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中里眞央フラメンコリサイタル Vol.1

HACIA ADELANTE

アシア アデランテ -私の中の私-

*公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和6年度助成事業


(martes, 15 de octubre 2024)

 

2024年9月20日(金)

新宿伊勢丹会館ガルロチ(東京)


写真/川島浩之

Fotos por Hiroyuki Kawashima

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


 

2409_中里眞央リサイタルalegrias_©川島浩之

 日本のみならずスペインでも精力的な活動を展開するアルテイソレラ舞踊団に所属し、主宰の鍵田真由美・佐藤浩希両氏の指導の下でフラメンコの舞踊と歌の技術や表現力を磨いてきた中里眞央の、自身初となるソロリサイタル公演が行われた。会場は舞踊団の仲間をはじめ業界関係者や大勢の愛好家でにぎわい、満席の観客に迎えられた。


 初舞台の1曲目を飾ったのはアレグリアス。海辺の穏やかな波が目に浮かぶような心地よいギターデュオのサリーダが流れ、大海原への船出をイメージさせる。白地に赤い花柄のフリルで飾った赤いドレス姿の中里が、堂々と舞台の中央に立つ。はつらつとした笑顔で、躍動感溢れる美しい踊り。新しい舞姫の誕生だ。


 踊り終え、独白の音声が流れる。自分自身が幼少の頃から感じていたという、自分が自分でない感覚。中里家の娘ではなくマンガの主人公やテレビの中の大スターで、空想の世界の中では自由で、無敵な自分。でもフラメンコは自分を自分としてしか認めてくれなかったという。そんな世界に向き合うと決めた、彼女の決意がそこに表れていた。


 次の曲はキューバの歌手Olga Guillotの「Me Muero, Me Muero」という歌をブレリアのリズムで披露。ミディアムテンポで奏でるマレーナ・イーホのギターに包まれ、気負うことなく素直に歌い上げる。曲がドラマティックに展開していくにつれ、その激しい思いを歌声に託していく。

2409_中里眞央リサイタルcante_©川島浩之

 哀愁を帯びた太く柔らかい音色のギターから始まるタラント。2023年に日本フラメンコ協会主催の新人公演で奨励賞を受賞した時もタラントを踊ったが、その時よりも踊りにペソ(重さ)が増し骨太になった印象。ディエゴの包容力あふれる歌声もまた、彼女の良さを引き出していた。

2409_中里眞央リサイタルtarantos_©川島浩之

 黒と金のマントンを半身に纏い、マレーナ・イーホのギターで歌い上げる渾身のシギリージャ。声の張りが一層充実して太くなり、響きもより強くなった。嘆きの表現にも深みと濃さが増し、大きな会場で聴いているような迫力があった。

 その一方、今度は半身に掛けていたマントンを広げて全身を包み、「Soy Rebelde(私はあまのじゃく)」というスペインの歌手Jeanetteのポップバラード曲を披露。こちらはしっとりとメロディアスな曲で、ジェーン・バーキンのような儚げな声でも会場の奥まで届くように歌い、フラメンコのカンテとはまったく違う世界観を見事に表現した。


 最後の曲は、力強さを秘めたソレア・ポル・ブレリア。黒のツーピースドレス姿で踊る中里は凛々しく、足技ではしっかりと安定した音色を奏でる。ファルダを大きく両手で広げて回る姿には、彼女の舞踊へのこだわりの美学を感じた。

 フィン・デ・フィエスタではディエゴが歌で盛り上げ、この公演をパルマで支えてきた佐藤も一振り踊って舞台に華を添えた。


 踊り3曲、歌3曲、そしてアンコールは有名な「Un clavel(カーネーション)」をフェステーラのように歌い踊り、彼女に相応しい締めくくりとなった。客席からの拍手やハレオもあたたかく、みんなが彼女の晴れ舞台を見守り祝福しているかのようだ。

 Hacia Adelante 、前の方へ――。ありのままの自分でフラメンコと向き合い、真っ直ぐな眼差しで前を見つめて進み続ける彼女の未来は、きっと希望に満ちた眩しいものになるだろう。

2409_中里眞央リサイタルfinale_©川島浩之

【プログラム】

1. Alegrías

2. Me Muero

3. Tarantos

4. Seguiriyas

5. Soy Rebelde

6. Soleá por Bulerías


【出演】

歌・踊り 中里眞央

ギター マレーナ・イーホ 斎藤誠

カンテ ディエゴ・ゴメス

パーカッション 岩月香央梨

パルマ 佐藤浩希 関祐三子 小西みと


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