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- 新・フラメンコのあした vol.9
(lunes, 6 de noviembre 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、この秋にマドリードで開催された第18回「スマ・フラメンカ」フェスティバルの一環として行われた、若手アーティストの公演についてのリポートです。 文/東 敬子 Texto por Keiko Higashi 写真/宣材写真 、東 敬子 Fotos: material promocional / por Keiko Higashi 『スマ・ホベン』フェスティバル べニート・ベルナル、ホセ “エル・ベレンヘーノ”、ラウラ・フネス カナル劇場、マドリード 2023年9月24日 Festival Suma Joven Benito Bernal, José el Berenjeno, Laura Fúnez Teatros del Canal, Madrid, 24 septiembre 2023 (編集部注:*印のリンクから公演当日の動画が観れます) 今年も10月17日から11月5日まで、第18回目を飾る「スマ・フラメンカ」フェスティバルが開催されましたが、その前哨戦として、9月21日から24日までの4日間、30歳未満の若手を対象とした「スマ・ホベン」フェスティバルが行われました。 「スマ・ホベン」は、頭角を現しつつある次世代アーティストとの出会いの場。バイレの巨匠マヌエラ・カラスコをシンボルとした3回目となる今年も、毎日3組のアーティストが出演し、計12組のフレッシュな感性で会場を大いに盛りあげてくれました。ここでは、最終日24日の公演の模様をお伝えします。 まずはギタリスト、べニート・ベルナル*のソロ演奏でスタート。ウエルバ出身で今年25歳になる彼は、エステベス・パニョス舞踊団に参加する他カンテ伴奏もこなし、現在はソロ活動を準備中とのこと。 ギター一家に育ったと言うだけあって、非常に音楽性が高いと感じました。センスの良いメロディアスなトーケで聴かせます。ただ、ソリストとして場慣れしてない感じがちょっと辛かった。まずマイクの位置が若干遠く、音が時折弱く聞こえて残念。足がずっと妙に動いているし、顔も下を向きっぱなし。ソロでステージに立つなら、もっと人からどう見られているかを意識してほしい。所作は大事です。音楽を聴くだけなら、わざわざ会場に行く必要はないんです。彼の演奏する姿を見たいと思わせるような、カッコいいソリストになってほしいと思いました。 続いてカンタオールの“エル・ベレンヘーノ”*こと、ホセ・モントージャ・カルピオが登場します。ヘレス出身で29歳の彼は、その偉大な苗字からも分かるようにフラメンコの名門一族出身の両親を持ち、親族はモネオ、ルビーチ、アグヘータ一族とも繋がります。 子供の頃からカンテに囲まれて育ったサラブレッド。しかし彼は意外にも、クリスティーナ・ヘーレン財団で奨学金をもらいカンテを改めて学校で学ぶという経験の持ち主なんですね。一昔前のフラメンコたちは「フラメンコは学校では学べない」と言って「学校のフラメンコ」を格下に見ていましたから、これは本当に意外です。 そしてそんな真面目な一面を、彼のカンテにも見た気がしました。声量もあるし、風格もある。難があるとすれば、自分の個性をまだ見つけきれていない、歌声の中の実感が薄いところでしょうか。これから人生の色々な経験を積んで、その声に投影していってほしいと思います。 そして踊り手、ラウラ・フネス*が今フェスティバルの大トリを担います。マドリード出身、25歳のラウラは、スペイン舞踊(フラメンコを含むスペイン独特の4つの舞踊スタイル)の全てを踊りこなす“バイラリーナ”。フラメンコではマリア・フンカル舞踊団で、またカルロス・ロドリゲス舞踊団などのスペイン舞踊全般を踊る舞踊団でも活躍しています。 まずはフラメンコを伝統的かつ自身の味で踊ります。俊敏で華やかさもあって好感が持てる踊りでしたが、驚いたのは、彼女がふくらはぎが見えるくらい丈の短いドレスを着て登場したナンバーでした。 なんと彼女はフラメンコの楽曲をエスクエラ・ボレーラのスタイルで踊ったのです。衣装はもとより、靴もボレーラ仕様のバレエシューズ。加えてパリージョ(カスタネット)も演奏します。 何年か前に、アイダ・ゴメスがパリージョを叩きながらブレリアを踊るのを見ました。ブレリアは速いですから、それについて行くパリージョも物凄い速さになるのですが、彼女の技術の高さに圧倒されたのを覚えています。 しかし今回は、もうびっくりです。ボレーラやホタなどを、そっくりそのままフラメンコに乗せて踊るのはこれまでありそうでなかった。なんせサパテアードが無いんですから。ボレーラはバレエの影響を受けたスタイルですから、クラシックバレエをフラメンコの音楽で踊るのを想像してもらうと近いかも知れません。 今まで「フュージョン」と言うと、ロックの音楽でフラメンコを踊ったり、逆にフラメンコ音楽にコンテンポラリー風の動きを付けたりと、「洋物」と混ぜる風潮があったのですが、今回はスペイン同士の融合なので違和感は全く無し。納豆にケチャップじゃ不気味だけど、味噌だったら意外にイケるのかも、そんな感じです。 実はこのアイデア、最近流行りつつあるんですよね。でもカルロス・ロドリゲス舞踊団の公演でこの組み合わせを観た時は、それ程の印象はなかったんです。音楽がフラメンコである必要を感じなかったと言うか。 でも今回のラウラのソロは違っていた。技術はもちろん素晴らしいですが、何よりフラメンコの情感がそこに宿っていた。ボレーラの動きでも、ちゃんとフラメンコを表現している。若いエネルギーがみなぎるこの新しい表現に、私は感動さえ覚えました。 新しいアーティストのソロを見る機会は中々無いので、とても楽しいフェスティバルでした。今回のように、若手にスポットライトを当てるフェスティバルがもっと増えると良いなと思います。 【プログラム】 Suma Joven 21-24 sep 2023 Gala-I Jueves, 21 de septiembre – 20:00 h ANDRÉS BARRIOS Piano en concierto (Sevilla) RAFAEL DEL CALLI Cantaor de Córdoba NAZARETH REYES Bailaora de Sevilla Gala-II Viernes, 22 de septiembre – 20:00 h JOSÉ FERMÍN FERNÁNDEZ Guitarra en concierto (Granada) LAURA MARCHAL Cantaora de Jaén JUAN TOMÁS de la MOLÍA Bailaor de Cádiz Gala-III Sábado, 23 de septiembre – 20:00 h MARCOS de SILVIA Guitarra en concierto (Jerez) LUCÍA BELTRÁN Cantaora de Huelva CLAUDIA "LA DEBLA" Bailaora de Granada Gala-IV Domingo, 24 de septiembre - 18:30 h BENITO BERNAL Guitarra en concierto (Huelva) JOSÉ "EL BERENJENO" Cantaor de Jerez LAURA FÚNEZ Danzaora de Madrid 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com(https://spanishwhiskers.com/?page_id=326)を主宰。 >>>>>
- 第12回CAFコンクール一次予選通過者が決定
(martes, 17 de octubre 2023) 来月本選が開催される第12回CAFフラメンコ・コンクールの一次予選通過者が発表されました。 <第12回CAFフラメンコ・コンクール 一次予選通過者(五十音順) > 石田 久乃 さん 和泉 冴英香 さん 稲田 晃子 さん 岡村 里奈 さん 小澤 明日美さん 上假屋 樹理奈 さん 河島 ティヤナ さん 鬼頭 幸穂 さん 久保田 晴菜 さん 幸田 愛子 さん 佐藤 陽美 さん 鈴木 時丹 さん 角谷 のどか さん 野上 裕美 さん 宮北 華子 さん 脇川 愛 さん 以上の16名が、来月行われる二次予選に出場します。 なお、二次予選・本選の観覧チケットはチケットぴあにて発売中。 未来の日本のフラメンコ界を担う若きダンサーたちの雄姿を、ぜひ現地で応援してください! [日程] 二次予選:2023年11月14日(火)15:30~ 北千住Theatre1010 本 選 :2023年11月30日(木)16:00~ 北千住Theatre1010 [チケット取扱] チケットぴあ [主催] 公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 住所:東京都港区芝3-16-13 MARUWAビル2階 連絡先:info@mwf.or.jp/ 03-5419-6513 財団サイトURL:https://mwf.or.jp コンクールサイトURL:https://mwf.or.jp/caf/1680 >>>>>
- 鈴木時丹、第12回エルスール財団新人賞を受賞!
(domingo, 5 de noviembre 2023) 一般財団法人エルスール財団主催による第12回エルスール財団新人賞(フラメンコ部門)に、フラメンコダンサー鈴木時丹さんの受賞が決定しました。 鈴木さんは静岡県浜松市出身の23歳。幼少期より舞踊家大塚友美さん(母)とギタリスト鈴木尚さん(父)の影響でフラメンコに触れ、高校卒業後に渡西。主にEl Torombo やPepe Torres らのもとでフラメンコの美学を学ぶと同時に、ヒターノ(ジプシー)たちの芸や生き様に魅了されフラメンコの道へ進むことに。 この度の贈賞理由について、選考委員を務める同財団代表理事の野村眞里子さんは昨年から今年にかけて様々なライブや舞台での鈴木さんの活躍ぶりに注目し、「冷静でありながら、熱量を感じさせる踊りは、今後ますます日本のフラメンコ界を盛り上げていってくれることだろう」と大きな期待を寄せています。 【エルスール財団HP】 http://elsurfoundation.com/ >>>>>
- スペイン発☆フラメンコ・ホットライン
(miércoles, 1 de noviembre 2023) 文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze 9月は秋らしくなったと思っていたら何故か10月に暑さがぶり返し、路線バスで冷房が入るほど。日本でも今年の暑さは長引いたようですが、半袖をしまうタイミングが見えません。セビージャは観光都市なのですが、例年以上に多いという観光客の中にはタンクトップにサンダルで闊歩している人も。 日本でも、京都などで問題になっているオーバーツーリズム。スペインでも短期滞在用アパートの増加で、市内中心部で賃貸住居が見つからない、見つかっても非常に高い、短期アパート滞在者がゴミを指定のところに捨てない、など色々問題が。セビージャも観光都市で、観光業に直接間接に携わっている人も多いので、観光客増加は嬉しい反面、問題も増加。フラメンコで言えばマドリード、セビージャに新しいタブラオができるなどして仕事の場は増えていますが、留学生の宿泊先の賃料が値上がりするなど、円安や航空運賃高騰とあいまって厳しい部分もありそうです。 【アンダルシア・フラメンコ】 [プロモーションビデオ] https://youtu.be/CdfgmuD8LxI?si=XWmSQL3srJFyjfEp これまでフラメンコ・ビエネ・デル・スール、フラメンコは南から、と言うタイトルで親しまれてきたアンダルシア州主催のフラメンコ公演シリーズ。今年から名前をアンダルシア・フラメンコと変えて、9月21日から10月7日まで週末の3日間、9公演が行われました。舞踊が3公演、カンテが4公演、ギターとピアノの公演がそれぞれ1公演、まだ17歳だという若手から還暦を過ぎたベテランのアントニオ・カナーレスまで、バラエティに富んだプログラムと言っていいでしょう。 そのうち8公演を見たのですが、個人的には今一番完璧な歌い手かもしれないと思わせるダビ・ラゴスのピアノ(アレハンドロ・ロハス・マルコス)とサックス(フアン・ヒメネス)とのトリオでの『デル・シレンシオ』、そしてピアニスト、ドランテスとスペイン系フランス人コントラバス奏者ルノー・ガルシア・フォンスの『パセオ・ア・ドス』が心に残りました。前者はフラメンコという言語で歴史上の出来事を歌いメッセージを伝えるだけでなく、ギター伴奏ではなく現代音楽的要素もあるピアノとサックスの伴奏ながら、いやだからこそ、ダビのフラメンコ性が際立つもので、後者はフラメンコにベースを置きつつ自由にはばたくそのスタイルが、イスラエル・ガルバンを思い出させました。そういえば前者の3人もイスラエルの共演者。やはりイスラエルは、現代フラメンコの象徴的存在なのかもしれません。 ドランテスとルノー・ガルシア・フォンス 舞踊では、カナーレスが魅せる間合いの妙や気合の一瞬、カンテではエストレージャ・モレンテが音響トラブルでマイクなしで歌ったプロらしさも印象に残ります。 アントニオ・カナーレスと共演者たち。左からダビ・デ・アラアル、踊り手マティアス・カンポ、歌い手マヌエル・デ・ラ・トマサ、カナーレス、エル・ガジ、パーカッション奏者パコ・ベガ 反面、アルヘンティーナや17歳の歌い手レジェス・カラスコはカンシオンのようでカンテの醍醐味を味わうことができなかった なお、この公演シリーズ、来年春に第二弾があるかも、とのこと。お楽しみに。 【セビージャギター祭】 10月3日から、セビージャではギターフェスティバルが開催されました。2010年に始まったということなので今年で第14回。1981年から開催されているコルドバのギター祭ほど大規模ではないけれど、ギター界にとっては重要なイベントの一つと言えるのではないでしょうか。元々はクラシックギターに特化したフェスティバルだったのですが、第4回でヘラルド・ヌニェスが出演し、以後、毎年フラメンコギターの公演も行われており、日本でもお馴染みのカニサーレスやダニ・デ・モロンらも何度か出演しています。 このフェスティバルの特徴の一つが、マイクを使わないこと。メイン会場は450席ほどのホールだし、クラシックなら当たり前なのでしょうが、フラメンコはマイクを使う方が普通。この同じホールで以前行われていたフエベス・フラメンコでもそうでした。昨年のビエナルでのギターソロのリサイタルシリーズもこの同じ会場でしたが、パーカッションやパルマなどの入らない全くのソロではあったけど、マイクはありました。なので、演奏する方はもちろんだと思うのですが、聴き手であるこちらにとっても新鮮な体験です。 それに加え、今年のプログラムでは前半がクラシック、後半がフラメンコというジョイントリサイタルも4公演あり、普段ほとんど聴く機会がないクラシックギターのソロを聴くことができたのも貴重な経験でした。それはきっと他の聴衆にとっても同じことだったでしょう。私が観ることができた10月12日の公演は、超絶テクニックのクラシックギタリスト、キューバ出身のザルツブルグ音楽院教授マルコ・タマジョと、フラメンコファミリーに生まれ育ち、ギタリストと言うよりもフラメンコなパコ・フェルナンデスのジョイントコンサートはギターという楽器の幅広さを感じさせてくれました。繊細な銀細工のようなマルコの演奏とパコの太い音。全く違うアーティストがギターという楽器でつながっている面白さ。14日の公演は今年唯一のフラメンコのみの公演で、ペドロ・マリア・ペーニャがギターソロ3曲のあと、ルイス・エル・サンボを迎えて歌伴奏で3曲。ルイスの昔ながらのカンテが耳に心地よく、1時間弱と短くも充実した公演でした。 【ヘレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナル】 ヘレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナルの受賞者が10月11日、以下の通り発表されました。なお、各人の紹介コメントは志風です。 カンテ/ビセンテ・ソト 1954年ヘレス生まれ。ヘレスの巨匠故ソルデーラの次男。タブラオなどで活躍。これまでに10枚以上のソロアルバムがある。 ©︎ Kyoko Shikaze/Caja Madrid 舞踊/エバ・ジェルバブエナ 1970年ドイツ生まれのグラナダ育ち。2001年舞踊国家賞。現代演劇や舞踊とコラボレーションした作品など意欲的な創作活動で知られる。ソレアが絶品。 ©︎ Kyoko Shikaze/en Jerez, 2019 ギター/ラファエル・リケーニ 1962年セビージャ生まれ。10代でコルドバのコンクール優勝、24歳で出したデビューアルバム が絶賛され、ソリストとしての名が不動に。健康上の問題を経てエンリケ・モレンテらの伴奏で復活。 ©︎ Kyoko Shikaze/en La Unión, 2010 マエストリア(巨匠賞)/カルメン・リナーレス 1951年ハエン県リナーレス生まれ。若くしてマドリードに出、タブラオなどで活躍。80年代からソロで注目され、 96年のアルバム『アントロヒア・デ・ラ・ムヘル・エン・エル・カンテ』でその名を不動のものとした。 普及/シルクロ・フラメンコ・デ・マドリード マドリードのアフィシオナードたちによる文化協会で、第一線で活躍するアーティストのライブなど、毎月複数のイベントを行っている。会長はアントニオ・チャコンやマヌエル・トーレのSP本でも知られるカルロス・マルティン・バジェステル。 研究/ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボ 1948年マラガ県アルチドーナ生まれ。詩人、フラメンコ研究家としてペリコンやティア・アニカ、エンリケ・エル・コホらの聞き語りや昔の新聞からフラメンコ草創期の姿を浮き彫りにした本などがある。セビージャのビエナル誕生から長い間監督を務めた。 名誉賞/ロメリート・デ・ヘレス 1832年ヘレス生まれ。舞踊伴唱を得意とし、マティルデ・コラルらの伴唱を長く務めた。ヘレスのカンテ黄金時代を生き、歴史に残る名盤『カンタ・ヘレス』にも参加している。 また、ヘレスのアーティストを対象としたコパ・ヘレスは カンテ/ルイス・エル・サンボ 1949年ヘレス生まれ。パリージャやテレモート、ソルデーラらの血筋。魚屋をしていたが52歳からカンテに専念。昔ながらのヘレスのカンテを今に伝える貴重な存在。 ©︎ Kyoko Shikaze /en Sanlúcar , 2010 ギター/アルフレド・ラゴス 1971年ヘレス生まれ。10代からプロとして活躍。イスラエル・ガルバンらへの舞踊伴奏で頭角を表し、エンリケ・モレンテらの歌伴奏も務める。2020年ビエナルのギター賞受賞。 ©︎ Kyoko Shikaze/en Sevilla, 2019 舞踊/ヘマ・モネオ 1991年ヘレス生まれ。父はギタリスト、母はトルタやマヌエル・モネオらの妹。13歳で地元のタブラオでプロデビュー。以後、タブラオやフェスティバルなどで活躍。ファルキートらとも共演している。 ©︎ Kyoko Shikaze/Fiesta de la Bulería, Jerez 2018 なお、授賞式は11月4日ヘレスのアタラジャ博物館で行われるそうです。 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- 小林亮「Rio de la Frontera」発売記念コンサート開催!
(viernes, 15 de septiembre 2023) フラメンコギタリストの小林亮さんが今年2月から3月にかけてスペイン・ヘレスでレコーディングを行い、それらの楽曲を収録したCDが発売されることになりました。 この新譜発売を記念して、福岡・大阪・東京の3都市でコンサートが開催されます。共演には、レコーディングにも参加してくれたヘスス・メンデス、アンドレス・ペーニャ 、アネ・カラスコの3名を招聘し、ヘレスの雰囲気を存分に堪能できるステージが楽しめそう。 なお、東京公演のS席と大阪公演は完売していますので、良い席をご希望の方はお早めのご予約を! 【新譜CD情報】 タイトル:「Rio de la Frontera」 発売:2023年10月10日 参加アーティスト: 歌 ミゲル・フニ、ヘスス・メンデス、ダビ・パロマール 踊り(足音) アンドレス・ペーニャ パーカッション アネ・カラスコ パルマ マヌエル・カンタローテ、ディエゴ・モントージャ 【コンサート情報】 小林亮「Rio de la Frontera」発売記念コンサート 2023年 ★10月29日(日)福岡 ティエンポホール 開場17時 開演18時 全席指定(1ドリンク付)10,000円 CD付12,500円 ★10月31日(火)大阪 カサ・グロリア(※完売) 開場19時 開演19時30分 全席指定 10,000円 CD付12,500円 ★11月3日(金・祝)&4日(土)東京 ガルロチ 開場18時 開演19時 全席指定(1ドリンク付) S席11,000円 CD付13,500円(※3日・4日ともに完売) A席10,000円 CD付12,500円 ※S席は中央4列目まで及び左右二列目まで。それ以外はA席です。 ※CDは定価3,000円です。 [出演] ギター 小林亮 歌 ヘスス・メンデス (Jesús Méndez) 踊り アンドレス・ペーニャ (Andrés Peña) パーカッション アネ・カラスコ (Ané Carrasco) チケットのお申し込みの際は以下の内容をお知らせください。 ①会場&月日 ②席種&枚数 ③お名前 ④メールアドレス及び電話番号 ⑤チケットの送付先住所 [問い合わせ&申し込み先] メール info@canasta-xeres.jp HP https://www.canasta-xeres.jp/contents/rio/ ※申し込み後3日経っても返信が来ない場合は、再度ご連絡をお願いします。 ※電話による問い合わせ&申し込みは行っておりません。 >>>>>
- マルコ・フローレス&オルガ・ペリセ《PASO A DOS》
(jueves, 26 de octubre 2023) 2015年のヘレス・フェスティバルで発表されて以来、世界各地で上演され観客を魅了してきたマルコ・フローレスとオルガ・ペリセによる舞台作品《PASO A DOS》が、このたび日本で初上演されます。カンテには今年のヘレス・フェスティバルでペーニャ協会による伴唱賞を受賞した人気のヘスス・コルバチョ、ギターにホセ・トマ・ヒメネスを迎え、日本だけのスペシャルバージョンを披露してくれるとのこと。 第一線で活躍する4人のアーティストによる素晴らしい公演を、ぜひライブでご堪能下さい! 早割先行予約は11月1日(水)よりスタート。11月30日(木)まで割引価格でゲットできるので、ご予約はお早めに! 【Paso A Dos Espectáculo Flamenco】 日程:2023年12月20日(水)~12月28日(木) (※12月23日(土)・24日(日)を除く) 時間:開場18:00 開演19:15 会場:地中海料理&ワイン Showレストラン ガルロチ 東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館6F (東京都/新宿三丁目:丸ノ内線、副都心線、都営新宿線) 出演: 〈B〉Marco Flores、Olga Pericet 〈C〉Jesús Corbacho 〈G〉José Tomás Jiménez 料金:全席指定、1プレート&1ドリンク付き、税込価格 <早割先行予約> 11月1日(水)10:00~11月30日(木)23:59 プレミアムシート15,500円 S席12,500円 A席10,500円 学生席7,500円 <一般予約> 12月1日(金)00:00以降 プレミアムシート17,000円 S席14,000円 A席12,000円 学生席9,000円 申込み/問合せ: https://mail-to.link/m8/5vw3bo 公式サイト: https://flamencolores.com/2023/10/19/paso-a-dos-en-japon-202312/ 主催:Flamencolores >>>>>
- フラメンコ・イベントカレンダー【2023年版】
(martes, 24 de octubre 2023) フラメンコの本場スペインでは、一年を通して大小さまざまなフェスティバルやコンクールが各地で開催されています。またスペインのみならず、近隣のフラメンコ愛好国でも有名なイベントが行われています。 それらの特色や、さらには素晴らしいアーティストに贈られる賞について、30年以上スペインで活動を続けるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子さんに解説していただきました。 スペインや海外への旅行を計画するときには、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか? 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 《1月》 ●ニームのフェスティバル(フランス) https://theatredenimes.com/festival-flamenco/ 1991年から始まったフランスのフラメンコ祭。毎年1月中旬、フランス南部、ローマ時代の遺跡で知られるニームの街で開催されている。イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナ、エバ・ジェルバブエナといった一流アーティストが毎年出演し、マスタークラスや講演、展覧会なども行われる。現代舞踊先進国フランスという土地柄もあるのか、伝統的なものより現代的なアーティストの出演が多い印象。地元フランスのアーティストの公演もある。 ●オランダのビエナル(オランダ) https://flamencobiennale.nl 2006年11月に始まったオランダのビエナル。アムステルダム、ユートレック、ロッテルダムなどで公演を行う。2011年からは1月開催に。 当初はディエゴ・カラスコやモライートなどヘレスのアーティストの出演が多く、ドキュメンタリー映画『エル・カンテ・ブエノ・ドゥエレ』も制作された。 【動画】 https://youtu.be/sy1CON72lac?si=05ZJ86n3CxwNodZ7 また、フラメンコとクラシックやワールドミュージックなど、他ジャンルのミュージシャンとの共演での舞台をプロデュースしたりするなど意欲的なプログラムを展開している。 パンデミックの影響で2021年は秋の開催となり、22年も12月にいくつかの公演が行われた。2023年は1月末から2月と12月に、そして24年の1月末に開催されるという。ビエナル(=2年に1回)という言葉がもはや無意味になっている感がある。 《2月》 ●ヘレスのフェスティバル www.festivaldejerez.es 1997年にカディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで始まった、フラメンコとスペイン舞踊に特化したフェスティバル。当初は4月に開催されていたが、2001年から2月末から3月にかけての2週間に変わった。 最大の特徴は第一線の舞踊家たちによる、初心者からプロまでを対象とした短期クラス。受講者はメイン会場であるビジャマルタ劇場公演を無料で鑑賞できることもあり、世界中からフラメンコ練習生たちが集まってくる。 劇場公演にも若手からベテランまで幅広い層のアルティスタが出演し、伝統的なフラメンコ舞踊からコンテンポラリー風のもの、アカデミックなスペイン舞踊等とバラエティにとんだプログラムをみせる。舞踊以外でも小さな会場でのカンテやギターのリサイタル、入場無料のペーニャ公演等、魅力的な演目を目当てに、毎年やってくるファンや関係者も多い。それを見込んでフェスティバル主催以外の短期クラス(舞踊、ギター、カンテ)や公演、イベントなども多く行われている。これまでに鍵田真由美/佐藤浩希、小島章司の日本人主演公演も行われている。 Vimeo チャンネル https://vimeo.com/festivaldejerez 2011年からの公演のダイジェスト映像視聴可能 ●タコン・フラメンコ祭 https://www.taconflamenco.com 2012年に始まったフラメンコ舞踊祭。毎年、アンダルシアの日2月28日近辺に行われる。2016年はアンヘリータ・バルガス、18年はマノロ・マリンというようにベテラン舞踊家らへのオマージュが行われている。2018年には林結花、萩原淳子が出演している。 《4月》 ●ビエナル・デ・マラガ http://www.malagaenflamenco.com/ 2005年にマラガ県の主催でマラガ・エン・フラメンコとして始まり、第2回目の2007年には第一線のアルティスタをそろえ、1ヶ月に渡り開催。その後6年間中断し2013年に復活、以前からあるフェスティバルなども取り込み、地元アーティストを中心に、半年にわたる期間、ペーニャなどでの公演や展覧会なども含んだので本来の意味のフェスティバルとは少々違うかもしれない。2021年は7月から9月、23年は4月から5月と短い期間での開催に戻ったようだ。 YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@MalagaEnFlamenco 《6月》 ●ポタヘ・ヒターノ http://www.potajegitano.com セビージャ県ウトレーラで1957年に始まったスペインで最も古いフラメンコ・フェスティバル。毎年6月に開催される。もともとはキリスト像の信者会で豆のシチュー、ポタヘを食べていたときにフラメンコの歌が始まったのが最初とされる。ここをお手本にモロン・デ・ラ・フロンテーラのガスパチョ、レブリーハのカラコラー等が始まったといわれる。毎年フラメンコのアルティスタや有名人などへのオマージュを行い、多くの観客を集める。 ●アルグルグー http://www.arahal.es/ セビージャから東へ45キロ、人口2万の町で2003年に始まった比較的新しいフラメンコ・フェスティバル。グルグーという名はこの地ゆかりのニーニャ・デ・ロス・ペイネスの代表曲にちなんだもので、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスの思い出に、と副題がついている。1週間弱に渡って公演や講演、展覧会などが開催されるが、メインとなるのは金曜土曜の公演。多くのアーティストが一夜に登場する伝統的なフェスティバルの形ではなく、1日の公演に出演するのは2人で野外公演にも関わらず劇場公演のようにじっくりとみせるのが特徴。毎年6月中旬に開催される。 ©︎Kyoko Shikaze /2009年のフェスティバルで歌うミゲル・ポベーダ。今は野外ではなく劇場公演 ●アルバカーキ・フラメンコ祭(アメリカ) https://ffiabq.org/ 1987年に始まったというから現在も続いているスペイン以外の国で開催されるフラメンコ祭の中では最も長い歴史を誇るアルバカーキ・フラメンコ祭。スペイン人アーティストたちにはスペイン語読みの「アルブルケルケ」と呼ばれて親しまれている。アメリカのニューメキシコ、アルバカーキの、ナショナル、インスティートゥート・オブ・フラメンコとニューメキシコ大学が主催するこのフェスティバル、毎年スペインから第一線で活躍するアーティストを招き、公演だけでなくクラスも行う。 YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@NationalInstituteofFlamenco ●ラ・ノチェ・ブランカ・デル・フラメンコ http://www.lanocheblancadelflamenco.cordoba.es コルドバの町の広場など市内各所で夜を徹してフラメンコ公演があるという世界で唯一のこのイベントは2008年に始まった。公演は入場無料(一時一部有料になったこともあった)ということもあって、多くの市民があちこちの公演を観て歩く。有名なアルティスタだけでなく地元のアルティスタによる公演も開催される。毎年6月中旬の週末の開催。2010年には萩原淳子らの日本人クアドロも出演した。 ©︎Kyoko Shikaze /2010年のクアドロ出演者。誰でしょう ●グラナダ国際音楽舞踊祭 http://www.granadafestival.org/ 1952年スペイン外務省と文化省の後押しで始まった、スペインで最も古い歴史を誇る音楽舞踊祭。毎年6月から7月にかけて3週間に渡って行われる。中心となるのはクラシック音楽とバレエだが、スペイン舞踊/フラメンコも第2回より必ずプログラムされている。アルハンブラ内のヘネラルフェ野外劇場、カルロス5世宮殿、アラヤネスの中庭をはじめ、サン・ヘロニモ修道院など市内の劇場だけでなくモニュメントが会場になるのも魅力で、世界中から観客が訪れる。またメインのプログラムのほかにもFEX の名で、グラナダ市内及び県内でこども向きの公演なども含むより幅広い公演も行われている。 ©︎Festival de Granada/アラヤネスの中庭での公演。猫も聴いている YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@festivaldegranada3176 《7月》 ●コルドバギター祭 http://www.guitarracordoba.com/ 毎年7月上旬にコルドバで行われるギター祭。1981年にコルドバ出身でロンドン在住のギタリスト、パコ・ペーニャの主宰で開始されたものが、その後コルドバ市の主催と変わったもの。グラン・テアトロ、ゴンゴラ劇場、アセルキア野外劇場等を会場にフラメンコ、クラシック、ロック、ジャズと幅広いジャンルのギター音楽のコンサートを行うと同時に、トップアーティストたちによる短期クラスを開講。クラシックギターだけでなく、フラメンコもギター、バイレ、カンテのクラスが行われる。 ©︎ Kyoko Shikaze/2010年のパコ・デ・ルシア公演アンコール。踊っているのはカルペータ YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@GUITARRACORDOBATV ※2013年までで、それ以後の更新はない。 ●カラコラー http://www.lacaracolalebrijana.es 毎年7月に開催されるレブリーハのフラメンコ・フェスティバル、カラコラー。1966年秋に始まったこちらのフェスティバルも、もともとは1日だけのものだったが今は1週間に渡り、コンサートや講演、展覧会が開催されるようになった。地元出身のアルティスタが出演することが多い。2019年には萩原淳子が出演している。 YouTube チャンネル (※フェスティバルオフィシャルではないがレブリーハのフラメンコ専門チャンネル) https://www.youtube.com/@1971apr ●ベラーノス・デ・ラ・ビジャ http://www.veranosdelavilla.com マドリードの夏の夜を彩るフェスティバル。主催はマドリード市。クラシックからポップス、バレエ、ジャズ、フラメンコと様々な公演が行われる。90年代にはレティロ公園でフラメンコ公演が行われ、その後もコンデ・ドゥーケ、サバティーニ公園などの野外特設劇場での公演が中心となっている。 ●フエベス・フラメンコス http://enriqueelmellizo.com/ カディスのペーニャ、エンリケ・エル・メジーソが主催する、7月下旬から8月に渡る夏の木曜の夜の公演。バル アルテ・デ・ラ・カンデラリアを舞台に、ベテランから地元の若手までカンテとバイレで毎週、数人のアルティスタが登場する。 ●フラメンコ・フェスティバル(アメリカ、イギリス) http://www.flamencofestival.org 2001年アメリカ、ニューヨーク、ワシントン等を舞台に始まった“フラメンコ・フェスティバル”。スペインからのプロデュースで04年からはロンドンでも始まり、東京、パリ、モスクワなどで開催されたことも。ニューヨークは3月から4月、ロンドンは7月の開催。舞踊中心のプログラムだがギターやカンテのコンサートも。また、フェスティバルがプロデュースする作品もあり、ヘレスのフェスティバルで上演されたこともある。 YouTube チャンネル https://www.youtube.com/user/flamencofestivalorg ●モン・ド・マルサン フラメンコ芸術祭(フランス) https://festivalarteflamenco.fr/ フランス南西部、スペイン国境からもそう遠くない山間にある人口3万人ほどの街で行われる、海外フラメンコ祭の中では屈指のフェスティバル。1989年にスペイン国外で最も大規模なフラメンコ・フェスティバルを、という思いで始まったという通り、毎年、第一線で活躍するアーティストが登場する。これまでにパコ・デ・ルシアやマヌエラ・カラスコ、エバ・ジェルバブエナらも出演している。初期はウトレーラ、レブリーハのアーティスト中心のプログラムを組むなど、ニームに比べるとどちらかというと伝統的なタイプのアーティストの公演が多かった印象だが、近年はイスラエル・ガルバン(23年は怪我のため出演できず、ヘスス・カルモナが公演)をプログラムに入れるなど、より幅広いプログラムになっているようだ。 《8月》 ●カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル http://www.fundacioncantedelasminas.org ムルシア州のラ・ウニオンで毎夏、8月初旬に開催される。かつて鉱山の町として栄えたこの町で公演した故フアニート・バルデラマが自分の公演でタランタを歌おうとした時、地元の人がその美しさを忘れていることに気づいたことがきっかけで、1961年にカンテ・デ・ラス・ミーナス(=鉱山の歌)といわれるジャンルのカンテ・コンクールとして始まった。3回目から8月開催となり、やがて審査中に舞踊団などが公演するようになり、その後、コンクールとは別の日に公演が行われる今の形になっていった。 1983年にギター部門が、94年に舞踊部門、2009年にギター以外の楽器部門も新設され、現在では11日間に渡り開催、その最後の4日間がコンクール。最終日の決勝はテレビで全国中継されたこともあるなど、広く一般にも注目されている。 そのコンクールからはマイテ・マルティン、ミゲル・ポベーダらが巣立ち、公演では故パコ・デ・ルシアをはじめ、サラ・バラスやエストレージャ・モレンテといった人気スターやスペイン国立バレエ団など大物が数多く出演する。日本人ではかつて小松原庸子が開会宣言をし、舞踊団公演も行われたほか、コンクールにも何人かの日本人が出場している。 ©︎ Kyoko Shikaze /2009年コンクール決勝での井上圭子。これまでに平富恵、南風野香、丹羽暁子、石川慶子らが準決勝で踊っているが、決勝に進んだのは井上だけ YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@CanteDeLasMinas/featured 古い映像もたくさん。現在活躍中のアルティスタの若き日も見られます。 ●ヘレスのブレリア祭 http://www.jerez.es 1967年に始まった、ブレリアの故郷、カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで開催されるフラメンコ祭。ブレリア祭り、というその名からブレリアを歌い踊る祭りと誤解されることもあるが、決してブレリアに特化したフェスティバルではない。ただし、ブレリアを歌い踊る地元のアルティスタによるクアドロが出演したり、スター格もブレリアを歌ったりなどする。長らく闘牛場が会場だったが14年はマメロン広場で、入場無料で開催された。以降、アルカサルやアラメーダなど開催場所は何度か変わっているし、以前は毎年収穫祭期間中の9月の第一土曜日の開催だったものが8月中旬、3日間にわたっての開催となり、それぞれ若手、国際、ヘレス、のテーマのもと行われる。2018年にはヘレス・コン・ハポンというテーマで小島章司、鍵田真由美、佐藤浩希、森田志保、今枝友加らもヘレスのアーティストとの共演で出演している。 なお、この年からブレリア祭とビエルネス・フラメンコス(8月にヘレスで、その名の通り金曜日に毎週行われるフラメンコ公演。ヘレスのアルティスタの幅広さ、奥深さが感じられるプログラム。2023年はアタラジャ庭園で行われた)、フラメンコ以外のポピュラーも含むノチェス・デ・ボエミア、7月考古学博物館でのインプロ公演(フラメンコもあり)MIMAなどの公演シリーズをまとめてカロー・フラメンコというイベント名をつけている。 ©︎ Kyoko Shikaze /2018年8月24日 ブレリア祭、ヘレスと日本。アンコールにて YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@flamencodejerez_ ヘレス市主催のフラメンコのイベントの映像が盛りだくさん。日本人公演のビデオも https://youtu.be/kRkNc5Pveho?si=qXWhNx2sTgxXsjrV ●フラメンコ・オン・ファイア https://www.flamencoonfire.org 2023年で10年目となった北スペイン、パンプローナで8月末に開催されるフラメンコ・フェスティバル。牛追い祭で有名なこの街はフラメンコギターの巨匠サビーカスの生まれ故郷ということで、アメリカ在住だった彼のアルバムのタイトルからこの名となった。1週間に渡り、大劇場公演を中心にホテルでの公演、無料で聴ける広場のバルコニーからのライブ、講演など様々な催しが開催される。その充実したプログラムで、歴史は浅くとも今やスペインでも屈指のフェスティバルと認識されている。 YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@FlamencoOnFire https://youtu.be/etaAtO-BYOA?si=0ILq9s7tI0UpPpkc 《9月》 ●アントニオ・マイレーナ・カンテ・ホンド祭 https://festivalmairena.com 20世紀中盤のフラメンコを支えた歌い手アントニオ・マイレーナの生まれ故郷セビージャ県マイレーナ・デル・アルコールで毎年9月に開催されるフラメンコ祭。メインとなるのは最終日、土曜日のガラ公演だが、その前日にはカンテ・コンクールの決勝があり、それまでも公演や講演、展覧会などが1週間に渡って開催される。1962年から行われている古い歴史を誇るもののひとつ。 YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/@festivaldecantejondoantoni575 ●ビエナル・デ・フラメンコ http://www.labienal.com 1980年4月にセビージャ県のペーニャ協会の後押しにより、セビージャ市の主催で始まった世界最大のフラメンコ・フェスティバル。ビエナルとは2年に1度という意味であり、以来偶数年に約1ヶ月に渡り開催されている。第2回目からは秋の9月開催となった。90年までは毎回、カンテ、バイレ、ギターそれぞれを主役にし、第一線で活躍中のプロによるヒラルディージョのコンクールも行われた。セビージャで万博が行われた92年は8作品のみというイレギュラーな形だったが、結果としてこれ以降アーティストが提案する作品を監督が選ぶという形が定着し、それが他のフェスティバルのお手本となっていった。 一流アーティストが数多く出演するのでフラメンコの見本市的意味もあり、世界中から関係者やファンが集まる。また小松原庸子、小島章司を始め日本のフラメンコ・アーティストたちも複数出演している。 YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/@labienal/ ※2020年フラッシュモブ振り付けまでで、その後の更新なし。 《10月》 ●シウタ・フラメンコ http://ciutatflamenco.com/ 1994年バルセロナ旧市街のある地区で始まったシウタ・ベリャ・フラメンコ祭を引き継ぐ形で2012年に始まったフェスティバル。毎年5月下旬にバルセロナの舞踊の殿堂メルカ・デ・フロルを会場に行われ、フラメンコ以外のジャンルとの共演や外国人アーティストの起用、またパフォーマンスの実験的な作品も取り上げるなど多角的なアプローチをしていた。2018年以降は舞台が様々なホールやライブハウスなどに変わり、コロナ禍で20年21年は10月の開催。30年目の2023年も10月の開催となった。これまでに小島章司や中田佳代子も出演。 ●スーマ・フラメンカ http://www.madrid.org/sumaflamenca 2006年に始まった、マドリード州によるフラメンコ・フェスティバル。メイン会場といえるのは2009年に落成した州立のカナル劇場だが、ほかの市内の劇場やエル・エスコリアルなど州内の町の劇場での公演も行われる。また、マドリード市内にあるタブラオでは期間中特別プログラムが組まれることもある。2019年までは毎年6月の開催だったが20年は12月になり、21年以降、10月から11月にかけての開催となった。日本人では2007年に瀧本正信が出演している。 ●ミステーラ・フラメンコ祭 https://turismo.lospalacios.org/articulo/76/29/festival-flamenco-de-la-mistela セビージャから南へ22kmの農業の町、ロス・パラシオス・イ・ビジャフランカ市とその地のペーニャ“エル・ポソ・デ・ラ・ペーナ”の共催によるフェスティバル。2020年から10月の開催となったが、かつては毎年6月上旬に開催されていた。 この町の名産のひとつである甘口ワイン、ミステーラの名を冠し1973年に始まった。その後、規模を大きくし1週間に渡るものとなった。2011年には経済危機の影響で1年休止されたが、翌年復活。2014年は水曜から土曜までの劇場公演のほか、写真展なども開催。また注目の若手アーティストにベネンシア-フラメンカ賞を贈り、授賞式と合わせそのアーティストのリサイタルを開いている。これまでにマヌエル・バレンシア、パロマ・ファントバ、ホセ・バレンシアらも受賞し、最近では21年レジェス・カラスコ、22年アゲダ・サアベドラ、23年はアントン・ヒメネス(ピアノ)が受賞している。 《11月》 ●コルドバのコンクール https://teatrocordoba.es/cnaf/ 1956年に始まった最も古い歴史を誇るフラメンコ・コンクールで、3年に1度の開催。正式名はコンクルソ・ナショナル・デ・アルテ・フラメンコという。以前は歌、舞踊、ギターそれぞれのジャンルが、いくつかの曲目ごとに細かく部門が分かれ、それぞれアルティスタ名のついた賞が贈られていたが、2010年に大幅に規則が改変され、現在は歌、舞踊、ギターに一人ずつの優勝者のみとなった。現在は11月の開催で、コンクールの前後にはフラメンコ公演がグラン・テアトロでいくつか行われるほか、予選、決勝とも観覧可能。 【フェスティバル以外の定期的なフラメンコ公演】 一定の期間と場所で公演が集中して行われるフェスティバルのほかにも、より長期に渡り行われるシクロとよばれるものがある。 アンダルシア州によるフラメンコ・ビエネ・デル・スールは1996年にセビージャのセントラル劇場で始まったフラメンコの公演シリーズ。現在はセビージャ以外でもグラナダのアルハンブラ劇場、マラガのカノバス劇場など各地で行われている。2023年からはアンダルシア・フラメンコと名前が変わったが現在も継続中。2023年は9月の週末に10公演とロシオ・モリーナとの対話会などがセントラル劇場などで行われた。 また同じくアンダルシア州の主催でマドリードの国立音楽堂の室内楽ホールでアンダルシア・フラメンカ(https://www.cndm.mcu.es/ciclo/andalucia-flamenca)シリーズも秋から春にかけて月1回行われている。 そのほか、セビージャの銀行カハソルの財団主催によるフエベス・フラメンコス(https://fundacioncajasol.com/tag/jueves-flamencos/)はその名の通り、木曜日に行われるフラメンコ公演で2001年に始まった。会場はセビージャの中心部にあるホアキン・トゥリナ・ホールだったが、閉鎖に伴い市役所側のカハソル劇場に変更された。 スペイン北部バスク地方のビルバオでも、BBK という銀行によるフラメンコの公演シリーズBBK フラメンコ(https://salabbk.bbk.eus/)が行われている。 【フラメンコの主な賞】 ◎プレミオ・ナショナル(スペイン文化省) プレミオ・ナショナルという名の賞は、フラメンコ関係でもコルドバのコンクールでの賞やヘレスのフラメンコ学会の賞などあまたある。が、中でも「国家賞」と訳されるものはスペイン文化省が毎年贈るもので、文学、演劇、造形美術など様々な分野のものがあるが、フラメンコに関係するのは音楽と舞踊であろう。音楽ではエンリケ・モレンテ、マノロ・サンルーカル、舞踊ではアントニオ・ガデス、クリスティーナ・オヨス、ロシオ・モリーナらが受賞している。 ◎プレミオ・ナショナル(フラメンコ学会) 1958年、フラメンコ学者らによってヘレスに創立されたフラメンコ学会も、1964年から80年までは年1回、以後は不定期に研究書やアルティスタに賞を贈っており、こちらもプレミオ・ナショナルという。ナショナルという言葉は国家の、という意味とともに国内の、国民の、という意味もあるので、こちらは「国内賞」とでも訳すべきかと思われる。なお、フラメンコ学会と呼ばれるものはコルドバ、グラナダ、セビージャ大学にもある。 ◎マックス賞 1998年にスペイン著作権者協会のイニシアティブで始められた舞台芸術の賞。アメリカのトニー賞や英国のローレンス・オリビエ賞などを参考にしたもので、演劇やミュージカル、舞踊を対象にする賞。アントニオ・ガデス、エバ・ジェルバブエナ、イスラエル・ガルバンら多くのフラメンコ舞踊家たちも男女別のダンサー部門、振付部門、舞踊作品部門などで多数の賞を受賞している。 ◎ロルカ賞 アンダルシア舞台芸術アカデミーによる舞台芸術を対象とした賞で、2013年に始まった。舞踊部門では振付を除いてコンテンポラリーとフラメンコ部門が分けてあり、フラメンコ作品、女性フラメンコ舞踊手、男性フラメンコ舞踊手の3つの賞がある。 ◎タリア賞 2023年に第一回の授賞式が行われたスペイン舞台芸術アカデミーによる賞。舞踊部門で、男性舞踊手、女性舞踊手、舞踊作品、振付、オリジナル舞踊音楽の部門があり、第一回は男性がイスラエル・ガルバン、女性がロシオ・モリーナ、作品がマリア・パヘス『デ・シェヘレサデ』という結果だった。 ◎フラメンコ・オイ賞 2000年に当時「フラメンコ・オイ」というビデオ・マガジンを企画販売していたジャーナリスト、アルフォンソ・エドゥアルド・ペレス・オロスコによって創設された賞で、フラメンコ関係の批評家/ジャーナリストらの投票によって賞が決定する。歌やギターは基本、その年度に発表されたCDを基準にして選ばれるが、書籍やプロモーション、また男女別の舞踊家に対する賞もあった。2015年頃が最後になったようだ。 ◎コンパス・デル・カンテ賞 セビージャのビール会社クルスカンポの財団がフラメンコの功労者に贈る賞。1984年から2002年までは毎年、以後は不定期に授与されている。これまでの受賞者はピラール・ロペス、フェルナンダ・デ・ウトレーラ、パコ・デ・ルシアらいずれもフラメンコの歴史に名を残すアルティスタばかりだ。2019年のマヌエラ・カラスコ以降、行われていない。 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- 今枝友加カンテソロライブ/Flamenco fan LIVE
(viernes, 20 de octobre 2023) 2023年10月15日(日) スペインバル 青山TORO(東京) 文・写真/金子功子 Texto y fotos por Noriko Kaneko 美味しい食事やお酒を味わいながら、迫力ある生のフラメンコライブを多くの方に楽しんでほしい!との思いから企画しました、当サイト主催による«Flamenco fan LIVE»。 その門出を飾る第1回目のライブに出演していただいたのは、踊り手としても歌い手としても優れた技術と豊かな表現力で多くのファンから人気を集めるアーティスト、今枝友加さんです。 今回はカンテ(歌)のソロライブで、共演には今枝さんがカンテの師と仰ぎ、またギタリストとしても熟練の技と味わい深い音色で古き良き時代のフラメンコギターを今に受け継ぐ巨匠、エンリケ坂井さんを招きました。 店内は満席のお客様で賑わい、名古屋や関西、さらにははるばる九州からこのライブのために駆け付けてくれた人もいました。 ライブは休憩をはさんでの2部制。黒地に赤みの強いオレンジ色の刺繍とフレコが鮮やかなマントンをまとった今枝さんが舞台に登場し、クラシカルなギターサリーダをたっぷり聴かせてから歌が始まります。1曲目はブレリア・ポル・ソレア。円熟味を増した深みのある歌声と粘りのある歌い回しで、トマス・パボンやニーニョ・グローリア、チョサ・デ・ヘレスなど名だたるカンタオールの曲を次々と披露します。力強く、それでいて緩急の付け方も軽妙で、メリハリも気持ちいい。終盤にかけて盛り上がると、燃えるような魂の震えが伝わってきます。 MCでは、エンリケさんとの共演に至った経緯として、当時月刊パセオフラメンコ編集長の小山雄二氏がこのご縁をつないでくれたというエピソードを披露し、これからもカンテライブをどんどんやっていきたいと思いを語りました。 続いての曲はペーナ・イーホ(El Pena Hijo)のマラゲーニャ。かつての時代を感じさせる郷愁を誘うようなギターの旋律と、丁寧に音をつなげてレトラ(歌詞)に込められた嘆きを伝える歌声に聴き入ってしまいます。 ニーニャ・デ・ラ・プエブラ(Niña de la Pebla)のミロンガはイダ・イ・ブエルタの曲種で、彼女の切なさや悲しみを心を込めて歌い上げました。 1部の最後の曲はニーニャ・デ・ロス・ペイネス(Niña de los Peines)のロルケーニャ(※ロルカが発掘した民謡)。ブレリアスタイルの曲で、エンリケさんが次々に繰り出す多彩なファルセータもテンポが小気味いい。今枝さんの歌い回しも軽快で勢いがあり、原曲が持つ細かいこだわりやエッセンスをも汲み取り、心が沸き立つようなカンテを楽しませてくれました。 2部の始まりはギターソロのグラナイーナ。繊細に歌うようにゆったりと奏でられる旋律から、アンダルシアの情景が目に浮かぶよう。その土地の匂いまで感じさせるような味わい深い音色が、心に染みわたってきます。 演奏が終わり、衣装を替えた今枝さんが登場。黒のツーピースに合わせて腰に巻いた白地に花模様のシージョ(ショール)が、民族調で愛らしい。 1曲目はタンゴ・デル・ピジャージョ。踊りの伴唱で聴きなじみのある曲ですが、それは踊りのためのバージョンだそうで、今回はカンテのためのバージョンを聴かせてくれました。元歌としたのはアンヘル・デ・アロラ(Ángel de Álora)による音源で、前回歌った時のことを受けて今回はそのリベンジ的なつもりで取り組んだと言います。ゆったりと古き良き時代を感じさせるメロディーで、そのカンテの魅力をたっぷり味わわせてくれました。 続いてヘレスの歌い手ニーニョ・グローリア(Niño Gloria)のファンダンゴを、チコ(chico)とグランデ(grande)の2種類を披露。カンテファンにはうれしい通好みの選曲に、今枝さんならではのこだわりとおもてなしの気持ちが感じられました。 最後はブレリアで、フィエスタのような楽しい演奏でライブを締めくくりました。そしてアンコールは無伴奏のデブラ。自分の思いを届けるかのように、高く突き抜けるような澄んだ歌声が場内に響き渡りました。 終演後は、観客同士で知り合いも多く、あちらこちらでおしゃべりの花が咲き和やかムードに。至福のひとときを共に楽しみ、だれもが幸せそうな笑顔を浮かべていました。次回の開催を望む声も多く寄せられ、主演の今枝さん本人も再演に意欲を示してくれました。 素晴らしいカンテが存分に楽しめた今回のライブ。次回の詳細が決まったら、また随時お伝えしていきます。 【出演】 カンテ 今枝友加 ギター エンリケ坂井 >>>>>
- アーティスト名鑑vol.4
(miércoles, 18 de octubre 2023) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 2007年8月Málaga en Flamencoにて。©︎Kyoko Shikaze Enrique Morente Enrique Morente Cotelo Granada 25-12-1942 – Madrid 13-12-2010 エンリケ・モレンテ 本名エンリケ・モレンテ・コテロ 1942年12月25日グラナダ生、2010年12月13日マドリード没 歴史、伝統を熟知し、新たな地平を切り拓いた、20世紀後半/現代フラメンコを代表する歌い手。10代でマドリードに移り、ペペ・デ・ラ・マトローナら、内戦前から活躍するベテラン歌手たちの薫陶を受ける。タブラオや舞踊団での伴唱を経て1967年アルバムを録音。以後20枚以上をリリース。77年発表のアルバム『ドン・アントニオ・チャコンに捧げる』でプレミオ・ナショナル受賞。古典に始まり、新しいメロディを作り、ロルカやマチャード、サン・フアン・デ・ラ・クルスら詩人たちの作品を歌い、オーケストラとやブルガリアン・ボイスなどとも共演するなどし、フラメンコに時代の風を取り入れ、革新をもたらした。代表作に、ロックバンドらと共演した96年発表の『オメガ』などがある。妻は元踊り手のペロータ、長女エストレージャ、次女ソレア、長男キキ、と子供三人とも歌い手として活躍。 2010年8月ラ・ウニオンのフェスティバルで。伴奏はラファエル・リケーニとダビ、セレドゥエラ、パルマで息子キキと義弟に当たるアントニオ・カルボネル ©︎Kyoko Shikaze 【ビデオ】 RTVE RITO Y GEOGRAFÏA スペイン国営放送の伝説的フラメンコ番組でのエンリケ・モレンテ編。ギター伴奏はマノロ・サンルーカルです。 https://www.rtve.es/play/videos/rito-y-geografia-del-cante/rito-geografia-del-cante-enrique-morente/1898465/ 1990年放映されたエンリケ・モレンテ『イエルマ』。伴奏には義弟モントジータ、エル・ボラ、パケーテと90年代のマドリードを象徴するようなギタリストたち。 https://youtu.be/OiNFEWHxYaI?si=IB8hBtbElSJIcAVX 2010年8月ラ・ウニオンにて©︎Kyoko Shikaze 2007年6月セビージャ県アラアルのフェスティバルで。彼へのオマージュでの挨拶。©︎Kyoko Shikaze Manolo Sanlúcar Manuel Múñoz Alarcón Sanlúcar de Barrameda, 21-11-1943 – Jerez de la Frontera 27-8.2022 マノロ・サンルーカル 本名マヌエル・ムニョス・アラルコン 1943年11月21日サンルーカル・デ・バラメーダ生、2022年8月27日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ没 パコ・デ・ルシア、セラニートとともに現代フラメンコギターを牽引した名手。父はパン屋でアマチュアのギタリストで、弟イシドロもギタリストでマノロの第2ギターを長らく務めた。13歳でペペ・マルチェーナ一座のギタリストとしてプロに。後、パケーラ・デ・ヘレスの伴奏やマドリードのタブラオで活躍。1967 年に最初のソロ録音を発表し、71、73 年発表の『フラメンコ・ギターの世界とかたち』シリーズでソリストとしての名が不動のものに。74年 には『カバジョ・ネグロ』という曲が大ヒットした。以後も78年にはオーケストラとの共演作を発表、84年にはスペイン国立バレエの名作『メデア』の音楽を手掛けるなど多彩に活躍した。 代表作『タウロマヒア』は闘牛をテーマにしたアルバムで、ホセ・アントニオら多くの人が振り付けている。2000年にはカルメン・リナーレスとの共演作をリリース。学究肌で完璧主義。後進の指導にも熱心でビセンテ・アミーゴやフアン・カルロス・ロメロらもその門下。コルドバのギター祭でも晩年までクラスを持っていた。 2010年8月ラ・ウニオンのフェスティバルで©︎Kyoko Shikaze 【ビデオ】 代表作アルバム『タウロマヒア』に収録されたロンデーニャ『オラシオン/祈り』。繊細さと深み。 https://youtu.be/daY_KDKZHuw?si=dEm9X1DVvkNWpLLo マノロについてのドキュメンタリー。 https://youtu.be/55hq91LamEs?si=3xHWdT8rD01XiFyL 2001年6月30日 フランス、ヴィエンヌのジャズ・フェスティバルでのジョイントコンサートにて。©︎Kyoko Shikaze 1991年日本公演プログラム。マリオのサイン入り。 Mario Maya Mario Maya Fajardo Córdoba 23-10-1937 – Sevilla 27-9-2008 マリオ・マジャ 本名マリオ・マジャ・ファハルド 1937年10月23日コルドバ生、2008年9月27日セビージャ没 フラメンコに現代舞踊や演劇の要素を加えた新しいスタイルを生み、またその舞踊団からはイスラエル・ガルバン、ラファエラ・カラスコをはじめ、多くの舞踊家/振付家たちが育っている。幼い頃からグラナダの洞窟の舞台に立ち、若くしてマドリードに出、タブラオやピラール・ロペス舞踊団で活躍。ニューヨーク生活を経て、カルメン・モーラ、エル・グイトとのトリオ「マドリード」を結成しタブラオやフェスティバルなどに出演。1974年の『セレモニアル』、76年『カメラモス・ナケラール』を皮切りに、『アイ・ホンド』『アマルゴ』など歴史に残る名作を世に送り出してきた。後、アンダルシア舞踊団創立時の監督も務めた。 2003年5月コルドバ、グランテアトロにて。左からロベルト・ヒメネス夫妻、一人おいてフォスフォリート、マリオ、下はマティルデ・コラル。©︎Kyoko Shikaze 【ビデオ】 カナルスールが彼の半生を短くまとめたもの。映画『フラメンコ』で見せたマルティネーテのオリジナル版や今も後進たちに引き継がれる椅子に座ってのサパテアードなども見ることができる。 https://youtu.be/3omkud1W2e0?si=KIAWuEjXHDJPZRJG その死を悼んでの番組。82年の『恋は魔術師』やレッスン風景などとともに、市役所に安置された遺骸にお別れを告げに訪れたマノロ・サンルーカルやイスラエル・ガルバンのコメントなども。 https://youtu.be/4dSx6udq7Zw?si=E_EM0yHsqaswLsTH 1992年日本公演のプログラムより。 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- 第11回アニフェリア ~フラメンコの祭典~
(domingo, 15 de octobre 2023) 2023年3月23日(木)・24日(金) なかのZEROホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 撮影/川島浩之 Foto por Hiroyuki Kawashima 提供 一般社団法人日本フラメンコ協会 2002年の初開催より「フラメンコを愛する人、この指とまれ」の発想のもと、フラメンコを通して人の「輪」と「和」を未来につなげていくことをテーマに行われてきた日本フラメンコ協会(ANIF)の主催公演『アニフェリア ~フラメンコの祭典~』が、約3年にわたるコロナ禍による空白期間を経ておよそ4年ぶりに開催された。久しぶりの公演を楽しみにしていた人も多かったようで、会場には業界関係者やアーティスト、フラメンコ教室の生徒や愛好家らが集まりなかなかの賑わいであった。 2日間の公演は各日2部制で行われ、第1部は一般公募作品によるステージ。プロ・アマの垣根を越えて様々な出演者が参加し、群舞やソロの舞踊、歌にギターと各部門でそれぞれのフラメンコ愛を形にした作品を披露した。また第1日目にはオメナヘ(オマージュ)特別部門として、去る2021年3月に逝去した前会長の濱田滋郎氏と前事務局長の田代淳氏にそれぞれ捧げる作品が上演された。故・濱田氏への作品は、実の娘である濱田吾愛が父とのスペイン旅行の思い出を作詞したマルティネーテを深い敬愛を込めて歌い、故・田代氏へは縁の深いアーティストらによるギター合奏のファルーカと「エスペランサ」の合唱が捧げられた。 第2部では、アルテイソレラ舞踊団の主宰であり協会理事も務める佐藤浩希の振付・演出による協会作品が上演された。作品は全5曲からなり、幕開けを飾ったアレグリアスでは世代の垣根を越えて全員が一体となった統一感が見事で、喜びに満ち溢れた群舞を魅せてくれた。 続いて世代ごとの演目では、その個性と魅力を大いに生かした作品を披露。ベテラン世代のティエントスはそれぞれが曲種のイメージに沿った衣装をまとい、ソロやペアでの振付も全員で踊る部分も、ひとりひとりの個性を生かした演出が楽しめた。今一番脂が乗っている中堅世代のシギリージャは、全体のまとまりも個人としての表現も素晴らしく圧巻の群舞を展開。若手世代のルンバ イ ブレリアは、まさにはじけるような若さと躍動感にあふれ、眩しいステージで観客を魅了した。 最後の曲となるカーニャでは全員が黒の衣装に身を包み、白い花を各々で手向け、協会設立からの最大の功労者であった故・田代淳前事務局長と故・濱田滋郎前会長への哀悼と敬愛を表現した。そして舞台は、オメナヘ公演ということで出演を快諾してくれた協会名誉会長の小島章司へと引き継がれ、その全身全霊を込めた崇高な舞踊は観る者の心を捉えて離さなかった。 これだけ個性豊かな踊り手たちをまとめて、素晴らしい群舞作品を作り上げることができたのは、長年にわたり幾多の劇場公演を手掛け様々な群舞作品を作り上げてきた経験から磨き抜かれた佐藤のセンスと熟練の手腕の為せる技といえるだろう。「猛獣使い」と周囲から愛情を込めて付けられた異名も、なるほどしっくりくる。 2日目の公演後の挨拶で、今回のアニフェリア運営委員長の曽我辺靖子は二人の偉大な故人への思いにあふれてくる涙をこらえていた。また協会作品の立役者となった佐藤は、これを機に「日本フラメンコ協会舞踊団」を立ち上げましょう、と提案すると会場からは大きな拍手が上がった。もちろん、正式に舞踊団とまではいかなくても、定期的にこのような壮大な作品が上演されたらうれしい。 プロ・アマという垣根を越えて2日間にわたり、フラメンコの多彩な魅力を楽しませてくれたアニフェリア。出演者も観客も一緒になって歓びを共有し、フラメンコを通して人の「輪」と「和」がこれからもさらに繋がって広がっていったら、私たちの未来もより明るいものになっていくだろう。 【プログラム&出演】 [第1部]公募作品 (1日目) ギター・カンテ部門: ・ぼたんとけっけ バイレ群舞部門: ・全国学生フラメンコ連盟FLESPON ・小林伴子フラメンコスタジオ ラ・ダンサ ・アルアンダルスフラメンコ舞踊団 ・Muchachas de Jacomomola ~30th Anniversary~ バイレソロ部門: ・諸富礼 ・髙野正子 ・堀江朋子 オメナヘ特別部門: ・濱田滋郎前会長に捧ぐ ・田代淳前事務局長に捧ぐ (2日目) クアドロ部門: ・横畠由美子 ・新田晶野 ・工藤彩子 ・佐藤陽美 ギター・カンテ部門: ・石塚隆充フラメンコ教室 by ATHENAE Music & Arts ・野中亮子と素敵な仲間 ・川崎さとみ バイレ群舞部門: ・宮野ひろみ Estudio Lucero Flamenco ・伊集院史朗・清水順子 ・Estudio EL PATIO ・鈴木舞・鈴木千琴 バイレソロ部門: ・藤岡素子 ・折橋恵子 [第2部]協会作品 岡本倫子 小林伴子 齋藤克己 鈴木眞澄 曽我辺靖子 高橋英子 手塚真智子 本間牧子 渡邊薫 石川慶子 伊集院史朗 鍵田真由美 三枝雄輔 三四郎 鈴木敬子 堀江朋子 宮内さゆり 吉田光一 荒濱早絵 川松冬花 久保田晴菜 JURINA 中里眞央 中原潤 山﨑嬉星 脇川愛 (伴奏)ギター:今田央 片桐勝彦 北岸麻生 鈴木英夫 カンテ:有田圭輔 石塚隆充 川島桂子 (特別出演)小島章司 (振付・演出)佐藤浩希 >>>>>
- 新・フラメンコのあした vol.8
(lunes, 2 de octubre 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は8月にマドリードで開催されたファルキートの劇場公演についてお伝えします。 文/東 敬子 Texto por Keiko Higashi 写真/宣材写真、東 敬子 Fotos: material promocional / por Keiko Higashi ファルキート 『コン=シエルト・フラメンコ』 ラ・ラティーナ劇場、マドリード(スペイン) 2023年8月26日 Farruquito “Con-Cierto Flamenco” Teatro La Latina, Madrid, 26 Agosto 2023 ステージに現れた時の緊張感、目をみはるスター性、そして躍動感あふれるヒターノの味に満ちた動きの全てが、いつも通りでした。でも実は今回のステージで、ファルキートは怪我をしていたのです。 リハーサルで負傷してしまったであろう右手(多分、指を痛めたのかと思います)は、客席から気づきにくいように肌色のバンデッジが巻かれ、痛々しい。今回は自身の息子エル・モレーノの本格的デビューという大事な公演でしたから、お父さんとしては、ちょっと頑張りすぎたのかも知れませんね。加えて、8月23日から9月3日までの2週間の長丁場。しかし公演期間中は満員御礼の連続で、見事最後まで乗り切ったのでした。 ファルキートの長男フアンが観客の前で初めて踊ったのは、父と同じくニューヨークのステージで5歳のとき。現在11歳の彼は今、2001年に亡くなったファルキートの父、自身の祖父であるカンタオール「エル・モレーノ」の芸名を継承し、プロとしての茨の道を歩き始めました。 今回の作品は、踊り手は父と息子の二人だけ。もちろん振付はありますが、音楽とともに即興的なノリが随所にあり、舞踊作品というよりは、まさにロックなどのコンサートのようなライブ感がありました。最近の舞踊作品は、踊り手が持つ「心のドラマ」をテーマに作り込む作品が多く、何が言いたいのか理解するのに手間取る場合が多いのですが、彼のように、ストレートに「フラメンコってこういうものだよ」と訴えてくれる踊り手は、もはや希少とも言えるでしょう。そして満員の会場を見れば、観客が何を求めているかは言わずもがな。現代アーティストは、こういった作品を見て、今一度自分の方向性を見直すべきではないかな、と思ったりします。 ファルキートはステージに現れるや、一瞬で観客の心を掴みます。ただそこにいるだけで、ググーッと引き込まれる。もっと若い頃の、研ぎ澄まされた蒼い緊張感は、大人のゆとりと、そこはかとない色気となって、会場の空気を大きく動かします。今年41歳となった彼ですが、その俊敏な動きに陰りは見えません。 そして息子モレーノが登場すると、思わず「かわいい」と笑みが漏れる。 まだ幼さが残るその容姿とは裏腹に、動きはすでに一人前のフラメンコ。自身の意思が、その手足を自由自在に操る様は、才能としか言いようがありません。父と二人で踊る姿は、家族の信頼に包まれながらも、一人でやり遂げるという強さが見られます。ファルキートが10代の頃は、踊りの中にシリアスな印象がありました。比べてモレーノは、もっと明るい印象。その辺は、ファルキートの末の弟、カルペータの10代の頃と重なります。 モレーノのソロのアレグリアスは、まだ若干不安定なところがあり、バックにいたお父さんは、思わず歌い出して応援。微笑ましいと思うと同時に、ヒターノのフラメンコの成り立ちを垣間見た気がしました。 ギターのジェライ・コルテス、カンテのイスマエル・デ・ラ・ロサ“ボラ”、マリ・ビザラガなど、聞き応えのある音楽陣もいつもの通りですが、今回はカンタオーラ、モンセ・コルテスとの共演が目を引きました。彼女のファンは多く、私もその一人。最近は彼女のリサイタルがあまりないので、ぜひまたやってほしいなと思います。 今回は、テーブルを叩いてリズムを取ったりカホンを叩いたりと、やたらと叩く場面が多く、手を怪我しているファルキートにとっては大変だったと思いますが、最後はエレクトリック・ギターも演奏し、そこにホアンのドラムが加わるなど、驚きの一言。フィン・デ・フィエスタでは、ファルキートの娘二人も登場し、ブレリアを披露。親子共演を最後まで楽しませてくれたステージでした。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com(https://spanishwhiskers.com/?page_id=326)を主宰。 >>>>>
- カンテフラメンコ 奥の細道 on WEB No.29
(lunes, 9 de octubre 2023) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai ミラブラー 先日発売したグラン・クロニカvol.33の特集がミラブラー(正式にはMirabrás(ミラブラース))なので、今回はこの曲種を取り上げます。 形式名の語源は、Mira(ミラ) Blas(ブラス)(見なよブラス君)またはMira(ミラ) y(イ) verás(ベラース)(見りゃわかる)とも言われてきたがはっきりしない。 解っているのはミラブラーという言葉を入れた短い歌詞またはコレティージョがかつて歌われていたので、この形式名が付いただろうという事だ。 今でも歌詞の中に形式名が出てくるが、この点はロメーラとも似ている。ちなみにロメーラは、古い録音は私の知る限りほとんど無く、1950年代になってペリーコのアンソロジーでエル・チャケータが歌って復活した。 古い録音は無いと書いたが、考えてみればこれだってもう70年前の事だから若い人にとっては十分古いのかも。 さてミラブラーの歴史を調べると、カディス県の港町サンルーカル・デ・バラメーダに辿り着く。 市場や町の中で売り歩く物売り達のふれ声や歌から始まり、後にティオ・ホセ・エル・グラナイーノが整え、最後には大歌手アントニオ・チャコン(1869~1929)がこのスタイルを完成させ、その類まれな歌唱力によって普及させた。 そのチャコンの録音を収録したグラン・クロニカvol.33の22曲目から、この曲種ミラブラーで必ず歌われる歌詞を書き出してみよう。 (Letra) ¿A mí, qué me importa que tú me culpes? Si el pueblo es grande y me abona; voz del pueblo, voz del cielo y anda. Si no hay más ley que son las obras, y con el mirabrás y anda. (訳) お前が俺のせいにしようが それが何だっていうんだい。 民の力は偉大で 俺の味方なのさ、 民の声こそが 天の声なんだ。 俺たちが作り上げたもの、 それ以上の法律はない だからミラブラでもって、いざ! まるで昔の日本の自由民権運動の歌みたいだが、実際カディスは19世紀初めのフランスとの戦争においても最後まで降伏しなかったので、スペイン各地の自由主義者たちがカディスに集まり1812年憲法を制定した。 そうした歴史を反映したのがこの歌詞だろう。当時の自由主義は庶民の間にまで広まり、歌詞に反映されたのです。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~33(以下続刊)。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ(https://acustica-shop.jp/)へお問い合わせください。(編集部) >>>>>











