Neo Flamenco Project Vol.1
(jueves, 13 de junio 2024)
2023年12月20日
東京・南青山マンダラ
写真/飯田利教
Foto por Toshinori Iida
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
この数年で目覚ましい成長と進化を遂げ、日本各地の劇場公演やライブにも引く手あまた、今や日本で最も注目を集める若手フラメンコダンサー、中原潤のソロライブが行われた。
このライブは、「NEO FLAMENCO PROJECT」の第1弾公演として開催された。ネオフラメンコプロジェクトとは、苦しみや悲しみ、喜びや愛など最も人間らしい感情から自然発祥したフラメンコという芸術文化を、その伝統を守りながら様々なジャンルの音楽や踊りなどとコラボレーションすることで、21世紀という現代に生きる多くの人々にその魅力を伝えていきたいとする意欲的な企画だ。
音楽プロデューサー兼総合監督を務めるのは、スペインの劇場公演などにも出演経験が豊富で現在米国バークリー音楽大学に留学中のラファエル・モイセ・エレディア。そして共演には、フラメンコに留まらず幅広い音楽シーンで活躍する徳永兄弟をはじめ、若手の才能あふれるアーティストらが集結。またゲストとして、熟練の歌声で人間味あふれる感情を歌い上げる阿部真が参加した。
暗い舞台の中央に、うずくまるように座り込む中原。そこに幻想的な音楽が流れてくると、まるで生命を吹き込まれていくかのように身体を起こし立ち上がり、踊り始める。その動きはコンテンポラリーダンスのように柔軟で伸びやかでありながら、内面の力強さがみなぎる。
無伴奏の阿部の歌を踊るときも、いつものライブで見せる定番の振りなどの型にはまらず、でも醸し出される空気はまぎれもないフラメンコ。そこに演奏が加わり、場面が一転すると切れ味鋭い足技や回転を見せつける。音楽の熱いグルーヴと相まって、そのテクニックの鮮やかな連携は見惚れるほど芸術的だ。
音楽面では、シンセサイザーやエフェクターを取り入れて様々な音色による多彩な表現を演出。そこに徳永兄弟の超絶的テクニックと表現豊かなフラメンコギターと、カンテ・デ・ラス・ミナスコンクールのセミファイナリストとなるほどの腕前を持つ森田のベースとともに、厚みと奥行きのある演奏を披露した。また二人のパーカッショニストによる、カホンやドラムセットをはじめとする多様な打楽器の音色も、演奏の随所にスパイスを効かせる。
そして、パルマとして演奏を支えブレリアでは踊りも披露した鈴木時丹は、さりげなく光る才能の片鱗を見せ存在感を示した。中原とは好対照な魅力を持ち、デュオで踊るシギリージャでは個性が違いながらも息の合った踊りで観客を魅了した。
踊りの表現、テクニック、そして身体能力と様々な側面からフラメンコダンサーとしての底力を見せた中原。これから彼は、どのような新しい表現を見せてくれるのだろう。フラメンコの大切な本質を守りながら、飽くなき進化を重ねていくであろうその未来が、今から楽しみでならない。
終演後、音楽監督を務めたモイセ・エレディアはあいさつの中で「もっと新しいもの、もっと挑戦的なものを作っていきたいと思い、5日間みっちりリハーサルして、練習を重ね疑問を消化してこの舞台を作ってきました。これまで本当にいろんな人に支えてもらいました。これからも活動を続け、さらに大きな舞台で、もっと多くの人に観てもらいたいと思っています」と語った。
そしてネオフラメンコプロジェクトの第2弾が、来たる6月27日に東京・霞が関のイイノホールで開催される。フラメンコの魅力を伝えるために進化し続ける彼らのステージに、これからも注目していきたい。
【出演】
中原潤(フラメンコダンス)
ラファエル・モイセ・エレディア(音楽監督プロデュース・パーカッション)
鈴木時丹(パルマ&フラメンコダンス)
徳永兄弟(ギター)
森田悠介(ベース)
KAN(パーカッション)
阿部真(歌)
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