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  • スペインNews 4月号・2025

    (domingo, 6 de abril 2025)   文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze   ヘレスのフェスティバルも無事終了。グラナダの国際音楽舞踊祭やコルドバのギター祭など、これから夏にかけてのフェスティバルのプログラムも次々に発表されています。こうしてフラメンコのイベントは休むことなく続いていくのですね。 ヘレスのフェスティバル後半から3週間続いた雨もようやく上がって、いつもの太陽さんさんのアンダルシアが戻ってきました。アンダルシアも例年、冬は雨の日が多いとは言っても今年は異常なほどの雨続き。おかげで夏の水不足の心配はなさそうです。 ©︎ Kyoko Shikaze   《INDEX》 ・ フラメンコの生きる歴史 ・ 中田佳代子『TOHOGU』スペイン公演 ・ ペーニャ、トーレス・マカレーナでの鈴木時丹   【フラメンコの生きる歴史】 3月14日、セビージャパテ劇場で、セビージャ県主催による『フラメンコの生きる歴史』と題された公演が行われました。 フラメンコの歴史の生き証人であるベテラン・アーティストたちにフォーカスしたこのフェスティバルも、今年で3回目。今年は、94歳の超ベテラン、トリアーナのソレアを得意とした歌い手マルケス“エル・サパテーロ”へのオマージュということで告知されていたのですが、サパテーロが3月9日、その生涯を終え、彼の代わりにサパテーロの生まれ故郷、ビジャヌエバ・デル・アリスカルの市長やペーニャ会長が舞台に上がりました。 公演はトリアーナ出身ローレ・モントージャの歌で始まり、レブリーハのクーロ・マレーナの妹イサベルがシギリージャとブレリア、舞踊伴唱で何度も来日した歌い手ディエゴ・カマチョ“エル・ボケロン”のソレアとファンダンゴへと続き、最後はアントニオ・カナーレスが登場。今年で舞台から引退と言っている彼、確かに最盛期のようなキレのある動きこそありませんがそれでもところどころに、これぞカナーレス!というような、なんとも言えない間合いの良さなどが感じられ、サパテアードの太い音と相まって、やはりカナーレスはカナーレス、フラメンコ舞踊に一時代を築いただけのことはあると再確認したのでありました。ボケロンが共演したのもうれしかったです。 実はカナーレスは私と同じ61年生まれなのですが、いつの間にか、ベテランと呼ばれるようになってしまったのだなあ、と感慨深いことでした。 ©︎ Kyoko Shikaze   最後は最近のフェスティバルでは珍しいフィン・デ・フィエスタも行われ、ローレ以外の出演者が全員登場。それまで台本を見ながら司会を務めていた踊り手トロンボもすごいパタイータをみせてくれて、大満足で家路を辿ったのでありました。 ©︎ Kyoko Shikaze   【中田佳代子『TOHOGU』スペイン公演】 岩手出身、バルセロナ在住のバイラオーラ、中田佳代子が日本から邦楽のミュージシャンを招聘し、バルセロナ、セビージャ県コリア・デル・リオ、ウエルバで公演しました。3月13日の公演には昨年日本で共演したギタリスト、アルフレド・ラゴスが、また15日のセビージャでの公演には2020年の『東北』初演の時からの共演者であるギタリスト、ラファエル・ロドリゲス、そして歌い手モイ・デ・モロンも出演しました。 オープニングの和風ファルーカ、南部牛追歌からのシギリージャではフラメンコと和太鼓や篠笛が違和感なく共演し、赤いバタ・デ・コーラのソレアでは即興で歌を踊りつくす。 ©︎ Kyoko Shikaze ルーツである日本、東北の民謡と、彼女が人生を賭けて取り組んでいるフラメンコ。二つの音楽、文化、土地の狭間で揺れ動く彼女の心をそのまま映したような作品と言えるように思います。私が見たセビージャ公演では会場や技術の問題がたくさんあったということですが、それにめげず、エネルギッシュに前進し、観客を楽しませていたのは見事としか言えません。まさにプロ。またぜひその舞台作品を観たいと思わせるアーティストです。 ©︎ Kyoko Shikaze ©︎ Kyoko Shikaze   【ペーニャ、トーレス・マカレーナでの鈴木時丹】 3月28日、セビージャのペーニャ、トーレス・マカレーナに鈴木時丹が出演しました。 スペインでの初舞台はヘレスでしたが他の日本人ダンサーたちとの共演だったので、カベサ・デ・カルテル、自分の名前でソロでのデビューとなりました。 第一部はメキシコ出身ダニエル・メヒアのギターソロ、カンテソロに続いて、アレグリアス。 ©︎ Kyoko Shikaze   生き生きとして全身でリズムを楽しんでいる感じのブレリアにワクワクさせられました。 ©︎ Kyoko Shikaze   休憩を挟んでの第二部ではカンテソロでタンゴに続いてソレア。歌のところでは足を入れない、昔ながらのスタイル。しっかり歌を聴いてそれに応えようとしています。歌を踊る、ある意味、根源的でプリミティブなフラメンコ。歌とは関係なく怒涛のサパテアードてんこ盛りの若手が多い中、かえって新鮮フラメンコへの愛と敬意が感じられ、観てるこちらも引き込まれ、歌い手もどんどん本気になっていく…そんな感じ。 ©︎ Kyoko Shikaze ©︎ Kyoko Shikaze スペイン人、日本人とか関係なく、本当に、真摯な、いいフラメンコを見せてもらいました。   【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。   =====

  • タンゴ探しの旅 ~二つの川を渡って~

    野村眞里子プロデュース創作フラメンコ公演 (viernes, 4 de abril 2025) 2024年6月15日(土)・16日(日) KAAT神奈川芸術劇場(神奈川) 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko   (手前から)朱雀はるな、河野麻耶 私がフラメンコを習い始める前、タンゴと聞いて連想するのはアルゼンチンタンゴだった。だからフラメンコを学ぶようになって曲種にタンゴがあると知ったときに、新鮮な驚きを感じたのを覚えている。 エルスール財団の代表理事であり、これまで数々の舞台作品や企画を手掛けてきたプロデューサー野村眞里子による創作フラメンコ公演『タンゴ探しの旅 ~二つの川を渡って~』が2日間にわたり上演された。 この作品は、フラメンコのタンゴとアルゼンチンタンゴがその生成の段階でなんらかの関係があったのではないかという視点で企画された。サブタイトルにある二つの川とは、南米アルゼンチンとウルグアイの間に横たわるラプラタ川と、スペインのアンダルシア地方グラナダを流れるダロ川を指しているという。 ストーリーは、一人の少年が幼い頃に別れた母を探す旅の途中でこの二つのタンゴに出会い、成長する過程を描いたというもの。その物語を軸に、フラメンコの様々な曲種やアルゼンチンタンゴのシーンも織り交ぜている。 少年役には若手舞踊手として数々の舞台で活躍中の出水と、その子供時代の役に現役高校生でもある山本涼というダブルキャスト。祖父母に見守られフラメンコの手ほどきを受けて踊る少年の姿を、山本涼が初々しく好演。青年に成長した少年役の出水はマルティネーテやアレグリアスなど見応えのあるソロを踊り、母への想いに悩み葛藤する姿を感情豊かに表現した。 今作の主役となるフラメンコダンサーの日本人女性役は、現在グラナダ在住で日本とスペインを行き来して活躍する河野麻耶が務めた。プロローグのタンゴ、シギリージャ、そしてカーニャと、高い熱量で力強く踊る姿は情熱的な女性という役柄にまさにハマり役だ。 また少年にとっての異父妹役には、同年4月の第5回全日本フラメンココンクールで審査員満票での優勝に輝いた伊藤が出演。アルゼンチンタンゴのダンサーらと一緒に群舞を踊る場面や、サンブラでは柔らかい身体使いと巧みな足技で観客を魅了した。 (写真左から)伊藤笑苗、出水宏輝 パーカッショニストで踊り手でもある朱雀は、演奏と踊り両方での出演。実際よりはるかに年上となる少年の祖母役として、河野とともにシギリージャのパレハで母娘の対立シーンを熱演。そしてグラナダの映像とともに美しく奏でられるペペのギター・ソロでは、パーカッションで豊かな彩りを添えた。 アルゼンチンタンゴの場面では、プロダンサーとして日本各地で活躍するマーシー&マギの二人が華麗な回転や鮮やかなステップを披露。有名なリベルタンゴの曲に合わせ、本格的なアルゼンチンタンゴを魅せてくれた。 今作は曲種の多さもさることながら、音楽面での充実ぶりが素晴らしかった。カンテ・ソロでは舞台のスクリーンにアルゼンチンの写真が投影される中、ミゲルが情感たっぷりにビダリータを熱唱。 ミュージシャンによるタンゴ・フラメンコではミゲルとペペ、小松と北岸がそれぞれペアになり、交互に歌い繋いでいく。タンゴ・デル・ティティやタンゴ・デ・グラナダなど馴染み深い歌も多く、たっぷり聴き応えのあるシーンだった。 タンゴ・フラメンコ フラメンコのタンゴとアルゼンチンタンゴ。互いに異なる舞踊文化の魅力をそれぞれの場面で見せつつ、うまく組み合わせて一つの作品に仕立てていくのも創作作品のおもしろさだろう。こうした新しい試みに取り組む意欲的な作品がひとつの懸け橋となり、互いの文化を深め合いそのすそ野を広げる良い機会になるのではないだろうか。 エピローグ 【プログラム】 第一部 東京、そしてブエノス・アイレスへ プロローグ:リベルタンゴ~タンゴ・フラメンコ 1.シギリージャ 2.ファンダンゴ・デ・ウエルバ 3.ソレア・ポル・ブレリア 4.ビダリータ(カンテ・ソロ) 5.アルゼンチンタンゴ 6.マルティネーテ 第二部 アンダルシアのいくつもの町を経てグラナダへ 7.タンゴ・フラメンコ 8.ギター・ソロ 9.サンブラ 10.アレグリアス 11.ラ・カーニャ エピローグ:タンゴ・フラメンコ 【キャスト】 マヤ(母親) 河野麻耶 マーシー(父親) 村山雅史(マーシー&マギ) マギ(父親の2番目の妻) 村山正子(マーシー&マギ) ファロリート(息子) 出水宏輝(Farolito) エナ(娘) 伊藤笑苗 ジャマキート(祖父) 山本将光(Yamaquito) ハルナ(祖母) 朱雀はるな ファロリート ※子役 山本涼 謎の女 ※狂言回し  野村眞里子 エキストラ  Taro、Sun、篠宮美沙、本間恵子、大槻智康、一條菊義、一條ちこ [歌] ミゲル・デ・バダホス 小松美保 [ギター] ペペ・マジャ“マローテ” 北岸麻生 [パーカッション] 朱雀はるな =====

  • 新・フラメンコのあした vol.26

    (martes, 1 de abril 2025)   20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。 今月は、去る3月8日にアランフェスのカルロス3世王立劇場で開催された、ホルヘ・パルドの公演についてのリポートです。   ホルヘ・パルド 『エル・レガド』 カルロス3世王立劇場、アランフェス 2025年3月8日   Jorge Pardo "El Legado" Teatro Real Carlos III de Aranjuez, 8 de marzo 2025   文:東 敬子 画像:宣伝素材 / 東 敬子   Texto: Keiko Higashi Fotos: Promoción / Keiko Higashi 皆さんフラメンコ・ジャズをご存知ですか。   その歴史は意外に長く、1950年代にギタリストのラモン・モントージャやサビーカスがアメリカでジャズとコラボしたのが最初とされ、スペインでもジャズミュージシャンのペドロ・イトゥラルデがギタリストのパコ・デ・ルシアの伴奏で『ジャズ・フラメンコ』(1967)を発表し、それがこのジャンルが生まれるきっかけとなりました。   その後、パコの多大な成功に影響を受けたギタリストだけでなく、踊り手などもジャズとのコラボの機会が増えて行き、フラメンコ・ジャズは2000年代にピークを迎えます。現在は多少勢いは衰えたものの、未だ根強いファンを保っています。   スペインではなぜか、ジャズが好きな人はフラメンコも好き(もしくはその逆)という謎の傾向があって、それもこのジャンルが一過性のものではなく、ひとつのジャンルとして定着した理由かも知れませんね。   そんなジャズ・フラメンコの歴史の1ページを飾るのが、今回ご紹介するホルへ・パルドです。 ジャズのサックス、フルート奏者の彼がフラメンコ界に現れたのは、ドローレスと言うグループに参加していた20歳そこそこの頃でした。そしてその才能を買われ、カマロンの、フラメンコ史上革命的なアルバムとして名高い『ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ』(1979)に参加し、ここからフラメンコの沼に足を踏み入れることになります。そしてその後は、パコ・デ・ルシアのグループの一員として、40年の長きにわたって世界中でその音色を響かせました。パコ亡き後は自身のグループで活躍し、晩年のチック・コリアとの共演は記憶に新しいところです。   さて、当夜はマドリードから電車で小一時間のアランフェスにある王立劇場でのコンサート。小さな劇場ですが、由緒ある装飾が美しい居心地の良い空間です。   ホルへのフルートとサックスに、ヘロニモ・マジャのフラメンコギター、バンドレロのパーカッションを加えただけのトリオでしたが、それぞれのパワーが半端なかった。彼らはたった3人で難なく空間を支配し、私たち観客をその偉大な音の渦に飲み込んでいきました。 ホルヘ・パルド (c) Keiko Higashi 渋いサックスの音色で奏でる独特なグアヒーラに始まり、フルートで軽やかにメロディーを奏でるカマロンのルンバ。セギリージャ、ソレア、そしてブレリアなど、コンサートはあくまでフラメンコ主体。面白いのは、ギター伴奏にのって奏でるサックスやフルートの音色は、カンテのそれであったこと。歌声の代わりに音色で歌い上げるのです。そしてその饒舌なこと。けれど彼は決して、フラメンコ奏者ではないのです。あくまで、自身の解釈で、ジャズ奏者としてその音を作り上げる。   その逆がヘロニモのギターでした。それはあくまでフラメンコであり、フラメンコとしてジャズと触れ合う。そして彼ら二人の掛け合いの素晴らしかったこと。彼らのコラボは中々見られないので、面白かったです。プラスとマイナスが合わさって生み出す化学反応は刺激的でした。   ちなみにヘロニモはジャズとのコラボの経験もありますが、彼の場合は、フランスに住むヒターノたちが生み出すジャズ・マヌーシュとのコラボが多く、他のギタリストとはその点で一線を画しています。   そしてこの二人を繋ぐのがパーカッションを担当したバンドレロでした。非常にそつのないプレイで二人を支え、尚且つ自身の聞きどころを作ることも忘れない。本当に三者三様の個性をもつ3人ですが、同時に、まとまっている。3人で完結しているのです。他には誰もいらない。カンテもバイレも必要なし。まさに余計なものを削ぎ落とした究極の美。充実した大人の、見応えのあるコンサートでした。   にしてもホルへの、68歳とは思えないその肺活量には脱帽でした。この年齢で1時間半ずっと管楽器を吹きっぱなしですからね。しかも、ステージの外で見ると年相応に見えるのですが、ステージに上がるや否や、若い! 彼の印象は本当に変わらないですね。今年は台湾での公演も控えているとか。機会があれば日本でもまた是非プレイしたいと語る彼でした。 左からホルヘ・パルド、ヘロニモ・マジャ、バンドレロ (c) Keiko Higashi 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) /フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。   =====

  • 特集:第29回フェスティバル・デ・ヘレス

    (sábado, 29 de marzo 2025) 去る3月8日に閉幕した第29回フェスティバル・デ・ヘレス。2月21日から16日間にわたり数々の作品が上演され、日本からはもちろん海外からも多くのフラメンコ愛好家が訪れ、それぞれの会場で公演鑑賞を楽しみました。 今年のフェスティバルの模様を、長年にわたり取材を続けている志風恭子さんがリポートします。   文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze   【INDEX】 ・ 劇場公演 ・ 日本人の活躍 ・ アフターショーのお楽しみ   毎年恒例ヘレスのフェスティバルも今年で第29回。世界で唯一の、フラメンコ舞踊とスペイン舞踊に特化したこのフェスティバルに29年間、欠かさず通っているわけですが、昔と今では色々変わってきたこともたくさん。今年はヘネラシオン、世代というのがテーマのようになっていたみたいですが、実際、出演者やクラス教授らの世代交代は進み、街も、人も変わってきています。 来年の30年という節目の年を前に、カルロス・グラナドス新監督のもとの今年のフェスティバルを振り返ってみたいと思います。   劇場公演 ◎ビジャマルタ劇場 2024年秋にセビージャのビエナルが開催されたこともあって、今年のプログラムでは初演作品が例年に比べ少なかったように思います。フェスティバル全体での新作初演は10公演だったということですが、メイン会場であるビジャマルタ劇場公演でいえば、マリア・ホセ・フランコ、エドゥアルド・ゲレーロ、マリア・デル・マル・モレーノ、とカディス/ヘレス、いわばご当地出身の3人の三作品のみで、ビエナルで上演された作品の公演数よりも少ないのです。 第一線で活躍する、劇場公演にふさわしい作品を制作できるアーティストの数は限られるのでどうしてもそうなってしまうのでしょうし、いい作品は何度でも観たいものだから、もちろんそれでいいのですが、反面、どうしても良い作品に初めて会った時のドキドキ感は少なくなってしまいます。そのこともあって、今年のヘレスは例年に比べ、落ち着いた年だったという印象です。 ビジャマルタ劇場公演では、ビエナルでも観た、物語を上手に語る アンダルシア舞踊団『ピネーダ』 、 © Festival de Jerez/Esteban Abión とにかく踊りが素晴らしい ラファエラ・カラスコ『クレアビバ』 。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   また、作品の音楽を担当したヘスス・トーレスに作曲賞が決定しました。下の写真の左から2番目のメガネと髭のギタリストです。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   この二作品が丁寧な作りと舞踊そのものの素晴らしさで群を抜いていたと思います。 そのほかにも観客の投票による観客賞をとった マヌエル・リニャン の 『ムエルタ・デ・アモール』 (この作品の歌い手フアン・デ・マリアはペーニャ協会が選ぶ伴唱賞を受賞)や © Festival de Jerez/Esteban Abión  左から3人目がフアン   メルセデス・デ・コルドバ の 『オルビダダス』 も、ビエナルに続いてヘレスでも上演された作品です。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   なお、今年の批評家賞は マルコ・フローレス の 『ティエラ・ビルヘン』 でしたが、これはマドリードのフェスティバル、スーマで初演されました。ヘレスの歌い手3人とシウダ・レアル出身のギタリスト、ホセ・トマスというコンパクトな編成で、フラメンコの起源に思いを馳せた作品です。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   また、フェスティバル初登場の、衣装も豪華な アントニオ・ナハーロ舞踊団『アルヘンティーナ・エン・パリ』 、 © Festival de Jerez/Esteban Abión   27年ぶりのフェスティバル公演となった アントニオ・ガデス舞踊団『カルメン』 も、 © Festival de Jerez/Esteban Abión   スペイン舞踊とフラメンコの歴史を思い返させる良い公演だったと思います。 一方、タイトルが違うので新作かと思った(そう思った私がいけないのですが) エバ・ジェルバブエナ作品『オスクーロ・ブリジャンテ』 はビエナル公演からゲストを抜いた作品だったし、 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   また、 イスラエル・ガルバン『ラ・エダ・デ・オロ20周年』 も、20年前サラ・コンパニアで初演を見た時のような興奮は残念ながらありませんでした。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   また、ギターラ・コン・エル・アルマ賞にこの作品で伴奏した ラファエル・ロドリゲス が受賞します。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   劇場作品を作るというのは大変なことで、誰にとっても毎年のように新作を作るというのはほぼ不可能です。現在、どのフェスティバルも、アーティスト側から提案された作品主体のプログラムですが、フェスティバル側が製作するガラ公演的なものがあってもいいのではないかと思えるのです。カディス・フラメンコ舞踊団にゲストで出演していたフアン・オガージャ、アンドレス・ペーニャ、エル・フンコが、あらすじやコンセプトなどとは関係なく踊ったシンプルなフラメンコを観たせいかもしれません。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   シンプルなフラメンコが持つ力を改めて感じさせてくれました。 自分の作品は持っていなくともいい踊り手はたくさんいます。ただ劇場公演では、構成や照明などは工夫しないといけません。 日本でも人気のペペ・トーレスのラ・コンパニアでのソロ公演、彼の踊り自体はいいのですが、リハーサルか打ち合わせが不足しているか照明で顔に影が出たり音響が大音量だったりで、最高の公演とはいきませんでした。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   いい演出家をつけたガラ公演での方が彼の魅力がより生きるのではないかと思いました。 フェスティバルが演出家をつけてのガラ公演、実現しないかなあ。   ◎セントロ・ソシアル・ブラス・インファンテ 今回新しく会場となったセントロ・ソシアル・ブラス・インファンテでは、ビジャマルタですでに公演しているピニョーナやエル・チョロ、ロシオ・ガリード(2023年ラ・ウニオン優勝)やマルタ・ガルベスといった若手たちが作品を上演しました。 会場は劇場というより、講堂という感じで、舞台が低く、前方の観客席には傾斜もほとんどないことから、後ろの階段席以外は観にくく、また壁も白く、市内中心部からもちょっと離れた駅の向こう側で、ビジャマルタ劇場から徒歩で20分以上かかかるということもあり、観客にも出演者にも、公演会場としての評判はあまりよくなかったようです。 ここでの公演で私が唯一観ることができた ミゲル・アンヘル・エレディア と アルベルト・セジェス の作品は二人の長所、特性を活かして丁寧にきちんと作られた作品で好感が持てました。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora   ◎サラ・ラ・コンパニア サラ・ラ・コンパニアの作品では、先述のペペ・トーレスやルイサ・パリシオの新作などを観ることができました。が、なんといっても エステラ・アロンソ の 『ア・ミ・マネラ2.0』 が出色の出来でした。エスクエラ・ボレーラの超テクニックでフラメンコ曲を踊る、その新鮮さ。コンパス感がいいので見ていて気持ちがいいのです。共演に昨年のラ・ウニオンの覇者ヘスス・コルバチョら一流どころを揃えたのも成功の秘訣でしょう。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   サパテアードで踊るだけがフラメンコじゃないのです。バレエシューズでも裸足でもリズムさえ掴んでいれば、フラメンコになるんだなあ、と。エスクエラ・ボレーラだけでなく、フラメンコの新たな可能性を開いた公演だったと思います。 エステラはこの作品でプレミオ・デ・レベラシオン、新人賞を受賞しました。スペイン国立バレエ団のソリストとして活躍中の彼女、新人賞という名前だと違和感があるかもですが、レベラシオンというのを辞書で見ると、思いがけない活躍をした人、とあるので、これまで少なくともアンダルシアのフラメンコ界ではほとんど知られていなかったということから、この賞にふさわしいと言えると思います。   ◎ボデーガ・デ・ロス・アポストレス なお、ボデーガでの深夜のリサイタルでは、 ヘスス・メンデス がとにかく最高でした。伴奏のペペ・デル・モラオも今までで一番、と言いたくなるくらいに良かったし、そのギターとパルマに支えられて、風格を持って、しかも熱く、自由にヘレスを歌い上げるヘスス。 今までもこのフェスティバルでたくさんのカンテ公演を観てきましたが、その中でも最も良かったのではないかと思います。もうオレ!連発。記憶に残るリサイタルでした。 © Festival de Jerez/Esteban Abión   ヘススに先駆け同じくボデーガでリサイタルを行ったマカニータのような、ヘレスを代表する歌い手たちをヘレスのギタリストとパルメーロたちの極上のコンパスで聴くことができる機会をフェスティバルが作ったのは大正解だと思います。 この時期、ヘレスに世界中からやってくるフラメンコファン、アフィシオナードたちは、劇場作品よりも、ヘレスならではのアルテを求めてやってくる人も多く、フェスティバルで飽き足りない分を、ペーニャの自主公演やタブラオなどで行われるライブに行くことで解消しているようです。クルシージョも同じく、で、それだけ受講生の幅が広がったとも言えます。ヘレスに通い、経験を積むことで何が欲しいのかがはっきりわかってきたのでしょう。フェスティバルが全ての需要を満たすのは不可能ですし、地元のスタジオが独自のクラスを開講し、ペーニャやライブハウスが自主公演を組むことは、フェスティバルが地域経済の活性化につながっている証とも言えるでしょう。   日本人の活躍 なお、今年も多くの日本人がヘレスを訪れました。萩原淳子はフェスティバル主催のペーニャ公演として3月2日にソロで踊り、ライブハウス、ラ・グアリダ・デル・アンヘルでのオフ・フェスティバルでも、歌い手モモ・モネオの公演にゲスト出演しました。そのほかにも 山下美希、鈴木時丹、鬼頭幸穂、岸田瑠璃、 景山 綾子、坂本さほり、野上裕美、森脇淳子、林結花、マリコ・ドレイトンと多くの日本人アーティストがオフ・フェスティバルで踊りました。 他のフェスティバル主催公演と時間が重なるなどし、今年は日本人公演を一度も見に行けなかったのは残念です。スペインの舞台に立つことは誰にとってもきっと、いい経験となったことでしょう。   アフターショーのお楽しみ ヘレスのいいところは街がコンパクトで、アーティストたちとファン/観客との距離が近いところ。ビジャマルタ劇場終演後、近くのバルで一杯飲んでいると出演者たちがやってくることもほぼ毎夜のこと。出演者だけでなく、クルシージョの講師たちなど舞台を観に来た人たちもたくさん。なので、舞台の感動を本人にダイレクトに伝えることも可能です。 また、舞台の打ち上げ的にやってきたアーティストたちや遊びに来た地元のアーティストやアフィシオナードたちが歌い始め、宴がはじまることも。毎日、クラスを受講している人は体調管理の意味からも夜更かしはなかなか難しいかもしれませんが、体力に自信がある人は夜中粘ってみると思いがけない宴に遭遇することもあるかもしれません。筆者は地元のアフィシオナードが歌うソレアに泣いたり、ガデス舞踊団の面々と酔っ払ったり、とヘレスのフェスティバルならではのナイトライフも楽しみました。来年こそ、あなたもぜひ。 ちなみに来年の第30回は、2月20日から3月7日まで開催の予定です。   【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 =====

  • わが心のスペイン vol.16

    (miércoles, 26 de marzo 2025)   南房総と南スペインで田舎暮らしを楽しむ、石井崇が描くスペインの情景。 『ポルボロンの街エステッパ』 セビリアからグラナダに向かう街道沿いに 不思議な甘い香りがする村がある、エステッパです。 実はスペインの銘菓ポルボロンの産地です。 甘い香りの秘密が判明したのはかなり経ってからでした。 ( 写真はフェレイローラ村 ) 【プロフィール】 石井崇(Takashi Ishii) /画家。1942年東京・京橋生まれ。東京芸術大学卒業後、1975年単身スペインに渡り、村祭りを回るテキヤ業などでしのぐ。セビリア郊外アルカラ・デ・グアダイラに居住。1989年よりグラナダ・アルプハーラ(Alpujarra)地方にあるフェレイローラ村(Ferreirola)にアトリエを構え、今はフェレイローラ村と南房総館山をふたつの故郷とし、田舎暮らしを楽しんでいる。著作は「おれたちがジプシーだったとき」、「詩画集プラテーロとわたし」、「スペイン四季暦」、「南スペイン、白い村の陽だまりから」、画集「イシイタカシの世界」など。2004年「館山親善ふるさと大使」に任命、全国大学フラメンコ大会を企画。 ホームページ「イシイタカシの世界」 http://www.oliva2004.net/index.html ======

  • ArtistaЯ ~表現者☆~ ep.15

    ep.15 松田知也  Tomoya Matsuda (domingo, 16 de marzo 2025) 写真家・大森有起が、今を輝くフラメンコ・アーティストたちの真の姿を写す 10歳からフラメンコを始めて30年。 小島章司さんの元で舞踊団員として 研鑽してきた知也もいいお年頃になった。 今も昔も中身はほぼ変わらないが、 年毎に芸が深まり男前になってきた。 そんな彼がこの夏劇場で一手打つ。 「二人の舞台をやらない?」と、 CAFコンクールを通じ意気投合した ヴォダルツ・クララちゃんと共に初公演。 同じ40歳の2人の目論み。 どんな内容になるのか、今から楽しみだ。 ©Yuki Omori 「踊ること」とは 自分にとって踊ることは 水を飲むようなことかもしれません。 幼少期から踊ることが好きで踊っている自分からすると、 踊ることは生きて行く為に無くてはなら無いものであり、 自分の側にあるのが当たり前の物になっているのがその証拠かと... 水のように自分が生きていく中で潤いを与えてくれ、 癒してくれ、そして活力を与えてくれる。 そんなものな気がしています。 =====

  • カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.46

    (miércoles, 12 de marzo 2025)   文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai Malagueña del Mellizo③  前回のマラゲーニャ・デ・エル・メジーソは1929年録音でこの時アウレリオは42歳位。'35年出版の「フラメンコのアーティスト列伝」ではすでにカディ派のカンテを代表する存在と紹介されていますが、この後に始まったフラメンコの劇場進出や大衆化の道に背を向けた彼が再び録音したのは '50年代末マイレーナが主導して作ったアンソロジー、そして '60年代始めのイスパボックスから出た1枚のLPだ。これはギターのアンドレス・エレディアと共に素晴らしい出来で、歴史に残る1枚となったのです。  さて今回は、メジーソのマラゲーニャその③を取り上げます。  ペリコンはこのスタイルをマラゲーニャ・ドブレ・デル(又はデ・エル~どちらでも同じことです)・メジーソと呼んでレコードにもそう記しています。  つまりメジーソの他のマラゲーニャと比べると2倍の重さ、大きさのあるマラゲーニャというわけです。  確かにこの③のメロディーは雄大さ、大きさを持っていますが、深さを決めるのは歌い手の力量であり、その度量、熱量であって、世の人達も恐らくそう考えているのでしょう。しかし一般にはこの呼び名は使われていませんのでここではその③と名付けます。  ペリコンはこのスタイルをA llamarme の歌詞で、エル・チョコラーテも同じ歌詞で素晴らしい歌を歌っていますが、今回はアウレリオの弟子を公言しているランカピーノ(1945~)の歌を例に取り上げます。  '77年コルドバのコンクールでエンリケ・エル・メジーソ賞を受賞したランカピーノは常にアウレリオの写真を持ち歩き、その芸を敬愛する継承者と言えるからだ。  前歌とも言うべきグラナイーナに続いて彼が歌ったメジーソのマラゲーニャは以下の通り。   [Letra] (Ay, dónde va a llegar ...) Este querer tuyo y mío dime dónde va a llegar, (me tienes ...) tú me tienes loquito〈perdío〉, cada día te quiero más, yo voy a perder el〈sentío〉.   [訳] (どこへ行くのか…) お前と俺のこの恋は どこまで行くのだろう、 (お前は俺を…) お前は俺を夢中にさせ 日毎に恋心はつのる、 もう正気ではいられぬ程に。    後半部分は次回に。この歌は“Jondo y Apasionao ~フラメンコの深い炎”1(スタジオ・カスコーロ製作)に収録されています。   【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。2025年1月Círculo Flamenco de Madridから招かれ、ヘスス・メンデスと共演。   ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ( https://acustica-shop.jp/ )へお問い合わせください。(編集部)   ======

  • 新・フラメンコのあした vol.25 

    (sábado, 1 de marzo 2025)   20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。 今月は、昨年10月から11月にマドリードで開催された 「スマ・フラメンカ2024」フェスティバル で上演された舞踊家ロシオ・モリーナの公演についてのリポートです。   ロシオ・モリーナ 『クアドラール・エル・シルクロ 〜インプロビサシオン・ソブレ・ウナ・オ・マス・コサス』 スマ・フラメンカ フェスティバル カナル劇場、赤の間、マドリード 2024年10月30日   Rocío Molina "Cuadrar el círculo. Improvisación sobre una o más cosas"  Festival Suma Flamenca de Madrid. Teatros del Canal, Sala Roja, Madrid. 30 de octubre 2024   文:東 敬子  画像:宣伝素材   Texto: Keiko Higashi Fotos: promoción   ロシオ・モリーナが、常に新しい表現を追い求めるアーティストである事は、百も承知です。彼女は、ソリスタとして世に出た10代の頃からそうでした。だからその創造性を糧にバイレ・フラメンコの歴史に名を刻んだ彼女に、「追求をやめろ」と言うのは、論外なのでしょう。   でも今回の作品で、私は疑問を抱いてしまいました。私には彼女が迷走しているとしか思えませんでした。だからあえて言わせてください。自身の「やりたい事」の前に「観客を楽しませる事」を、もう一度考えてみたらどうかと。   今回、 「スマ・フラメンカ」フェスティバル の一環として行われた公演『クワドラール・エル・シルクロ』は、「一つもしくは、それ以上のことから生まれる即興」と副題があるように、各場面にインプロを散りばめた2時間越えの作品でした。   この作品の主軸は、仲間内で楽しむ“フィエスタ”です。でも大きな集まりではなく、日々の練習やリハーサルが終わって、そのまま稽古場でお酒を飲んだりして、なんとなく始まったと言う感じ。   舞台には小さなテーブルがあり、お酒の入ったグラスが一つ。テーブルを挟んでホセ・エル・オルーコとロシオが向かい合い、オルーコが歌うと、ロシオがテーブルを拳で叩きコンパスを刻む。興がのってきたら立ち上がってサパテアードを踏んだり。   インプロと銘打ってある以上、面白い事が起こるかどうかの「保証」はありません。不安な観客をよそに、二人の絡みは延々と続きます。そしてギターのジェライ・コルテス、エドワルド・トラシエラ、カンテのぺぺ・デ・プーラらが加わり、ロシオが踊る場面も増えて行きますが、テーブルを囲んだ彼らはそれぞれを見つめ、観客の方を向いている者は誰もいません。   この間、照明はずっと、目を凝らさなきゃいけないほど暗く(ロシオの赤いドレスも茶色に見えました)、ロシオが足を打ち鳴らす時も、彼女はテーブルの向こう側で踊り、足元は見えません。一体、なぜ、こんなに自分本位なのか。もう何か異様な感じさえしました。   もちろん、ロシオの素晴らしい足捌き、カンタオールやギターの味のある歌声・演奏は分かるのですが、何か大きな壁があるようで、こちらに響かない。挙句、ステージに現れたドラムセットでロシオが演奏を始めると、もう理解不能。   ロシオはリズムの天才ですからね。ドラムも器用にこなしていましたし、「へ〜、こんな趣味があるのね〜」と感心はしましたが、所詮は素人さんですから、この時点で私は「一体、何を見せられているんだろう」という気になってしまいました。   最後はフィエスタを離れ、踊りで自身の世界を存分に表現したロシオでしたが、私にとっては、時すでに遅し。パンフレットには1時間15分と書いてあった作品が2時間を超し、ずれ込んだその理由が、あのハイライトも無いまま長々と続いたインプロだとしたら、やり過ぎと言わざるを得ないと言う印象に終わりました。   多分、「自分のスタジオで普段やってる事をステージで再現」するのが今回の挑戦だったのでしょう。彼らの日常の「かけがえのない時」が、ステージに住む魔物と出会った時の化学反応を期待したんでしょうね。でもそうはいかなかった。   もっと狭い空間でだったら、熱も観客に伝わったでしょう。でもあの大きなステージでは、その空気の微妙な動きやノリは観客まで伝わらない。と言うか、それを伝えたかったら、もっと違う演出があったはず。   単純に、あの暗い照明は本当にやめてほしいし、感動を求めて観に行った私としては、正直、こんな結果に終わるのであれば、コンセプトや斬新な演出なんかどうでも良いから、今の彼女を踊りで、今の彼らを歌や演奏で素直に魅せてほしかった。もっと、すべての意味で、観客の存在を意識してほしいんです。次回はもっとロシオのアルテをダイレクトに楽しめる作品を期待しています。   【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) /フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。   =====

  • スペインNews 3月号・2025

    (jueves, 6 de marzo 2025)   文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze   フラメンコの2月といえばヘレスのフェスティバル。今年も2月後半になると、日本からもフラメンコたちが続々とスペインに到着。そんな様子をSNSで見てこっちも気分が上がってヘレスに到着。今年もフラメンコ漬けの日々が始まりました。毎日公演を見るだけでもクタクタ。それに加え、毎日クラスを何時間も受けている踊り手の方々には頭が下がります。航空券やホテルも高くなった今、クラスに、公演に、と、短い期間で効率的に、フラメンコに集中できるという機会はそれだけ貴重なものなのだと思います。 ヘレスのフェスティバルはコルドバのギター祭をお手本に、フラメンコとスペイン舞踊に特化したフェスティバルとして、ヘレスの市の外から人を呼び込もうと、29年前に始まりました。その狙いはあたってクルシージョは世界各地から多くの参加者を集め、あっという間に先発のビエナルなどと肩を並べるフェスティバルとなりました。がはじまった当時のヘレスでは、フラメンコといえばヘレスの歌い手たちによるカンテだったので、舞踊中心のフェスティバルには興味を示さず、むしろ反感を抱く人もいるような有様でした。今でもフェスティバルの中心であるクルシージョに参加するのはヘレスの外、スペインはもとより外国からやってきた人たちが中心ですが、回数を重ねていくにつれ、ペーニャ公演が行われるなどして、ヘレスの人たちも、公演を見に出かけたり、見に行かないにしてもフェスティバルが行われていることは知っていたりと関心を持つ人も増えたように思います。 また、国を超えフラメンコ好きが集まるこの時期を商売の好機と捉え、フェスティバル主催のもの以外にもクルシージョやライブが行われたりもしています。ホテルにとってもオフシーズンであるこの期間にお客さんが増えるのはうれしいことに違いありません。ある短期滞在用アパートの経営者は、フェリアとオートバイの世界選手権、そしてフェリアの時期だけ貸しているのだと言っていました。それだけで商売が成り立つ、ということなのでしょう。確かにフェスティバル初日そして最終日のヘレス発着の電車は早くから満員だったりと、かなりの集客効果がありそうです。ヘレスの町が潤うことでヘレスの素晴らしいフラメンコ・アーティストたちにも直接、間接的にお金が入って、いつまでも素晴らしいフラメンコの聖地としてあってほしいと願ってやみません。 恒例の記者会見が今年は形式を変え、講演についてのお話の後、毎回違うテーマでの会話も加わり、色々勉強になります。写真はメルセデス・デ・コルドバとラファエラ・カラスコとフェスティバル監督カルロス・グラナドス ©︎ Kyoko Shikaze   《INDEX》 ・ ヘレスのフェスティバル2024年各賞授賞式 ・ ラ・ウニオン、カンテ・デ・ラス・ミーナス祭プログラム発表 ・ パコ・デ・ルシア フラメンコ・レガシー   【ヘレスのフェスティバル2024年各賞授賞式】 そのヘレスのフェスティバル昨年の各賞の授賞式が2月22日コンセホ、レグラドール、シェリー酒の産地統制委員会で行われました。昨年はアルフォンソ・ロサの『アルテル・エゴ』が観客賞、批評家賞、オリジナル作曲賞がギタリストのフランシスコ・ビヌエサに、ヘレスのペーニャ協会が選ぶ舞踊伴唱賞がアンヘレス・トレダーノにと各賞を席捲。 4つの賞を手にした『アルテル・エゴ』グループ。©︎ Kyoko Shikaze   他にはギター賞がチクエロ(都合で来れず、前列右端の作品の舞台監督が代わりに受け取りました)、新人賞がフアン・トマス・デ・ラ・モリア(右から3人目)、ヘレスの少年歌手マヌエル・モンヘ(右から4人目)がペーニャ公演の新人賞を受賞しました。 ©︎ Kyoko Shikaze    【ラ・ウニオン、カンテ・デ・ラス・ミーナス祭プログラム発表】 夏のフラメンコ・フェスティバルのプログラムも少しずつ発表されています。2月20日にはマドリードの王立劇場内で、カンテ・デ・ラス・ミーナス祭のプログラムが発表されました。毎年ムルシア州のラ・ウニオンという小さな町で開催されるこのフェスティバルは、スペインに数あるフェスティバルの中でも有数の歴史と規模を誇ります。 昨年の覇者として、初日には萩原淳子も出演します。その後はグラミー賞受賞のアントニオ・レイ、サラ・バラス、ヘスス・カルモナ、マイテ・マルティン、アンダルシア舞踊と続き、最後の4日間はコンクールです。今年はどんな才能が登場するのでしょう。楽しみです。 プログラム発表でのラ・ウニオン市長ホアキン・サパタ ◇第64回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル 7/30(水)〜8/9(土) 7/30(金) [出]ラ・ウニオンのアルティスタたち 7/31(土) [出]開会宣言〈c〉へスス・コルバチョ、〈g〉ジョニ・ヒメネス、〈b〉萩原淳子、〈チェロ〉マルケス8/1(金) [出]〈g〉アントニオ・レイ 8/2(土)『ブエラ』 [出]〈b〉サラ・バラス舞踊団 8/3(日) [出]〈b〉ヘスス・カルモナ 8/4(月) [出]〈c〉マイテ・マルティン、エセキエル・ベニテス 8/5(火)『ティエラ・ベンディタ』 [出]〈b〉アンダルシア舞踊団 8/6(水)、7(木)、8(金) コンクール準決勝 8/9(土) コンクール決勝 [場]ムルシア州ラ・ウニオン 旧公設市場など [出]2024年コンクール優勝者など [問] https://festivalcantedelasminas.org/     【パコ・デ・ルシア フラメンコ・レガシー】 パコ・デ・ルシアのドキュメンタリーが2月24日からカナルスール、アンダルシアTVで公開されました。 これまでにパコについてのドキュメンタリーは親友の一人マヌエル・ニエトによるもの、息子クーロ・サンチェスによるものの2本がありましたが、これは昨年撮影されたもので、家族から提供された豊富な写真、国営放送をはじめとする公演やインタビューなどの様々な映像をたっぷり使い、作曲家や研究者、アーティストら識者の証言もふんだんに取り入れたもので、全6回で、多角的にパコを捉えています。 昨年秋に公開されたものは、昨年ニューヨークで行われた、パコ・デ・ルシア・レガシーというフェスティバル中心でしたが、他の回では彼の軌跡を追い、彼が成し遂げたこと、その様々な功績などについても語っています。パコの子供達や甥でギタリストのホセ・マリア・バンデーラやカルラス・ベナベン、ルベン・ダンタス、ホルヘ・パルド、カニサーレス、ニーニョ・ホセーレといったパコの長年の共演者や、カレーテ・デ・マラガやペペ・アビチュエラといったパコと世代の近いアルティスタたち、ホセ・マヌエル・ガンボアやホセ・マリア・カスターニョ、クリスティーナ・クルスといった研究者たち、ラファエル・リケーニ、アルフレド・ラゴスらギタリストたち、その他にも作曲家など多くの人の言葉を丹念に拾っています。筆者も参加したのですが、パコの人生においても日本は大切な存在だったのだな、と改めて感じさせてもらえました。 今現在、カナルスールのWEBで公開されているものも日本からは視聴ができず、また日本で公開予定はないようですが、いつの日か日本でも見てもらえたらと思います。 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。   =====

  • ガルロチ公演 "Campallos" con Jesús Corbacho

    (lunes, 3 de marzo 2025) 来たる4月に開催される東京・新宿のショーレストランGARLOCHÍでのスペイン人グループ公演は、日本でも高い人気を誇るカンパージョ・ファミリーが出演します。 端正な容姿とキレのある踊りでファンの心をつかむ兄ラファエルと、美しく情熱的な踊りが魅力のアデラ、そしてギターには心の琴線に触れるようなメロディーで観客を魅了する弟のフアンが登場。カンテは昨年の『カンテ・デ・ラス・ミーナス』国際フェスティバルのコンクールで大賞「ランパラ・ミネーラ」に輝いたヘスス・コルバチョが出演します。 スペインでも大人気のアルティスタたちによる素晴らしい舞台を、ぜひお見逃しなく! 【"Campallos" con Jesús Corbacho】 期間:2025年4月11日(金)~21日(月) *詳しいスケジュールはLivepocketのHPにて http://t.livepocket.jp/p/garlochisonia 会場:スペイン&地中海料理ShowレストランGARLOCHÍ (東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館6F)   出演: B.Adela Campallo B.Rafael Campallo G.Juan Campallo C.Jesús Corbacho(Artista invitado)   予約方法:WEB & Email にて ★WEB: http://t.livepocket.jp/p/garlochisonia (支払方法: クレジットカード) ★Email: garlochilive@gmail.com (支払い方法: 銀行振込) 主催:株式会社バモス =====

  • わが心のスペイン vol.15

    (miércoles, 26 de febrero 2025)   南房総と南スペインで田舎暮らしを楽しむ、石井崇が描くスペインの情景。 『途中下車』 ビルバオの近く避暑地サラウツのところでお腹が空き昼食、昔ながらの旧市街地を散策、 絵心を誘う町並みを見つけ、昼酒で微妙に千鳥足の3人を描きました。 後ろには車の修理工場、そして枯れ始めていたプラタナス、心和みますね。 ( 写真はフェレイローラ村 ) 【プロフィール】 石井崇(Takashi Ishii) /画家。1942年東京・京橋生まれ。東京芸術大学卒業後、1975年単身スペインに渡り、村祭りを回るテキヤ業などでしのぐ。セビリア郊外アルカラ・デ・グアダイラに居住。1989年よりグラナダ・アルプハーラ(Alpujarra)地方にあるフェレイローラ村(Ferreirola)にアトリエを構え、今はフェレイローラ村と南房総館山をふたつの故郷とし、田舎暮らしを楽しんでいる。著作は「おれたちがジプシーだったとき」、「詩画集プラテーロとわたし」、「スペイン四季暦」、「南スペイン、白い村の陽だまりから」、画集「イシイタカシの世界」など。2004年「館山親善ふるさと大使」に任命、全国大学フラメンコ大会を企画。 ホームページ「イシイタカシの世界」 http://www.oliva2004.net/index.html ======

  • Dr.ファロのフラメンコ・クリニック vol.2

    (jueves, 20 de febrero 2025)   大阪を拠点に活動し、劇場公演からタブラオライブまで日本各地で大活躍中の若手フラメンコダンサー、ファロリート(Farolito)こと出水宏輝さんが、フラメンコを愛する皆様の様々なお悩みに、親切&丁寧にアドバイス。 その処方箋は、もしかしたらあなたの役にも立つかもしれません。 尚こちらのクリニックは、2か月毎に診察いたします。 文/出水宏輝 Texto por Kouki Demizu   (写真)©萩森琴美 Q1. タコンを強化する為の練習方法が知りたいです。 3連、4連のサパティアードでタコンの音を強く、クリアにしたいのですが、流れてしまいます。 サパティアードの練習を繰り返す事で細かく動くようにはなってきましたが、テンポが速くなると比例してタコンが弱くなる感じです。 タコン強化法はありますか? (P.N. カロリーナさんより) ▶︎タコン(かかと)の音をしっかりと出すためには、膝(ひざ)を足先の方向に引っ張ることが大切です。かかとを上げるときに膝を足先よりも前に引っ張っていることと、プランタの足の指の付け根部分をしっかりと床に吸い付かせることでタコンの音色が鳴るようになります。早くなればなるほど膝を前に引っ張って、かかとをしっかりあげる(=足の指の付け根部分を床に吸い付かせる)ことが大切です。 またタコンを鳴らすときは上半身も引き上げておくことが大切です。骨盤から胴体を引き上げて、尾骶骨を床(地面)の方向に引き下げる=上下の引っ張り合いを胴体の中ですることで、タコンの音色音量が上がるようになるかと思います。 ===== Q2. 今、レッスンでタラントに取組み中です。 タラントのバイレの構成上よく2唄以降に歌われるような高い音から始まるようなメロディの唄が好きで、自分的には踊りやすい(気持ちが乗りやすい、感情が高まりやすい)のですが、逆に1唄でよく歌われるようなじわじわたんたんとしたメロディの時にはなかなか踊りとしての表現や反応が難しく、マルカールも不自然な感じになったりしてしまいます。 ファロさんは同じパロでもメロディやレトラの雰囲気が違うものに対してどんなことを大切にして踊っていますか? (P.N. リータス1号さんより) ▶︎この課題は誰しもに訪れる問題ですよね! そのような境遇(メロディやレトラの雰囲気が想定と違った)が起きたときはすぐさま予定していた振付をやめることにします。 例えばタラント、レトラだとしたらcontestación が2つある その箇所だけを振付通りにして、それ以外の部分は歌を聞いて踊るようにします。 ファルセータだとしたら前半の2〜4コンパスは聞いて少し探ってみる。それ以降はジャマーダ、レトラ、エスコビージャなどに繋がるような振付を準備しておく。 そうするとゴッソリ抜かなくても良くなります。 自分が踊りたい曲の構成をギターリストやカンタオール/ラに伝えると、流れや音楽を考えて伴奏・伴唱してくれます。その素敵な流れをつくって導いてくれたところに乗っかっていき、踊りたい・出したいものを舞踊で感情表現することが大切だと僕は感じます。 【アナタのお悩み募集中!】 フラメンコについて何かお悩みはありませんか?ソロや群舞の踊りの事はもちろん、パルマやコンパス、練習方法や留学のことまで、ファロさんがナイスな!?アドバイスを処方してくれます。 ご質問を採用させていただいた方には、500円のギフトカードをプレゼント☆ 練習生・プロ・セミプロ問わず、ファロさんにお悩み事を診察してほしい方は、質問内容・お名前(&ペンネーム)・電話番号をご記入の上、 info@flamencofan.net までご質問お待ちしています!(編集部) ©Shigeto Imura 【プロフィール】 出水宏輝(Kouki Demizu) /10歳の時に石川敬子フラメンコ教室にてフラメンコを始め、田中光夫氏にギター・カンテを、舞踊・パルマを棚原美和氏に師事。14歳のときにタブラオ ロス・ヒターノスで男性舞踊手としてプロデビュー。2014年、官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の1期生として1年間スペイン留学。2018年第1回全日本フラメンココンクールで努力賞、2019年日本フラメンコ協会第28回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」で奨励賞、2021年第10回エルスール財団新人賞(フラメンコ部門)を受賞。 また、2018年摂南大学入学宣誓式にて、在学生300名以上とフラメンコのフラッシュモブを大阪城ホールにて実施。 現在、大阪を拠点としながら全国各地で精力的に活動している。 ☆活動情報はこちらから。 https://lit.link/farolitoflamenco =====

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