フラメンコギター・コンサート NEO FLAMENCO
(domingo, 11 de junio 2023)
2022年12月2日(金)
浜離宮朝日ホール(東京)
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
写真/ ⒸMariko Tagashira
昨年結成10周年を迎え、フラメンコはもちろん様々な音楽シーンでも活躍中のフラメンコギターデュオ、徳永兄弟のコンサートホールツアーが行われた。その東京公演の会場となったのは、クラシック・コンサートで有名な浜離宮朝日ホール。天井が高く、音響を重視した構造のコンサートホールだ。チケットは完売し会場は満席。カメラ席を一部開放して追加販売するほどだった。
プログラムは、前半は新作アルバムからカバー曲を中心に、後半は新作と合わせてこれまでのオリジナル曲を中心に構成される。
開演、二人が入場する。1曲目は「ブレリア・デ・パドレ」。最新アルバムの1曲目でもあるこの曲は、兄弟の実父でフラメンコギタリスト徳永武昭の作品を自分たちのテイストでリメイクしたというもの。のびのびと自然体で演奏する二人。気負いもなければ力みもない。それでいて、大編成の楽団に引けを取らないエネルギーと熱量を放ち、会場の空間をすべて自分たちの音楽で染め上げた。
演奏が終わり、MCで自己紹介と曲の紹介をすると、パーカッションのKANを舞台に招いて次の曲へ。2曲目も同アルバムから、ピアソラの有名な楽曲「リベルタンゴ」のフラメンコアレンジ曲。アルバムバージョンとはやや変化をつけ、イントロで二人が各々オリジナルのメロディーを奏でる。その会場でしか聴くことのできないアレンジを楽しめるのも、ライブ演奏ならではの魅力だ。
続いて3曲目は、彼らの4枚目のCDとなるベストアルバムから「赤とんぼ」。日本の憧憬を感じさせながらもフラメンコのグルーヴも楽しませてくれる曲だ。
今回のホールツアーに先立ち、NHKの人気の朝番組に出演してTVで生演奏を披露したことをきっかけに、これまでフラメンコを全く知らなかった人々から多くのファンを獲得した。そうした新しいファン層にとっても親しみやすい曲だっただろう。
次の曲は再び最新アルバムから「トリステーザ」。ブラジルのサンバの名曲を、フラメンコのルンバという曲種でアレンジした色彩豊かな曲。陽光にまどろむようなやさしい曲調に、ブラジル音楽にも精通するKANがパンデイロというブラジル・タンバリンでスパイスを効かせる。またソロ・パートでも、パーカッションの魅力が詰まったフレーズを楽しませてくれた。
前半最後の演奏は、チック・コリアの名曲「スペイン」。これまでに数々のフラメンコアーティストがアレンジ曲を発表しているが、徳永兄弟はさらなるオリジナリティを追求。ティエントとシギリージャという挑戦的なアレンジを行い、しっかり自分たちの音楽として手の内に収めた演奏を披露した。
休憩をはさんで後半は、アルバム曲「カルメンフラメンコファンタジー」からスタート。スペインを舞台とした世界的に有名なオペラ「カルメン」の人気曲で、通常はオーケストラで演奏される曲をフラメンコギターの演奏で聴けるのはとてもうれしい。「アラゴネーズ」から「ハバネラ」「闘牛士の歌」へと高揚感を掻き立てるような構成。アレンジではさまざまな曲種を取り入れ、MCで弟・康次郎は「(各アレンジの)リズムが変わるポイントを、ぜひCDを聴いて探してみてください」と観客に語った。
次の曲はベストアルバムから「マリアーナ」。昔からのフラメンコの曲種で、歌として歌われることが多いそうだが、ギター演奏でしっとりと味わい深い美しい旋律を聴かせてくれた。
ここでスペシャルゲストとして、NHK出演時にも共演したフラメンコダンサーの中原潤と鈴木時丹がパルマ(手拍子)として登場。演奏はセカンドアルバムにも収録される人気のオリジナル曲「魂の旅人」。パルマとハレオ(掛け声)が加わることで、音楽の響きと舞台の熱量にさらなる厚みが増す。TVで演奏した時はショート版だったが今回はフルサイズで披露し、観客からひときわ大きな拍手が上がった。
演奏後のMCではアルバムのレコ―ディングについての話題に。夢だったスペイン人のプロのパルマでの録音が叶ったことなどを話してくれた。
ラストの曲は、3枚目のアルバムに収録される「アスカル・モレーノ」。ライブならではのインプロのパフォーマンスで観客を楽しませ、盛り上がりの中で演奏を締めくくった。
アンコールは、スペイン版ゴット・タレントに出演した際に演奏したショート版の「ブレリア・デ・パドレ」。そしてダブル・アンコールは新作アルバムから「シェイプ・オブ・マイ・ハート」と「コーヒールンバ」のメドレー。最後に兄・健太郎は「これからも、他のフラメンコライブにも行ってみて楽しんでほしい」と語った。
音響の素晴らしい会場で最高の演奏を堪能した、至福の2時間はあっという間だった。そして次の公演は来る6月23日、東京の紀尾井ホールにて信頼のおける凄腕の素晴らしいメンバーが顔を揃える。
今後の徳永兄弟の活躍に注目だ。
【出演】
徳永兄弟 フラメンコギター
KAN パーカッション
中原 潤 パルマ
鈴木時丹 パルマ
【徳永兄弟公式サイト】
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