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  • ★フラメンコnews☆

    カニサレス来日公演ツアー2023 (sabado, 10 de junio 2023) かつてパコ・デ・ルシアのセカンド・ギタリストを10年間務め、その真の後継者として世界から注目されるギタリスト、カニサレスの約5年ぶりとなる待望の来日公演ツアーが行われます。 その美しい演奏と超絶テクニックはもちろん、作曲家としても名曲のギターアレンジやオリジナル曲など数々の素晴らしい作品を発表。さらには2011年に世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルとの共演でクラシック界からも絶賛され、今やフラメンコやクラシックなどのジャンルを超越する、世界最高峰ギタリストとして高い評価を受けています。 今回の来日公演は初のギター・デュオ公演として、「アランフェス協奏曲」アダージョのギターアレンジ曲をはじめ、オリジナル曲「魂のストリング」や日本初演となる「地中海組曲」などを披露します。 世界が酔いしれるカニサレスの演奏を、ぜひ劇場でお楽しみください! [日程・会場] 7/09(日)埼玉・所沢市民文化センター ミューズ キューブホール 16時開演 7/12(水)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院 小ホール 19時開演(完売) 7/13(木)大阪・フェニーチェ堺 小ホール 19時開演 7/15(土)愛知・東海市芸術劇場 多目的ホール 15時開演 7/16(日)東京・浜離宮朝日ホール 15時開演 7/18(火)千葉・船橋市民文化ホール 18時開演 ※スペシャルゲスト:佐藤浩希(フラメンコ舞踊) 7/20(木)神奈川・フィリアホール(横浜市青葉区民文化センター)19時開演 出演:カニサレス(ギター) フアン・カルロス・ゴメス(ギター) [演奏予定曲] ロドリーゴ:アランフェス協奏曲より第2楽章アダージョ「アランフェス・マ・パンセ」(ギターアレンジ) グラナドス:12のスペイン舞曲より「アンダルーサ」 ファリャ:三角帽子より「粉屋の踊り」 カニサレス:地中海組曲/アル・アンダルス組曲/深淵/魂のストリング/彗星の雨 ほか 【カニサレス来日公演2023総合サイト】 https://www.plankton.co.jp/canizares/index.html ---------------------------------------------------- ●名古屋フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会に出演します。こちらもチェック! 7/7(金)18時45分・7/8(土)16時 愛知県芸術劇場コンサートホール https://www.nagoya-phil.or.jp/2023/0120120752.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 来日公演プロモーション映像 https://youtu.be/gU9odZ8aE1E 【プロフィール】 フアン・マヌエル・カニサレス、1966年スペイン東部カタルーニャ生まれ。16歳のとき、権威あるナショナル・ギター・コンクールで優勝。プロの道を歩みはじめる。88年から巨匠パコ・デ・ルシアのバンドに参加し、セカンド・ギタリストとして10年間活動。1990年にパコのバンドのメンバーとして初来日。当時まだ無名だったにも拘らず、カニサレスは超絶な速弾き演奏を披露し強烈印象の残し、話題となった。1997年に『イマンとルナの夜』でアルバム・デビュー。ジャズ、クラシック、ロックなど、あらゆる要素を吸収した演奏と華やかなアレンジでフラメンコ界に新風を吹き込み、絶賛を浴びた。 ギタリストとしてだけでなく、作曲家としても才能を発揮。スペイン国立バレエの作品や映画音楽の作曲を手掛け、近年はアルベニス、グラナドス、ファリャやスカルラッティの楽曲をギターに編曲したクラシック音楽のソロ・アルバムを立て続けに発表。フラメンコに多大な影響を受けている楽曲の中に眠っているフラメンコの要素を抽出したような内容で、フラメンコ・シーンとクラシック音楽シーンの両方で支持された。 2011年、世界最高峰のオーケストラのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者兼芸術監督、サー・サイモン・ラトルの招待を受け、マドリードの王立劇場でロドリーゴの「アランフェス協奏曲」を演奏。クラシック界でも大きな注目を浴びた。以来、ヨーロッパ中のオーケストラに招待され、超売れっ子ソリストとしても活躍。 2013年、『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2013』でフィーチャーされ、全11公演に出演。同年12月には新宿文化センター大ホールにて単独公演を成功させた。 2015年9月に新日本フィルハーモニー交響楽団、2017年1月にNHK交響楽団と共演。2016年5月にパコ・デ・ルシアに捧げる、ギターとオーケストラのための協奏曲「アル・アンダルス協奏曲」を作曲し、スペイン国立管弦楽団とスペイン国立音楽堂にて世界初演を果たした。 フラメンコのルーツのひとつと言われるスペインの民俗舞踊「ホタ」を取り上げたカルロス・サウラ監督の映画『J:ビヨンド・フラメンコ』(2017年日本公開)に出演、カニサレスの演奏がフィーチャーされた。2018年2月に8年ぶりのカニサレスの全曲オリジナルによるフラメンコの新作ソロ・アルバム『洞窟の神話』を発表。同年9月にクインテット編成の来日ツアーを成功させた。 2019年、待望の新作『カニサレスのロドリーゴ』を制作、同作はかの有名なアランフェス協奏曲の第2楽章のアダージョ「アランフェス・マ・パンセ」や、ロドリーゴ氏の未発表作「夕暮れのプレリュード」が初収録されたことで、スペインで大きな話題となっている。 2023年5月、カニサレスが作曲したギターとオーケストラとの協奏曲を収録した新作アルバム『アル・アンダルス協奏曲』をリリース。 >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 8

    第8回 中里眞央 【カンテ部門/奨励賞】 (viernes, 9 de junio 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。 第8回目は、カンテ部門で奨励賞を受賞した中里眞央さんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 2019年以来、コロナ禍で中止となった2020年を除き、毎年バイレソロとカンテソロの2部門でエントリーしていた。そして2022年夏、私にとって3度目の新人公演! さまざまな感情渦巻くなかのZEROホール。毎年プレッシャーと緊張のせいで、出なければよかったと思いながらも、いつもここに戻ってきてしまうなぁ。プラスやマイナス、ポジティブやネガティブ、そんなふうに容易に分類できないものばかりを抱え込んでいる。ただ一つその携えた塊を、容易く弾けて拡散しそうな熱を、うまく自分のものにしなければならない舞台であることは確かだった。 私の所属舞踊団ARTE Y SOLERAの公演のために来日していたへレスのギタリスト、アントニオことマレーナ・イーホ。多忙を極める彼と運よく予定を合わせることができ、2部門とも伴奏を依頼することになった。自分のソロ演目でアントニオを独占できるなんて、なかなか無い機会だ。何が楽しみかって、アントニオと過ごせる公演当日までの時間が楽しみだったのだ! とにかくヘレスの空気を感じたくて、アントニオが来日してから毎日一緒にいた。毎日ご飯を一緒に食べた。夜、師匠や舞踊団の先輩方と食卓を囲みお酒が進んでくると、歌ってみよう!という時間がやってくる。おもむろにギターを弾きだすアントニオ。歌う私。日々を共にしながら、食事だけでなく様々なものを皆で味わってきた。そして味わったものを身体中に、表現の全てに巡らせたのだ。 それ以外でアントニオとカンテのいわゆるギター合わせをした時間は無かった。果たしてあれがエンサージョと呼べるものだったのかは、わからない。それでもあの空気を、あの時間を味わわなければ、受賞という結果はなかったと確信できる。1人だけで作り上げる舞台ではない。あの場に満たした空気、そのほんの一部でも異なっていたら同じパフォーマンスはできなかった。そしてそれを私と共に構築してくれたのは、間違いなく彼らだ。ただ、それは彼らと一緒にいただけで叶ったことではない。あの場の私には責任があった。舞台を作り上げるため、先頭に立つ責任だ。 一つの目標に向かって邁進すること。そこで得られる過程や結果はもちろんだが何より重要なのは、自分が舞台の主体となる責任感や、当事者意識を学べることだと感じている。月並みな表現かもしれないが、あの場は貴重な経験を与えてくれる。先生がついていてくださる発表会とはまた違うのだ。自分自身がミュージシャンを率いる代表者なのだという自覚。周りに支えられながら、一人では叶わないと知りながら、それでもこの体そのものを突き動かすのは私自身に他ならない。お客様からお金をいただいてパフォーマンスするということ。楽屋の使い方。本番までの過ごし方。その学びは踊り手、歌い手としての舞台上での在り方にも現れると私は思う。学びの全てを生かし切ってこそ振り絞れる力があり、自身の成長にも意識を向けていられる。だからこそ受賞という結果が届いた時の、救われたという感覚は、私にとって忘れがたいものになったのだ。 普段タブラオに出演することの少ない私にとって、新人公演は様々なご縁を繋いでくれた機会だった。感謝してもしきれない。これからも私は様々な経験を積んでいくことになるだろう。その日々の中で仲間たちと同じ釜の飯を食らい、心技体ともに自らを磨き、舞台に上がる。嫌になることも不安に煽られることもたくさんあるが、あの場でだけは仁王立ちして立ち向かっていけたらと思う。ともすれば弱そうに見える立ち姿から、迸る(ほとばしる)ほどの圧を放てるようになりたい。その未来に一歩ずつ近づけていけたら、と思うのだ。 (写真)Ⓒ大森有起 【プロフィール】 中里眞央(Mao Nakazato)/東京都出身。12歳より鍵田真由美・佐藤浩希に師事。2015年より同フラメンコ舞踊団ARTE Y SOLERA団員として、スペイン3都市を巡る『カスティーリャ・ラ・マンチャツアー』、平成天皇皇后陛下の御臨席を賜った『Ay曽根崎心中(新国立劇場)』などの主要公演に出演。その他、歌い手、踊り手として歌舞伎やミュージカルまで活動の幅を広げている。2020年度河上鈴子スペイン舞踊新人賞。2022年度ANIF新人公演カンテ部門奨励賞。2023年全日本フラメンココンクールカンテ部門優勝。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 9

    第9回 三枝雄輔 【カンテ部門/奨励賞】 (viernes, 16 de junio 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番でのエピソード、自身の経験や思いなどを語ってもらいました。 最終回となる第9回目は、カンテ部門で奨励賞を受賞した三枝雄輔さんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko フラメンコをやる上で、カンテの勉強は必須なので、ずっと勉強してきました。新人公演のカンテ部門には過去にも出演したことがあるのですが、そこから何年かたって、今勉強している自分はどんな感じなのかなと思って、今回エントリーしました。あと、何かに向けて勉強するのも、モチベーションが上がりますし。また、エミリオ(マジャ)との勉強がすごく自分の為にもなったので、そういう時間を作りたいと思っていました。実際にこれまでも、彼からはたくさん勉強させてもらいました。 エントリーするにあたっては、出演するからにはそこに賞があるので、もちろん頂けた方がうれしいから受賞は考えました。でもそのために何か対策を取るとか、計画を立てるとか、受賞を意識して何かをやったとかは、特に無いです。ただ、今まで積み重ねたものを舞台で披露したらどうなのか、ということに関心がありました。 本番当日やリハの事は、あまり覚えてないですね…。もう1年近く前だし、時間が経ち過ぎて、全然覚えてないです。ただ、普通にできることしかできないですから、出来ることをやろうと思って臨んだと思います。 あと、これはいつもと変わらない事でもありますが、僕は今回エミリオに伴奏してもらって二人でステージに立ったんですけど、彼に楽しんでもらうことを何より一番優先して考えて、ステージに挑みました。僕がどうとか、お客様や選考委員の方たちがどうとかではなく、隣にいるエミリオが一番喜んでくれることを心掛けて歌いました。だって、フラメンコは彼のものですから。彼らスペイン人のものであり、彼らの生き方を歌っているものですから。だからレトラの歌詞を選ぶのも、エミリオと話し合って決めました。いつも、そういうスタンスでいます。 奨励賞を受賞しての変化は、特に無いです。これまでと何も変わりません。 受賞はもちろんうれしいですし、これまでにもいくつか賞を頂きましたが、むしろ頂いた後の方が大変だな、とは思っています。内面的にも調子に乗ることなく、謙虚であり続けるべきだと思いますので。受賞は単なる過程であって、通過点に過ぎませんから、より気を引き締めていかないとならないと思っています。 僕たちは日本で、日本人としてフラメンコをやっていますけど、ちょっと勝手に創作してというか…ジャパニーズ・フラメンコというか…、本場のフラメンコに目を向けていないように感じられることが時々あります。僕自身、本来のフラメンコの形を大事に勉強したいですし、みんなともしていきたいと思っています。 これは別にカンテに限らず、バイレもギターもあり方も、すべてに言えると思います。ただ、僕も何ができるわけではないですが…。 日本にもスペイン人はたくさん住んでいるし、最近では毎月のようにスペインのアーティスト達が来日していますから、そういう勉強をもっとしていかないといけないと思っています。そういうのは敷居が高い、と思っている人もいるようですけど、異国の文化だから敷居が高いのは当たり前ですし、難しい所に目を背けないでやってほしいと思います。別に習わなくても、一緒にいるだけでもいい。勉強しようとか思わなくていいから、本当のフラメンコの勉強とは何なのか、みんなと一緒に考えていきたいと思っています。 (写真)自身(一番左)も新人公演に出演する傍ら、和泉冴英香さん(左から2人目)のパルマ伴奏も務めた 【プロフィール】 三枝雄輔(Yusuke Saegusa)/バイラオール・パルメーロ、1980年4月12日東京生まれ。 21歳の時、ベニート・ガルシアの踊りに感動しフラメンコを習いはじめる。2006年文化庁海外留学派遣制度の研修員として2年間渡西。国内外の多くの賞を受賞。スペインの一流アーティスト達も彼を認めるのは、12歳からスペインに住み現地の習慣や文化を理解しているからである。現在はアーティスト業に加え、創業50年を誇るタブラオ「エスペランサ」を経営する。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

  • カンテフラメンコ 奥の細道 on WEB No.25

    (lunes, 12 de junio 2023) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai 前回取り上げたグローリアのアレグリアスは、すでに述べたが、アレグリアス・デ・カディスのスタイルではなくホティージャ・デ・カディスと呼ばれるカンティーニャスのひとつ。 カディスのアレグリアスの名人というのはカディスとその周辺ロス・プエルトス出身の歌い手が殆どで、それはこのカンテがカディスの文化的背景や伝統を色濃く持っているからだろう。 CD「グラン・クロニカ・デル・カンテ」vol.32より ㉕ Antonio Mairena(アントニオ・マイレーナ)の Alegrías(アレグリアス) というわけで今回も引き続きアレグリアスを取り上げよう。カンティーニャスというのは12拍子系の長調の歌をまとめてカンティーニャ属(または族)という形式名にしているのだが、その中で中心を成すのはアレグリアス・デ・カディスだ。しかしそれは、数の上ではカンティーニャスの中ではほんの一部分にすぎない。LPレコードの時代まではアレグリアスと題が付いていても、実はカディスのアレグリアスは一つか二つで、あとはカンティーニャスということが多い。つまりアレグリアスは、以前はカンティーニャと同じ意味で、いろいろなカンティーニャスを含めた形式名として使っていたわけだ。 形式名としてちゃんと分ける傾向になってきたのはマイレーナ以来カンテの研究・分類が進み、それをCDの時代になって形式名としてより詳しく書くようになったからで、そんな古い話ではない。 グランクロニカvol.32の19曲目のアレグリアスの1曲目は、アレグリアス・デ・カディスの低音型。ただし後半のメロディーを少し変えているので、マイレーナのバージョンとも言える。 2曲目はカディスのカンティーニャ(アレグリアスとは異なる)の一つだが、踊り歌としてもよく歌われるので何かの機会に耳にした人も多いと思う。以下にその歌詞を紹介する。 (letra) (que te la da un marinero...) Toma, niña, esta esmeralda que te la da un marinero, si no la quieres la cambia por un barquito velero. (船乗りからの贈り物…) 娘さん、このエメラルドを取りなよ 船乗りの男の贈り物さ、 もしも気に入らなきゃ 帆かけ船と換えてもいいさ。 コレティージョは最も一般的な「Cuando te vengas conmigo dónde te voy a llevar ~」の歌詞とメロディーなので、スペースの関係もありここでは割愛させてもらう。 あらためてCDを聴いてほしいが、この歌はアレグリアスのように1行を1コンパスで歌っていくタイプであり、カンティーニャと言っても詩型(8音節から成る4行詩)や歌い進め方(2行目から始まり1行目→2行目→3行目→4行目へと歌う)、リズムの乗り方はほとんどアレグリアスと変わらない。 このようにカンティーニャにもいろいろな歌い方や乗り方があり、この歌はアレグリアスの踊りの伴唱に使えるような、アレグリアスに非常に近いタイプだと言う事ができる。 ピニーニのスタイルを歌うベルナルダや母親(パペーラ)のスタイルを歌うペルラ・デ・カディスを聴いた人は、これは乗り方が違うと感じられた事だろう。その乗りとは?と質問されたので、次回は少し横道に逸れるがその事について書いてみよう。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~32(以下続刊)。 ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ(https://acustica-shop.jp/)へお問い合わせください。(編集部) >>>>>

  • 大沼由紀 舞踊公演『音の旅人2』

    (jueves, 18 de mayo 2023) 2022年11月2日(水) マチネ/ソワレ 東京 座・高円寺2 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/川島浩之 Foto por Hiroyuki Kawashima 一昨年前の初演で大きな好評を博した、フラメンコ舞踊家大沼由紀による舞踊公演「音の旅人」が再び上演されることになった。前回はまだコロナ禍による感染防止対策のため厳しい人数制限が設けられていたこともあり、その再演を望む声が多く寄せられたことを受け、この度再演を決めたという。 また、前作では彼女の内から湧き上がる思いのままを踊り、語り、歌うことで舞台を構成したが、今回は新たに歌い手を加えることで、その声がまた違う風景をもたらすことへの期待を込めている。 旅の始まりの曲はヘレスのカンタオール、エル・チョサのロマンセ。一人のキリスト教徒(クリスティアーノ)の男が、イスラム教徒であるモーロ人の街でさらってきた娘が、実は幼い頃にモーロ人にさらわれた実の妹だったという物語り歌だ。歌の世界がより伝わるように、歌詞を登場人物の台詞による一人芝居仕立てにし、ストーリーを日本語で伝えながら、フラメンコのリズムを損なわないようスペイン語で語り歌い、そのロマンセの情景を表現した、と大沼は言う。さらった娘とともに馬で旅する途中で、二人はウリアという山に着き、そこで男は娘が実の妹だと気づく。そして音楽はロマンセから、山の唄であるセラーナへと引き継がれていく。“Me voy llorando...”と歌い出す小松の歌声が、音の風景に新たな色を添える。 次のシーンは、チェロと踊りの完全即興、インプロビサード。山の唄を全身に取り入れて、音楽家と舞踊家は何を表現するのか。実験的であり、挑戦的な趣向。「セラーナを受けて、チェロが奏でる最初の一音はどんなだろう?リハーサルでも、2回の本番でも、いつもワクワクしていました」と大沼は振り返る。下島のチェロの息遣いに耳を澄ませ、その旋律に反応し、自身の四肢とその足音でチェロと対話する。小刻みな音にも伸びやかな音にも全身で寄り添い、それはフラメンコという枠から溢れ出る、純粋で自由な舞い。 音の旅は、パリージャ・デ・ヘレス作曲のファンタシィア・ポル・ブレリアへ。ファンタシィアとは幻想・空想という意味。西井、小谷野、三四郎が奏でる、3拍子の幻想的なギターのメロディーとパルマのリズムを楽しむように、たっぷりのボランテを縫い付けた大きな布を翻しながら踊る姿は、森の中を駆け抜ける風になって戯れているかのようだ。 旅は詩の朗読によって、トゥリアナ、アルカラ、ウトレラというソレアを抱く街へ。かつての英雄、闘牛士クーロ・ロメーロを讃え、セビージャの闘牛場へと誘われる。 そしてセビージャから、ヘレスの街へ。これは大沼自身の旅だという。ヘレスにたどり着くと、そこでボデガ(シェリー酒の酒蔵)の事や、アグヘータ、モネオ、ルビチといった名門の歌い手の事、そして大沼が愛してやまないエル・チョサの歌について語りだす。上手側の切り株に座り、心を込めて彼のソレアを歌う。その歌を全身に湛えると、自身の内側から溢れてくるソレアを無音の中で踊り始める。正確なコンパスを内面に刻みながら、一心に踊るその姿はまさに音楽であった。 音の旅はそこからフラメンコの深い所へと進んでいき、シギリージャへ。チェロの重低音の音色に合わせて大沼が歌い、ギターやパルマの伴奏になるとファルセータを踊りエスコビージャを奏でる。そこにチェロが重なり、カンテも重なり、重層的な音の世界が広がる。曲の最後はマチョではなく、カバーレスが歌われたが、それについて大沼は「私にはカバルの音は、暗闇から光、というように感じる」のだと語った。最後に舞台は明るくなり、満ち足りた時間に包まれていた。 そして、鳥のさえずりとともに、舞台は赤らみ夜明けを迎える。素朴な白のワンピース姿の大沼が、片手に麦穂を抱えて現れる。トゥリージャを歌いながら、ゆったりと歩いていく。ラストの曲にトゥリージャを選んだ理由について、大沼は「それまでの旅はまるで幻だったのか?と言うようなシーンにしたかったから」と語った。パリージャのファンタシィア・ポル・ブレリアで誘われたファンタジーの森ではなく、土の匂いや風の音が感じられる現実の大地。これまでの旅はすべて夢の中の出来事であり、目が覚めたらいつもの麦畑でロバが鳴いている―――そんなイメージだと教えてくれた。 前作よりもさらに深められ、また新たな音を加えて様々な景色を見せてくれた大沼の音の旅。彼女の内なる旅は、自身が描く地図を道標に、これからも続いていくだろう。そしてまたいつの日か、音の旅人は私たちに新たな風景を見せに来てくれるかもしれない。 【出演】 [踊り] 大沼由紀 [ギター] 西井つよし [パルマ] 三四郎/小谷野宏司 [歌] 小松美保 [チェロ] 下島万乃 [振付・構成] 大沼由紀 [演出] 佐藤浩希 【大沼由紀公式サイト】 https://www.yuki-onuma.com/ >>>>>

  • 沖仁デビュー20周年アルバムリリース記念ツアー「20 VEINTE」東京公演

    (sabado, 10 de junio 2023) 2022年11月23日(水祝) 第一生命ホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真提供/株式会社ジンズアクション Foto por jinsaction co. Ltd. 昨年フラメンコギタリストとしての活動20周年を迎え、その集大成として発表されたオリジナルアルバム『20 VEINTE(ベインテ)』リリース記念ツアーの東京公演が行われた。会場となった由緒あるクラシックホールは男女問わずあらゆる年齢層の観客で満席となり、幅広い層のファンに支持されているのが伝わる。 オープニングを飾るのは、今回のアルバムからギターソロ曲「ススペ」。サイパン島の街の名前を冠したこの曲は、戦争の爪痕が残る現地を訪れたときの印象をソレアで表現したという曲。そのメロディーを正確で繊細なタッチで奏で、曲の世界観を表現する。 1曲目を弾き終え、沖は満面の笑顔で観客を迎えた。最初のMCから表情は喜びに満ちていて、「(今日のステージは)お祭り騒ぎをしつつ、心に残るステージになったらいいなと思います」と語った。 次の曲も同アルバムから、「サパト・ビエホ」というサパテアードの曲。伊集院の踊りが加わり、パーカッションには長年のパートナーである大儀見が参加。パルマやステップが刻むリズムも軽快で、息の合った3人のアンサンブルが楽しい。 次のMCで沖はこの20年間の活動を振り返り、「フラメンコギターの可能性を開拓したいと思ってきました。そしてもう一つ、みなさんに聴くだけでなく弾いてほしいとも思っていました。でもフラメンコギターは習得に時間がかかるので、それでは合奏ならいいのでは、と思いワークショップを行ってきました」と語る。そして今回の公演で、その参加メンバーでアンサンブルを結成。その名も『沖仁フラメンコギターアンサンブル』として、晴れて共演の機会となった。演奏は、合奏によるブレリア。沖と一緒に4人で、それぞれのフレーズでギターソロを披露する。メンバーらは初々しさが残りながらもプロのギタリストに見劣りしない腕前を見せ、憧れの師匠との共演に楽しそうで満足そうだった。彼らの活動は、今年から本格的に始めるという。 ここでスペシャルゲストとして、今注目のバイオリニストNAOTOが登場、公演に花を添えた。3歳からバイオリンを始め、東京藝術大学を卒業しメジャーデビューして17年(当時)という彼は、沖とは10年来の付き合いだと言う。「Respeto y orgullo ~誇りと敬意~」というファルーカを、かっこいいデュオで披露。さらに人気曲の「チャールダーシュ」ではバイオリンの本領を発揮する素晴らしい演奏を聴かせ、フラメンコギターとの相性も良く極上のハーモニーを楽しませてくれた。 ゲストステージの後は、ファーストアルバムからグアヒーラ「La lluvia limpia el aire」を演奏。太陽と海をイメージした照明がステージの雰囲気を演出する。山本がキレの良い踊りを魅せ、躍動感ある足技が光る。眩しい景色が目に浮かび、20年前の瑞々しさがそのまま感じられるようだった。 そして、新曲の「ランドセル」からライブでの定番曲、そして活動中期のお気に入りの曲へと続くメドレーを披露。また、ライブ恒例という観客との掛け合いのコーナーも行われ、沖が奏でるリズムを真似して手拍子で応え、会場は和やかな一体感に包まれた。 アンコールは、活動初期から演奏し続け進化を重ねてきたというブレリアを披露。フラメンコギタリストとしての20年間の様々な足跡を見せ、磨き抜かれた1曲を聴かせてくれた。ゲストのNAOTOも再び登場し、全メンバーによるアンサンブルに多くの客が立ち上がり盛大な拍手を送った。 舞台のラストは、沖のギターソロ。弾き始める前に、この20年間のキャリアについて「目の前にあることにいつも必死に取り組み続けて、ここまで来ました」と振り返る。また、高校時代には自作の音楽カセットテープを3作くらい制作したことや、20歳頃にはそれらを横浜などで手売りもしていたというエピソードも聞かせてくれた。そして2002年7月に発表したファーストアルバム『ボリビアの朝』は手作り感あふれる作品で、これがフラメンコギタリストとしての出発点だったと語る。 演奏は、2011年の東日本大震災後に見上げた満月をもとに作ったという曲「スーパームーン」。ステージの前方まで出てマイクを通さず、真摯でいて渾身の演奏をギターの生音で観客に届けた。 全ての曲を演奏し終えて、客席に向かって心からの感謝を伝える沖の笑顔は、清々しくまっすぐだった。その姿は、きっと10代の頃からそうだったように、ただ純粋にギターが好きでたまらない少年のままであった。 【出演】 沖 仁 フラメンコギター 大儀見 元 パーカッション 藤谷一郎 ベース 須藤信一郎 ピアノ 伊集院史朗 パルマ/踊り 山本 玲 パルマ/踊り 沖仁フラメンコギターアンサンブルより 青木 優 高松宏至 吉良 剛 (スペシャルゲスト)NAOTO バイオリン 【沖仁公式サイト】 https://jinoki.info/ >>>>>

  • 徳永兄弟コンサートホールツアー2022

    フラメンコギター・コンサート NEO FLAMENCO (domingo, 11 de junio 2023) 2022年12月2日(金) 浜離宮朝日ホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/ ⒸMariko Tagashira 昨年結成10周年を迎え、フラメンコはもちろん様々な音楽シーンでも活躍中のフラメンコギターデュオ、徳永兄弟のコンサートホールツアーが行われた。その東京公演の会場となったのは、クラシック・コンサートで有名な浜離宮朝日ホール。天井が高く、音響を重視した構造のコンサートホールだ。チケットは完売し会場は満席。カメラ席を一部開放して追加販売するほどだった。 プログラムは、前半は新作アルバムからカバー曲を中心に、後半は新作と合わせてこれまでのオリジナル曲を中心に構成される。 開演、二人が入場する。1曲目は「ブレリア・デ・パドレ」。最新アルバムの1曲目でもあるこの曲は、兄弟の実父でフラメンコギタリスト徳永武昭の作品を自分たちのテイストでリメイクしたというもの。のびのびと自然体で演奏する二人。気負いもなければ力みもない。それでいて、大編成の楽団に引けを取らないエネルギーと熱量を放ち、会場の空間をすべて自分たちの音楽で染め上げた。 演奏が終わり、MCで自己紹介と曲の紹介をすると、パーカッションのKANを舞台に招いて次の曲へ。2曲目も同アルバムから、ピアソラの有名な楽曲「リベルタンゴ」のフラメンコアレンジ曲。アルバムバージョンとはやや変化をつけ、イントロで二人が各々オリジナルのメロディーを奏でる。その会場でしか聴くことのできないアレンジを楽しめるのも、ライブ演奏ならではの魅力だ。 続いて3曲目は、彼らの4枚目のCDとなるベストアルバムから「赤とんぼ」。日本の憧憬を感じさせながらもフラメンコのグルーヴも楽しませてくれる曲だ。 今回のホールツアーに先立ち、NHKの人気の朝番組に出演してTVで生演奏を披露したことをきっかけに、これまでフラメンコを全く知らなかった人々から多くのファンを獲得した。そうした新しいファン層にとっても親しみやすい曲だっただろう。 次の曲は再び最新アルバムから「トリステーザ」。ブラジルのサンバの名曲を、フラメンコのルンバという曲種でアレンジした色彩豊かな曲。陽光にまどろむようなやさしい曲調に、ブラジル音楽にも精通するKANがパンデイロというブラジル・タンバリンでスパイスを効かせる。またソロ・パートでも、パーカッションの魅力が詰まったフレーズを楽しませてくれた。 前半最後の演奏は、チック・コリアの名曲「スペイン」。これまでに数々のフラメンコアーティストがアレンジ曲を発表しているが、徳永兄弟はさらなるオリジナリティを追求。ティエントとシギリージャという挑戦的なアレンジを行い、しっかり自分たちの音楽として手の内に収めた演奏を披露した。 休憩をはさんで後半は、アルバム曲「カルメンフラメンコファンタジー」からスタート。スペインを舞台とした世界的に有名なオペラ「カルメン」の人気曲で、通常はオーケストラで演奏される曲をフラメンコギターの演奏で聴けるのはとてもうれしい。「アラゴネーズ」から「ハバネラ」「闘牛士の歌」へと高揚感を掻き立てるような構成。アレンジではさまざまな曲種を取り入れ、MCで弟・康次郎は「(各アレンジの)リズムが変わるポイントを、ぜひCDを聴いて探してみてください」と観客に語った。 次の曲はベストアルバムから「マリアーナ」。昔からのフラメンコの曲種で、歌として歌われることが多いそうだが、ギター演奏でしっとりと味わい深い美しい旋律を聴かせてくれた。 ここでスペシャルゲストとして、NHK出演時にも共演したフラメンコダンサーの中原潤と鈴木時丹がパルマ(手拍子)として登場。演奏はセカンドアルバムにも収録される人気のオリジナル曲「魂の旅人」。パルマとハレオ(掛け声)が加わることで、音楽の響きと舞台の熱量にさらなる厚みが増す。TVで演奏した時はショート版だったが今回はフルサイズで披露し、観客からひときわ大きな拍手が上がった。 演奏後のMCではアルバムのレコ―ディングについての話題に。夢だったスペイン人のプロのパルマでの録音が叶ったことなどを話してくれた。 ラストの曲は、3枚目のアルバムに収録される「アスカル・モレーノ」。ライブならではのインプロのパフォーマンスで観客を楽しませ、盛り上がりの中で演奏を締めくくった。 アンコールは、スペイン版ゴット・タレントに出演した際に演奏したショート版の「ブレリア・デ・パドレ」。そしてダブル・アンコールは新作アルバムから「シェイプ・オブ・マイ・ハート」と「コーヒールンバ」のメドレー。最後に兄・健太郎は「これからも、他のフラメンコライブにも行ってみて楽しんでほしい」と語った。 音響の素晴らしい会場で最高の演奏を堪能した、至福の2時間はあっという間だった。そして次の公演は来る6月23日、東京の紀尾井ホールにて信頼のおける凄腕の素晴らしいメンバーが顔を揃える。 今後の徳永兄弟の活躍に注目だ。 【出演】 徳永兄弟 フラメンコギター KAN パーカッション 中原 潤 パルマ 鈴木時丹 パルマ 【徳永兄弟公式サイト】 https://www.tokunagaduo.com/ >>>>>

  • スペイン発☆志風恭子のフラメンコ・ホットライン

    (miércoles,7 de junio 2023) 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 聖週間、セビージャのフェリアに続いてへレスやコルドバなど各地でもフェリアが開催、そしてロシオ巡礼とアンダルシアではお祭りが続きます。それらが一段落したかと思うと、あれよあれよと夏休みに突入。他の地方の人から「アンダルシア人は怠け者で遊んでばかり」などと言われてしまうのも理解できるような気がします。でももちろんしっかり仕事や勉強もしていますよ。聖週間もフェリアも巡礼も、楽しむためにはお金がかかるんです。聖週間の行列に出るための装束、フェリアのカセータと呼ばれるテント小屋、セビージャでは会員制のところがほとんどですがその費用や飲食代、衣装代、子供がいれば遊園地にも連れて行かなくちゃ、と出費がかさみます。巡礼も飲食、宿泊、衣装、なにかとお金がかかります。大金持ちなら問題ありませんが、セビージャの庶民の中にはお祭りに命をかける勢いの人も多く、お祭りを楽しむためにも稼がなきゃ、なのです。 【マノロ・サンルーカルに捧げる】 4月25日、ヘレスのビジャマルタ劇場で、2022年8月27日に亡くなったギターの巨匠、マノロ・サンルーカルへのオマージュ公演が上演されました。通常の歌や踊りの伴奏、ソロでのリサイタルなどだけではなく、ギター奏者、作曲家として、交響楽団とフラメンコギターの共演を実現させ、毎年7月に行われるコルドバのギター祭で長年後進の指導にあたるなど、多方面にわたり、フラメンコの地平を開き未来へとつなげていったその功績を讃えてのこの公演には、タブラオ時代にも共演し、曲を捧げた踊り手メルチェ・エスメラルダ、かつてマノロのグループで第二ギタリストを務めたフアン・カルロス・ロメロやダビ・カルモナ、ライブでも録音でも共演した歌い手カルメン・リナーレス、パーカッション奏者ティノ・ディ・ジラルド、名作『タウロマヒア』に参加した地元へレスのマカニータとディエゴ・カラスコをはじめ、名だたるアーティストたちが出演。マノロの名作を次々と演奏しました。スペイン国立バレエの公演で日本でもお馴染みとなった名作『メデア』の音楽で、ファルキートとパストーラ・ガルバンが国立バレエのホセ・グラネーロ版ではなく、新しい振り付けで踊るなど、亡くなってなお、フラメンコのクリエイティビティに貢献、というのが、フラメンコを愛し、フラメンコの未来を憂えたマノロならではのようにも思えます。 【ホセ・デ・ラ・トマサにセビージャ市のメダル】 セビージャでは毎年5月30日、市の守護聖人、サン・フェルナンドの日に市のメダルを功労者に贈っていますが、今年度、歌い手ホセ・デ・ラ・トマサが受賞者の一人となることが5月8日、発表されました。 ホセ・デ・ラ・トマサ、本名ホセ・ジオルジオ・ソトは、1951年セビージャはマカレーナ地区、アラメーダの生まれ。父はピエ・デ・プロモ、母はトマサ・ソトと、ともに歌い手。母方の祖父がペペ・トーレ、大伯父が歴史に名を残す巨匠マヌエル・トーレというフラメンコの名門出身。1976年にはコルドバのコンクールでマヌエル・トーレ賞を受賞するなどしました。その後はペーニャやフェスティバルを主な舞台として活躍。またクリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校では創立当初より、カンテ科の教授を長らく務め、多くのアーティストの規範となりました。なお現在、スペイン国立バレエ団などで活躍している歌い手ガブリエル・デ・ラ・トマサは息子、若手のホープとして期待が高いマヌエル・デ・ラ・トマサは孫、とその伝統は次世代へと受け継がれています。 生まれ故郷のセビージャで、その功績が公に認められたことは嬉しい限りです。 ©Bienal de Sevilla Antonio Acedo 【新譜】 カディス県アルヘシラス出身のギタリスト、ホセ・カルロス・ゴメスの新譜『ラス・ウエジャス・デ・ディオス(神の足跡)』は、郷里の先輩パコ・デ・ルシアの足跡を追いつつ作曲した曲で綴るオマージュ・アルバム。ソングライターとしても活躍する彼はパコその人を直接知っているだけに、強い思いが感じられる1枚となっています。 クラウドファンディングで実現したアルバムで、本人の公式ウエブ(https://www.josecarlosgomez.es)から購入が可能*です。 *現在はスペイン国内のみの販売ですが、近いうちに国外への販売にも対応予定、とのことです(編集部注/5月23日現在) へレス出身で、現在は主にマリナ・エレディアやアルヘンティーナらの伴奏のほか、プロデューサーとしても活躍しているホセ・ケベド“ボリータ”のソロ・アルバム『フェルティル』。グループ、U.H.Fの仲間でパーカッションのパキート・ゴンサレスや、同郷の歌い手ロンドロが参加しています。YouTubeやSpotifyなどで聴くことができます。 https://www.youtube.com/watch?v=Gea4_GqHZFw&list=OLAK5uy_mDQzMUt7FjoV4GEmd3REhVmRiA1Kd5Gv 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>

  • 特集:立川フラメンコ2023開催!

    (lunes, 5 de junio 2023) 最高の行楽日和に恵まれたGW後半、今年で20回目となる立川フラメンコが開催されました。 5月になったばかりだというのに、眩しい日差しと夏の始まりのような暑さ。 それでも、いろいろと規制が緩和された恩恵を待ちわびていたかのように、イベントの舞台となるすずらん通りには大勢の人々が集まりました。 文・写真/金子功子 Texto y fotos por Noriko Kaneko 【ストリート・セビジャーナス】 この立川フラメンコを代表すると言ってもいいメインイベントが、JR立川駅南口から続く広いすずらん通りいっぱいに繰り広げられるストリート・セビジャーナスです。かつては500人規模の人々が集まりましたが、コロナ禍を経て今年は300人規模にまで回復しました。今回の参加者の中には、新幹線や飛行機に乗ってはるばる遠方から来た方もいたり、さらにはバスツアーを組んでいらした方もいたそうです。 参加者たちは思い思いの衣装をまとい、ばっちりメイクもして、皆グアパ(美人)で晴れやかな笑顔。フラメンコ教室やサークルの仲間たちで集まったり友人同士だったり、大小さまざまなグループが参加していました。男性の参加者も意外と多く、かっこいいスーツやおしゃれなシャツを着こなし、なかなかキマっていました。 セビジャーナスの定番アイテムでもあるカスタネットを奏でながら踊る人もいれば、アバニコ(扇子)を使ったりコルドベス帽を被って小粋に踊る人もいたり。パレードのどこを見てもそれぞれにカラフルで華やかで、まさに春祭りのような光景が繰り広げられました。 【特設ステージやライブハウスで本格的なフラメンコライブ】 ストリート・セビジャーナスの後は、すずらん通りの一番奥に設置された屋外特設ステージで、プロのフラメンコアーティストらによる本格的なライブが開催されました。立川フラメンコの発起人の1人でもあるフラメンコダンサーの堀江朋子さん(写真中央)を中心とするステージで、舞台の正面に用意されていた数十席の椅子はあっという間に満席に。その両側や後方、沿道にも多くの人たちが集まり、本場仕込みの踊りや歌、ギターを楽しんでいました。ライブ終演後には一般の方にステージを開放して、希望者はそこで記念写真を撮ることもできました。 屋外ステージが終わった後は、すずらん通りの路上に丸テーブルが並べられちょっとした休憩スペースが設置されましたが、そこでもフラメンコ愛好家たちが集まって、自然発生的にフィエスタが始まりました。数人のギタリストがブレリアを弾き始めると、誰からともなく歌が始まり、踊りで参加する人もいたりと、見る見る人垣ができました。こんなお祭り気分が楽しめるのも、立川フラメンコの魅力のひとつなのかも。 ライブは屋外ステージ以外でも行われ、JRAウインズ立川A館の1階ロビーに設置された屋内特設ステージや、駅周辺エリアにある2か所のライブハウスで、終日フラメンコのステージが行われました。立川近辺や西東京エリアを拠点に活動するフラメンコスタジオの生徒さんたちや、FLESPON全国学生フラメンコ連盟の皆さんや様々な愛好家グループのステージが行われ、前日の前夜祭ライブも含めると30近いプログラムが催されました。 どの会場も大勢の来場客でにぎわい、中には入場規制がかかるほど満員だったステージも。普段はフラメンコと縁がないようなごく一般のお客様も多く、初めて見るフラメンコをそれぞれに楽しんでいました。 【心強いボランティアやサポートの方々】 会場の至るところでは、黄色のTシャツやベスト姿のスタッフの方たちが見受けられました。これらの人たちは、地元商店街の方々や近くの学校に通う学生さんなどボランティアとして参加してくれた皆さんでした。他にも警備会社の警備員の方々が、場内が混雑しすぎないように警備してくれていました。 すずらん通りの入口付近で手指消毒のアナウンスや道案内などのボランティアをしてくれていたのは、地元の公務員・医療福祉系の専門学校に通う学生さんたち。今回のイベントについて聞いてみると、「久々の立川のイベントで、とても楽しみにしています」(坂戸麗音さん)、「初めてボランティアに参加して、初めてフラメンコを生で観ることができてうれしいです」(新田祐愛さん)、「初めてフラメンコを観るのを楽しみにしています」(亀之園雪菜さん)とのコメントを聞かせてくれました。 こうしたたくさんのボランティアスタッフによる心強いサポートのおかげで、大勢の人で賑わうイベントも安心かつ円滑に運営されていました。 【商店街クーポン券もうれしい】 立川駅周辺エリアで配布されていたこのイベントのチラシには、商店街の協力店で使えるお得なクーポンが印刷されていました。お会計からの割引クーポンだったり、ドリンクや小皿サービスだったり、お店ごとにうれしい特典が付いていました。私はあいにく時間の余裕が無くて利用できなかったのですが、もっとチラシをじっくりチェックして時間をやりくりできていたらなぁ…と、ほんの少し後悔。 もし来年参加したいと思った方は、ぜひこちらもチェックしてください! コロナ禍での長い行動制限期間を経て、ようやくかつての盛り上がりを取り戻し始めることができた今年の立川フラメンコ。たくさんの人のサポートのおかげで、参加者も来場者もそれぞれに明るい表情を見せ、心からイベントを楽しんでいるようでした。来年は今年よりもさらに安心して開放的に楽しめるように、様々な世の中の心配事が解消されていてほしいものです。 【第20回 立川フラメンコ2023】 2023年 5月2日(火) 1日目 ●「前夜祭」/JRAウインズ立川A館 5月3日(水祝) 2日目 ●ストリート・セビジャーナス/すずらん通り ●フラメンコライブステージ/屋外特設ステージ、JRAウインズ立川A館、ライブハウスBABEL、ライブハウス立川HeartBeat ●フラメンコライブ「堀江朋子と仲間たち」/屋外特設ステージ 踊り 堀江朋子、土井まさり、吉田光一、チャフェイ 歌 ホセ・エル・ニーニョ・カガオ ギター 柴田亮太郎 主催:立川南口すずらん通り商店街振興組合 共催:立川南口いろは通り商店街振興組合 >>>>>

  • 新・フラメンコのあした vol.4

    (lunes, 5 de junio 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、5月14日に開催されたフェスティバル「フラメンコ・マドリード2023」で上演された青少年による公演についてのリポートです。 文・写真/東 敬子 Texto y fotos por Keiko Higashi フンダシオン・アララ 『エル・アルボル・デル・フラメンコ』 フェスティバル「フラメンコ・マドリード2023」 カサ・エンセンディーダ特設会場、2023年5月14日、マドリード Fundación Alalá, “El Árbol del Flamenco” Festival Flamenco Madrid 2023 14, mayo 2023, La Casa Encendida, Madrid 今やマドリードを代表するフェスティバルの一つとなった「フラメンコ・マドリード」。第7回目を迎える今回は、子供たちに焦点を当てた、子供たちによる子供たちのためのフラメンコで幕を開けました。 日曜日の正午とあって、ファミリー客で賑わうカサ・エンセンディーダの中庭に設けられた特設ステージでは、フンダシオン・アララによる公演『エル・アルボル・デル・フラメンコ(フラメンコの木)』が、会場の赤ちゃんの泣き声に迎えられながら楽しくスタートしました。 フンダシオン・アララは、セビージャのポリゴノ・スール地区に拠点を置く児童教育を目的とした団体で、フラメンコやアートを通してこの地域に住む子供たちを支援し、現在はヘレス・デ・ラ・フロンテーラでも活動を行っています。 この団体は、ポリゴノ・スールに住むギタリスト、エミリオ“カラカフェ”が近所の子供に無料でギターを教えていたことに端を発しました。カラカフェと言うと、ドキュメンタリー映画『ポリゴノ・スール』(監督ドミニク・アベル、2003年)を思い出す人も多いですよね。今回は彼のギターと共に、アララでバイレ、カンテ、カホン、演劇を学ぶ26名(小学校高学年~中学生ぐらい)がステージを飾ります。 失われつつある自然と、消滅しつつあるフラメンコの伝統とを掛け合せ、それを子供たちの手で蘇らせようというストーリー。土地開発でじゃまになり、もうすぐ切り倒される大木のそばに、一人の少女が座ります。すると突然その木が喋りだし、彼女はびっくりしてすぐに仲良しグループの3人に報告しますが、信じてもらえません。しかしやがて4人は共に木の声を聞き、もうすぐ切り倒されることを知ります。そしてその木は「フラメンコの木」でした。 皆さんもフラメンコの本やサイトで、フラメンコの曲種やスタイルを図式化した『フラメンコの木』を見たことがあると思います。木の本体には根元から上に向かってトナー、ファンダンゴなどが育ち、そこからセギリージャ、カーニャ、などの枝が生えています。物語では、その「木」から少女が摘んだ葉っぱの曲種を「木」が説明してくれ、子供たちはフラメンコへの興味をどんどん深めていくのです。 まずはカマロンの楽曲をみんなで歌い、女性のソロでソレア、タンゴと続き、セギリージャでは4人のバイラオーラが魂を込めます。男性二人がそれぞれファンダンゴを熱唱し、バイレでセビジャーナス、アレグリアス、ブレリアと、華やかにクライマックスを迎えます。 フラメンコの未来のためにも、複雑な背景に育つ子供たちを支援するためにも、今回この作品が、この様な大きなフェスティバルの演目として上演されたことには大きな意義があったと思います。皆、真摯に打ち込み、今日のこの日を爽やかな笑顔で包みました。特にカンテソロを歌った3人は、フラメンコの味を惜しみなく味あわせてくれました。 ただ、物語のアイデアは良かったものの、コンテンポラリー風に踊りながらストーリーを伝える「ドゥエンデ」が大人の踊り手だったこともあいまって、先生と一緒に習ったことのお披露目というような、発表会の雰囲気になってしまったのは、一つの作品として観に来たフラメンコ・ファンには、残念ながら物足りなかったのかなと思いました。少なくとも、私はそう感じました。 小学生ぐらいの子たちの演技を見るのは、青田刈り的な楽しみがあるものです。しかし今回の公演では、子供というには既に立派に育ったティーンがほとんどだったので、つまりは「可愛いね、よく頑張ってるね」と闇雲に褒めてあげられる年齢でもなく、フラメンコでは15、6歳ですでにプロ意識を持って活動している才能ある若手はたくさんいますから、彼らとの技術・意識の差を感じざるを得ませんでした。 フラメンコの未来のためにも、将来プロを目指す小・中学生を一堂に会した公演がもっとあればな、と思います。昔はこんな機会がもっとあったように思います。ぜひ開催してほしい。それは出演する子供達は元より、フラメンコ関係者に留まらず、客席で楽しむ子供達、お父さん・お母さんにも刺激的な出会いになるはずです。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。 >>>>>

  • 工藤朋子フラメンコリサイタル vol.3「時と血と地と」

    (miércoles, 31 de mayo 2023) 2022年11月8日(火)・9日(水) パルテノン多摩 小ホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/川島浩之 Foto por Hiroyuki Kawashima アルテイソレラ舞踊団の中心メンバーとして活躍し、また自身の舞踊活動をも極め続けるフラメンコ舞踊家、工藤朋子の3回目となるソロリサイタルが開催された。 今回の作品は、自身のルーツである故郷の青森の伝統芸能である津軽三味線や祭り文化と、彼女が献身的に追求するフラメンコの要素、さらにはフラメンコのみならず戦国時代の日本にも影響を与えたというルネサンス音楽にまで遡り、構成を組み立てる。共演には古楽器やルネサンス音楽に精通しリコーダーのヴィルトゥオーゾ(名手)と名高い濱田芳通と、津軽三味線奏者として記録的な活躍を見せる浅野祥が参加する。フラメンコを追い求めるにつれて、「フラメンコと同様に苦難を生き抜いて来た人間の強い魂を宿す」津軽三味線とともに踊ることが大きな夢となっていた、と工藤はいう。 1曲目は、ルネサンス音楽のグレゴリオ聖歌から、日本の戦国時代に隠れキリシタンが歌い繋いできたという*オラショ「ぐるりよざ」、そして津軽民謡「じょんがら旧節」からロマ民族の流浪生活を歌った「Caravana」のメドレー。リコーダー、津軽三味線、ギター、パルマ、パーカッションの合奏に合わせて、白のノースリーブにパンツドレス姿の工藤が柔らかく伸びやかに踊る。また、場面に応じて浅野の独唱やパルマの矢野と三四郎がコーラスで加わり、ギターとカホンとパルマのみの編成でブレリアを演奏するなど、曲に合わせて構成を変化させ、それぞれの文化が受け継がれていく流れが感じられた。 プログラムには、津軽や東北の伝統芸能の要素が色濃く反映されるものが並んだ。宮城県の花嫁行列で歌われる祝い唄である宮城長持唄や、正月や節分などの節目を祝い歌われる青森民謡の南部俵積み唄、そしてじょんがら節などの民謡曲を、工藤は一所懸命に取り組んできたフラメンコの舞踊と音楽で表現する。それぞれの作品で彼女のルーツである津軽とフラメンコが絶妙に融合し、それは日本人としての私たちの心の琴線を深く共鳴させた。 また、五木の子守唄では津軽三味線との見事な協演を披露。浅野が弾く沸き立つ音色にブエルタやサパテアードで応え、弦の音に弾かれるように身体をしならせ自在に反応する。音を聴き心で感じたものをその肉体で無心に表現する姿は、自身の夢が実現した静かな喜びに満ちていた。 フラメンコの曲種では、その優れた舞踊技術と表現力で観客を魅了した。歌とカホン、パルマに合わせて奏でるクリアな足音とキレの良い踊りを披露したトナー。そしてシギリージャでは、共演者全員のエネルギーを一身に集め、思いの丈をすべて出し尽くすような渾身の舞いを見せた。 アンコールはお祭り歌で締めくくり、ラストはリコーダーの曲に合わせて一歩一歩踏みしめるように、足音の響きだけを余韻に残して、舞台を後にした。 各ジャンルの第一線で活躍するミュージシャンらとそれぞれの作品を作り上げ、「悠久の"時"を胸に、"血"脈を感じ、土"地"に想いを馳せながら」その身を委ね無心に踊った工藤。彼女の想いは、舞台を見届けた観客ひとりひとりの心に確かに伝わっただろう。 今作品は、令和4年度文化庁芸術祭参加公演として上演され、「日本の民族の大地に立脚したフラメンコとしての津軽との融和が見事であった」との高い評価を受け、舞踊部門で芸術祭新人賞を受賞した。工藤がひたむきに努力と研鑽を重ね、その成果が見事に結実した作品となった。 *オラショ:日本のキリシタン用語で「祈り」を意味する。(参照:岩波書店「広辞苑」第五版) 【プログラム】 1. 「おお、栄えある聖母マリアよ O gloriosa domina」(グレゴリオ聖歌)~ぐるりよざ(オラショ)~「おお、栄えある聖母マリアよ」~じょんがら旧節~「パッサメッツォ Passamezzo」~Caravana 2. トナー 3. 宮城長持唄・ガロティン 4. 「わが貴婦人タロリーリャ・デ・カラリェノスに捧ぐフォリアス」(アンドレア・ファルコニエーリ作曲) 5. 南部俵積み唄 6. じょんがら新節 7. 五木の子守歌 8. シギリージャ 【出演】 主演 工藤朋子(企画・振付) カンテ(歌) マヌエル・デ・ラ・マレーナ パーカッション 大儀見元 リコーダー 濱田芳通 津軽三味線・民謡 浅野祥 フラメンコギター 斎藤誠 パルマ 矢野吉峰/三四郎 演出・振付補助 佐藤浩希 >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 7

    第7回 Kumamotoフラメンコボーイズチームolé 【バイレ群舞部門/話題賞】 (viernes, 2 de junio 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思いなどを語ってもらいました。 第7回目は、バイレ群舞部門で話題賞を受賞したKumamotoフラメンコボーイズチームoléさんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 熊本フラメンコボーイズは、お母さんのレッスンにいつもついて来ていた小さな男の子たちでした。スタジオのサロンスペースで、ミニカーやパズルで遊んでいた姿が、今でも思い出されます。 そんなボーイズたちも数年のうち驚くほど成長し、体格だけは大人と違わないほどになっていきました。 コロナが少しずつ日本へ忍び寄って来た頃、学校では行事がことごとく中止になり、思うような学校生活も難しく、子ども達は何かに熱中する機会すら少ない状況でした。 そんな時期に開催した発表会は、以前に比べて参加人数が少なかったにもかかわらず、盛り上がりを見せてくれました。それには、キッズメンバーが今までにない成長を見せてくれたことが要因に上げられたと思います。スタジオでは子ども達中でも男の子達の存在がここ数年で大きくなっており、「今後の成長が楽しみだ」という声をよくいただいていました。 そういう経緯から、彼らをどうにかいい形で育てられないかと頭の中に思いを巡らせた末、私自身(林田)何度も挑戦した日本フラメンコ協会主催コンクール“新人公演”出場を目標に考えるようになりました。 メンバーは小5から中3までの男子5名。指導には以前よりクルシージョを通して、子どもたちにも数回指導をしてもらっていたSiroco(黒田紘登)氏にお願いしました。日本フラメンコ界を牽引する彼に、5 名の手を是非引っぱってほしいという思いでした。 準備に向けた半年間のハードな練習は、彼らにとって高すぎる壁だったかもしれません。今までとは求められるレベルが全く違い大変だったと思いますが、何かに熱中して懸命に努力するといういい機会となったようです。彼らの様子はコロナ禍のスタジオの雰囲気までもポジティブに変えてくれるような影響力があり、同時に頼もしくもあり大きな成長を感じました。 (練習について) 10年前からしていたフラメンコですが、新人公演に向けて練習し始めたのは半年前でした。それからは多いときには週に5日練習しました。きつい時もありましたが、チーム5人で助け合い切磋琢磨してきました。僕たちは本当に仲がいいと自分でも思います。この5人だったからこそ新人公演に出れたし、話題賞を受賞できたと思います。(渡辺里翔) 新人公演の練習が始まってからは、正直苦しいと感じることが多くありました。周りはみんな中学生だったので、同じことを練習しても僕にとってはとても難しくて大変でした。でも5人で自主練をする時間がいつも楽しかったので、やめたいと思ったことはありませんでした。「話題賞」を受賞したと聞いた時は、頑張って本当によかったなと思いました。(大森陽太) (新人公演について) 新人公演に出て、フラメンコを踊ることがとても楽しいことだと改めて感じることができました。新人公演の日、踊る前はとても緊張していました。しかし、シロコ先生やバックアーティストの方が本番の前に優しく話しかけてくださり、その緊張はほぐれました。そして、本番では緊張せずに踊れました。踊っている時は、とても楽しかったです。一緒に踊っていた他の4人も良い表情をしていました。練習の成果を存分に発揮できたと思います。そして、話題賞を受賞できてとても嬉しかったです。この貴重な経験はこれからの人生においてとても役立つと思います。これからもフラメンコを楽しく踊っていきたいです。(渡辺里翔) 僕はフラメンコを6年間やっていますが、いまだにその炎は消えていません。そしてまた自分は反抗期や思春期などの気難しい時期でもありますが、フラメンコはこれからも頑張っていこうと思います!(宮川駿) (写真)シロコ先生(写真一番左)とバックアーティストの皆さんと 【プロフィール】 Kumamotoフラメンコボーイズチームolé/熊本市のエストゥディオ・アレグリアス(林田紗綾主宰)在籍で、小学5年〜中学3年(*出演当時)までの5名で構成されたボーイズチーム。未就学〜低学年よりレッスンをスタートし現在に至る。2022年開催の新人公演群舞部門初出場。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

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