るまで、二人から五人のグループでの群舞の間にサルバドール・グティエレス、ラファエル・ロドリゲスのギターソロとビデオ上映と、よく考えられた構成で2時間、しっかりみせてくれました。 オメナヘについてスペイン語の辞書には敬意、敬意を表する催し、とありますが、人や物事への敬意を表すためというだけでなく、病気などで経済的に困っている人への資金集めで開催されることもあります。基本出演者はノーギャラで、それもあってか、告知されていた大物アーティストが出演しなかったり、出演者がそれぞれやりたい放題やっていつ終わるのかわからない、などこのということもままある、というのはスペインの観客の暗黙の了解、だったりもするのですが、今回はそんなことはもちろんなく、このポスターに名前が掲載されているアルティスタのほとんどが出演、それも、一人一曲歌ったり踊ったりするのではなく、普段、ソリストとして劇場やタブラオで活躍している人たちが、一緒に踊っているのです。ということは、この日のために、振り付けを考え、稽古をしていたわけで、お金がもらえるわけではなく、むしろ他の仕事の時間を削ってまで参加しようと思ったアーティストがたくさんいたわけで、それだけミゲルへの想いが強かったということだと思います。 ミゲルの伴奏でウニオンのコンクールで優勝したフェルナンド・ヒメネスがアルベルト・セジェスら五人の男性舞踊手で踊ったファルーカ、三人の女性歌手の伴唱で萩原淳子がラウラ・サンタマリアらと踊ったアレグリアス、マヌエル・ベタンソスとアンドレス・ペーニャのロンデーニャ、年始早々、フランス、チリとアンダルシア舞踊団での海外公演を終えたばかりのパトリシア・ゲレーロとアナ・モラーレスがバタで踊った最前線ファンダンゴ、ルイサ・パリシオ、スサナ・カサスらによるバタとマントンのソレア。それぞれに魅力的でもう一度観たいくらいです。 終演後、出演者の一人に「誰も自己主張せずやっていたのが良かった」と感想をも伝えたところ、「ミゲルがそうだったからね」と返事。ああ、そうでした。自分が、自分がと前に出ることもアーティストにとっては必要なことでもあるのだけど、彼はいつもどうすればより良いフラメンコになるか、を考えて演奏していた人でした。その彼に伝えようという皆の気持ち、空の上にもきっと伝わっていることでしょう。 アンコールで、エレナ夫人、娘さんを真ん中に出演者たち ©︎Kyoko Shikaze 2024年1月22日、突然の心臓発作で亡くなったミゲルは・ペレス1960年セビージャ生まれ。マノロ・マリンの教室での稽古伴奏やタブラオ、ロス・ガジョスなどで活躍。多くの舞踊家たちの公演を支えてきた舞踊伴奏のエキスパート。日本へも小松原庸子スペイン舞踊団公演やタブラオ、新宿エル・フラメンコ出演するなど、何度か訪れています。萩原淳子や石川慶子など日本人舞踊家をはじめ、フェルナンド・ヒメネスやレオノール・レアルらのコンクール伴奏もしています。日本人に限らず、チリ出身のハビエラ・デ・ラ・フエンテの作品の伴奏をするなど、セビージャ在住の踊り手たちを幅広く支える存在でした。 そんな彼のために、セビージャのアーティストが集結し、最高のフラメンコをみせてくれました。公演の構成演出を担当し、裏方に徹した踊り手ルシア・アルバレス“ラ・ピニョーナ”の手腕あってのことだったと思います。ありがとうフラメンコ、ありがとうミゲル。ミゲルのおかげでこの夜フラメンコを愛する仲間は一つの大きな家族みたいなものだと改めて知ることができました。彼は地上にいなくても、今も皆を支えてくれているのだと思います。 【訃報】 かつてないほどに訃報が続きました。相次ぐ訃報に気持ちが落ちてしまったのは私だけではないでしょう。 1月3日、踊り手ラ・チュンガが、多臓器不全のため、86歳で生涯を終えました。10年前に肺癌と診断されていました。 本名ミカエラ・フローレス・アマジャ。1938年スペインのヒターノの両親のもと、フランス、マルセイユで生まれ、1歳でバルセロナに移り住み、子供の時から、最初は通りやバルで裸足で踊ってお金を稼ぎ、裸足の舞姫として注目され画家ダリら、カタルーニャのインテリたちのミューズとも言われ、映画にも出演。ルンバを得意とし、マドリードのタブラオ、カフェ・デ・チニータスの看板スターとして長年活躍しました。晩年は素朴な絵画の画家としても活動していました。 1988年マドリード カフェ・デ・チニータス ©︎ Kyoko Shikaze 映画『レイ・デ・ラサ』でグラン・アントニオと踊るチュンガ。この映画の監督は夫君でした。 1月8日夜9時にエル・グイトが亡くなったという知らせを受けたのは10日のことでした。 La Bienal Septiembre es Flamenco- Real Álcazar de Sevilla 2015 ©︎Antonio Acedo 本名エドゥアルド・セラーノ・イグレシアス。1942年マドリードの下町生まれ。幼い頃から踊り、映画にも出演。その後、アントニオ・マリンらに学びピラール・ロペスに見出され、彼女のスペイン舞踊団へ。アントニオ、ガデスやマリオ・マジャらと共演した。70年代にはマリオ・マジャ、カルメン・モーラとのトリオ・マドリードで、その後はソロで、また自身のグループで各地のフェスティバルやタブラオなどで活躍しました。1978年、スペイン国立バレエ初代監督アントニオ・ガデスに招かれ創立メンバーとなり、ガデスの映画『血の婚礼』にも出演しています。グイトといえばソレア。動く前から美しい完璧な姿勢、たたずまい。男性舞踊の粋そのもののあのソレアは永遠にフラメンコのお手本として記憶されることでしょう。国立バレエでのガラ公演の時のを置いておきます。映像の質は良くないですが、全体の感じはよく分かると思います。 10日にはグラナダのギタリスト、ミゲル・オチャンドが亡くなりました。 Con Carmen Linares Málaga en Flamenco 2007 ©︎ Kyoko Shikaze 本名ミゲル・モリーナ・マルティネス。1965年グラナダ、レアレホ地区で生まれ、子供の時からギターを弾き、1984年ラ・ウニオンのコンクールで準優勝。元々ソリスト志向だったようですが、エンリケ・モレンテ、カルメン、リナーレスなど第一線で活躍する歌い手たちへの伴奏で知られます。勘所をきちっと抑えた伴奏、どこか悲しみを讃えた繊細で美しいソロ。というのはこのバルセロナでの演奏でも分かるのではないでしょうか。 まだ59歳。肝臓がんとのことですが、本当に早すぎます。 と嘆く間もなく14日にはやはりギタリスト、ウエルバ出身のホセ・ルイス・デ・ラ・パスが亡くなりました。彼はオチャンドよりさらに若い、1967年セウタ生まれ。まだ57歳という若さです。 Sevilla 2009 ©︎Kyoko Shikaze 本名のホセ・ルイス・ロドリゲスの名前で1995年から長年クリスティーナ・オヨス舞踊団のギタリストとして活躍。『ティエラ・アデントロ』や『イエルマ』などの作品の音楽を作曲。また、ベレン・マジャやイサベル・バジョンらの伴奏でも活躍しましたが、2010年頃にアメリカに渡りマイアミ在住。ソロ活動を中心に、彼の地のアーティストとも共演するなどしていましたが、24年11月に腎臓がんが発覚し入院中でした。 3歳からウエルバ在住で出身はウエルバと自負していた彼に、1月25日、ウエルバの日に、ウエルバの芸術章が贈られ、弟ホルヘが代わりに授章式に出席しました。彼が演奏するファンダンゴ・デ・ウエルバを。2004年カナルスールの番組での演奏です。 また、1月29日にはかつてラファエル・アギラール舞踊団などで活躍したダンサーで、振付家、デザイナーとしても活躍してきた、フアン・イダルゴも亡くなりました。セビージャ生まれ。1989年スペイン国立バレエ団に在籍、退団後は主にラファエル・アギラール舞踊団で活躍。1992年の日本公演での『カルメン』世界初演に際し、コンセプト、カルメンの男のみたカルメンの中の女という役で長身の彼が女装で出演し注目されました。 左から三人目赤い衣装がフアン1992 ©︎ Kyoko Shikaze パルマ・デ・マジョルカのカジノのショー出演をきっかけに長年マジョルカに住み、クラブやのショーの振り付けや芸術監督、舞踊教授などで活躍し、その地で亡くなったといいます。ご冥福をお祈りします。 Ballet Nacional de España 在籍時の写真 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====
- PARADERO 〜古びた靴の導き〜
Célula オリジナル舞台作品 (スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和6年度助成事業) (jueves, 6 de febrero 2025) 2024年12月7日(土) MI PATIO(愛知・名古屋) 写真/佐藤尚久 Fotos por Naohisa Satou 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 日本フラメンコ協会の全国ツアーをきっかけに誕生した若手の女性フラメンコダンサー6人によるユニット、Célula(セルラ)の初の舞台作品が名古屋のMI PATIOで上演された。 原作は、漫画家としても活躍するメンバーの川松冬花が書き下ろした漫画をベースとし、漫画と舞台作品がコラボするというユニークな試みだ。 会場となるのは、小劇場のようなコンパクトで奥行きのある舞台。ステージ前方には紗幕(しゃまく)が掛かり、そこに映像を投影しつつ奥の人やセットも幕を透過して見えるという便利な演出アイテムだ。 プロローグでは、バイオリンとギターの二重奏が流れる中で、ストーリーの軸となるマンガの画像が映写される。 そして、物語の主人公役を務める鬼頭と、黒い衣装に黒のヴェールで顔を覆う5人の群舞によるタラント。群舞の一団が次々に形を変えながら鬼頭を取り囲み、翻弄し、やがて寄り添い、調和し導いていく。振付もフォーメーションも自然でオーソドックスでありながらも迫力があり、とても良く作られている。 佐藤陽美 主人公がフラメンコスタジオを見学するシーンでは、ブレリアやタンギージョの曲を活かしてコメディタッチに演出する場面も。 タンギージョ シギリージャでは主人公の怒りや悲しみをソロと群舞で表現。中里は歌でもその心情を表現。紗幕の映像や照明の演出との相乗効果で、 舞台に業火が見えた。 (左から)中里眞央、鬼頭幸穂 バイオリンソロのファルーカを踊る鬼頭は、そのキレのある身体能力と表現力で渾身の舞を魅せた。 白のドレスにメンバーカラーのシージョをアクセントにした衣装に身を包んだ群舞は、救いと希望のアレグリアス。遠藤のカンテが大きな愛で包み込んでいるかのよう。ユニゾンもソロパートを繋ぎ合う場面も息が合っていて、観ていて気持ちがいい。 ラストは主人公の未来に光が感じられ、何だか映画を1本見終えたかのような爽快感を覚えた。 (中央)川松冬花 (中央左から)荒濱早絵、脇川愛 満員の観客の拍手に包まれ、ユニットとしての門出を大成功で飾ったセルラ。フィナーレの挨拶で原作を務めた川松は「これからも今までフラメンコでやらなかったようなストーリーにも取り組んでいきたい」と意気込みを語った。 そしてこの3月、彼女たちは2月からスペインへ留学する鬼頭以外の5人で、現代舞踊協会主催の「ダンスプラン2025」全国新人舞踊公演の舞台を目指す。 未知の可能性を秘めた才能ある若手たちの、今後の活躍に注目していきたい。 作品の象徴となった赤い靴と共に 【出演】 演出・振付・出演 Célula(荒濱早絵 川松冬花 鬼頭幸穂 佐藤陽美 中里眞央 脇川愛) ギター 斎藤誠 カンテ 遠藤郷子 バイオリン 森川拓哉 ===
- LOS HERMANOS VILLEGAS 日本公演 enガルロチ
(sábado, 1 de febrero 2025) 写真/渡辺格 Fotos por Itaru Watanave 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 2013年の新宿「エルフラメンコ」出演以来、その美しく情熱的な踊りで根強いファンを持つラケル・ヴィジェーガスが、ミュージシャンとしてスペイン国内外で活躍する弟ディエゴと共に出演するフラメンコ公演が新宿ガルロチで開幕した。 今回のグループメンバーは全員カディス出身。そして日本が大好きという事で、特にプログラムAは日本への敬意が込められた内容になっているという。 オープニングは、尺八の音色からインスピレーションを受けて作ったというオリジナルのカーニャ。深く広がるようなフルートの音色はまさに尺八のよう。和の世界を感じさせながらもその奥にはフラメンコのアイレが根付いている。赤いジャケット姿のラケルと黒の衣装のカルロスが絡み合い、赤と黒のコントラストが鮮やかな印象を残す。 ラケルの魅力は、美しさもさることながら力強さや気風の良さ、明るい人柄が表れる笑顔だろう。小物使いも巧みで、踊り手カルロスとカンテのセバスチャンの間を揺れ動くように踊ったグアヒーラでは、アバニコを操りコケティッシュな魅力を演出。そしてバタ・デ・コーラとマントンで披露したアレグリアスは芸術的な美しさを魅せ、カディスの眩しい海と青空を連想させた。 もう一人の舞踊手カルロスは、パワフルさとしなやかさを合わせ持つ踊りが持ち味。タラントでは巧みで見事な足技を披露し、緩急のメリハリを効かせた踊りは見惚れるほどだった。 今回が初来日というディエゴは、2020年にビエナルで名誉ある賞を受賞したり自身のCDも発売するなど、ミュージシャンとして世界的に活躍。優しくも幻想的な音色のフルート、表現豊かなハーモニカ、歌うように奏でられるサックスという三刀流で、それぞれに異なる魅力の音色を聴かせてくれた。フラメンコの舞台ではギターと共にバイオリンやピアノなどの演奏を聴くことは多いが、これらの吹奏楽器との共演は音楽面での新鮮な魅力を楽しませてくれた。 カンテのセバスチャンは、実は28歳というグループ最年少。どんな歌い手なのかネットで検索したが見つからず、聞いてみたらカディスはもちろん各地の舞台に呼ばれ大忙しなのだとか。伸びやかな歌声はこれから大成しそうな素質を秘め、仲間にハレオを掛け舞台を盛り上げる姿にも頼もしさが感じられる。 ギターのマヌエルは深みのある渋い音色を奏で、安定感のあるリズムを刻みグループの舞台を支える。 多彩な音楽と個性豊かな二人の踊り手の魅力が楽しめる今回のグループ公演は、2月12日(水)まで開催される*。プログラムもA・Bの2種類用意されるので、楽しみが2倍なのもうれしい。もし初めて名前を聞くアーティストがいるなら、この機会にぜひ観に行ってほしい。彼らだからこそ魅せてくれる、新しいフラメンコの魅力に出会えること間違いなしだ。 [出演] ラケル・ヴィジェーガス(踊り) ディエゴ・ヴィジェーガス(フルート、ハーモニカ、サックス) カルロス・カルボネル(踊り) セバスチャン・サンチェス(歌) ニーニョ・マヌエル(ギター) *スケジュールなど公演情報は こちらをチェック! [予約/問] メール: familyarts.garlochi@gmail.com 電話:03-6274-8750 ====
- 小島章司『第11回西日財団賞』を受賞
(martes, 28 de enero 2025) 昨年11月の劇場公演『蒼茫』が高い評価を受け、今もなお精力的に舞踊活動を行うフラメンコ舞踊家、小島章司さんがこの度スペイン日本財団(Fundación Consejo España-Japón、または西日財団)より『第11回スペイン日本財団賞』を授与されました。 その授賞式が昨年12月16日、マドリード市内の王立劇場カルロス3世の間(Teatro Real de Madrid – Salón CarlosⅢ)にて、財団理事長と在スペイン日本全権大使が出席する中で執り行われました。 この賞は、スペインと日本の関係をより友好的にすることに貢献した個人や団体に対して授与されるもので、小島さんはその長年にわたるフラメンコ文化への貢献に対しての受賞となりました。 *このニュースは、1月6日に当サイトで掲載された志風恭子さん連載『 スペインNews 1月号・2025 』でも紹介されています。 【スペイン日本財団 公式サイト】 https://spainjapanfoundation.com/ =====











