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- スペイン発☆志風恭子のフラメンコ・ホットライン
(miércoles, 6 de septiembre 2023) 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 相変わらずの暑さです。セビージャも8月はほとんどの舞踊教室もお休みとなります。いくら冷房があっても最高気温40度以上ではきつすぎます。またセビージャの人たちの多くも海などバカンスに出かけ、いつもは路上駐車が難しい地区でも簡単にできたりします。かつては8月はバルや商店なども休むところが多くてがらーんとした感じだったのですが、最近は順番に休むなどして開いている所も多いですね。観光客も見かけますが、名所巡りをするなら比較的涼しい午前中しか動けないこの時期は避けたほうが賢明かと。ま、午前中に名所見て、14時ごろに冷たいビールか、冷えた白ワインと共にたっぷりめのお昼を食べてシエスタして、夜22時ごろにタパ食べに行く、と言うのもスペインらしくて悪くないかもしれません。あ、昔のタブラオは22時から、0時以降がいい、とか言われていましたが、今は19時と21時ごろの2回というところが多いのでその前にフラメンコ、ですかね。 【野外公演その2】 セビージャでは毎夏、Noches en los jardines del Real Alcázarアルカサル庭園の夜、と題したコンサートが毎日、行われています。今年で24 回目。かつての国王の居城で今も王室の管理下にあるアルカサルはカテドラル(大聖堂)、インディア古文書館とともに世界遺産となっているセビージャの名所中の名所。イスラムとキリスト教文化が混ぜ合わさったムデハル様式の代表的建築物のひとつで、美しいタイルが印象的。池や回廊のある庭園も素晴らしく必見の名所なのですが、その一角で6月下旬から9月上旬まで毎夜、コンサートが開催されているのです。 演目は日替わりで、ピアノやギターなどによるクラシックもあれば、古楽あり、ワールドミュージックあり、ジャズあり、という中でもちろんフラメンコのコンサートもあります。毎年、フラメンコ公演は人気で、かつてブレイク前のロサリアがアルフレド・ラゴスの伴奏で登場したことも。今年も若手からベテランまで9つのグループが登場。ピアノ・フラメンコが3公演、ギターソロが2公演、フルートとギターの公演が1、そしてカンテ公演が9公演という具合。 7月22日に行われたコルドバ出身のギタリスト、ホセ・アントニオ・ロドリゲスのリサイタルはギター一本での文字通りのソロ公演。 ベテランらしい落ち着きで、いつもながらの聴きやすい心地よい演奏で観客を魅了しました。 プラグがついているエレアコ(エレクトリック・アコースティックギター)での演奏だったのはちょっとびっくりしたけど、パコ・デ・ルシアがアル・ディメオラらの『地中海の舞踏』へのオマージュ的な『ダンサ・デル・アマネセル(夜明けの舞踊)』ではエフェクターでエレキギター的な音を出すなどしていて、近年ホセ・アントニオはソロでアメリカ公演などしていることもあって、一人でどう魅せるか聴かせるか、を学んだんだろうな、と思ったことでした。 7月24日にはウエルバ出身の歌い手サンドラ・カラスコがダビ・デ・アラアルの伴奏で歌う、『レコルダンド・ア・マルチェーナ』。 美しい高音で知られる歌い手ぺぺ・マルチェーナへのオマージュでその広いレパートリーからブレリア、ミロンがなどを次々と歌い継いで行きました。いつもながら、サンドラは完璧な音程で繊細な節回しも丁寧に歌っていきます。各地で公演を重ねているだけあって、伴奏も落ち着きがあり、相性もぴったりという感じ。ダビは昨年、同じ会場でマヌエル・デ・ラ・トマサの伴奏でも登場したのですが、文句なく若手を代表するギタリストと言えるでしょう。これからまたどんどん経験を積んでどんな展開を見せていくのか楽しみです。 なお、この公演はアルカサルの入り口ではなく、反対側、ムリーリョ庭園のはしにある入り口から入ります。22時開演の1時間前から開いていますので、陽が落ちて涼しくなってくる頃の庭園散策も楽しめます。入場券は売り切れのことが多いのでWEBから購入しておくのがいいでしょう。 [公式WEB] https://www.actidea.es/nochesalcazar2023/ また、7月21日から26日まで開催されたセビージャ市トリアーナ地区の夏祭り、ベラ・デ・トリアーナでも広場で開催される(よって入場無料)フラメンコ公演も行われました。 フラメンコの日にはマラガ県マルベージャ出身のベテラン、カンカニージャやアントニオ・レジェスが、 最終日には地元トリアーナ出身のホセリート・アセド、ロサリオ “ラ・トレメンディータ”が登場しました。 お祭りなので舞台前の着席した人以外は結構うるさいし、仮設舞台ということもあり出演者もやりにくそうではありました。無料公演は多くの人に届く、普段興味を持っていない人にも届く、という面ではプラスだと思うのですが、アーティストがベストのものを見せることができるかというと疑問だし、それゆえアーティストが、ひいてはフラメンコそのものにあまりいい印象を持たない人が出るということも起こりうりそうな気がします。難しいですね。 【ラ・ウニオンのコンクール】 スペイン東部、ムルシア州の小さな町、ラ・ウニオンで毎年行われるカンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバルのコンクール。スペインに数あるコンクールの中でも開始した年(1961年)こそコルドバのコンクール(1956年)より遅いものの、3年に1回開催のコルドバよりも回数はずっと多く行われている歴史を誇るコンクールです。その結果は毎年全国ニュースでも取り上げられており、スペインで最も有名なフラメンコ・コンクールといえるでしょう。 かつて鉱山の町として栄えたこの町を訪れた歌い手がこの地ゆかりのフラメンコ曲が忘れられつつあるのを嘆いたことで始まったということもあり、鉱山の歌、カンテ・デ・ラス・ミーナスにこだわっているのが特徴です。カンテ部門ではミネーラやカルタヘネーラ、タランタなど細かく部門分けされていますし、ギターソロではタランタ、舞踊ではタラントが必須になっています。 さて今年のコンクール。カンテの大賞であるランパラ・ミネーラはコルドバ出身の25歳、ロシオ・ルナが受賞。 そのほかの各部門では、ギターがグラナダ出身のフアン・ルイス・カンポス “エル・ポティ”、舞踊はカタルーニャ出身でマヌエル・リニャン『ビバ』やタブラオなどで活躍中のジョエル・バルガスとアルメリア出身のロシオ・ガリード、楽器はピアニストのラウル・ペレスがそれぞれ優勝しました。 ミゲル・ポベーダは1993年にこのコンクールで優勝したことがきっかけで注目され、表舞台で活躍するようになったということもあるのですが、それは稀有な例。優勝をきっかけに各地のフェスティバルやペーニャでの仕事が増えるということはあるようですが、それがずっと続くということはなく、いっとき注目を集めてもそれをテコに群雄割拠のフラメンコ界で自分の居場所を作っていくのはなかなか難しいようです。 なおコンクールの模様は、3日間にわたる準決勝そして決勝といずれもYouTubeやFacebookで中継され、そのアーカイブが残っていますので興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。 [動画] 決勝 https://www.youtube.com/live/u4dkesMqswI?feature=share 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- 新・フラメンコのあした vol.7
(lunes, 4 de septiembre 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は7月にマドリードで開催された「第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023」についてお伝えします。 第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023 セントロ・クルトゥラル・デ・ラ・ビジャ、フェルナン・ゴメス劇場、マドリード(スペイン) 2023年7月2日 文/東 敬子 写真/宣材写真、東 敬子 32 Certamen de Coreografía de Danza Española y Flamenco 2023 Fernán Gómez. Centro Cultural de la Villa, 2 julio 2023 Madrid. Texto por Keiko Higashi Fotos: material promocional / por Keiko Higashi 何かを表現するというのは、本当に難しいものです。アーティストの表現の自由とは、どこまで許容されるものなのか。フラメンコでは、「伝統的な様式が尊重されるべきである、そうでなければフラメンコではなくなる」という考えがあります。しかしアートとは常に変化を求めるものです。発展せず、ずっと昔のままで、というのはありえない。ただ、だからと言って何でもやって良いという事では決してないでしょう。 例えば舞踊の場合、フラメンコの動きを使っても、フラメンコのリズムを用いず他ジャンルの音楽や無音で踊るのであれば、果たしてそれは「フラメンコ」と言えるのか。そして今回の「スペイン舞踊とフラメンコのコンクール」の結果を観て、私は現代の若手が「この点」を本当に理解しているのか、疑問に感じざるを得ませんでした。 エバ・ジェルバブエナ、マリア・パヘス、イスラエル・ガルバン、ロシオ・モリーナと、現代の若手がリアルタイムで見て育ったスターたちは皆、「新しい表現の自由」をフラメンコに追求した人たちでした。 彼らはもちろん正真正銘のフラメンコです。しかし正直、彼らの「自由」もスレスレの崖っぷちを辿ってきたと、私は思っています。観ていて、これはフラメンコだろうかと疑問に思ったことは幾度とありました。 でも「フラメンコ・コンテンポラリー」などと呼んで、安易に解決してほしくないし、「自分はフラメンコだから、自分がやることは全てフラメンコ」なんて言う常套句も全く説明になっていない。その曖昧さが、現代の若手を惑わしている。彼らは後進に「自由」ではなく「迷い」を与えているのだと私は思うのです。 1992年にスタートした新人の登竜門的存在である「スペイン舞踊とフラメンコのコンクール」からは、有名アーティストがたくさん羽ばたいています。私が個人的に一番記憶に残っているのは、前・スペイン国立バレエ団監督だったアントニオ・ナハーロの作品です。飛び抜けて洗練されていて、目を奪われたことを20年経った今でも鮮明に覚えています。 決勝となった当夜のラインナップは、ソロ4組、パレハ1組、群舞3組の計8組。 傾向として、とにかくイントロが長い。無音・無動で始まり、作品の3分の1ぐらいはゆっくりと意味ありげな動きをただ繰り返すだけという、まさに前記の「自由な表現を求める」アーティストたちのノリ。8組中のほとんどがこれでした。 中でも、ダブルベース奏者の女性と一緒に踊ったビクトール・フェルナンデスの『トリアダ』は顕著で、スタイリッシュで雰囲気はあるのですが、あまりに動きがなく、踊りとしての印象が薄い。パレハで踊られるダビド・アセーロ『ロ・ケ・パサ・ミエントラス・ノス・エンコントラモス』も、エンジンが掛かるまでが長過ぎた。ただその後は面白いので、もっと違ったアプローチもあるのではと思いました。 衣装や髪型なども、若干気になる点がありました。マリアナ・コジャド『Y.O.』は20人ほどの群舞で、セリフやちょっとした演技があったり、振付も面白かったのですが、私服っぽい衣装でそれぞれ違うので、同じ振付けでもバラバラに見え、やっぱり群舞の衣装はある程度揃っていた方が見やすいと思います。カンタオール3人と踊ったイレネ・モラレス『ベレディクタ』の髪型もいただけなかった。「貞子」のように顔を覆っていて、何か、おどろおどろしい。 しかし、男女混合群舞によるアレハンドロ・フェルナンデス『カレイドスコピオ・フラメンコ』の超ワイドパンツや、女性群舞のクリスティアン・ルビオ『エントレ・ノソトラス』の半スカート・半パンツの衣装はユニセックスでシンプルに新しいなと思いました。両組とも素直で、作品も出来上がっていたと思います。 残る2組、カンタオールと二人で踊ったサラ・ペレス『ドゥエロ』とマントンで踊った正統派のパウラ・サラサール『アモール・ファティ』は好感が持てる踊りでしたが、前者はカンタオールがあまりに冴えていて、お株を奪った感じになったのが残念。後者はもう少し成熟した自分の世界があれば尚見応えがあったかなと思います。 残念ながら今回の評は辛口になってしまいましたが、みなそれぞれ、将来のフラメンコを担う若手として、先輩の影響を受けるだけにとどまらず、もっと、フラメンコとは何かを自分に問いかけていただければと思うし、それがこれからの成功のカギになるかと思います。 2023年度の受賞結果は以下のとおり。 Primer Premio de Coreografía: David Acero Delgado, Lo que pasa mientras nos encontramos Segundo Premio de Coreografía: Christian Rubio, Entre nosotras Primer Premio a una Coreografía de Solo: Sara Pérez, Duelo Segundo Premio de Coreografía de Solo: Irene Morales,Veredicta Premio a una Composición Musical Original para Danza: Manuel Cazas, Fantasía en 9 Premio Fundación AISGE a una Bailarina Sobresaliente: Irene Morales Premio Fundación AISGE a un Bailarín Sobresaliente: David Acero Delgado Premio ¡Explosivo!: Mariana Collado, Y.O. // Victor Fernández, Triada Premio Ballet Nacional de España para una bailarina María Fernández y Daniella Hernández Premio Ballet Nacional de España para un bailarín Alejandro Mármol y Alejandro Fernández Premio Conservatorio Superior de Danza de Madrid María de Ávila David Acero Delgado Premio Centro Coreográfico La Gomera Sara Pérez Premio Fernán Gómez Centro Cultural de la Villa Irene Morales y Sara Pérez Premio Intercambio Certamen de Coreografía Burgos-Nueva York Sara Pérez Premio Flamenco Vivo Carlota Santana Nueva York Yoel Vargas Premio Flamenco Rosario Vancouver Víctor Fernández Premio Fuego Flamenco Festival Teatro GALA de Washington DC Yoel Vargas Premio Festival Flamenco de Jerez Irene Morales y Paula Salazar Premio Residencia Flamenco Festival en Toros Irene Morales ¡Nuevo 2023! Premio del Festival Ibérica Contemporánea de México Mariana Collado, Y.O. 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com(https://spanishwhiskers.com/?page_id=326)を主宰。 >>>>>
- ★news☆ TRANSFORMACIÓN ライブ
(sábado, 2 de septiembre 2023) ピアノフラメンコを主軸としたモダンでスタイリッシュな音楽を追求するユニット、TRANSFORMACIÓN(トランスフォルマシオン)のライブが東京・下北沢で開催されます。 トランスフォルマシオンとは、スペイン語で「革新的」という意味。音楽としては希少なピアノフラメンコを用いて、トラディショナルかつイノベイティブな作品作りを展開しています。Anli(ピアノ)、Kojiro(フラメンコギター)が中心となり、パーカッション、ダンサー、ウッドベースとともに独自性のある唯一無二な世界観で現代的なスタイルのステージを繰り広げます。「今年の公演はそれぞれの持ち合わせる個性、感性をぶつけ作っていく実験ステージです」とリーダーの杏梨さん。 普段のライブとは一味も二味も違う、新しいフラメンコ音楽の世界を体感してみてはいかがでしょうか? TRANSFORMACIÓN 『𝑬𝑿𝑷𝑬𝑹𝑰𝑴𝑬𝑵𝑻』 【日時】2023年10月14日(土) 19:00開場/19:30 開演 【場所】 下北沢ハーフムーンホール 東京都世田谷区北沢4-10-4 TEL:03-6423-1126 最寄り駅: 小田急線下北沢駅(徒歩8分)または東北沢駅(徒歩6分) 京王井の頭線下北沢駅(徒歩8分) 【出演者】 ピアノ 杏梨 フラメンコギター 徳永康次郎 ウッドベース 遠藤定 パーカッション 容昌-ようすけ- 踊り 亀甲谷 宝 【料金】5,000円 【配信料】2,500円(収録後日配信) 【予約】 https://transformacion.stores.jp/items/64b22307e8c4f8002ce377b2 ※ご予約についてのご注意 スマートフォンを使用した電子予約チケットとなります。 (紙のチケットの発券はございません。) 0円と表示されていますが、そのままご購入に進んで頂けますと予約が完了いたします。 お支払いは当日受付にて現金精算となります。 【問】メール:transformacion.x6x@gmail.com TEL:080-3409-1368 【スタッフ】 総合演出 トランスフォルマシオン 音楽監督 徳永康次郎 音響 スタジオJOY 照明 株式会社ライティングプロジェクトチームイット 映像 竹本辰郎 企画・制作 TRANSFORMACIÓN >>>>>
- PARA MORIR Ⅱ ~川島桂子~
(viernes, 1 de septiembre 2023) 2023年3月5日(日) Showレストラン「ガルロチ」(東京・新宿) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/大森有起 Foto por Yuki Omori 劇場公演でもタブラオライブでも日本各地から引く手あまたで長年にわたり日本のフラメンコ界を支え続けているフラメンコ歌手、川島桂子のソロリサイタルが開催された。タイトルは『PARA MORIR Ⅱ』、9年前の2014年に開催したソロ公演と同名を冠した。 過去最高ではないかと思えるほどの超満席の店内。これだけ大勢の観客が集まっているのは、コロナ以降久しぶりではないだろうか。 プロのアーティストらをはじめ業界関係者や練習生らも多く、彼女の人脈の広さが伺えた。客席はそこかしこが知り合い同士ばかりのようで、大いに賑わっていた。できるだけ多くのお客様に楽しんでいただきたい―――、そんな思いが表れているようだった。 1部がスタート。髪をアップに結い上げ、黒のドレスに長いストールを羽織った川島が舞台に現れる。バイオリンの前奏から始まるトナ。ギターとパルマの伴奏に支えられ、深みのある歌声が響き渡る。いつもはステージでスポットライトを浴びる踊り手らを伴唱者として支えているが、今日は自分が主役だ。優れた技術と安定感を持つ素晴らしいアーティストらが、今は川島を支えている。 1曲終わるごとにMCが入るのも、彼女の人柄が感じられる。この日はちょうど川島が還暦を迎える誕生日で、このライブは感謝祭であり、また生前葬でもあるのだという。これまで歌い手としてキャリアと年齢を重ねてきて、その間に内面のモードも少しずつ変わってきたと打ち明ける。そこで今回の公演では、次世代を担うことになる現在活躍中の若手ギタリストである徳永にギターをお願いしたと話す。そしてグラナイーナを披露すると、卓越したテクニックと繊細でいて鮮やかな音色のギターと艶のある豊かな歌声とのハーモニーが会場を包み込んだ。 タンゴ・デ・グラナダでは、「これから歌う曲はきっとみんな知っている曲だと思うので、感謝祭だからよかったら一緒に歌ってください」と呼び掛けた。演奏が盛り上がると川島も立ち上がって踊り、客席からもあちこちで歌声が聴こえてきた。 また、ステージを進行していく中でのひらめきで、プログラムの曲順を入れ替えたりも。そんな柔軟さも、川島のキャリアで磨かれたセンスの為せる技なのかもしれない。 アバンドラオでは三枝と有田のパルマという贅沢な構成で壮大な情景を歌い上げ、自身のお気に入りという昭和歌謡のスペイン版のようなスペイン歌謡曲は、森川によるピアノアレンジで披露した。 そして曲順変更により1部のラストの曲となったのが、久保田とヴォダルツがパリージョを奏でて踊る華やかな舞踊曲。最後を美しいバイレで締めたいとひらめいた、という期待通りの華やかな締めくくりとなった。 休憩を挟んでの第2部は、フラメンコ界の巨匠と名高いエンリケ坂井との二人きりのステージ。カンテのギター伴奏、ではない。カンテとフラメンコギターの協演だ。 鮮やかな真紅のドレス姿の川島が舞台に上がると、会場から見惚れるような歓声が上がった。 カンテを志した当初からお世話になっているというエンリケとの共演に、MCでの川島の表情は終始にこやかであった。「どうしても歌いたい曲」だという名人パコ・トロンホのファンダンゴ・デ・ウエルバや正統派のソレアなど、味わい深い5曲を歌い上げた。 エンリケのギターの音色には、匂いが感じられる。フラメンコの古き良き時代への憧れを思い出させてくれるような、その時代の空気や質感まで伝わってくるような至福のステージに、観客はすっかり引き込まれ酔いしれていた。 川島は、自身がほぼ独学で歩んできたカンタオーラとしての道のりを「迷走してきた」と表現する。でも、その自分なりに目指すものを模索してきた道程こそが、彼女の存在をウニカ(unica、唯一の)なものに成らしめたのではないだろうか。 たくさんのファンに愛され、そして大きな愛を注いで歌い続けてきた日本屈指のカンタオーラ。この先ぜひ第3弾を企画して、再び私たちにその温かく素晴らしい歌声を聴かせてほしい。 【出演】 川島桂子 特別ゲスト:エンリケ坂井 ギター:徳永健太郎 パルマ:有田圭輔、三枝雄輔 バイオリン&ピアノ:森川拓哉 バイレ:久保田晴菜、ヴォダルツ・クララ 【プログラム】 [第1部] 1. Tona 2. Granaina 3. Tangos 4. Abandolaos 5. Maldigo Tus Ojos Verdes 6. Un Clavel [第2部] 1. ブレリア・ポル・ソレア 2. ティエント 3. セラーナ 4. ファンダンゴ・デ・ウエルバ 5. ソレア >>>>>
- ★フラメンコnews☆
柴田亮太郎ニューアルバム 『Roundabout』 (jueves, 25 de mayo 2023) フラメンコのみに留まらず、ジャズやラテン、ポップスなど様々な音楽シーンで活躍するギタリスト、柴田亮太郎さんのニューアルバムがリリースされました。長年にわたり培ったフラメンコのセンスと技術に加え、ジャズを基礎から学びその要素をフラメンコギターに還元し、彼独自の世界を奏でる珠玉の一枚です。 すっと耳になじむギターの音色が心地よい曲や、フラメンコのグルーヴ感が楽しい曲、軽快なメロディーやしっとりした曲調のものなど様々な表情が楽しめ、表題曲でもある9曲目は眩しさと爽やかさが感じられる疾走感あふれる一曲です。 今作について柴田さんからは、「20年ぶりのアルバム制作になりました。今回アルバムの為に作った曲もありますが、今まで作り溜めていた曲、音楽制作の仕事で作った曲など 10曲収録されています。他の楽器や歌などは一切なく、ギターのみの録音です。タイトルのRoundaboutというのは信号のない円形の交差点の事ですが、遠まわりという意味もあります。収録されている曲はいろんなジャンルの影響がありますが、僕自身多くの音楽との出会いや経験があり、オリジナルアルバムという形にするのに良い意味で遠まわりする事が出来たなという思いから、このタイトルにしました。時間がゆっくりと進む、そんなアルバムです」とコメントが寄せられました。 購入ご希望の方は、柴田さんのHPからご注文いただけます。 [URL] https://ryotaroshibata.com/ 【柴田亮太郎『Roundabout』】 1. Journey 2. 虫の夢 3. Rumba flamenca 4. One scene 5. Coletilla de Alegrias 6. Libelula 7. Nostalgia 8. Una pausa 9. Roundabout 10. Sierra Azul (¥3,000税込) >>>>>
- 第12回CAFフラメンコ・コンクール開催!
(martes, 29 de agosto 2023) 公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団主催による、第12回CAFフラメンコ・コンクールが今秋開催されます。 このコンクールは2年に1度開催され、若手芸術家の育成を目指し、将来性のある舞踊家を発掘し、スペインでの研修機会を提供するための対象者を選考することを目的としています。 応募資格は、スペインでのフラメンコ研修を希望する35歳以下(2023年3月31日時点)の方が対象で、一次予選ではDVDの応募によるビデオ審査が行われます。 応募受付は今月16日から始まっていて、サイトの専用フォームより応募用紙を取り寄せ、必要事項を記入の上、一次予選用動画DVDや必要書類等を揃えて郵送での申込みとなります。 締切は<9月5日(火)17時必着>となっておりますので、エントリーご希望の方はお早めに! なお、二次予選・本選の観覧チケットは、チケットぴあにて9月1日より発売開始となります。 [日程] 一次予選:応募DVDによるビデオ審査(受付期間2023年8月16日~9月5日17時必着) 二次予選:2023年11月14日(火)15:30~ 北千住Theatre1010 本 選 :2023年11月30日(木)16:00~ 北千住Theatre1010 [チケット取扱] チケットぴあ(https://t.pia.jp )※9月1日(金)発売開始 [主催] 公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 住所:東京都港区芝3-16-13 MARUWAビル2階 連絡先:info@mwf.or.jp/ 03-5419-6513 財団サイトURL:https://mwf.or.jp コンクールサイトURL:https://mwf.or.jp/caf/1680 >>>>>
- ★news☆今枝友加カンテソロライブ
Flamenco fan LIVE 今枝友加カンテソロライブ開催! (miércoles, 16 de agosto 2023) 昨今ようやく落ち着いて外出したりこれまでの日常が少しずつ戻ってきたところで、美味しい食事やお酒を味わいながら、迫力ある生のフラメンコライブを楽しんでほしい!との思いから、毎回素晴らしいアーティストをお招きする«Flamenco fan LIVE»を開催します。 その門出を飾る第1回目の出演者は、踊りでも歌でも各地のライブで大人気、まさにフラメンコ界の『二刀流』の名にふさわしいアーティスト、今枝友加さんです。 今回のライブで披露していただくのはカンテ(歌)のソロライブで、協演には熟練の技と味わい深い音色が魅力の、古き良き時代のフラメンコギターを今に受け継ぐ巨匠、エンリケ坂井さんが出演します。 主演の今枝さんからは「今回のライブは、新しいパロ(曲種)はもちろん、あたため続けてきたパロ、前回では不完全燃焼で、もう一度ちゃんと歌ってあげたいパロなど、盛りだくさんになりそうです。全身をつかって、しぼって、心からうたいます」とコメントをいただきました。 フラメンコライブが初めての人も何度も行ってる人も、ここでしか体験できない心ゆさぶるライブをぜひお楽しみください! 皆様のご来場を、心からお待ちしております。 [日時]2023年10月15日(日) 開場16時 開演17時(2部制、入替無し) [出演] カンテ 今枝友加 ギター エンリケ坂井 [料金]チャージ5,500円(2プレート&1ドリンク付き、税込) ※受付にて、現金でのお会計をお願い致します。 [会場]スペインバル 青山TORO 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラポルト青山B1 (東京メトロ表参道駅B2出口より徒歩3分) [予約] ※ただいま満席のご予約のため、キャンセル待ちとして受付させていただいております。 メール flamenco.aoyamatoro@gmail.com 電話03-6450-6018(平日12~23時/土日祝17~22時) ※ライブ配信は予定しておりません。 ※キャンセルのご連絡は前日までにお願いします。当日キャンセルの場合は、チャージ全額のご負担をお願いしております。ご理解の程よろしくお願い致します。 >>>>>
- 石井智子スペイン舞踊団公演『星の王子さま -孤高の薔薇-』
(domingo, 27 de agosto 2023) 2023年1月28日(土)・29日(日) 銀座 博品館劇場(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/川島浩之 Foto por Hiroyuki Kawashima 東京を拠点に舞踊活動を展開する石井智子スペイン舞踊団による劇場公演が、東京・銀座の博品館劇場で2日間3公演上演された。 今回の原作となったのは、世界中で親しまれているサン=テグジュペリの不朽の名作「星の王子さま Le Petit Prince」。その物語をフラメンコと現代ダンスという異なる舞踊表現により、双方の魅力や可能性を巧みに組み合わせた演出で舞踊作品に仕立てた。 音楽面では、楽器にフラメンコギターの他にバイオリンやアコーディオンも取り入れ、パーカッションでは朱雀が得意とするタングドラムをはじめジャンベなど10種類以上の様々な楽器を使い、豊かな音色で物語の世界観や登場人物の心情を彩った。歌についても、川島が物語に沿ったスペイン語の歌詞を20個以上作詞したり、井上も選曲の提案や日本語での作詞を手掛けるなど、細やかな表現にもこだわりを見せた。 舞台は幻想的なタングドラムのメロディーで幕を開ける。プロローグは、4人のダンサーによる動物を連想させるような象徴的なポーズでワンシーンを飾り、そして今作の主役である薔薇役の石井が舞台中央に登場する。赤のバタ・デ・コーラをまとう姿はまさしく薔薇のよう。パリージョ(カスタネット)を奏でながら、慈愛に満ちた表情で優しく大らかに舞う。 今作での薔薇の存在について、石井はプログラムのあいさつ文で「(薔薇は)夫・恋人・子・大切な人への愛情を湛えた女性の象徴として登場し、最後は薔薇と王子さまが再会するという、原作にはないハッピーエンドで幕を閉じ、皆様にはぜひ温かい気持ちでお帰りになっていただきたい」と語っている。 砂漠に不時着した飛行士が王子さまと出会う場面。飛行士役には現代ダンスで活躍する木原を起用し、ソロのダンスシーンでは柔らかい身体を生かした伸びやかな踊りで作品の世界観を表現する。そして王子さま役の岩崎はギターの演奏に乗せてブレリアを踊り、フラメンコらしい音楽でドラマティックな場面を演出した。 岩崎は公演当時19歳と、今後が楽しみなダンサーだ。王子さまのソロの場面では若々しく力強いソレアポルブレリアを披露。さらに現代ダンスも学んでいるということで、師でもある飛行士役の木原との共演シーンでも息の合った踊りを見せた。今回は劇場作品のため役の衣装での踊りだったが、いつかぜひタブラオなどで踊る姿を観てみたいと思う。 薔薇として王子さまを見守り慈しむ石井は、様々な場面でその心情を表現した。薔薇が王子さまの星に生まれて大きく成長するまでの場面では、ピンクのバタ・デ・コーラの衣装でファンダンゴの曲を優美に舞う。そこに岩崎がカホンや足を打ち鳴らして、親子共演としても薔薇と王子さまとしても心温まる共演シーンとなった。また、たった一人で星に残された薔薇が悲しみに耐える場面では、ソレアの音楽とともに渾身の踊りで深い孤独を表現した。 星を旅立った王子さまが6つの小惑星を訪ねる場面では、行く先々で出会う王様やうぬぼれ屋、呑んべえに実業家、街灯の点灯夫、地理学者といった変わった大人たちを、ガロティンやマルティネーテ、ティエントなど様々なフラメンコの曲種で演出。衣装にもその役柄の個性がよく表れ、多彩なバリエーションが楽しめた。 物語のカギを握るヘビの役は、石井と同じく小松原庸子スペイン舞踊団出身の南風野が好演。少しずつ王子さまに忍び寄り、不穏な展開を暗示する。柔らかい腕でマントンを翻しながら妖艶に舞い、鋭い目つきと妖しげな雰囲気で存在感を示した。 王子さまと友達になり大切なことを教えるキツネ役には、現代ダンスの細川を起用。しなやかな身のこなしでキツネらしい軽快な舞踊を表現した。 惑星や砂漠といった象徴的なシーンは現代ダンスによる群舞で巧みに演出し、バオバブの木のシーンでは不気味で底知れないエネルギーを表現。フラメンコによる群舞ではアレグリアスの曲をアバニコで華やかに踊り、咲き誇る薔薇たちを表現した。 薔薇が王子さまと再会を果たす最後のシーン。石井はパリージョを奏でながら赤のバタ・デ・コーラ姿でグアヒーラを舞い、再会の喜びを表現する。岩崎もカホンで共演し互いに大切な存在であることを確かめ合い、幸せな空気に包まれながら幕を閉じた。 主宰の石井が子供の頃から愛読していた物語を舞台化するという、長年温め続けてきた構想が晴れて結実した今回の公演。当初は昨年の上演を予定していたとのことだが、苦渋の決断による延期を経ての今回の上演は喜びもひとしおだったことと思う。共演者やスタッフの思いもひとつになり、鑑賞していてやさしく温かい気持ちが伝わってくる素晴らしい作品であった。 【出演】 石井智子(フラメンコ)/薔薇 南風野香(フラメンコ)/ヘビ 木原浩太(現代ダンス)/飛行士 細川麻実子(現代ダンス)/キツネ 岩崎蒼生(フラメンコ)/王子さま 石井智子スペイン舞踊団(松本美緒、小木曽衣里子、清水真由美、福田慶子、樋口万希子、角谷のどか) 加藤みや子ダンススペースカンパニー(細川麻実子、田路紅瑠美、江藤裕里亜、上村有紀、杉山佳乃子、鈴木梨音) ギター:鈴木淳弘 カンテ:川島桂子、井上泉 アコーディオン:Miyack バイオリン:依田彩 パーカッション:朱雀はるな 石井智子(振付・構成・演出) 加藤みや子(現代ダンス振付・監修) >>>>>
- Flamencofan インタビュー:JURINA
(フラメンコダンサー) (martes, 22 de agosto 2023) 昨年12月に若手のフラメンコダンサーを中心にキャスティングして、その脚本や演出、音楽のクオリティを含め作品としての完成度の高さが大きな評判となった舞台『カルメン』。その主宰であり主演も務めたフラメンコダンサーJURINA(ジュリナ)さんに、作品作りの舞台裏や今後の展望についてお話を伺いました。 聞き手/金子功子 Entrevista por Noriko Kaneko ――昨年の舞台『カルメン』の大成功、おめでとうございます。大きな舞台を終えて今の心境をお聞かせいただけますか? JURINA:公演を終えて約半年たちましたが、すごく素直に言うと、正直まだ信じられないです。当時のオフショットや動画などをたまに見返すんですが、あれだけ多くの方が関わってくださった舞台を自分が主宰したということに、今でも驚きます。この作品に関わってくださったたくさんの方々に、本当に感謝しています。 ――出演者も多かったかと思いますが、裏方のスタッフも相当多かったのではないですか? JURINA:はい、最終リハーサルで大きめのスタジオを借りたんですが、そこに当日現場で動いてくれるスタッフさんも全員来てくださって、その人数に圧倒されました。また当日に舞台の設営現場にご挨拶に行った時も、そこで本当に多くの方が動いてくださっているのを目の当たりにして、舞台ってすごいなって思ったことを今でも鮮明に覚えています。 ――まさに夢のような一大作品でしたね。では、企画の立ち上げの頃に遡ってお話をお聞きしたいと思います。公演を開催しようと思った直接のきっかけは何でしたか? JURINA:日頃からお世話になっている方とお話しをしていた時のことなんですが、自分のフラメンコの今後という話題になって、そこで私が小さい頃から温めてきたカルメンをやりたいという夢について、たまたまお話ししたんです。そうしたら、今は文化庁や他の助成金もあるし、周りに知り合いの踊り手やミュージシャンも増えてきたし、できる状況じゃない?と背中を押されました。そう言われると確かに、実現のために必要なピースは全て揃っていて、どの方向から考えても状況的には可能だという事が分かりました。もしやらない選択肢があるとしたら、それは自分の気持ちの中にある「怖い」とか「まだ早いんじゃないか」というネガティブ要素だけだったので、もしそれが拭えないなら結局その程度の夢だったってことよね…と考えたときに、やろうと決断しました。 ――その話が出たのはいつ頃ですか? JURINA:去年の4月頃だったと思います。そこから1か月くらい悩んで、5月に腹を括りました。 ――小さい頃に「カルメンをやりたい」と思ったきっかけは? JURINA:小学2年生の頃に、母に連れて行ってもらった宝塚歌劇団で初めて『カルメン』を観ました。それが私にとってのスペインやカルメンという作品とか、すべての出会いの始まりです。母はバレエや宝塚が好きでしたので、私にはそっちの世界に進んでほしかったようですが…。でも私はスペインの雰囲気に惹かれました。カルメンという役柄への憧れと、あのカラッと明るい人々がたくさん登場する舞台の陽気な雰囲気が忘れられませんでした。 ――舞台作りのために、まず何から始めましたか? JURINA:まずは演出と音楽だ、と思って舞台経験が豊富な舞踊家の田村陽子さんと、素晴らしい音楽性を持ちフラメンコギターデュオ「徳永兄弟」としても活躍中の徳永健太郎さんにお話しさせていただいたのが始まりです。それと、会場探しですね。そこからキャスティングと脚本と、いろんなことが同時にスタートしました。脚本については、まずどういったカルメンにしたいか全体像を考え、そこから第1幕はどこからどのシーンまでといったベースの構成を決めて、書かせていただいた脚本を陽子さんに見ていただき、そこから演出とすり合わせました。音楽については、まずはどの場面にどういう曲をはめるか陽子さんがアイデアを出してくれたものを元に健太郎さんと3人で検討して、最終的にどの曲を書き下ろして、どの曲をフラメンコの従来の曲種をあてはめるかなど決めていきました。 ――結構大変だったことってありましたか? JURINA:正直、進み始めてからは大変だとか感じる以前に、ただ成功させたいという一心でした。ですが、やはり最初の頃の進み出すまでは、劇場もすぐには決まらなかったし、これまで公演を作ったことも無かった私が各方面の皆さんにオファーをするので、例えば共演の方にどれだけ時間を割いてもらうかなどをお願いするのは難しかったです。リハーサルや合わせなどがどのぐらい必要とかも分からなかったので、どこまでどういう風にお伝えするかなど、そこはけっこう大変というか…慎重に進めました。でもみなさん、スケジュールについては本当にすごく協力してくれました。 ――会場選びは何が大変でしたか? JURINA:まず現実問題として、空いてなかったですね。集客人数の規模やフラメンコができるかできないとかで候補を選んで、100件くらい問合せました。東京や神奈川、埼玉、千葉の会場などもあたって、最終的には都心の劇場か今回の大田文化の森ホールかの2択になりました。都心の劇場は施設利用料なども高額でしたので、それだったらその分出演者やスタッフさんに回したいと思い、お客様にはアクセスの面でご足労をお掛けしましたが現実的な方を選ばせていただきました。 ――実際JURINAさん自身は出演もされていましたが、両方をやるのは時間的に大変だったかと思います。練習時間は確保できましたか? JURINA:できるだけ確保するように、自分のスケジュールはかなり細かく組みました。事務作業などもすべて書き出して、細かく管理してました。もちろん正直に言えば、もっと練習時間が取れればいいなという理想はありましたが…、試行錯誤でやってましたね。 ――準備段階で、記憶に残っているエピソードはありますか? JURINA:準備段階ではやはり集客面が一番不安が大きかったんですが、いろんな方とお話しさせていただく中で、様々な形で協力を申し出てくれる方々がたくさんいてくださったことには、すごく救われました。それとリハーサルを進めていく中で、ミュージシャンの方々が本来の予定日ではないのに打ち合わせで集まってくれたりとか、ダンサーの皆さんもいろいろすり合わせてくれてたという話を聞いて、そういう出演者の皆さんの気持ちが本当にうれしかったし、これは大丈夫だなと思えたのが印象深いです。 ――当日は順調でしたか? JURINA:本番 3日前くらいから、当日無事に全員小屋入り出来たら大丈夫だろう、という自信はありました。だから、実際に当日全員無事に小屋入り出来て、「あ、これは大丈夫だ」と思った記憶はあります。でももしかしたら、私の知らないところで小さなトラブルなどはあったかもしれませんが…。 ――公演が無事に終わって、その後のご自身の環境や内面に何か変化はありましたか? JURINA:そうですね、やはりある種の責任感は強くなったと思います。もちろんいろんな方の力のおかげでもありますが、今は我が子のような気持ちでこの作品を見ています。環境というか、考え方はガラッと変わったと思います。 ――次に向けて何かプランはありますが? JURINA:私の中では正直一択で、再演したいと思っています。そして再演するなら、前作を超えるというのより、自分の中でこういうのを加えたいというアイデアがあるので、それを加えた上での再演を目指したいと思っています。 ――それなら思い切って、カンパニーとか立ち上げたりとか? JURINA:それはまだまだですけど(笑)。いずれにせよ再演に向けては、まず自分の中でしっかりした地図、ロードマップを描けなければと思っています。資金繰りはもちろんですが、どうやって多くの人に観ていただけるか、自分のやりたいことをどうやったら実現できるかとか、何が効果的で何がそうでないかとか、自分でしっかり絵が描けないと進めないので、今はその段階です。道は長いですが、がんばります。 ――今後、フラメンコダンサーとしてどういう将来像を描いていますか? JURINA:これはカルメンとはまた違う部分ですけど、フラメンコについてもっと探求していきたいですし、自分自身の理想としては、どこまでも自由にフラメンコができるようになりたいと思います。今はこの振りをやりたい!というのが出てきてしまうんですが、もっとこう…自分の中から溢れ出るものを、大切にできるようになりたいですね。それによって、観てくださっている人に何かをプレゼントできるようなダンサーでありたいな、と思っています。 ――「自由」というのは、自分の中から溢れてくるものを思いのままに表現できるようになりたいってことですか? JURINA:自分の中から溢れ出るものがきちんとフラメンコでありたい、という風に思っています。それにはもう、年数やいろんな努力がまだまだ必要ですけど。どうしても今はまだ、例えば何かの曲を聴いたときにすごくフラメンコが思い浮かぶかというと、その域までは行けてないのが自分では分かるので、もっと骨身に染みていけるように、そこは勉強とフラメンコへの愛を重ねていきたいな、と思っています。 ――これはもう、スペインに行くしかないですね(笑) JURINA:そうですね(笑) 【プロフィール】 JURINA/2歳半よりクラシックバレエを始め、幼少期から様々なステージ経験を積みながらバレエ、声楽、演劇などのレッスンに励む。成人後はコンテンポラリーダンスや演劇などに活動の幅を広げ、海外公演などにも出演する。2013年よりフラメンコを開始、1年後にスペインへ留学を行う。その後も渡西を繰り返し、数々の著名なスペイン人講師に師事。 2018年より本格的にフラメンコダンサーとしての活動を開始。様々な場所にてパフォーマンスを行うと同時にフラメンコユニット、LosTopos(ロス・トポス)の立ち上げも行う。2022年よりイベント主催者としての活動を開始。同年に『東京フラメンコフェスティバル』『La aroma』『CARMEN』など3本の公演の主催・制作・出演を行う。 【JURINA公式サイト】 https://www.jurinaflamenco.com >>>>>
- 第4回全日本フラメンココンクール 結果発表!
(domingo, 18 de junio 2023) 今年で第4回目となる全日本フラメンココンクールの本選が、去る4月21日に東京のスペイン大使館で開催されました。今回はコロナ禍で続けられてきた行動制限も大幅に緩和され、予選・本選とも一般の観客を会場に受け入れての開催となりました。東京と大阪で行われた予選を通過したバイレ部門15名、カンテ部門10名のファイナリストらが顔を揃え、踊りに歌唱に全力で取り組みその技術と表現を披露しました。 各賞の受賞者の皆さんのコメントをご紹介します。 なお、来年はこのコンクールも5周年を迎え、現時点の情報では来年4月に開催を予定しているということです。 主催:全日本フラメンココンクール事務局 後援:スペイン大使館、公益財団法人日本スペイン協会 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 写真/大森有起 Fotos por Yuki Omori 【第4回全日本フラメンココンクール】 [カンテ部門] 優勝 中里眞央 準優勝 許 有廷 [バイレ部門] 優勝 内田好美 準優勝 石川慶子 小松原庸子特別賞 佐藤心晴 平田かつら [カンテ部門] 優勝 中里眞央 【中里眞央さん受賞コメント】 「どこまでも暗く、深い深いフラメンコの海を、わたしは日々愛おしく感じます。いつもギターの音色で寄り添ってくださる斎藤誠さん。右も左もわからないヒヨッコ舞踊団員だった私を信頼して育て続けてくださった鍵田真由美先生、佐藤浩希先生。感謝してもし尽くせません。いただいた賞に恥じぬよう精進し、日本フラメンコ界、ひいてはフラメンコ界全体に貢献できる表現者となれるよう、これからも足掻き、迷いながらも進み続けます。」 準優勝 許 有廷(ホウ ユウジョン) 【許有廷さん受賞コメント】 「今回は2度目の挑戦だった。昨年はカンテ部門が新たに設けられたのでチャレンジしてみたいと思いエントリーしたが、コンクールの前に母を亡くし精神的に辛い日々が続き練習に励むことが出来ず、自身の勉強不足もあり、結果的に良い成績を収めることが出来なかった。今年も随分迷ったが、もう一度チャレンジしてみることにした。バイレの伴唱も引き受けていたのでかなりのプレッシャーはあったが、バイレの方の頑張る姿に刺激を受けながら自身も頑張ることができた。大変有難いことに受賞することができて正直とても嬉しい。が、これまで以上に厳しい現実が待っているかも知れない。本業の傍らでフラメンコと両立するのは大変ではあるが、無理をせず今までやってきた経験や気持ちを忘れず、一生修行の身で努力していきたいと思う。」 [バイレ部門] 優勝 内田好美 【内田好美さん受賞コメント】 「第4回全日本フラメンココンクールにおいて、優勝できたこと、とても光栄であり、嬉しいです。私の踊りを支えてくださったミュージシャンの皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。『優勝』という言葉はとても特別です。気持ちを引き締めなおして、フラメンコと向き合い、自分を体現していきたいです。諦めないで、丁寧に踊る。これからもこの気持ちを大切にして頑張っていこうと思います。」 準優勝 石川慶子 【石川慶子さん受賞コメント】 「岡田昌巳先生が亡くなった。早く踊らないと、と思った。2015年スペイン・ウニオンでのコンクールは死ぬ気で準備した。その甲斐あってうまくいった、ところもあるが、実際はいろんな方から怒られた。それからずっと自分のタラントを探している。昌巳先生は面識もなかった私に真剣に意見をくださった方だ。だから今回は死ぬ気じゃなくて、産む気で頑張った。そしたら、私の方こそ新しい自分を発見したかのような驚きと喜び、そしてフラメンコへの新鮮な憧れを手に入れた。生まれ変わったのか?若い子に賞を譲る、気はない。でもそろそろ、評価を他人基準から自分基準に変えていかないといけないな。だってもうこのタラントのお母さんだから!」 小松原庸子特別賞 佐藤心晴(さとう こはる) 【佐藤心晴さん受賞コメント】 「この度は小松原庸子特別賞をいただき、とても嬉しく光栄に思います。エントリーのきっかけは、昨年のコンクールで同世代の方達が活躍されたことに刺激を受け、私も挑戦したい!と思ったことです。コンクールに向けて、学校から帰宅後、バイトのある日以外は自宅のそばの集会所を借りて練習しました。今回受賞できたことで、指導してくださった先生や応援してくださったスタジオ生の方々がとても喜んでくれたことが何より嬉しかったです。受賞に恥じないよう、これからもフラメンコにまっすぐ向き合っていきます。ありがとうございました。」 小松原庸子特別賞 平田かつら 【平田かつらさん受賞コメント】 「コンクールに向けてミュージシャンと一緒に予選と本選、2曲のヌメロ(曲種)を追求し、コミュニケーションした時間は学びや気付きの宝庫でした。河内さおり先生、カンテの許有延さん、ギターの宇田川卓俊さんと貴重な経験が出来たことに感謝致します。また、私が奨励賞をいただいた第30回新人公演はコロナ禍の影響で無観客でしたので、今回は家族や友達に見てもらえて最高に嬉しかったです。憧れても憧れても近づけないフラメンコの道、これからも一歩ずつ精進します。ありがとうございました。」 >>>>>
- 【速報】第32回新人公演入賞者発表!!
(lunes, 21 de agosto 2023) 去る8月11日から13日の3日間にわたり開催された第32回新人公演について、主催の一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)より「奨励賞」およびそれに準ずる賞の受賞者が発表されました。 各部門の受賞者は、次の通りです。 【奨励賞】 カンテ部門 C-8 寺崎 恵子(てらさき けいこ) ギター部門 G-1 凛 -Rin-(りん) バイレ群舞部門 群-3 LLAMAS DE FRAGUAS(ジャマス・デ・フラグアス) バイレソロ部門 B-14 藤岡 里織(ふじおか さおり) B-22 吉田 智宏(よしだ ともひろ) B-32 中里 眞央(なかざと まお) B-35 畑中 美里(はたなか みさと) B-56 荒濱 早絵(あらはま さえ) 【準奨励賞】 カンテ部門 C-13 岡村 佳代子(おかむら かよこ) バイレソロ部門 B-9 片野 佳加(かたの よしか) B-39 地紙 直美(じがみ なおみ) 各受賞者の皆様、おめでとうございます! また8月19日(土)より、公演のアーカイブ配信視聴も始まっています。 受賞者を含む全76組の映像を、8月27日(日)23:59まで「ツイキャスプレミア配信」にて視聴できます。 配信チケットは各出演者からお求め頂くか、または以下のリンクからも購入可能です。 出演者の皆さんの熱い挑戦を、ぜひご覧ください! ① 「カンテ、ギター、バイレ群舞」(8月11日公演映像)チケット https://twitcasting.tv/c:oreodacci/shopcart/252621 ② 「バイレソロ1日目」(8月12日公演映像)チケット https://twitcasting.tv/c:oreodacci/shopcart/252812 ③ 「バイレソロ2日目」(8月13日公演映像)チケット https://twitcasting.tv/c:oreodacci/shopcart/252815 >>>>>
- カンテフラメンコ 奥の細道 on WEB No.27
(lunes, 14 de agosto 2023) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai カンティーニャの乗り ~続き 前回書いた譜例の2つ目、カンティーニャの乗りのサリーダを12拍子の基本の足とパルマをしながら歌ってみよう。 アレグリアスのサリーダでは3拍目と10拍目で和音が変わる。和音が変わるというのは、つまりメロディーの流れの落ち着く所が3拍目と10拍目なのだが、カンティーニャ乗りにするとそれが10拍目と3拍目に入れ替わる。 これが乗りの変化となるのだが、なぜこんな歌い方をするかと言えば、リズム感の優れた人たちにとってはこの方が歌い方の自由度が増すからだ。そして乗りの感覚も変わる。 そのためには12拍子のコンパスを徹底的に身に付ける必要があるが、それができれば自由さを実感できると思う。 前回と同じく、ペルラ・デ・カディスが彼女の母親パペーラ・デ・カディス(市場でジャガイモを売っていたのでこの名が付いたそうだ)のカンティーニャを歌ったものを今回は例に出してみる。 (イスパボックスの録音より) 歌詞 Ni en La España ni en Italia ni en lo que cobijaba el sol, has de encontrar tú una flamenca que te quiera como yo. Coletillo Ay, que te quiero pero de 〈lachi〉no te lo〈peno〉. (訳) スペインでもイタリアでも お天道(てんとう)様の照る所では 私ほどあんたを愛する フラメンコ娘はいないよ。 あんたが好き、だけど 恥ずかしくて言えないわ。 ※〈lachi〉=羞恥心、〈peno〉=言う、告げる ぺルラはいつも同じ歌い方、乗り方をするわけではなく、毎回少しずつ違っていて、ある部分はもう少し間(ま)を取ったり、あるいは反対に待たないで入ったりとその時の気分によって変わってくる。 そして、それこそがこの乗り方の長所であり、自由に歌うことができるという事だ。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~32(以下続刊)。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ(https://acustica-shop.jp/)へお問い合わせください。(編集部) >>>>>











