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Flamencofan インタビュー:JURINA

(フラメンコダンサー)


(martes, 22 de agosto 2023)


昨年12月に若手のフラメンコダンサーを中心にキャスティングして、その脚本や演出、音楽のクオリティを含め作品としての完成度の高さが大きな評判となった舞台『カルメン』。その主宰であり主演も務めたフラメンコダンサーJURINA(ジュリナ)さんに、作品作りの舞台裏や今後の展望についてお話を伺いました。


聞き手/金子功子

Entrevista por Noriko Kaneko


――昨年の舞台『カルメン』の大成功、おめでとうございます。大きな舞台を終えて今の心境をお聞かせいただけますか?


JURINA:公演を終えて約半年たちましたが、すごく素直に言うと、正直まだ信じられないです。当時のオフショットや動画などをたまに見返すんですが、あれだけ多くの方が関わってくださった舞台を自分が主宰したということに、今でも驚きます。この作品に関わってくださったたくさんの方々に、本当に感謝しています。


――出演者も多かったかと思いますが、裏方のスタッフも相当多かったのではないですか?


JURINA:はい、最終リハーサルで大きめのスタジオを借りたんですが、そこに当日現場で動いてくれるスタッフさんも全員来てくださって、その人数に圧倒されました。また当日に舞台の設営現場にご挨拶に行った時も、そこで本当に多くの方が動いてくださっているのを目の当たりにして、舞台ってすごいなって思ったことを今でも鮮明に覚えています。


――まさに夢のような一大作品でしたね。では、企画の立ち上げの頃に遡ってお話をお聞きしたいと思います。公演を開催しようと思った直接のきっかけは何でしたか?


JURINA:日頃からお世話になっている方とお話しをしていた時のことなんですが、自分のフラメンコの今後という話題になって、そこで私が小さい頃から温めてきたカルメンをやりたいという夢について、たまたまお話ししたんです。そうしたら、今は文化庁や他の助成金もあるし、周りに知り合いの踊り手やミュージシャンも増えてきたし、できる状況じゃない?と背中を押されました。そう言われると確かに、実現のために必要なピースは全て揃っていて、どの方向から考えても状況的には可能だという事が分かりました。もしやらない選択肢があるとしたら、それは自分の気持ちの中にある「怖い」とか「まだ早いんじゃないか」というネガティブ要素だけだったので、もしそれが拭えないなら結局その程度の夢だったってことよね…と考えたときに、やろうと決断しました。


――その話が出たのはいつ頃ですか?


JURINA:去年の4月頃だったと思います。そこから1か月くらい悩んで、5月に腹を括りました。


――小さい頃に「カルメンをやりたい」と思ったきっかけは?


JURINA:小学2年生の頃に、母に連れて行ってもらった宝塚歌劇団で初めて『カルメン』を観ました。それが私にとってのスペインやカルメンという作品とか、すべての出会いの始まりです。母はバレエや宝塚が好きでしたので、私にはそっちの世界に進んでほしかったようですが…。でも私はスペインの雰囲気に惹かれました。カルメンという役柄への憧れと、あのカラッと明るい人々がたくさん登場する舞台の陽気な雰囲気が忘れられませんでした。


舞台『カルメン』JURINA
舞台『カルメン』より(写真©Kana Kondo)

――舞台作りのために、まず何から始めましたか?


JURINA:まずは演出と音楽だ、と思って舞台経験が豊富な舞踊家の田村陽子さんと、素晴らしい音楽性を持ちフラメンコギターデュオ「徳永兄弟」としても活躍中の徳永健太郎さんにお話しさせていただいたのが始まりです。それと、会場探しですね。そこからキャスティングと脚本と、いろんなことが同時にスタートしました。脚本については、まずどういったカルメンにしたいか全体像を考え、そこから第1幕はどこからどのシーンまでといったベースの構成を決めて、書かせていただいた脚本を陽子さんに見ていただき、そこから演出とすり合わせました。音楽については、まずはどの場面にどういう曲をはめるか陽子さんがアイデアを出してくれたものを元に健太郎さんと3人で検討して、最終的にどの曲を書き下ろして、どの曲をフラメンコの従来の曲種をあてはめるかなど決めていきました。


――結構大変だったことってありましたか?


JURINA:正直、進み始めてからは大変だとか感じる以前に、ただ成功させたいという一心でした。ですが、やはり最初の頃の進み出すまでは、劇場もすぐには決まらなかったし、これまで公演を作ったことも無かった私が各方面の皆さんにオファーをするので、例えば共演の方にどれだけ時間を割いてもらうかなどをお願いするのは難しかったです。リハーサルや合わせなどがどのぐらい必要とかも分からなかったので、どこまでどういう風にお伝えするかなど、そこはけっこう大変というか…慎重に進めました。でもみなさん、スケジュールについては本当にすごく協力してくれました。


――会場選びは何が大変でしたか?


JURINA:まず現実問題として、空いてなかったですね。集客人数の規模やフラメンコができるかできないとかで候補を選んで、100件くらい問合せました。東京や神奈川、埼玉、千葉の会場などもあたって、最終的には都心の劇場か今回の大田文化の森ホールかの2択になりました。都心の劇場は施設利用料なども高額でしたので、それだったらその分出演者やスタッフさんに回したいと思い、お客様にはアクセスの面でご足労をお掛けしましたが現実的な方を選ばせていただきました。


――実際JURINAさん自身は出演もされていましたが、両方をやるのは時間的に大変だったかと思います。練習時間は確保できましたか?


JURINA:できるだけ確保するように、自分のスケジュールはかなり細かく組みました。事務作業などもすべて書き出して、細かく管理してました。もちろん正直に言えば、もっと練習時間が取れればいいなという理想はありましたが…、試行錯誤でやってましたね。


――準備段階で、記憶に残っているエピソードはありますか?


JURINA:準備段階ではやはり集客面が一番不安が大きかったんですが、いろんな方とお話しさせていただく中で、様々な形で協力を申し出てくれる方々がたくさんいてくださったことには、すごく救われました。それとリハーサルを進めていく中で、ミュージシャンの方々が本来の予定日ではないのに打ち合わせで集まってくれたりとか、ダンサーの皆さんもいろいろすり合わせてくれてたという話を聞いて、そういう出演者の皆さんの気持ちが本当にうれしかったし、これは大丈夫だなと思えたのが印象深いです。


――当日は順調でしたか?


JURINA:本番 3日前くらいから、当日無事に全員小屋入り出来たら大丈夫だろう、という自信はありました。だから、実際に当日全員無事に小屋入り出来て、「あ、これは大丈夫だ」と思った記憶はあります。でももしかしたら、私の知らないところで小さなトラブルなどはあったかもしれませんが…。


――公演が無事に終わって、その後のご自身の環境や内面に何か変化はありましたか?


JURINA:そうですね、やはりある種の責任感は強くなったと思います。もちろんいろんな方の力のおかげでもありますが、今は我が子のような気持ちでこの作品を見ています。環境というか、考え方はガラッと変わったと思います。


――次に向けて何かプランはありますが?


JURINA:私の中では正直一択で、再演したいと思っています。そして再演するなら、前作を超えるというのより、自分の中でこういうのを加えたいというアイデアがあるので、それを加えた上での再演を目指したいと思っています。


――それなら思い切って、カンパニーとか立ち上げたりとか?


JURINA:それはまだまだですけど(笑)。いずれにせよ再演に向けては、まず自分の中でしっかりした地図、ロードマップを描けなければと思っています。資金繰りはもちろんですが、どうやって多くの人に観ていただけるか、自分のやりたいことをどうやったら実現できるかとか、何が効果的で何がそうでないかとか、自分でしっかり絵が描けないと進めないので、今はその段階です。道は長いですが、がんばります。


――今後、フラメンコダンサーとしてどういう将来像を描いていますか?


JURINA:これはカルメンとはまた違う部分ですけど、フラメンコについてもっと探求していきたいですし、自分自身の理想としては、どこまでも自由にフラメンコができるようになりたいと思います。今はこの振りをやりたい!というのが出てきてしまうんですが、もっとこう…自分の中から溢れ出るものを、大切にできるようになりたいですね。それによって、観てくださっている人に何かをプレゼントできるようなダンサーでありたいな、と思っています。


――「自由」というのは、自分の中から溢れてくるものを思いのままに表現できるようになりたいってことですか?


JURINA:自分の中から溢れ出るものがきちんとフラメンコでありたい、という風に思っています。それにはもう、年数やいろんな努力がまだまだ必要ですけど。どうしても今はまだ、例えば何かの曲を聴いたときにすごくフラメンコが思い浮かぶかというと、その域までは行けてないのが自分では分かるので、もっと骨身に染みていけるように、そこは勉強とフラメンコへの愛を重ねていきたいな、と思っています。


――これはもう、スペインに行くしかないですね(笑)


JURINA:そうですね(笑)


フラメンコダンサーJURINAプロフィール
©佐藤尚久

【プロフィール】

JURINA/2歳半よりクラシックバレエを始め、幼少期から様々なステージ経験を積みながらバレエ、声楽、演劇などのレッスンに励む。成人後はコンテンポラリーダンスや演劇などに活動の幅を広げ、海外公演などにも出演する。2013年よりフラメンコを開始、1年後にスペインへ留学を行う。その後も渡西を繰り返し、数々の著名なスペイン人講師に師事。

2018年より本格的にフラメンコダンサーとしての活動を開始。様々な場所にてパフォーマンスを行うと同時にフラメンコユニット、LosTopos(ロス・トポス)の立ち上げも行う。2022年よりイベント主催者としての活動を開始。同年に『東京フラメンコフェスティバル』『La aroma』『CARMEN』など3本の公演の主催・制作・出演を行う。


【JURINA公式サイト】



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