(jueves, 6 de julio 2023)
かつてパコ・デ・ルシアのセカンドギタリストを10年間務め、その美しい演奏と超絶テクニックで世界から注目されるギタリスト、カニサレスの来日公演ツアーが間もなく始まります。公演に先立ち、今回のツアー内容や先日発表された新作アルバムについてお話を伺いました。
聞き手/金子功子
Entrevista por Noriko Kaneko
通訳/小倉真理子
Interpretación por Mariko Ogura
(写真/© Amancio Guillén)カニサレスとフアン・カルロス・ゴメス(左)の2ショット
――今回は5年振りとなる待望の来日公演です。本公演の聴きどころや、お客様にどういうところを楽しんでほしいかなどをお聞かせいただけますか?
カニサレス:これまではカルテットやクインテットでの来日公演が多かったのですが、今回は初めてのギターデュオ公演です。ギター2本だけの編成なので、その分みなさんとの距離も近く、すごくクローズドなところで一緒に音楽を楽しめる形になるかと思います。聴きどころとしては、セカンドギタリストのフアン・カルロス・ゴメスとの演奏の掛け合いや、対話のような部分を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――公演のプログラムついてですが、選曲のポイントや構成について教えていただけますか?
カニサレス:今回のプログラムは2部構成としています。第1部では3つの組曲から抜粋した曲を演奏しますが、これらは全て私が作曲したギターとオーケストラのための協奏曲を、ギター2本用に再アレンジしたものです。これらの楽曲は厳密な意味でのフラメンコ曲ではありませんが、それでもフラメンコのエッセンスやリズムが随所に含まれているので、そうしたクラシックとフラメンコの融合を楽しんでいただけると思います。第2部は、ロドリーゴの「アランフェス・マ・パンセ」やファリャの音楽など、スペインのクラシック界の大御所の素晴らしいギター音楽や、ピアノ曲を私がギター用に編曲した作品を演奏します。スペイン・クラシックからスタートして、中盤からは私の作曲したフラメンコ楽曲を中心に演奏してクライマックスへ向かいます。全体を通じて、オーケストラとの協奏曲のギターアレンジ曲や、スペイン・クラシックからフラメンコへと、幅広いレパートリーをお楽しみいただけると思います。
――今回のツアーの千葉公演では、スペシャルゲストとしてフラメンコ舞踊家の佐藤浩希さんが出演されます。彼との共演に至った経緯や、どのような演出を予定されていますか?
カニサレス:浩希さんとは以前から知り合いでしたが、今回が初めての共演となります。彼がフラメンコを踊るところは何度も観ていまして、素晴らしいアーティストだと常々思っていました。今回の日本ツアーで特別ゲストを招待しての公演が決まった時に、初めに思い浮かんだのが彼だったので、この機会に共演したいと強く思いお願いしました。常々思っていることですが、日本とスペインという離れたふたつの国で、お互いが同じ芸術に関わり、ひとつのところを目指しているというのは素晴らしいことだと思います。各々の環境で育まれたものが1つの舞台に集結して何か新しいものを生み出すという過程は、きっと素晴らしいもの違いないと確信しています。そうした「フラメンコ」という音楽を通しての、二人の人間同士の交わり合いのようなものをお楽しみいただければと思っています。
――日本人ダンサーとの共演は初めてですか?
カニサレス:日本人の踊り手や歌い手の方にパルマの演奏をお願いしたことはありますが、踊りとの共演は初めてです。来日の際には、私のグループのダンサーが同行していましたので、これまでそうしたチャンスがありませんでした。今回はギターデュオの編成での来日ツアーですが、思いがけずこのような素晴らしい共演の機会が生まれることになり嬉しく思っております。
――今回の公演では、新作アルバム『アル・アンダルス協奏曲 ~パコ・デ・ルシアに捧げる』が、8月の日本国内リリースに先立ち会場で先行発売されます。この作品についての思いを、お聞かせいただけますか?
カニサレス:このアルバムは、私にとってとても特別な作品です…。この作品を作曲していた時のことですが、ある日の朝5時半頃に電話が鳴りました。それはカニサレスモデルのギターを制作してくれている、ギター職人のビセンテ・カリージョからでした。その早朝の電話で、パコがメキシコで急死したことを知りました。あまりに衝撃的な出来事で、電話を切った後もずっと信じられずにいました…。この作品は、まさにその瞬間に生まれたものだと自分では認識しています。この作品の中で自分が書いたすべての音は、私の目から零れ落ちた涙の雫であり、第2楽章にそれが特に強く表れていると思います。パコの葬儀では、私はその棺を肩に担いで教会まで歩いていきましたが、その時の一歩ずつの歩みを音楽で表した部分が第2楽章の中にあります。そういう背景を知っていただいた上で聴いてもらえると、この作品が大きな哀しみに溢れたものであり、心を揺さぶる音楽だと感じていただけると思います。このように、親友であり師匠であるパコを失った哀しみから生まれた作品ではありますが、作品はただ辛い思い出を語るだけのものではありません。第3楽章の最後の部分のタンギージョ・デ・カディスでは、パコと共に過ごした楽しかった思い出も込められています。彼はジョークが好きで、いつも笑いが絶えませんでした。ですから、哀しみに溢れた作品ではありますが、明るい思い出の中にいる彼の姿も表現したかった。タンギージョ・デ・カディスはパコと一緒に演奏した曲でもあるし、その中で彼の作品の有名なメロディーを少しアレンジしたものを、オマージュとして取り入れています。
――それでは最後に、日本でフラメンコを楽しんでいるファンの皆様に向けてメッセージをお願いします。
カニサレス:まずはみなさん、健康を大事にしてください。そして音楽を通じて揺り動かされる心の動きを大事にしていただいて、そこから幸せを感じてほしいと思っています。
――ぜひ多くの皆さんに、会場で演奏を楽しんでいただきたいと思います。
カニサレス:どうもありがとうございます。
【カニサレス来日公演2023総合サイト】
【公演スケジュール】
7/09(日)所沢市民文化センター ミューズ キューブホール[完売]
7/12(水)兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院 小ホール [完売]
7/13(木)フェニーチェ堺 小ホール
7/15(土)東海市芸術劇場 多目的ホール
7/16(日)浜離宮朝日ホール [完売]
7/18(火)船橋市民文化ホール ※スペシャルゲスト:佐藤浩希(フラメンコ舞踊)
7/20(木)フィリアホール(横浜市青葉区民文化センター)
[総合問合せ]
プランクトン 03-6273-9307(平日13~17時)
【新作アルバム情報】
カニサレス『アル・アンダルス協奏曲〜パコ・デ・ルシアに捧げる』
2023年作品
2023年8月23日発売
VITO-483/¥3,000税抜(¥3,300税込)
解説:鈴木大介
発売:PLANKTON
【プロフィール】
フアン・マヌエル・カニサレス/1966年スペイン東部カタルーニャ生まれ。16歳のとき、権威あるナショナル・ギター・コンクールで優勝。プロの道を歩みはじめる。88年から巨匠パコ・デ・ルシアのバンドに参加し、セカンドギタリストとして10年間活動する。1990年にパコのバンドメンバーとして初来日。1997年に『イマンとルナの夜』でアルバム・デビュー。ジャズ、クラシック、ロックなど、あらゆる要素を吸収した演奏と華やかなアレンジでフラメンコ界に新風を吹き込み、絶賛を浴びた。
ギタリストとしてだけでなく、作曲家としても才能を発揮。スペイン国立バレエの作品や映画音楽の作曲を手掛け、近年はアルベニス、グラナドス、ファリャやスカルラッティの楽曲をギターに編曲したクラシック音楽のソロ・アルバムを立て続けに発表する。
2011年、世界最高峰オーケストラのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演し、クラシック界でも大きな注目を浴びた。
2016年5月にパコ・デ・ルシアに捧げる、ギターとオーケストラのための協奏曲「アル・アンダルス協奏曲」を作曲し、スペイン国立管弦楽団とスペイン国立音楽堂にて世界初演を果たす。
スペインの民俗舞踊「ホタ」を取り上げたカルロス・サウラ監督の映画『J:ビヨンド・フラメンコ』(2017年日本公開)にも出演、その演奏がフィーチャーされた。
2018年2月には8年ぶりの全曲オリジナルによるフラメンコの新作ソロ・アルバム『洞窟の神話』を発表。同年9月にクインテット編成の来日ツアーを成功させた。
2019年発表のアルバム『カニサレスのロドリーゴ』では、アランフェス協奏曲第2楽章のアダージョ「アランフェス・マ・パンセ」や、ロドリーゴ氏の未発表作「夕暮れのプレリュード」が初収録されスペインで大きな話題となる。
2023年5月、自身の作曲によるギターとオーケストラとの協奏曲を収録した新作アルバム『アル・アンダルス協奏曲』をリリースした。(同年8月に日本国内発売予定)
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