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  • 徳永兄弟コンサートホールツアー2022

    フラメンコギター・コンサート NEO FLAMENCO (domingo, 11 de junio 2023) 2022年12月2日(金) 浜離宮朝日ホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/ ⒸMariko Tagashira 昨年結成10周年を迎え、フラメンコはもちろん様々な音楽シーンでも活躍中のフラメンコギターデュオ、徳永兄弟のコンサートホールツアーが行われた。その東京公演の会場となったのは、クラシック・コンサートで有名な浜離宮朝日ホール。天井が高く、音響を重視した構造のコンサートホールだ。チケットは完売し会場は満席。カメラ席を一部開放して追加販売するほどだった。 プログラムは、前半は新作アルバムからカバー曲を中心に、後半は新作と合わせてこれまでのオリジナル曲を中心に構成される。 開演、二人が入場する。1曲目は「ブレリア・デ・パドレ」。最新アルバムの1曲目でもあるこの曲は、兄弟の実父でフラメンコギタリスト徳永武昭の作品を自分たちのテイストでリメイクしたというもの。のびのびと自然体で演奏する二人。気負いもなければ力みもない。それでいて、大編成の楽団に引けを取らないエネルギーと熱量を放ち、会場の空間をすべて自分たちの音楽で染め上げた。 演奏が終わり、MCで自己紹介と曲の紹介をすると、パーカッションのKANを舞台に招いて次の曲へ。2曲目も同アルバムから、ピアソラの有名な楽曲「リベルタンゴ」のフラメンコアレンジ曲。アルバムバージョンとはやや変化をつけ、イントロで二人が各々オリジナルのメロディーを奏でる。その会場でしか聴くことのできないアレンジを楽しめるのも、ライブ演奏ならではの魅力だ。 続いて3曲目は、彼らの4枚目のCDとなるベストアルバムから「赤とんぼ」。日本の憧憬を感じさせながらもフラメンコのグルーヴも楽しませてくれる曲だ。 今回のホールツアーに先立ち、NHKの人気の朝番組に出演してTVで生演奏を披露したことをきっかけに、これまでフラメンコを全く知らなかった人々から多くのファンを獲得した。そうした新しいファン層にとっても親しみやすい曲だっただろう。 次の曲は再び最新アルバムから「トリステーザ」。ブラジルのサンバの名曲を、フラメンコのルンバという曲種でアレンジした色彩豊かな曲。陽光にまどろむようなやさしい曲調に、ブラジル音楽にも精通するKANがパンデイロというブラジル・タンバリンでスパイスを効かせる。またソロ・パートでも、パーカッションの魅力が詰まったフレーズを楽しませてくれた。 前半最後の演奏は、チック・コリアの名曲「スペイン」。これまでに数々のフラメンコアーティストがアレンジ曲を発表しているが、徳永兄弟はさらなるオリジナリティを追求。ティエントとシギリージャという挑戦的なアレンジを行い、しっかり自分たちの音楽として手の内に収めた演奏を披露した。 休憩をはさんで後半は、アルバム曲「カルメンフラメンコファンタジー」からスタート。スペインを舞台とした世界的に有名なオペラ「カルメン」の人気曲で、通常はオーケストラで演奏される曲をフラメンコギターの演奏で聴けるのはとてもうれしい。「アラゴネーズ」から「ハバネラ」「闘牛士の歌」へと高揚感を掻き立てるような構成。アレンジではさまざまな曲種を取り入れ、MCで弟・康次郎は「(各アレンジの)リズムが変わるポイントを、ぜひCDを聴いて探してみてください」と観客に語った。 次の曲はベストアルバムから「マリアーナ」。昔からのフラメンコの曲種で、歌として歌われることが多いそうだが、ギター演奏でしっとりと味わい深い美しい旋律を聴かせてくれた。 ここでスペシャルゲストとして、NHK出演時にも共演したフラメンコダンサーの中原潤と鈴木時丹がパルマ(手拍子)として登場。演奏はセカンドアルバムにも収録される人気のオリジナル曲「魂の旅人」。パルマとハレオ(掛け声)が加わることで、音楽の響きと舞台の熱量にさらなる厚みが増す。TVで演奏した時はショート版だったが今回はフルサイズで披露し、観客からひときわ大きな拍手が上がった。 演奏後のMCではアルバムのレコ―ディングについての話題に。夢だったスペイン人のプロのパルマでの録音が叶ったことなどを話してくれた。 ラストの曲は、3枚目のアルバムに収録される「アスカル・モレーノ」。ライブならではのインプロのパフォーマンスで観客を楽しませ、盛り上がりの中で演奏を締めくくった。 アンコールは、スペイン版ゴット・タレントに出演した際に演奏したショート版の「ブレリア・デ・パドレ」。そしてダブル・アンコールは新作アルバムから「シェイプ・オブ・マイ・ハート」と「コーヒールンバ」のメドレー。最後に兄・健太郎は「これからも、他のフラメンコライブにも行ってみて楽しんでほしい」と語った。 音響の素晴らしい会場で最高の演奏を堪能した、至福の2時間はあっという間だった。そして次の公演は来る6月23日、東京の紀尾井ホールにて信頼のおける凄腕の素晴らしいメンバーが顔を揃える。 今後の徳永兄弟の活躍に注目だ。 【出演】 徳永兄弟 フラメンコギター KAN パーカッション 中原 潤 パルマ 鈴木時丹 パルマ 【徳永兄弟公式サイト】 https://www.tokunagaduo.com/ >>>>>

  • スペイン発☆志風恭子のフラメンコ・ホットライン

    (miércoles,7 de junio 2023) 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 聖週間、セビージャのフェリアに続いてへレスやコルドバなど各地でもフェリアが開催、そしてロシオ巡礼とアンダルシアではお祭りが続きます。それらが一段落したかと思うと、あれよあれよと夏休みに突入。他の地方の人から「アンダルシア人は怠け者で遊んでばかり」などと言われてしまうのも理解できるような気がします。でももちろんしっかり仕事や勉強もしていますよ。聖週間もフェリアも巡礼も、楽しむためにはお金がかかるんです。聖週間の行列に出るための装束、フェリアのカセータと呼ばれるテント小屋、セビージャでは会員制のところがほとんどですがその費用や飲食代、衣装代、子供がいれば遊園地にも連れて行かなくちゃ、と出費がかさみます。巡礼も飲食、宿泊、衣装、なにかとお金がかかります。大金持ちなら問題ありませんが、セビージャの庶民の中にはお祭りに命をかける勢いの人も多く、お祭りを楽しむためにも稼がなきゃ、なのです。 【マノロ・サンルーカルに捧げる】 4月25日、ヘレスのビジャマルタ劇場で、2022年8月27日に亡くなったギターの巨匠、マノロ・サンルーカルへのオマージュ公演が上演されました。通常の歌や踊りの伴奏、ソロでのリサイタルなどだけではなく、ギター奏者、作曲家として、交響楽団とフラメンコギターの共演を実現させ、毎年7月に行われるコルドバのギター祭で長年後進の指導にあたるなど、多方面にわたり、フラメンコの地平を開き未来へとつなげていったその功績を讃えてのこの公演には、タブラオ時代にも共演し、曲を捧げた踊り手メルチェ・エスメラルダ、かつてマノロのグループで第二ギタリストを務めたフアン・カルロス・ロメロやダビ・カルモナ、ライブでも録音でも共演した歌い手カルメン・リナーレス、パーカッション奏者ティノ・ディ・ジラルド、名作『タウロマヒア』に参加した地元へレスのマカニータとディエゴ・カラスコをはじめ、名だたるアーティストたちが出演。マノロの名作を次々と演奏しました。スペイン国立バレエの公演で日本でもお馴染みとなった名作『メデア』の音楽で、ファルキートとパストーラ・ガルバンが国立バレエのホセ・グラネーロ版ではなく、新しい振り付けで踊るなど、亡くなってなお、フラメンコのクリエイティビティに貢献、というのが、フラメンコを愛し、フラメンコの未来を憂えたマノロならではのようにも思えます。 【ホセ・デ・ラ・トマサにセビージャ市のメダル】 セビージャでは毎年5月30日、市の守護聖人、サン・フェルナンドの日に市のメダルを功労者に贈っていますが、今年度、歌い手ホセ・デ・ラ・トマサが受賞者の一人となることが5月8日、発表されました。 ホセ・デ・ラ・トマサ、本名ホセ・ジオルジオ・ソトは、1951年セビージャはマカレーナ地区、アラメーダの生まれ。父はピエ・デ・プロモ、母はトマサ・ソトと、ともに歌い手。母方の祖父がペペ・トーレ、大伯父が歴史に名を残す巨匠マヌエル・トーレというフラメンコの名門出身。1976年にはコルドバのコンクールでマヌエル・トーレ賞を受賞するなどしました。その後はペーニャやフェスティバルを主な舞台として活躍。またクリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校では創立当初より、カンテ科の教授を長らく務め、多くのアーティストの規範となりました。なお現在、スペイン国立バレエ団などで活躍している歌い手ガブリエル・デ・ラ・トマサは息子、若手のホープとして期待が高いマヌエル・デ・ラ・トマサは孫、とその伝統は次世代へと受け継がれています。 生まれ故郷のセビージャで、その功績が公に認められたことは嬉しい限りです。 ©Bienal de Sevilla Antonio Acedo 【新譜】 カディス県アルヘシラス出身のギタリスト、ホセ・カルロス・ゴメスの新譜『ラス・ウエジャス・デ・ディオス(神の足跡)』は、郷里の先輩パコ・デ・ルシアの足跡を追いつつ作曲した曲で綴るオマージュ・アルバム。ソングライターとしても活躍する彼はパコその人を直接知っているだけに、強い思いが感じられる1枚となっています。 クラウドファンディングで実現したアルバムで、本人の公式ウエブ(https://www.josecarlosgomez.es)から購入が可能*です。 *現在はスペイン国内のみの販売ですが、近いうちに国外への販売にも対応予定、とのことです(編集部注/5月23日現在) へレス出身で、現在は主にマリナ・エレディアやアルヘンティーナらの伴奏のほか、プロデューサーとしても活躍しているホセ・ケベド“ボリータ”のソロ・アルバム『フェルティル』。グループ、U.H.Fの仲間でパーカッションのパキート・ゴンサレスや、同郷の歌い手ロンドロが参加しています。YouTubeやSpotifyなどで聴くことができます。 https://www.youtube.com/watch?v=Gea4_GqHZFw&list=OLAK5uy_mDQzMUt7FjoV4GEmd3REhVmRiA1Kd5Gv 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>

  • 特集:立川フラメンコ2023開催!

    (lunes, 5 de junio 2023) 最高の行楽日和に恵まれたGW後半、今年で20回目となる立川フラメンコが開催されました。 5月になったばかりだというのに、眩しい日差しと夏の始まりのような暑さ。 それでも、いろいろと規制が緩和された恩恵を待ちわびていたかのように、イベントの舞台となるすずらん通りには大勢の人々が集まりました。 文・写真/金子功子 Texto y fotos por Noriko Kaneko 【ストリート・セビジャーナス】 この立川フラメンコを代表すると言ってもいいメインイベントが、JR立川駅南口から続く広いすずらん通りいっぱいに繰り広げられるストリート・セビジャーナスです。かつては500人規模の人々が集まりましたが、コロナ禍を経て今年は300人規模にまで回復しました。今回の参加者の中には、新幹線や飛行機に乗ってはるばる遠方から来た方もいたり、さらにはバスツアーを組んでいらした方もいたそうです。 参加者たちは思い思いの衣装をまとい、ばっちりメイクもして、皆グアパ(美人)で晴れやかな笑顔。フラメンコ教室やサークルの仲間たちで集まったり友人同士だったり、大小さまざまなグループが参加していました。男性の参加者も意外と多く、かっこいいスーツやおしゃれなシャツを着こなし、なかなかキマっていました。 セビジャーナスの定番アイテムでもあるカスタネットを奏でながら踊る人もいれば、アバニコ(扇子)を使ったりコルドベス帽を被って小粋に踊る人もいたり。パレードのどこを見てもそれぞれにカラフルで華やかで、まさに春祭りのような光景が繰り広げられました。 【特設ステージやライブハウスで本格的なフラメンコライブ】 ストリート・セビジャーナスの後は、すずらん通りの一番奥に設置された屋外特設ステージで、プロのフラメンコアーティストらによる本格的なライブが開催されました。立川フラメンコの発起人の1人でもあるフラメンコダンサーの堀江朋子さん(写真中央)を中心とするステージで、舞台の正面に用意されていた数十席の椅子はあっという間に満席に。その両側や後方、沿道にも多くの人たちが集まり、本場仕込みの踊りや歌、ギターを楽しんでいました。ライブ終演後には一般の方にステージを開放して、希望者はそこで記念写真を撮ることもできました。 屋外ステージが終わった後は、すずらん通りの路上に丸テーブルが並べられちょっとした休憩スペースが設置されましたが、そこでもフラメンコ愛好家たちが集まって、自然発生的にフィエスタが始まりました。数人のギタリストがブレリアを弾き始めると、誰からともなく歌が始まり、踊りで参加する人もいたりと、見る見る人垣ができました。こんなお祭り気分が楽しめるのも、立川フラメンコの魅力のひとつなのかも。 ライブは屋外ステージ以外でも行われ、JRAウインズ立川A館の1階ロビーに設置された屋内特設ステージや、駅周辺エリアにある2か所のライブハウスで、終日フラメンコのステージが行われました。立川近辺や西東京エリアを拠点に活動するフラメンコスタジオの生徒さんたちや、FLESPON全国学生フラメンコ連盟の皆さんや様々な愛好家グループのステージが行われ、前日の前夜祭ライブも含めると30近いプログラムが催されました。 どの会場も大勢の来場客でにぎわい、中には入場規制がかかるほど満員だったステージも。普段はフラメンコと縁がないようなごく一般のお客様も多く、初めて見るフラメンコをそれぞれに楽しんでいました。 【心強いボランティアやサポートの方々】 会場の至るところでは、黄色のTシャツやベスト姿のスタッフの方たちが見受けられました。これらの人たちは、地元商店街の方々や近くの学校に通う学生さんなどボランティアとして参加してくれた皆さんでした。他にも警備会社の警備員の方々が、場内が混雑しすぎないように警備してくれていました。 すずらん通りの入口付近で手指消毒のアナウンスや道案内などのボランティアをしてくれていたのは、地元の公務員・医療福祉系の専門学校に通う学生さんたち。今回のイベントについて聞いてみると、「久々の立川のイベントで、とても楽しみにしています」(坂戸麗音さん)、「初めてボランティアに参加して、初めてフラメンコを生で観ることができてうれしいです」(新田祐愛さん)、「初めてフラメンコを観るのを楽しみにしています」(亀之園雪菜さん)とのコメントを聞かせてくれました。 こうしたたくさんのボランティアスタッフによる心強いサポートのおかげで、大勢の人で賑わうイベントも安心かつ円滑に運営されていました。 【商店街クーポン券もうれしい】 立川駅周辺エリアで配布されていたこのイベントのチラシには、商店街の協力店で使えるお得なクーポンが印刷されていました。お会計からの割引クーポンだったり、ドリンクや小皿サービスだったり、お店ごとにうれしい特典が付いていました。私はあいにく時間の余裕が無くて利用できなかったのですが、もっとチラシをじっくりチェックして時間をやりくりできていたらなぁ…と、ほんの少し後悔。 もし来年参加したいと思った方は、ぜひこちらもチェックしてください! コロナ禍での長い行動制限期間を経て、ようやくかつての盛り上がりを取り戻し始めることができた今年の立川フラメンコ。たくさんの人のサポートのおかげで、参加者も来場者もそれぞれに明るい表情を見せ、心からイベントを楽しんでいるようでした。来年は今年よりもさらに安心して開放的に楽しめるように、様々な世の中の心配事が解消されていてほしいものです。 【第20回 立川フラメンコ2023】 2023年 5月2日(火) 1日目 ●「前夜祭」/JRAウインズ立川A館 5月3日(水祝) 2日目 ●ストリート・セビジャーナス/すずらん通り ●フラメンコライブステージ/屋外特設ステージ、JRAウインズ立川A館、ライブハウスBABEL、ライブハウス立川HeartBeat ●フラメンコライブ「堀江朋子と仲間たち」/屋外特設ステージ 踊り 堀江朋子、土井まさり、吉田光一、チャフェイ 歌 ホセ・エル・ニーニョ・カガオ ギター 柴田亮太郎 主催:立川南口すずらん通り商店街振興組合 共催:立川南口いろは通り商店街振興組合 >>>>>

  • 新・フラメンコのあした vol.4

    (lunes, 5 de junio 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、5月14日に開催されたフェスティバル「フラメンコ・マドリード2023」で上演された青少年による公演についてのリポートです。 文・写真/東 敬子 Texto y fotos por Keiko Higashi フンダシオン・アララ 『エル・アルボル・デル・フラメンコ』 フェスティバル「フラメンコ・マドリード2023」 カサ・エンセンディーダ特設会場、2023年5月14日、マドリード Fundación Alalá, “El Árbol del Flamenco” Festival Flamenco Madrid 2023 14, mayo 2023, La Casa Encendida, Madrid 今やマドリードを代表するフェスティバルの一つとなった「フラメンコ・マドリード」。第7回目を迎える今回は、子供たちに焦点を当てた、子供たちによる子供たちのためのフラメンコで幕を開けました。 日曜日の正午とあって、ファミリー客で賑わうカサ・エンセンディーダの中庭に設けられた特設ステージでは、フンダシオン・アララによる公演『エル・アルボル・デル・フラメンコ(フラメンコの木)』が、会場の赤ちゃんの泣き声に迎えられながら楽しくスタートしました。 フンダシオン・アララは、セビージャのポリゴノ・スール地区に拠点を置く児童教育を目的とした団体で、フラメンコやアートを通してこの地域に住む子供たちを支援し、現在はヘレス・デ・ラ・フロンテーラでも活動を行っています。 この団体は、ポリゴノ・スールに住むギタリスト、エミリオ“カラカフェ”が近所の子供に無料でギターを教えていたことに端を発しました。カラカフェと言うと、ドキュメンタリー映画『ポリゴノ・スール』(監督ドミニク・アベル、2003年)を思い出す人も多いですよね。今回は彼のギターと共に、アララでバイレ、カンテ、カホン、演劇を学ぶ26名(小学校高学年~中学生ぐらい)がステージを飾ります。 失われつつある自然と、消滅しつつあるフラメンコの伝統とを掛け合せ、それを子供たちの手で蘇らせようというストーリー。土地開発でじゃまになり、もうすぐ切り倒される大木のそばに、一人の少女が座ります。すると突然その木が喋りだし、彼女はびっくりしてすぐに仲良しグループの3人に報告しますが、信じてもらえません。しかしやがて4人は共に木の声を聞き、もうすぐ切り倒されることを知ります。そしてその木は「フラメンコの木」でした。 皆さんもフラメンコの本やサイトで、フラメンコの曲種やスタイルを図式化した『フラメンコの木』を見たことがあると思います。木の本体には根元から上に向かってトナー、ファンダンゴなどが育ち、そこからセギリージャ、カーニャ、などの枝が生えています。物語では、その「木」から少女が摘んだ葉っぱの曲種を「木」が説明してくれ、子供たちはフラメンコへの興味をどんどん深めていくのです。 まずはカマロンの楽曲をみんなで歌い、女性のソロでソレア、タンゴと続き、セギリージャでは4人のバイラオーラが魂を込めます。男性二人がそれぞれファンダンゴを熱唱し、バイレでセビジャーナス、アレグリアス、ブレリアと、華やかにクライマックスを迎えます。 フラメンコの未来のためにも、複雑な背景に育つ子供たちを支援するためにも、今回この作品が、この様な大きなフェスティバルの演目として上演されたことには大きな意義があったと思います。皆、真摯に打ち込み、今日のこの日を爽やかな笑顔で包みました。特にカンテソロを歌った3人は、フラメンコの味を惜しみなく味あわせてくれました。 ただ、物語のアイデアは良かったものの、コンテンポラリー風に踊りながらストーリーを伝える「ドゥエンデ」が大人の踊り手だったこともあいまって、先生と一緒に習ったことのお披露目というような、発表会の雰囲気になってしまったのは、一つの作品として観に来たフラメンコ・ファンには、残念ながら物足りなかったのかなと思いました。少なくとも、私はそう感じました。 小学生ぐらいの子たちの演技を見るのは、青田刈り的な楽しみがあるものです。しかし今回の公演では、子供というには既に立派に育ったティーンがほとんどだったので、つまりは「可愛いね、よく頑張ってるね」と闇雲に褒めてあげられる年齢でもなく、フラメンコでは15、6歳ですでにプロ意識を持って活動している才能ある若手はたくさんいますから、彼らとの技術・意識の差を感じざるを得ませんでした。 フラメンコの未来のためにも、将来プロを目指す小・中学生を一堂に会した公演がもっとあればな、と思います。昔はこんな機会がもっとあったように思います。ぜひ開催してほしい。それは出演する子供達は元より、フラメンコ関係者に留まらず、客席で楽しむ子供達、お父さん・お母さんにも刺激的な出会いになるはずです。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。 >>>>>

  • 工藤朋子フラメンコリサイタル vol.3「時と血と地と」

    (miércoles, 31 de mayo 2023) 2022年11月8日(火)・9日(水) パルテノン多摩 小ホール(東京) 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/川島浩之 Foto por Hiroyuki Kawashima アルテイソレラ舞踊団の中心メンバーとして活躍し、また自身の舞踊活動をも極め続けるフラメンコ舞踊家、工藤朋子の3回目となるソロリサイタルが開催された。 今回の作品は、自身のルーツである故郷の青森の伝統芸能である津軽三味線や祭り文化と、彼女が献身的に追求するフラメンコの要素、さらにはフラメンコのみならず戦国時代の日本にも影響を与えたというルネサンス音楽にまで遡り、構成を組み立てる。共演には古楽器やルネサンス音楽に精通しリコーダーのヴィルトゥオーゾ(名手)と名高い濱田芳通と、津軽三味線奏者として記録的な活躍を見せる浅野祥が参加する。フラメンコを追い求めるにつれて、「フラメンコと同様に苦難を生き抜いて来た人間の強い魂を宿す」津軽三味線とともに踊ることが大きな夢となっていた、と工藤はいう。 1曲目は、ルネサンス音楽のグレゴリオ聖歌から、日本の戦国時代に隠れキリシタンが歌い繋いできたという*オラショ「ぐるりよざ」、そして津軽民謡「じょんがら旧節」からロマ民族の流浪生活を歌った「Caravana」のメドレー。リコーダー、津軽三味線、ギター、パルマ、パーカッションの合奏に合わせて、白のノースリーブにパンツドレス姿の工藤が柔らかく伸びやかに踊る。また、場面に応じて浅野の独唱やパルマの矢野と三四郎がコーラスで加わり、ギターとカホンとパルマのみの編成でブレリアを演奏するなど、曲に合わせて構成を変化させ、それぞれの文化が受け継がれていく流れが感じられた。 プログラムには、津軽や東北の伝統芸能の要素が色濃く反映されるものが並んだ。宮城県の花嫁行列で歌われる祝い唄である宮城長持唄や、正月や節分などの節目を祝い歌われる青森民謡の南部俵積み唄、そしてじょんがら節などの民謡曲を、工藤は一所懸命に取り組んできたフラメンコの舞踊と音楽で表現する。それぞれの作品で彼女のルーツである津軽とフラメンコが絶妙に融合し、それは日本人としての私たちの心の琴線を深く共鳴させた。 また、五木の子守唄では津軽三味線との見事な協演を披露。浅野が弾く沸き立つ音色にブエルタやサパテアードで応え、弦の音に弾かれるように身体をしならせ自在に反応する。音を聴き心で感じたものをその肉体で無心に表現する姿は、自身の夢が実現した静かな喜びに満ちていた。 フラメンコの曲種では、その優れた舞踊技術と表現力で観客を魅了した。歌とカホン、パルマに合わせて奏でるクリアな足音とキレの良い踊りを披露したトナー。そしてシギリージャでは、共演者全員のエネルギーを一身に集め、思いの丈をすべて出し尽くすような渾身の舞いを見せた。 アンコールはお祭り歌で締めくくり、ラストはリコーダーの曲に合わせて一歩一歩踏みしめるように、足音の響きだけを余韻に残して、舞台を後にした。 各ジャンルの第一線で活躍するミュージシャンらとそれぞれの作品を作り上げ、「悠久の"時"を胸に、"血"脈を感じ、土"地"に想いを馳せながら」その身を委ね無心に踊った工藤。彼女の想いは、舞台を見届けた観客ひとりひとりの心に確かに伝わっただろう。 今作品は、令和4年度文化庁芸術祭参加公演として上演され、「日本の民族の大地に立脚したフラメンコとしての津軽との融和が見事であった」との高い評価を受け、舞踊部門で芸術祭新人賞を受賞した。工藤がひたむきに努力と研鑽を重ね、その成果が見事に結実した作品となった。 *オラショ:日本のキリシタン用語で「祈り」を意味する。(参照:岩波書店「広辞苑」第五版) 【プログラム】 1. 「おお、栄えある聖母マリアよ O gloriosa domina」(グレゴリオ聖歌)~ぐるりよざ(オラショ)~「おお、栄えある聖母マリアよ」~じょんがら旧節~「パッサメッツォ Passamezzo」~Caravana 2. トナー 3. 宮城長持唄・ガロティン 4. 「わが貴婦人タロリーリャ・デ・カラリェノスに捧ぐフォリアス」(アンドレア・ファルコニエーリ作曲) 5. 南部俵積み唄 6. じょんがら新節 7. 五木の子守歌 8. シギリージャ 【出演】 主演 工藤朋子(企画・振付) カンテ(歌) マヌエル・デ・ラ・マレーナ パーカッション 大儀見元 リコーダー 濱田芳通 津軽三味線・民謡 浅野祥 フラメンコギター 斎藤誠 パルマ 矢野吉峰/三四郎 演出・振付補助 佐藤浩希 >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 7

    第7回 Kumamotoフラメンコボーイズチームolé 【バイレ群舞部門/話題賞】 (viernes, 2 de junio 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思いなどを語ってもらいました。 第7回目は、バイレ群舞部門で話題賞を受賞したKumamotoフラメンコボーイズチームoléさんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 熊本フラメンコボーイズは、お母さんのレッスンにいつもついて来ていた小さな男の子たちでした。スタジオのサロンスペースで、ミニカーやパズルで遊んでいた姿が、今でも思い出されます。 そんなボーイズたちも数年のうち驚くほど成長し、体格だけは大人と違わないほどになっていきました。 コロナが少しずつ日本へ忍び寄って来た頃、学校では行事がことごとく中止になり、思うような学校生活も難しく、子ども達は何かに熱中する機会すら少ない状況でした。 そんな時期に開催した発表会は、以前に比べて参加人数が少なかったにもかかわらず、盛り上がりを見せてくれました。それには、キッズメンバーが今までにない成長を見せてくれたことが要因に上げられたと思います。スタジオでは子ども達中でも男の子達の存在がここ数年で大きくなっており、「今後の成長が楽しみだ」という声をよくいただいていました。 そういう経緯から、彼らをどうにかいい形で育てられないかと頭の中に思いを巡らせた末、私自身(林田)何度も挑戦した日本フラメンコ協会主催コンクール“新人公演”出場を目標に考えるようになりました。 メンバーは小5から中3までの男子5名。指導には以前よりクルシージョを通して、子どもたちにも数回指導をしてもらっていたSiroco(黒田紘登)氏にお願いしました。日本フラメンコ界を牽引する彼に、5 名の手を是非引っぱってほしいという思いでした。 準備に向けた半年間のハードな練習は、彼らにとって高すぎる壁だったかもしれません。今までとは求められるレベルが全く違い大変だったと思いますが、何かに熱中して懸命に努力するといういい機会となったようです。彼らの様子はコロナ禍のスタジオの雰囲気までもポジティブに変えてくれるような影響力があり、同時に頼もしくもあり大きな成長を感じました。 (練習について) 10年前からしていたフラメンコですが、新人公演に向けて練習し始めたのは半年前でした。それからは多いときには週に5日練習しました。きつい時もありましたが、チーム5人で助け合い切磋琢磨してきました。僕たちは本当に仲がいいと自分でも思います。この5人だったからこそ新人公演に出れたし、話題賞を受賞できたと思います。(渡辺里翔) 新人公演の練習が始まってからは、正直苦しいと感じることが多くありました。周りはみんな中学生だったので、同じことを練習しても僕にとってはとても難しくて大変でした。でも5人で自主練をする時間がいつも楽しかったので、やめたいと思ったことはありませんでした。「話題賞」を受賞したと聞いた時は、頑張って本当によかったなと思いました。(大森陽太) (新人公演について) 新人公演に出て、フラメンコを踊ることがとても楽しいことだと改めて感じることができました。新人公演の日、踊る前はとても緊張していました。しかし、シロコ先生やバックアーティストの方が本番の前に優しく話しかけてくださり、その緊張はほぐれました。そして、本番では緊張せずに踊れました。踊っている時は、とても楽しかったです。一緒に踊っていた他の4人も良い表情をしていました。練習の成果を存分に発揮できたと思います。そして、話題賞を受賞できてとても嬉しかったです。この貴重な経験はこれからの人生においてとても役立つと思います。これからもフラメンコを楽しく踊っていきたいです。(渡辺里翔) 僕はフラメンコを6年間やっていますが、いまだにその炎は消えていません。そしてまた自分は反抗期や思春期などの気難しい時期でもありますが、フラメンコはこれからも頑張っていこうと思います!(宮川駿) (写真)シロコ先生(写真一番左)とバックアーティストの皆さんと 【プロフィール】 Kumamotoフラメンコボーイズチームolé/熊本市のエストゥディオ・アレグリアス(林田紗綾主宰)在籍で、小学5年〜中学3年(*出演当時)までの5名で構成されたボーイズチーム。未就学〜低学年よりレッスンをスタートし現在に至る。2022年開催の新人公演群舞部門初出場。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

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    FUEGO DE MI ALMA ~炎魂~ 公家千彰フラメンコ公演 (domingo, 28 de mayo 2023) フラメンコ舞踊家、公家千彰さんによる劇場公演がこの夏開催されます。半世紀前のエネルギッシュなフラメンコへのオマージュを交えながら、自分とは何なのか?という大きな命題に立ち向かう今回の舞台。構成・演出には日本古来の文化への造詣が深い現代舞踊家の石井武さん、音楽監督にはフラメンコの伝統を重んじるギタリストのぺぺ・マジャ“マローテ”さんを迎え、出演者には活躍中の若手ダンサーや実力派ミュージシャンらが顔を揃えます。 公家さんは「古きを知り、新しく生まれ変わる"魂の炎"、今を生きる私たちのフラメンコを踊ります」と公演への意気込みを語ります。熱い思いに溢れる舞台を、ぜひ劇場でご覧ください! [日時] 2023年8月22日(火) 開演19:00(開場18:30) [会場] 東京・荏原スクエアひらつかホール [チケット] 全席指定7,000円 [予約/問合せ] ・ライブポケット:https://t.livepocket.jp/e/chiakifuego ・Tel : 090-6028-2039(公家) ・email: chiakivo@gmail.com 出演: [ギター] ペペ・マジャ"マローテ"、カルロス・パルド [カンテ] ミゲル・デ・バダホス、エル・プラテアオ [バイオリン] 森川拓哉 [フルート] Mashiro [カホン] 飴谷圭介 [現代舞踊] 石井 武 [フラメンコ舞踊] 小谷野宏司、鈴木時丹、川松冬花、田中菜穂子、公家千彰 [アンサンブル] 平原響花、田邉千加子、蒲真理子、藤村 詩、藤村明子 [アクセス] 荏原スクエアひらつかホール 〒142-0063 東京都品川区荏原4-5-28 Tel. 03-5788-5321 東急目黒線 「武蔵小山駅」 徒歩10分 東急池上線 「戸越銀座駅」「荏原中延駅」 徒歩10分 都営浅草線 「戸越駅」(A3出口) 徒歩12分 ※会場地図はこちら >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 6

    第6回 和泉冴英香 【バイレソロ部門/奨励賞】 (viernes, 26 de mayo 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。 第6回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した和泉冴英香さんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 今回は3回目の挑戦で、新人公演を一つの目標にして、自分の踊りともう一歩向き合いたいと思ったのが最初のきっかけです。 2019年にスペインへ1年間行ってきて、そこから3年くらいバイレに集中して向き合ってこなかったのですが、その分フラメンコをたくさん見て聞いて感じて吸収してきたあれやこれを、踊りに昇華できるよう挑戦してみたいと思いました。 本番を迎えるまでの期間は、自分の好きなフラメンコを大切にしながらも、新人公演という場で踊るに"ふさわしい"ものになっているかどうか、常に自問自答を繰り返しながら作っていました。ついつい自分の「好き」をフォーカスしすぎると、7分では収まらないしタブラオで踊るような構成になってしまいます。いかに7分で自分のフラメンコを一つのヌメロに投影するかは至難の業で、正解がないので構成や振りもギリギリまで変えていました。ただ、最終的には自分を信じて、「最後まで丁寧に踊り切ること」を一番に考えました。 本番前後の記憶はだいぶ薄れていますが(笑)、当日は割とリラックスしていました。バックのエミリオ(マジャ)、ディエゴ(ゴメス)、(三枝)雄輔さんのお三方は今回で3回目。普段もとても有難いことにライブで共演させていただいているので、絶大な信頼がおけるメンバーでやれたこともリラックスして挑めた大きな要因でした。 受賞を知った時は率直にとても嬉しく、安堵しました。3回目の挑戦だったので、今回は受賞したいと思っていました。 ただ、踊り切った後はやり切った感も多少ありましたが、それと結果がどう結びつくかは未知で、自信がなかっただけに結果を知ってとても安心しました。何よりも母や師匠、周りの人や応援してくれた人たちに良い知らせができるというのが嬉しかったです。 当日の舞台に立つまで、私も悩んだり色々とありましたが、それでも「大好きなフラメンコにこれだけ向き合えてる。そんな機会があって素晴らしい!!」と思えたら、悩んでいたこと全てが一旦チャラになりました。もちろん、またすぐに悩みは出てくるものですが(笑) 昨年の今頃、頭を抱えて悩んでいた自分に自分でエールを送って奮い立たせていたように、今年は新人公演の舞台に立つ全ての方々に、心からエールを送りたいと思います!! (写真)Ⓒ大森有起 【プロフィール】 和泉冴英香(Saeka Izumi)/東京、門前仲町の下町育ち。母の影響で8歳の頃に曽我部靖子フラメンコ教室にて踊りを始める。その後、吉田久美子、森田志保に師事。2019年に1年間渡西、ヘレスを中心に滞在。2022年、新人公演奨励賞を受賞。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

  • ★フラメンコnews☆

    第12回CAFフラメンコ・コンクール募集要項が発表! (miércoles, 24 de mayo 2023) 今秋開催されるMARUWA財団主催による第12回CAFフラメンコ・コンクールの募集要項が発表されました。 このコンクールは2年に1度開催され、若手芸術家の育成を目指し、将来性のある舞踊家を発掘し、スペインでの研修機会を提供するための対象者を選考することを目的としたもの。 応募資格は、スペインでのフラメンコ研修を希望する35歳以下(2023年3月31日時点)の方が対象で、一次予選となるDVDの応募によるビデオ審査は、今年8月16日より受付が始まります。 なお、今回は二次予選・本選とも11月に行われるため、開催時期が例年より早まっていますのでご注意ください。 出場を検討している方は、奮ってご応募を! [日程] 一次予選:応募DVDによるビデオ審査 (受付期間/2023年8月16日~9月5日17時必着) 二次予選:2023年11月14日(火)15:30~ 北千住Theatre1010 本 選: 2023年11月30日(木)16:00~ 北千住Theatre1010 [問] 公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 URL:http://www.mwf.or.jp

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 5

    第5回 Las Mieles 【バイレ群舞部門/奨励賞】 (viernes, 19 de mayo 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。 第5回目は、バイレ群舞部門で奨励賞を受賞したLas Mielesさんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko フラメンコをやっている方で、新人公演に挑戦してみたい!と考える方は少なくないと思います。私達のメンバー内にも過去の新人公演参加経験者、今後ソロで参加する事を考えている者が居ました。 2021年、教室の一部のクラスで参加したイベントがあり、そこでは広い舞台を存分に使うフォーメーションの面白さや、仲間と息を合わせる一体感の心地よさを経験し、『新人公演に挑戦したいけど、1人では自信がない…』『次の新人公演に群舞で参加したい!』そんな思いを抱いたメンバーからの提案で、2022年の新人公演参加を目標とし、クラスの枠を越えた7人が決まりました。『ソロとは別の大変さがあるけど、群舞ならではのやりがいがあるはず!』、『この7人なら、きっと一緒に頑張れる!』と一致団結し、篠田三枝先生に指導をお願いし、曲はカーニャでエントリーすることとなりました。 コロナの影響で、2020年は開催中止、2021年は無観客開催であり、はてさて2022年は一体どうなるのか…?という不安はありました。また、コロナに感染しないか等の体調管理や、仕事や家庭との両立等、本番に向けて様々な生活上の調整が必要でした。7人全員が揃って練習できる日や練習スタジオの確保もなかなか難しいものでした。また、メンバー7人の年齢幅は広く、フラメンコ経験年数も異なりますので、楽しく仲良く、でもお互いの意見をしっかりと言い合える関係を築けるよう心掛けました。 三枝先生からたくさんの意見を頂き、メンバー個々のアイデアを交えつつ、より良いものになるよう試行錯誤しながら、カーニャの構成やフォーメーションを作っていきました。個々の技術向上はもちろんですが、群舞では一人一人が良いだけでは意味がなく、7人の動き、向き、位置、意識、イメージ等全てが揃うよう、とことん練習しました。 準備期間中の大変だった点のひとつとして、『椅子の運搬』がありました。舞台に立体感を出そうと椅子を用いる事となり、自前で同じ椅子を5脚購入し、練習スタジオが毎回異なるためその都度分担して椅子を運び、人目も気にせず電車移動したことは、今となっては良き思い出となりました。 当日までにいくつかのハプニングはありましたが、メンバー7人、三枝先生、アルティスタのお2人、みんな万全の状態で本番当日を迎えることが出来ました。よりによって当日は台風が接近し朝から悪天候でしたが、無事会場入りできました。 場当たりや照明の打ち合わせは、限られた時間内に効率良く確認できるように予めポイントを絞り、『場当たりの練習』をしておいたことが功を奏しました。他の出演者の方々のリハーサルをモニターや舞台袖から観て震え、大変緊張しましたが、これまでの練習を思いだし、自分たちができることを精一杯やりきろうと!思いました。 本番中はメンバー全員、お互いにわかる程物凄く集中力があり、歌とギター、三枝先生のパルマやハレオを一身に浴び、あっという間の7分でした。『みんなで踊れて良かった!』という熱い気持ち、『ああ、終わってしまう~』という淋しさ、最後のポーズで涙しながら客席からの拍手を聴いたこと、今もあの感動は忘れません! 審査発表の日は皆で一緒に結果を聞こうと、7人のメンバー全員と三枝先生で集合しました。 『奨励賞をとれなくても、今までやってきたことは無駄じゃない』と思いつつ、結果を知った後はみんなで抱き合って大泣き、大喜びでした。安堵の思いと、受賞して終わりではなく、これからもより一層フラメンコに真摯に向かい合っていきたいと感じました。 挑戦する事はとても勇気がいるかと思いますが、本番までの練習や様々な苦労は、決して無駄になりません。新人公演に出ることが目的ではなく、自分自身や仲間と苦労したり悩んだりしながら、成長することが目的だと思います。 私達7人、フラメンコを通して泣いたり笑ったりしながら、学生時代に戻ったかのような熱い青春を過ごせたことは、一生ものの財産となりました。 新人公演に挑戦することで、フラメンコをやって良かったと、1人でも多くの方に思ってほしいです。 (文/細谷桃代・松尾菜摘) (写真)三枝先生、アルティスタのお2人と 【プロフィール】 Las Mieles/フラメンコと(篠田)三枝さんとビールをこよなく愛する7人が、新人公演のためにクラスを超えて集結。年齢も性格も異なる7人だが、それぞれの個性を活かしつつ、心をひとつに、Las Mieles《Miel(蜂蜜)と三枝(みえ)をかけて》となった。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

  • リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 4

    第4回 伊藤千紘 【バイレソロ部門/奨励賞】 (viernes, 12 de mayo 2023) フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。 昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。 第4回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した伊藤千紘さんです。 編集/金子功子 Edición por Noriko Kaneko 私が今回の新人公演にエントリーした動機は2つあります。 新人公演に初めて出たのは2017年で、翌18年にも出た後はエントリーしておらず、今回は5年ぶり3度目でした。実は4月ごろまでは出るつもりではなかったのですが、ここ数年のコロナ禍で、それまで当たり前だったことがいかに当たり前ではないか、というのを実感し、今挑戦できる1つ1つの機会を大事にしようと思ったのが出場を決めた理由のひとつです。 もうひとつは、2020年から21年はいろんな制限下ではありましたが、私にとってはじっくりフラメンコを楽しみ学ぶ時期でした。スルメを嚙みしめるかのように。教室でのレッスン内容はそれまでと大きく変わり、踊らず、靴もはかず、パルマと足踏みのみ。でも、これ以上に何が必要なんだろうと思います。そんな、どこにもないクラスメニューに切り替え、真実を教示しようと舵を切ってくれた先生には本当に感謝です。その奥深さと言ったら「どこまでも」ですから、終わりはないのですが、僅かながらでもこの2~3年で得たものを、自分の踊りに落とし込んでいく機会として挑戦してみようと思ったのが、2つ目の理由です。結果、まだまだですが。 本番を迎えるまでに大変だったのは「スケジュール調整と体調管理」と「衣装づくり」でしょうか。私は会社員をしているので、基本土日にリハやレッスンを調整させてもらい、余裕のある時は平日夜自主練という感じでやりくりしていますが、仕事が忙しく寝不足も続き、照明合わせ当日の朝は倒れました。なんとか午後の合わせには行けたのですが、体調管理、特に睡眠と栄養補給は大事ですね。真夏ですし。 また、今回の衣装は自分で生地を選び、デザインはアトリエプリマの益子さんに相談しながら作りました。最終的に、布からあんな立体的な衣装ができるなんて魔法のようで、衣装の奥深さに改めて感動し、力のある一着を作るにはどうしたらいいかを考える良い勉強にもなりました。 その他、踊りに関してはもちろん個人レッスンでは何度も崖から突き落とされ血だらけになりましたが(例えです)、それが今の自分には足りないことのヒントであり、だから今の師匠に師事しているわけなので、それを経験する意味でも新人公演に挑戦する意味はあると思っています。 本番当日は会場も広く、リハの時に自分の出す音がいろんな方向に拡散して反響してくるので戸惑いました。でも「自分が出している音を信じれば大丈夫」と先生から頂いた言葉に、そうか!と腑に落ち、本番はとても落ち着いて舞台に立てました。そして、1・2回目に出たときはとても広い舞台という感覚だったのが、今回はムシコス(=ミュージシャン)も、目の前の空間も、舞台の端から端も、不思議と色んなものが近くに感じられ、今までにない感覚だったので、賞が取れなくてもその感覚を味わえただけで実は満足でした。 受賞を知ったときは、驚きました。発表のタイミングは仕事中だったので、ケータイに溜まったメッセージで気づき、初めは戸惑いましたが、後からじわじわ納得できました。何よりも、ここまで導いてくれた師匠、支えてくれたムシコス、関係者全員に感謝の気持ちでハチ切れそうでした。また、今年は素敵な受賞式や受賞者ライブなども協会が企画して下さり、理事の方々、受賞者の方達とも顔を合わす機会を頂けとてもありがたかったです。 最後になりますが、フラメンコ、まだまだ見えていないものがあります。でも、それをこれからもずっと探し続けられると思うと、それだけで私は最高だと思います。受賞したとて自分自身は変わるわけではなく、フラメンコだけにすべてを捧げられる生活もしていませんし、出られるライブの機会も限られます。 それでも、これからもずっとフラメンコが好きに変わりないですし、いつかコンパスに触れたい。フラメンコを聴いて自分の中に満ちる感動を見失わず、学び続けたいと思っています。 最後までお目通しいただき、ありがとうございました。今年出られる方々、くれぐれも体調管理はお気を付けくださいませ。皆様のご健闘をお祈りしております! ©Yuki Omori 【プロフィール】 伊藤千紘(Chihiro Itou)/東京外国語大学在学中に部活でフラメンコを始め、岡本倫子氏、後藤なほこ氏より習う。在学中に渡西し、帰国後はエストゥディオブレーニャに入門。大沼由紀氏に師事し続け現在に至る。2018年第1回全日本フラメンココンクール審査員特別賞受賞、2022年第3回全日本フラメンココンクールファイナリスト、2022年第31回新人公演奨励賞受賞。 【新人公演とは】 一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。 プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。 バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。 (*一部、ANIF公式サイトより引用) >>>>>

  • 新企画:発表会ファッションSnap

    荻野リサ フラメンコ教室発表会 vol.10 [開催日] 2022年9月17日(土)・18日(日) [会場] 東京・中目黒トライ (martes, 9 de mayo 2023) フラメンコを楽しんで踊っている皆さんにとっての晴れ舞台、発表会。 どんな衣装を着ようかなぁ…と、踊り以上に(?)気合が入っている人も多いはず。 そんな皆さんの参考になればと思い、一足お先に発表会に出演した生徒さんたちの 衣装をご紹介します!こだわりポイントなども教えていただきました。 編集/金子功子 edición por Noriko Kaneko 1.シギリージャ 衣装:ソニアジョーンズ、マリキータ、マンサニージャ 他 「みんなシギリージャは黒のイメージだったので、黒をメインにしてシージョを巻くことだけ先に決め、花は同じもの(グレーと白のコンビのシックなもの)をつけました。あとは、ポイントや柄は「生成りとゴールド」、「シルバーと白」のように、色合いが似たものを選んで、ゴールドチームとシルバーチームに分かれて統一感を持たせました。」 2.ガロティン(キッズ) 衣装:フラメンコ雑貨屋ガロガロ、おばあちゃん 「赤い帽子に合わせて、赤を基調に黒と花柄で大人っぽさも少し出してみました。初めてみんなでお揃いの衣装にした事でグッと統一感も出てポーズをとってもまとまりが出ました。」(荻野リサ先生より) 3.シギリージャ 衣装:ソニアジョーンズ、マリキータ 「衣装の話をした際、黒を基調にシージョの色を変えるということでまとまりました。あまり重くないファルダを心がけましたが奇跡的に印象が近いものになりました。リサ先生は、いつもいろいろ衣装についてアドバイスをくださいますが、基本自分達が着たい衣装を!と言ってくれます。」 4.グアヒーラ 衣装:ソニアジョーンズ 他 「3人とも白いブラウスで統一感を持たせつつ、ファルダは好きな色を選び明るさを出しました。シージョや小物類にはそれぞれの色も取り入れて、全体が華やかにまとまるようにしました。」 5.タンゴ・デ・マラガ 衣装:マリキータ、アトリエ喜美枝、マンサニージャ 「衣装に水玉と花柄を取り入れる事を意識し、衣装の色や柄の大きさは敢えて揃えず、私たち「町娘四姉妹」の個性としました。水玉×花柄で女性らしさ、華美過ぎず控えめ過ぎず、粋で日常的な感じを思い描きながら、こちらの衣装を選びました。」 荻野リサさん、生徒の皆さん、取材のご協力ありがとうございました! >>>>>

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