(viernes, 20 de octobre 2023)
2023年10月15日(日)
スペインバル 青山TORO(東京)
文・写真/金子功子
Texto y fotos por Noriko Kaneko
美味しい食事やお酒を味わいながら、迫力ある生のフラメンコライブを多くの方に楽しんでほしい!との思いから企画しました、当サイト主催による«Flamenco fan LIVE»。
その門出を飾る第1回目のライブに出演していただいたのは、踊り手としても歌い手としても優れた技術と豊かな表現力で多くのファンから人気を集めるアーティスト、今枝友加さんです。
今回はカンテ(歌)のソロライブで、共演には今枝さんがカンテの師と仰ぎ、またギタリストとしても熟練の技と味わい深い音色で古き良き時代のフラメンコギターを今に受け継ぐ巨匠、エンリケ坂井さんを招きました。
店内は満席のお客様で賑わい、名古屋や関西、さらにははるばる九州からこのライブのために駆け付けてくれた人もいました。
ライブは休憩をはさんでの2部制。黒地に赤みの強いオレンジ色の刺繍とフレコが鮮やかなマントンをまとった今枝さんが舞台に登場し、クラシカルなギターサリーダをたっぷり聴かせてから歌が始まります。1曲目はブレリア・ポル・ソレア。円熟味を増した深みのある歌声と粘りのある歌い回しで、トマス・パボンやニーニョ・グローリア、チョサ・デ・ヘレスなど名だたるカンタオールの曲を次々と披露します。力強く、それでいて緩急の付け方も軽妙で、メリハリも気持ちいい。終盤にかけて盛り上がると、燃えるような魂の震えが伝わってきます。
MCでは、エンリケさんとの共演に至った経緯として、当時月刊パセオフラメンコ編集長の小山雄二氏がこのご縁をつないでくれたというエピソードを披露し、これからもカンテライブをどんどんやっていきたいと思いを語りました。
続いての曲はペーナ・イーホ(El Pena Hijo)のマラゲーニャ。かつての時代を感じさせる郷愁を誘うようなギターの旋律と、丁寧に音をつなげてレトラ(歌詞)に込められた嘆きを伝える歌声に聴き入ってしまいます。
ニーニャ・デ・ラ・プエブラ(Niña de la Pebla)のミロンガはイダ・イ・ブエルタの曲種で、彼女の切なさや悲しみを心を込めて歌い上げました。
1部の最後の曲はニーニャ・デ・ロス・ペイネス(Niña de los Peines)のロルケーニャ(※ロルカが発掘した民謡)。ブレリアスタイルの曲で、エンリケさんが次々に繰り出す多彩なファルセータもテンポが小気味いい。今枝さんの歌い回しも軽快で勢いがあり、原曲が持つ細かいこだわりやエッセンスをも汲み取り、心が沸き立つようなカンテを楽しませてくれました。
2部の始まりはギターソロのグラナイーナ。繊細に歌うようにゆったりと奏でられる旋律から、アンダルシアの情景が目に浮かぶよう。その土地の匂いまで感じさせるような味わい深い音色が、心に染みわたってきます。
演奏が終わり、衣装を替えた今枝さんが登場。黒のツーピースに合わせて腰に巻いた白地に花模様のシージョ(ショール)が、民族調で愛らしい。
1曲目はタンゴ・デル・ピジャージョ。踊りの伴唱で聴きなじみのある曲ですが、それは踊りのためのバージョンだそうで、今回はカンテのためのバージョンを聴かせてくれました。元歌としたのはアンヘル・デ・アロラ(Ángel de Álora)による音源で、前回歌った時のことを受けて今回はそのリベンジ的なつもりで取り組んだと言います。ゆったりと古き良き時代を感じさせるメロディーで、そのカンテの魅力をたっぷり味わわせてくれました。
続いてヘレスの歌い手ニーニョ・グローリア(Niño Gloria)のファンダンゴを、チコ(chico)とグランデ(grande)の2種類を披露。カンテファンにはうれしい通好みの選曲に、今枝さんならではのこだわりとおもてなしの気持ちが感じられました。
最後はブレリアで、フィエスタのような楽しい演奏でライブを締めくくりました。そしてアンコールは無伴奏のデブラ。自分の思いを届けるかのように、高く突き抜けるような澄んだ歌声が場内に響き渡りました。
終演後は、観客同士で知り合いも多く、あちらこちらでおしゃべりの花が咲き和やかムードに。至福のひとときを共に楽しみ、だれもが幸せそうな笑顔を浮かべていました。次回の開催を望む声も多く寄せられ、主演の今枝さん本人も再演に意欲を示してくれました。
素晴らしいカンテが存分に楽しめた今回のライブ。次回の詳細が決まったら、また随時お伝えしていきます。
【出演】
カンテ 今枝友加
ギター エンリケ坂井
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