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工藤朋子フラメンコリサイタル vol.3「時と血と地と」

(miércoles, 31 de mayo 2023)


2022年11月8日(火)・9日(水) 

パルテノン多摩 小ホール(東京)


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko

写真/川島浩之

Foto por Hiroyuki Kawashima

 アルテイソレラ舞踊団の中心メンバーとして活躍し、また自身の舞踊活動をも極め続けるフラメンコ舞踊家、工藤朋子の3回目となるソロリサイタルが開催された。

 今回の作品は、自身のルーツである故郷の青森の伝統芸能である津軽三味線や祭り文化と、彼女が献身的に追求するフラメンコの要素、さらにはフラメンコのみならず戦国時代の日本にも影響を与えたというルネサンス音楽にまで遡り、構成を組み立てる。共演には古楽器やルネサンス音楽に精通しリコーダーのヴィルトゥオーゾ(名手)と名高い濱田芳通と、津軽三味線奏者として記録的な活躍を見せる浅野祥が参加する。フラメンコを追い求めるにつれて、「フラメンコと同様に苦難を生き抜いて来た人間の強い魂を宿す」津軽三味線とともに踊ることが大きな夢となっていた、と工藤はいう。


 1曲目は、ルネサンス音楽のグレゴリオ聖歌から、日本の戦国時代に隠れキリシタンが歌い繋いできたという*オラショ「ぐるりよざ」、そして津軽民謡「じょんがら旧節」からロマ民族の流浪生活を歌った「Caravana」のメドレー。リコーダー、津軽三味線、ギター、パルマ、パーカッションの合奏に合わせて、白のノースリーブにパンツドレス姿の工藤が柔らかく伸びやかに踊る。また、場面に応じて浅野の独唱やパルマの矢野と三四郎がコーラスで加わり、ギターとカホンとパルマのみの編成でブレリアを演奏するなど、曲に合わせて構成を変化させ、それぞれの文化が受け継がれていく流れが感じられた。

 プログラムには、津軽や東北の伝統芸能の要素が色濃く反映されるものが並んだ。宮城県の花嫁行列で歌われる祝い唄である宮城長持唄や、正月や節分などの節目を祝い歌われる青森民謡の南部俵積み唄、そしてじょんがら節などの民謡曲を、工藤は一所懸命に取り組んできたフラメンコの舞踊と音楽で表現する。それぞれの作品で彼女のルーツである津軽とフラメンコが絶妙に融合し、それは日本人としての私たちの心の琴線を深く共鳴させた。

 また、五木の子守唄では津軽三味線との見事な協演を披露。浅野が弾く沸き立つ音色にブエルタやサパテアードで応え、弦の音に弾かれるように身体をしならせ自在に反応する。音を聴き心で感じたものをその肉体で無心に表現する姿は、自身の夢が実現した静かな喜びに満ちていた。

 フラメンコの曲種では、その優れた舞踊技術と表現力で観客を魅了した。歌とカホン、パルマに合わせて奏でるクリアな足音とキレの良い踊りを披露したトナー。そしてシギリージャでは、共演者全員のエネルギーを一身に集め、思いの丈をすべて出し尽くすような渾身の舞いを見せた。

 アンコールはお祭り歌で締めくくり、ラストはリコーダーの曲に合わせて一歩一歩踏みしめるように、足音の響きだけを余韻に残して、舞台を後にした。


 各ジャンルの第一線で活躍するミュージシャンらとそれぞれの作品を作り上げ、「悠久の"時"を胸に、"血"脈を感じ、土"地"に想いを馳せながら」その身を委ね無心に踊った工藤。彼女の想いは、舞台を見届けた観客ひとりひとりの心に確かに伝わっただろう。

 今作品は、令和4年度文化庁芸術祭参加公演として上演され、「日本の民族の大地に立脚したフラメンコとしての津軽との融和が見事であった」との高い評価を受け、舞踊部門で芸術祭新人賞を受賞した。工藤がひたむきに努力と研鑽を重ね、その成果が見事に結実した作品となった。


*オラショ:日本のキリシタン用語で「祈り」を意味する。(参照:岩波書店「広辞苑」第五版)


【プログラム】

1. 「おお、栄えある聖母マリアよ O gloriosa domina」(グレゴリオ聖歌)~ぐるりよざ(オラショ)~「おお、栄えある聖母マリアよ」~じょんがら旧節~「パッサメッツォ Passamezzo」~Caravana

2. トナー

3. 宮城長持唄・ガロティン

4. 「わが貴婦人タロリーリャ・デ・カラリェノスに捧ぐフォリアス」(アンドレア・ファルコニエーリ作曲)

5. 南部俵積み唄

6. じょんがら新節

7. 五木の子守歌

8. シギリージャ


【出演】

主演 工藤朋子(企画・振付)

カンテ(歌) マヌエル・デ・ラ・マレーナ

パーカッション 大儀見元

リコーダー 濱田芳通

津軽三味線・民謡 浅野祥

フラメンコギター 斎藤誠

パルマ 矢野吉峰/三四郎


演出・振付補助 佐藤浩希



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