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新・フラメンコのあした vol.7

(lunes, 4 de septiembre 2023)


20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は7月にマドリードで開催された「第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023」についてお伝えします。


第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023

セントロ・クルトゥラル・デ・ラ・ビジャ、フェルナン・ゴメス劇場、マドリード(スペイン)

2023年7月2日


文/東 敬子

写真/宣材写真、東 敬子


32 Certamen de Coreografía de Danza Española y Flamenco 2023

Fernán Gómez. Centro Cultural de la Villa, 2 julio 2023 Madrid.


Texto por Keiko Higashi

Fotos: material promocional / por Keiko Higashi


第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023
©Keiko Higashi

 何かを表現するというのは、本当に難しいものです。アーティストの表現の自由とは、どこまで許容されるものなのか。フラメンコでは、「伝統的な様式が尊重されるべきである、そうでなければフラメンコではなくなる」という考えがあります。しかしアートとは常に変化を求めるものです。発展せず、ずっと昔のままで、というのはありえない。ただ、だからと言って何でもやって良いという事では決してないでしょう。


 例えば舞踊の場合、フラメンコの動きを使っても、フラメンコのリズムを用いず他ジャンルの音楽や無音で踊るのであれば、果たしてそれは「フラメンコ」と言えるのか。そして今回の「スペイン舞踊とフラメンコのコンクール」の結果を観て、私は現代の若手が「この点」を本当に理解しているのか、疑問に感じざるを得ませんでした。


 エバ・ジェルバブエナ、マリア・パヘス、イスラエル・ガルバン、ロシオ・モリーナと、現代の若手がリアルタイムで見て育ったスターたちは皆、「新しい表現の自由」をフラメンコに追求した人たちでした。


 彼らはもちろん正真正銘のフラメンコです。しかし正直、彼らの「自由」もスレスレの崖っぷちを辿ってきたと、私は思っています。観ていて、これはフラメンコだろうかと疑問に思ったことは幾度とありました。

 でも「フラメンコ・コンテンポラリー」などと呼んで、安易に解決してほしくないし、「自分はフラメンコだから、自分がやることは全てフラメンコ」なんて言う常套句も全く説明になっていない。その曖昧さが、現代の若手を惑わしている。彼らは後進に「自由」ではなく「迷い」を与えているのだと私は思うのです。


 1992年にスタートした新人の登竜門的存在である「スペイン舞踊とフラメンコのコンクール」からは、有名アーティストがたくさん羽ばたいています。私が個人的に一番記憶に残っているのは、前・スペイン国立バレエ団監督だったアントニオ・ナハーロの作品です。飛び抜けて洗練されていて、目を奪われたことを20年経った今でも鮮明に覚えています。


 決勝となった当夜のラインナップは、ソロ4組、パレハ1組、群舞3組の計8組。


 傾向として、とにかくイントロが長い。無音・無動で始まり、作品の3分の1ぐらいはゆっくりと意味ありげな動きをただ繰り返すだけという、まさに前記の「自由な表現を求める」アーティストたちのノリ。8組中のほとんどがこれでした。


 中でも、ダブルベース奏者の女性と一緒に踊ったビクトール・フェルナンデスの『トリアダ』は顕著で、スタイリッシュで雰囲気はあるのですが、あまりに動きがなく、踊りとしての印象が薄い。パレハで踊られるダビド・アセーロ『ロ・ケ・パサ・ミエントラス・ノス・エンコントラモス』も、エンジンが掛かるまでが長過ぎた。ただその後は面白いので、もっと違ったアプローチもあるのではと思いました。


 衣装や髪型なども、若干気になる点がありました。マリアナ・コジャド『Y.O.』は20人ほどの群舞で、セリフやちょっとした演技があったり、振付も面白かったのですが、私服っぽい衣装でそれぞれ違うので、同じ振付けでもバラバラに見え、やっぱり群舞の衣装はある程度揃っていた方が見やすいと思います。カンタオール3人と踊ったイレネ・モラレス『ベレディクタ』の髪型もいただけなかった。「貞子」のように顔を覆っていて、何か、おどろおどろしい。


 しかし、男女混合群舞によるアレハンドロ・フェルナンデス『カレイドスコピオ・フラメンコ』の超ワイドパンツや、女性群舞のクリスティアン・ルビオ『エントレ・ノソトラス』の半スカート・半パンツの衣装はユニセックスでシンプルに新しいなと思いました。両組とも素直で、作品も出来上がっていたと思います。


 残る2組、カンタオールと二人で踊ったサラ・ペレス『ドゥエロ』とマントンで踊った正統派のパウラ・サラサール『アモール・ファティ』は好感が持てる踊りでしたが、前者はカンタオールがあまりに冴えていて、お株を奪った感じになったのが残念。後者はもう少し成熟した自分の世界があれば尚見応えがあったかなと思います。


 残念ながら今回の評は辛口になってしまいましたが、みなそれぞれ、将来のフラメンコを担う若手として、先輩の影響を受けるだけにとどまらず、もっと、フラメンコとは何かを自分に問いかけていただければと思うし、それがこれからの成功のカギになるかと思います。



第32回スペイン舞踊とフラメンコのコンクール2023

2023年度の受賞結果は以下のとおり。


Primer Premio de Coreografía:

David Acero Delgado, Lo que pasa mientras nos encontramos


Segundo Premio de Coreografía:

Christian Rubio, Entre nosotras


Primer Premio a una Coreografía de Solo:

Sara Pérez, Duelo


Segundo Premio de Coreografía de Solo:

Irene Morales,Veredicta


Premio a una Composición Musical Original para Danza:

Manuel Cazas, Fantasía en 9


Premio Fundación AISGE a una Bailarina Sobresaliente:

Irene Morales


Premio Fundación AISGE a un Bailarín Sobresaliente:

David Acero Delgado


Premio ¡Explosivo!:

Mariana Collado, Y.O. // Victor Fernández, Triada


Premio Ballet Nacional de España para una bailarina

María Fernández y Daniella Hernández


Premio Ballet Nacional de España para un bailarín

Alejandro Mármol y Alejandro Fernández


Premio Conservatorio Superior de Danza de Madrid María de Ávila

David Acero Delgado


Premio Centro Coreográfico La Gomera

Sara Pérez


Premio Fernán Gómez Centro Cultural de la Villa

Irene Morales y Sara Pérez


Premio Intercambio Certamen de Coreografía Burgos-Nueva York

Sara Pérez


Premio Flamenco Vivo Carlota Santana Nueva York

Yoel Vargas


Premio Flamenco Rosario Vancouver

Víctor Fernández


Premio Fuego Flamenco Festival Teatro GALA de Washington DC

Yoel Vargas


Premio Festival Flamenco de Jerez

Irene Morales y Paula Salazar


Premio Residencia Flamenco Festival en Toros

Irene Morales


¡Nuevo 2023! Premio del Festival Ibérica Contemporánea de México

Mariana Collado, Y.O.


【筆者プロフィール】

東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com(https://spanishwhiskers.com/?page_id=326)を主宰。


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